TRiDENT、東京で勝負する事を選んだ
2021年 集大成となる東名阪対バンツ
アー初日、渋谷WWW X公演をレポート

TRiDENT『OVER GROUND Release tour』2021.12.21 SHIBUYA WWW X
この日はあくまでも女性3人組ロックバンドTRiDENTによる『OVER GROUND』 Release Tourの初日。しかし、対バンを務めた6人組女性アイドルグループ・神使轟く、激情の如く。(以下、神激)と4人組ロックバンドKNOCK OUT MONKEYの存在は、渋谷WWW Xでの一夜をガチの3マンイベントへと染め上げたのだった。そして、バンドもアイドルも関係ないブッキングは、ジャンルではなくそれぞれの根底にある魂を重視するTRiDENTの姿勢を見せる意味でも大きな意味のあるものだった。
神使轟く、激情の如く。
この日切り込み隊長を務めたのは、揃いの黒のレザージャケットを羽織って登場した神激の面々。ダンスのキレや歌で魅せるというよりは一人ひとりの個性のぶつかり合い。自分のパートになるとステージ前方に出てきてパフォーマンスをかます姿はまるでヒップホップのクルーのようだ。人差し指を掲げて飛び跳ねる者、体を揺らす者、舞台上での振る舞いは実に自由。そんなステージの空気はフロアにも伝播していく。昨今のライブ鑑賞はソーシャルディスタンスが当たり前。しかし、限られたスペースの中でもWWW Xに詰めかけた観客はヘドバン、ジャンプ、ハンドクラップと思い思いに楽しんでいた。
「カッコいいの定義は一番汗かける奴!」
「この音楽はビジネスのためなんかじゃない! 神激の音楽はあなたを救うためにあるってことを忘れるな!」
「この大切なときがあなたの人生の一部になるように歌うよ!」
「明日死んでもいいぐらい命燃やすぞ!」
など、かわいい女子たちが目ん玉をひん剥いて煽り倒し、トップバッターとしての役割を見事に完遂。そんな彼女たちは来年3月30日、日本武道館のステージに立つ。
KNOCK OUT MONKEY
続いて、けたたましいサイレンを鳴り響かせて登場したのはKNOCK OUT MONKEYの4人。「かわいい子たちに挟まれてるから、この時間は汗臭くやっていくぜ、よろしく!」というw-shun(Vo./Gt.)の第一声からライブはスタート。まあ、結果的に3組とも汗臭かったんだけども。
長いキャリアに裏打ちされた密度の高いアンサンブルを叩きつける4人。のっけからパフォーマンスをピーク状態に持っていく。モッシュこそ起こせないものの、観客の背中を見ているだけでも彼らの興奮が伝わってくる。「踊れるだろ? 踊れるだろ? そこで踊らんかい! 頭がちぎれるぐらい振らんかい! これがライブだーっ!」などw-shunはフロアを煽りまくるが、実は縦ノリの曲が多かったような気がする。熱量は落とさずに、制限のある中でも観客が存分に楽しめるように工夫をしていたのではないだろうか。ロックもメタルもレゲエもあらゆるジャンルを飲み込んだノクモンのなせる技だ。
途中、メンバーが少し戸惑う姿を見せた。その理由はすぐに判明。なんと持ち時間がかなり余ってしまったというのだ。たぶん、セットリストを組んだときに想定していた以上に突っ走ったパフォーマンスになったのだろう。言わなければ観客は気づかないハプニングだったが、思わぬところで彼らの前のめり感を知ることができてうれしかった。そしてこれはこの日の空気を象徴していたと言える。
最後は、「またどこかのライブハウスで会うことがあったら汗かいて楽しみましょう。TRiDENTも神激も来年はもっと一緒にやろうな!」と呼びかけ、ラストのレゲエロックチューン「Good Feelin'」を語りかけるように歌い上げたあと、すっきりとした笑顔で「ありがとうございました。よいお年を!」とTRiDENTへバトンを渡したのだった。
TRiDENT 撮影=ゆうと。
フロアがきっちり仕上がった状態で登場したのはTRiDENT。「ツアー初日、もうみんな体温まってるよね!?」とSERINA (Ba.Cho)が呼びかけ、4つ打ちで疾走する「DISTINATION」でレコ発初日の幕が切って落とされた。
ASAKA(Vo.Gt)の鋭く突き刺してくるようなボーカルにまず耳を奪われる。演奏は荒々しいが、興奮が抑えきれない様子が伝わってきていい。落ちサビで沸き起こったハンドクラップには、彼女たちの前にステージに立った2組の熱量もしっかり乗っていた。その勢いを切らさぬように、続く「RIDE ON」の骨太な演奏でさらにフロアを引き込む。これもまた4つ打ちの楽曲だけど、踊るというよりはグッと拳を掲げたくなるような泥臭いロックナンバーだ。それはSERINA (Ba.Cho)の演奏によるところも大きい。彼女の歌うようなベースラインは運指を見ているだけでも十分にエンターテイメントしているし、何より本人がとても楽しそう。同期でギターが足されてはいるものの、3ピースの演奏に感じさせないのはSERINAの存在がデカいのではないだろうか。
SERINA 撮影=ゆうと。
ASAKA 撮影=ゆうと。
そんな彼女のベースソロから始まる「Ambivalent」では、約1年半前に加入したNAGISA (Dr)によるドラミングに目がいく。プレイがとにかく派手なのだ。正確さや繊細さはひとまず置いといてまずは根性第一、みたいな感じ。そんな気合の入ったパフォーマンスをしながらも終始笑顔。これもいい。
3曲畳み掛けたあとのMCでは、今月15日にリリースされたばかりのEP『OVER GROUND』について触れたあと、ASAKAは「本当に開催してよかった」とこの日のライブについて感慨深げに吐き出した。バンドがライブにかける想いというのは、コロナ禍になったことで観客にもより共感できるものになったのではないだろうか。
NAGISA 撮影=ゆうと。
TRiDENT 撮影=ゆうと。
MCで再確認したが、3人はこの日に向けてかなり気合を入れて準備をしていたようだ。しかし、決して気負ってはいないし、過剰に熱くなることもない。どっしりとしたソリッドな演奏で魅せる。とはいえ、TRiDENTのことを単に“上手いバンド”と評するのもちょっと違う。前述したように、技術というよりもまずは熱意。それはフロアとしっかり向き合って演奏し、歌う姿にも現れている。いいバンドだと思う。
青く照らされた照明のもとで鳴らしたロックバラード「After rain」ではガラッと空気が変わる。が、これまでのテンションを引きずってか、ASAKAがボーカルコントロールに少し苦戦しているように見えた。そんな熱量あまっての勢いも嫌いではない。
本編最後となる「Think of」の前のMCでASAKAは「駆け抜けた一年でした」と2021年を振り返り、新作『OVER GROUND』を「2021年の集大成のような作品になってます」と位置づけた。去年、TRiDENTは大阪・豊中から上京し、東京で勝負することを選んだ。新たな土地で音楽活動をしながら思ったことがあるという。「どれだけ離れていても音楽があれば心を通わせることができる。音楽があれは大切な人や大切の思い出を近くに感じることができる」『OVER GROUND』のラストを飾る同曲は、「わたしたちと心を通わせたいと思ったときに歌える曲」としてつくったという。<遠く遠く離れてる君をきっと忘れないから>とストレートに想いを綴った歌詞、そして印象的なシンガロングパートにグッときた。
TRiDENT 撮影=ゆうと。
いったんステージを降りたあと、アンコールを求める拍手に迎えられた3人は、先ほどよりもリラックスした様子でクロストークを展開。ASAKAは「楽しかった?」とフロアに問いかけたあと、「(神使轟く、激情の如く。のメンバーが)今日一番汗かいた人が一番カッコいいって言ってたけど、それはどう見てもうちのNAGISAなんですけど(笑)」と笑いを誘った。NAGISAはテンションが上がっていたのか、それとも元々の性格なのか、なんだか不思議なトークを1人で展開していたけど、話の内容は置いといて、3人の関係がうまくグルーヴしていることはしっかり伝わってきた。
そして、「自分が思ってることは自分に返ってきます。悪く思っていれば悪く返ってくる。そういう考えだからこそできた曲」と楽曲の紹介をし、アンコール「JUST FIGHT」をプレイ。こうして熱量をギュッと凝縮した1日を締めくくった。このツアーは今月28日の名古屋CLUB QUATTRO公演で最終日を迎えるが、来年以降TRiDENT周辺は今年以上に騒がしくなるだろう。そう思わせるには十分すぎるほど熱のこもった一夜だった。

取材・文=阿刀”DA”大志
TRiDENT 撮影=ゆうと。

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