源頼朝役の大泉洋

源頼朝役の大泉洋

【大河ドラマコラム】「鎌倉殿の13人
」第3回「挙兵は慎重に」頼朝の挙兵
決断に至る鮮やかな展開

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。1月23日に放送された第3回「挙兵は慎重に」では、北条家の婿となった源頼朝(大泉洋)が、平家打倒の挙兵を決意するまでが描かれた。45分という枠の中、以仁王(木村昴)の挙兵の史実なども絡めて巧みに伏線を織り込み、クライマックスで一気に決断させる。その鮮やかな展開には舌を巻いた。
 この回、頼朝に挙兵を決断させた要因は三つ。一つ目が「文覚の訪問をきっかけにした宗時と政子の説得」、二つ目が「木簡に基づく義時の兵力見積もり」、そして三つ目が「後白河法皇の密書」だ。
 クライマックスではこれらが出そろい、以仁王の挙兵失敗で慎重になっていた頼朝の決断を後押しする。宗時(片岡愛之助)、政子(小池栄子)、義時(小栗旬)ら、北条家の面々に説得され、頼朝の心が挙兵に傾いていく展開には気持ちが高ぶったが、さらに掘り下げてみると、その裏には冒頭から緻密に計算されたストーリー展開があったことが分かる。
 まず、義時が木簡を使って兵力を見積もるまでの経過を振り返ってみたい。この回の冒頭、北条家では頼朝と政子の娘・大姫の誕生を祝っていたが、このとき、義時は家族と離れて1人、蔵の中で木簡を手にしていた。
 さらに中盤、あいさつに出向いた国衙(役所)で、役人たちが木簡を片付ける場面を義時が目撃。後に潜り込んでひそかにこれを調べたことが、兵力計算の根拠となった。
 このように、序盤から巧みに義時と木簡の関りが描かれていたわけだ。しかも、勝算があることの裏付けをきちんと取ることで、勢いだけの兄・宗時とは異なる義時の慎重な性格も表現されている。
 また、宗時と政子に頼朝説得のきっかけを与える文覚も、序盤で宗時と仲間の武士たちの会話で「源氏の再興を唱えて回っている妙な坊主を見かけた」と話題に上る形でまず登場。
 これが伏線となり、唐突な印象を与えずに頼朝との対面を描くことができた。演じる市川猿之助の芝居も勢いがあり、宗時の説得を引き出す役割を十分に果たしている。
 そして、後白河法皇(西田敏行)の密書は、源行家(杉本哲太)が仰々しく触れ回った“以仁王の令旨”とは対照的に、三浦義澄(佐藤B作)から北条時政(坂東彌十郎)にひそかに手渡されるという、“いかにも”な形で登場。
 「多分、偽物です」という時政の言葉がありながらも、「法皇が夢枕に立った」という頼朝自身の言葉も後押しとなり、決断を促す決定打となった。
 この三つの要因は、それぞれ「挙兵に対する熱意」、「冷静な戦力分析」、「(真偽不明ながら)大義名分」と、その性格が異なる点もポイントだ。
 劇中、「慌て者の早とちりが、歴史を動かすこともある」というナレーションもあったが、そこには、歴史を動かすのは必ずしも綿密な計画ではなく、さまざまな要因の偶然の重なり合いである、という主張も感じられる。このうち、どれか一つでも欠けていたら、頼朝の挙兵はなかったに違いないと思える説得力があった。
 大河ドラマ3作目となる三谷幸喜の脚本の巧みさは今さら言うまでもないが、それを的確に映像化した演出や俳優陣の演技も見事。改めて今後の展開が楽しみになる第3回だった。
(井上健一)

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