KEN LLOYD

KEN LLOYD

【KEN LLOYD インタビュー】
ソロをやろうと思った時には
「Sweetness」が柱としてあった

誰もが相手を思いやる気持ちが
足りていないと感じる

“Sweetness”という言葉はすでにあったそうなので、そこから歌詞を広げていった感じですか?

仮で当てたものというか、メロディーと一緒に自然と出てきたフレーズが結構あって、“Sweetness”という言葉もあったから、あとはフロウとか耳に入ってくる感じを整えつつ、自分の中の感情だったり、自分から見える世界のことだったり、自分が思ったことを正直に詩にしていきましたね。

そこにメッセージも含めつつ? ってメッセージじゃないな。願いかな?

そうですね。いつもそうなんだけど、もともと誰かに助言をするっていうのが嫌いなんですよ。世の中を見て“それは違うんじゃない?”と思うことはいっぱいあるけど、自分の考え方を押しつけるのも好きじゃないから、それを強く言うつもりもないんですよね。ただ、今の世の中を見て“こうなっているよね”とか“こうなってほしい”ということは言える…それは自分の中の考えなので。だから、メッセージよりも問いかけ? 邦楽の歌詞って結構アツいじゃないですか。リスナーもそれを求めているところがあるというか。“この曲を聴いて励まされました”とか。

ファイトソングみたいなね。

そうそう。そういうのも良いと思うんだけど、「Sweetness」はそういうものにしたくなかった。オブリやアトム、FAKE?の曲を聴いて“元気が出ました”とか“不安を乗り越えられました”と言われると嬉しいし、それが一番の評価だとも思ってる。でも、それはその人が聴いて思ったことであって、“こうしろ!”とか“朝起きたら歯を磨け!”みたいな感じにはなりたくないんですよ(笑)。俺、何が正しいかなんて分かってないし。

タイトルにもなっている“Sweetness”という言葉をどう解釈するかも大事ですよね。

“やさしさ”や“思いやり”とか? それは聴く人それぞれでいいと思うんですよ。今回は歌詞の翻訳も出すんですけど、翻訳家の方もそこはすごく迷っていましたね。“Sweetness”を直訳すると“甘み”になるし(笑)。僕からすればストレートな歌詞だと思うけど、表現の仕方としては難しいかもしれない。

全体的に“癒し”のようなものも感じました。

これはコロナ禍だからっていうわけではなく、誰もが相手を思いやる気持ちが足りていないんじゃないかって、日常で感じることがあって…それは世界的にね。ニュースを観ていても争い事が絶えないし、コロナ禍の中でもワクチンを打つ打たないで論争していたり。僕の中には“みんな一緒じゃなくてもいいんじゃない?”という想いがあるから、やさしさだったり、思いやりだったりが大事なんじゃないかなって。人間ってみんな同じでいたいようでいたくない…仲間意識を求めるのに個性を尊重したりして、すごく不思議な生き物だなって。そんな中で何が必要なのかをひと言で表したら、僕は“Sweetness”なのかなと。そういうものがあればギスギスしなくなるんじゃないかと思う。“Sweetness”はもともとのスケッチに入っていた言葉ではあるけど、そこから肉づけした歌詞の部分というのは、今の世の中を見て感じたことだから、15年前に歌詞を書き終えていたらもしかしたらこういう内容にはなっていないですね。

コロナ禍というのは歌詞にも影響を与えている?

コロナ禍になったからっていうわけじゃなく、単純に今まで人々に蓄積されたものが爆発しただけだと思っているんですけどね。今まで溜め込んでいた不安や不満があふれ出たっていう。だから、今に限ったことじゃなく、ずっと必要だった“Sweetness”が足りてないのかなって。

そんな「Sweetness」ですが、自分にとってどんな曲が出来上った実感がありますか?

バンド人生だけじゃなく、生まれた時から触れてきた音、生きてきた日々というものが詰め込まれていると思うんですよ。日本で作ってはいるけど、ストリングスにイギリスの風味がある…僕が聴くとそういう景色が見えるのね。なおかつ、今の時代の音も入っているし。ソロは今までのキャリアの集大成だと思っているので、そういうものをしっかりと入れられたかなって。だから、“KEN LLOYDです”という感じですね。自分と自分の周りにいた人と一緒じゃないと作れなかったものになっている。

“自分の周りにいた人”というのはバンドのメンバーとかではなく、これまでの人生の中で出会った人?

そう。そういう人たちと触れ合った経験が何もフィルターを通らずに、メロディーやビートの感じだったり、ストリングスに表れているし、歌詞には自分の考え方であり、人間性が出ている。

言える範囲でいいのですが、次の展開というのは?

歌を録ってしまえば、あとはミックスだけの曲が2曲あるし、他にもスケッチの状態から仕上げているものもあるんですね。しっかりと準備をしてから出そうと思っています。もともとあるものへの責任を果たした上でとも思っていますし…例えばオブリやアトムが動けば、そちらを優先するから。それ以外の時間はいろんなクリエイティブに充てています。

「Sweetness」を出したあと、しばらく音沙汰なしっていうわけではないと。

うん。2022年はコンスタントに動くつもりではいますね。止まっているのが大の苦手な上に、僕はクリエイティブなことが本当に好きで。それは音楽に限らずグッズのデザインとかであっても、とにかく何かを作って、それを世の中に出した時に、誰かが喜んでくれるとか、その人のプラスになるっていうのが、僕にとってのやり甲斐なんです。

取材:土内 昇

配信シングル「Sweetness」2022年1月14日配信開始 SMC ENTERTAINMENT
KEN LLOYD プロフィール

ケン・ロイド:イギリス、ロンドン生まれ。18歳の時に日本の大学に進学する為に来日。大学在学中の96年にOBLIVION DUSTのヴォーカルに誘われ、プロのミュージシャンとして活動を開始、エイベックスより97年にデビュー。一度解散し再結成を果たす。22年にデビュー25周年を迎える。02年には、LUNA SEAのギタリストINORANと新バンドFAKE?をスタートし、ワーナーミュージックよりメジャーデビュー。さらに11年にはDragon Ash、スケボーキング、Beat Crusadersのメンバーと、自身3バンド目となるATOM ON SPHEREを結成、ユニバーサルミュージックよりメジャーデビュー。現在、OBLIVION DUST、FAKE?、ATOM ON SPHEREという、それぞれ音楽性の違うバンドでの活動を継続中。さまざまなchapterの集大成=最終章として、21年にKEN LLOYD名義での活動をスタートさせた。KEN LLOYD オフィシャルHP

「Sweetness」short video clip

OKMusic編集部

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