高野麻里佳

高野麻里佳

【高野麻里佳 インタビュー】
“私の表現の全てを曝け出す
1stアルバム”を目指した

自身の誕生日翌日である2月23日に発売する1stアルバム『ひとつ』は、嗜好するグッドミュージックをはじめ、あらゆるジャンルの楽曲が網羅され、シンガーとしての創作意欲をあふれさせていることが伝わってくる作品だ。そんな今作を通し、表現者として挑戦を重ねるスタンスなど、今の考えを詳しく訊いた。

私らしさを表現したかったので、
“ひとつ”というタイトルにした

まずは、1月10日に開催された『高野麻里佳 1st LIVE ~夢みたい、でも夢じゃない~』を終えての感想を聞かせてください。ライヴではアルバム『ひとつ』からほとんどの収録曲を先行披露しましたが、まだ発売前の楽曲ばかりでセットリストを組むには、すごい勇気が必要だったかと思います。

そうですね。応援してくださるみなさんが『ひとつ』の収録曲も待ってくれているだろうと安心感は持っていましたが、やはり初めてのソロライヴなので、正直に言えば不安のほうが大きかったです。ただ、リハーサルには活動を支えてくれる周囲のスタッフさん、本番ではたくさんのペンライトを振ってくれるみなさんがいたので、実際にステージを終えてみたら“ひとりぼっちの時間なんてほとんどなかったな”と気づきました。だから、感謝の想いでいっぱいですね。

音源と比べて、ライヴを通してイメージが変化した楽曲もありそうですね。

それで言うと「Ready to Go!」でしょうか。楽曲制作時にはライヴに来たみなさんがノリノリになるよう、グルーブを感じさせる歌い方を目指していたんです。実際に歌ってみて、想像していたよりもラフに歌っていい楽曲だなと印象が変わりました。

早速、アルバムのお話が出ましたのでおうかがいします。タイトルを“ひとつ”にした理由を教えてください。

私らしさを表現したかったので、このタイトルにしました。というのも、このタイトルは“高野麻里佳のテーマソング”として制作されたアルバム表題曲「ひとつ」をそのまま引用しているんです。最初はもっと難しいタイトルも考えたのですが、声優のお仕事は役者ひとりでいろいろな人になりきる夢のあるものだと思っていて。私自身、アーティストとしても幅広い楽曲を演じ分けながら歌っていきたいので、結果的に“ひとつ”という言葉がしっくりきたんですよ。

2ndシングル「New story」(2021年7月発表)の取材時、楽曲に応じて“演じ分けをするシンガー”だとご自身でも分析していましたね。それこそ今作は高野さんの表現の幅に驚かされるばかりでした。こうした楽曲ごとの声色の切り替え方について、制作チームから事前に指定があったのでしょうか?

いえ、私が全て考えました。新曲のテーマも、8曲全部を自分で決めたんです。

となると、高野さんは歌声や声色をストックしていて、さらにはまだ明かしていない“在庫”を所持しているのですか?

私の引き出しからはもう出し尽くした感が…(笑)。今作は“私の表現の全てを曝け出す1stアルバム”を目指したんです。その中で、私は挑戦を続けることこそステップアップの近道だと考えているので、あえて表現の面で冒険しても歌いきれないかもしれないと感じた楽曲だけを選びました。そもそも新曲の数が8曲になるとは想定すらしていなかったので…。

それはどういうことですか?

実は制作当初、ディレクターさんから“何曲でも作っていいよ〜”と伝えられまして(笑)。その後、最終的な収録曲数が決まってから、自分でアイディアを出しました。もちろんプロの作家さんにテーマ決めからお願いをしても良かったのですが、私は安定を求めないタイプの人間なので(笑)。それに自ら提案することで、もしかすると聴いてくれるみなさんが今後の音楽活動の指針となる何かを見つけてくれるかもしれないんじゃないかと思って。

いやぁ、とんでもないエピソードが飛び出しましたね(笑)。それでは新曲を一曲ずつ深掘りしていきましょう。アルバムは表題曲「ひとつ」で幕を開けます。

デビュー曲「夢みたい、でも夢じゃない」(2021年2月発表のシングル)と同じく、鶴﨑輝一さんに歌詞を書いていただいた楽曲です。ご本人からは私の未来を想いながら考えたとうかがいました。「夢みたい、でも夢じゃない」の歌詞と同じ言葉が使われているフレーズがあるのも、きっと鶴﨑さんの仕掛けなんだと思います。

なるほど。そして、先ほど話に出た「Ready to Go!」が続き、3曲目「Sweet Voice」では曲中にモノローグが挟まれますね。

この楽曲では“ASMRテイスト”のやさしい囁きを意識しました。大切な誰かに恋をしながらも、時に負の感情にも苛まれるっていう、そんな女の子の心がグルグルと巡る様子を歌っています。現実と空想の間の世界に導かれるようなファンタジックな雰囲気を演出できたのは、モノローグという表現だったからこそですね。

続く「Oh my future」でも女の子の恋愛模様が描かれていますね。

こちらは夢と希望にあふれた一曲として、私の大好きなグッドミュージック調になっています。今回のアルバムにおける、もうひとつのリード曲ですね。そう言えば、この楽曲は2ndシングルを制作していた頃にはもう出来上がっていたんですよ。けれども、いつか表題曲にもなりそうな力強さを持つ楽曲だったので、今まで世に出すタイミングを探っていました。

大サビではそれまでのサビと比べて、ややアグレッシブなニュアンスをつけて歌っていますよね?

そうなんです。《もっとかわいくなれるまで待って》という歌い終わりを、歌詞のどおりに可愛くするのか、それともカッコ良くするのかでとても迷いました。最終的に、強い想いや勇気を持つことで女の子は“可愛い”を更新できると考えているからこそ、この部分はキリッとした歌声で、最大限にカッコ良く歌い上げました。

そういうことでしたか。ところで前回の取材時、自身の歌声は高音が目立って聴こえるため、賑やかな楽曲ではトラックとのバランスを意識しているとお話しされていましたよね。5曲目「カリソメアワー」こそ究極に賑やかな“祭りロック”のようですが。

確かに当初は私の声質から考えて、こうしたお祭り騒ぎ調な楽曲では騒がしく思えてしまうと懸念していたんです。ただ、「カリソメアワー」はしっとりとしたイントロから始まることで、日本古来の奥ゆかしい印象があったんです。だから、気張らずとも自分の声質や声量を活かして歌えるはずだと思えて。そんな相性の良さを感じて選曲をしましたね。

高野さんの歌声は決して騒がしいものではないですが…なるほど、“奥ゆかしさ”ですか。レコーディング前から、抜群の仕上がりになる確信はありましたか?

まったくなかった…というよりも、自分の歌声との相性を基準に決めた楽曲がひとつもないんです。むしろ私のほうが楽曲のイメージに変化していく、あくまで“楽曲ありき”の考え方だったので。「カリソメアワー」もレコーディングまではどんな歌声だとしっくりくるのかが曖昧だったのですが、最終的にはすごくハマる歌い方を見つけられて良かったです!
高野麻里佳
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OKMusic編集部

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