冬の寒さを吹き飛ばす「生きる熱さ」
をお届けします! ミュージカル『フ
ィスト・オブ・ノースター 北斗の拳
』小野田龍之介、一色洋平、百名ヒロ
キインタビュー

『北斗の拳』✕グランドミュージカルの全貌が少しずつ明らかになり、初日に向けてさらにオーディエンスの期待も高まる中、急遽クロストークに応じてくれたのはトキ役の小野田龍之介、青年ラオウ役の一色洋平、そして青年トキ役の百名ヒロキ。作品に込められたメッセージを噛み締めながら、熱気あふれる稽古場での様子、“出航”を控えた今の思いを賑やかに語ってくれた。
一色洋平、小野田龍之介、百名ヒロキ
──先日行われた製作発表では素晴らしい歌唱披露もあり、本番への期待が着々と高まっています。小野田さんは「願いを託して」と「兄弟の誓い」の2曲を歌ってくださいました。「願いを託して」は同じくトキ役の加藤和樹さん、そしてレイ役の上原理生さん・伊礼彼方さんとの歌唱で。
小野田:はい。もう……ね、「全部出した〜」って感じ。
一色・百名:(笑)。
小野田:どちらもトキとしてはキャラクターを象徴するような代表的なナンバーなので、和樹くんと共に「もう出しちゃったね」ってなったのが(笑)、素直な当日の感想です。
──“この作品のこの役”という存在感がしっかりと伝わってきました。
小野田:フランク・ワイルドホーンが僕らのために書いてくれた新作楽曲、こんな感じかな、あんな感じかなってずっと稽古してきて、やっとみなさまの耳に届けることができて非常に嬉しかったですし、作品全体のイメージも湧いたのではないでしょうか。原作の世界を大事にしながらしっかりグランドミュージカルとして創られていること、舞台にしかない新たな『北斗の拳』の世界を作り出していることがちゃんとお知らせできたなと思っています。
一色・百名:(頷く)。
小野田:また、Wキャストが一緒に歌うのって製作発表ならではの構成なので、あの日あの時だけのハーモニーを奏でお聴かせできたのは、僕らにとっても楽しく貴重な時間でした。
【♪願いを託して/加藤和樹 小野田龍之介 伊礼彼方 上原理生】ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』より劇中歌歌唱
──「兄弟の誓い」は小野田さん・加藤さん・一色さん・百名さん、そしてリュウケン役の川口竜也さん5人での歌唱。冒頭、青年トキと青年ラオウがリュウケンに崖下へ突き落とされるダイナミックなシーンも込みの、熱いナンバーでした!
一色:製作発表なのであまり激しく動けないなぁと思いつつ、精一杯「うわぁ〜っ!」とアクションしたところがしっかり写真に収められて記事に(笑)。歌唱なのに僕とヒロキくんだけ『ボヘミアン・ラプソディ』みたいなポーズで何事かと思われるでしょうが、あのシーンはさらに本番では相当テンコ盛の演出になる予定です。そもそも崖から落とされるとは?ってところからは始まりますし。
百名:フフフッ(笑)。
一色:そこからラオウは修行をし、トキも目覚め……といろんな要素が入ってるのでね。演出の(石丸)さち子さんからも「君たちだから頼めるナンバーなんだよ」と任を託されていますので、ミュージカル的にもちゃんと成功させたいな、と思っています。
【♪兄弟の誓い/加藤和樹 小野田龍之介 川口竜也 一色洋平 百名ヒロキ】ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』より劇中歌歌唱
──あの青年時代のエピソードがあることで『北斗の拳』の世界で闘う者たちの思い、壮絶な生き様により奥行きが感じられる。物語全体を通じても非常に重要なポイントになっています。
一色:ラオウというとどうしてもゴリゴリのビジュアルで、いかにも“世紀末覇者”ってイメージがあるんですが、あのナンバーで絶対的に伝えたいのは「ラオウも触れればあたたかい“人”なんだ」ってこと。そこからまた大事な後半戦にバトンパスをしていく役目を僕らは担っているので……演じることに対しての心の力みは正直今もありますね。
百名:うん。製作発表はすごく楽しかったですけど、僕はまず、僕らが龍ちゃんと和樹さんの幼少期の頃を演じるということにすごくプレッシャーを感じていて──
小野田:ちょっと待って! 彼はこういう感じでいつも幼少期ぶってくるんですけど(笑)、僕ら実年齢はそんなに変わらないですからね。稽古場でもすぐ「幼少期……」って、フレッシュなふりするからなぁ。
百名:歳の差、2つ? 3つ? いや、龍ちゃんが大人すぎるんだよ〜(笑)。
一色:(笑)。

一色洋平、小野田龍之介

百名ヒロキ
百名:それにほら、演じるからには周りの人にもだけど、まずは自分に言い聞かせていかないとなって思って。「俺は幼い頃だぞ」と。
小野田:なるほどね(笑)。
百名:あの歌ではやはりトキがどんな少年でなぜああいう大人になっていったのかってところを短い時間の中で伝えていきたい。ラオウとトキの兄弟の関係性もすごく熱いので、今、気合い入れて日々の稽古に臨んでいるところです。
──一方の小野田さんも、かつての自分を目の前にし、ほかのシーンとはまた違うトキとしての感情が生まれてくるのでは?
小野田:そうですね。あそこは稽古していていつも非常に不思議な気持ちになり……ミュージカルだからこそできる過去と今のリンクだな、と思います。そして「音楽の力って本当に大きいな」とも。様々な演目をやらせていただいてきて毎回そう思うんですけど、でも初演モノで、オリジナルで、漫画原作でっていうチャレンジの中、改めてああいうシーンを創ると実感しますね。音楽があることで一気に過去と現在も飛び越えることができるんだなって。
──イマジネーションの豊かな飛躍ですね。
小野田:ラオウはどうしても大人の部分だけを切り取ると悪役に見えがちなんだけれど、歌に込められた静と動の表現でラオウとトキの純粋な兄弟愛、兄妹の絆というモノを確実に伝えることができる。成長したトキはラオウを倒したいわけではなく、あの頃の兄弟が抱いていた思いというか祈りというか……「人間愛」みたいなモノをラオウに取り戻してほしいんですよね。石丸さんも「大きなクライマックス、大きなドラマの展開としてあのシーンを作りたい」と常々おっしゃっているんですが、本当にその言葉にふさわしいシーンになっているなぁと、僕は思います。ミュージカルならではの力強いシーン、力強いナンバーです。
一色・百名:(頷く)。
一色洋平、小野田龍之介、百名ヒロキ
──ではそれぞれに抱くご自身のキャラクター像とは?
小野田:いかにも「力」を感じさせる屈強な男たちの多い物語の中で、トキは「祈り」の役。精神的な強さの象徴にもなっているなぁと思いますし、ケンシロウに対してもラオウに対しても精神的な部分で接している。そういう「心」の部分で存在できる人物像を作り上げていきたいと考えています。
和樹くんともものすごく話し合いながら稽古してます。彼はもともと原作が好きで、そういう知識なんかも僕は伝えてもらいながら「じゃあ3時間の演劇の中で存在するのならこういう表現はどうだろう?」って、こちらからもアイデアを投げかけたり。時にはお互いに違う方向を歩みながら、共有したり、意見を交換したりってやってます。ま、Wキャストにしては仲のいい二人なので……って、これ、ネタ、ネタですよ〜(笑)。
一色・百名:(笑)。
小野田:でもホントにいい空気なんです、このカンパニー。なんだろう……学校だね。「北斗の拳筋肉ハイスクール!」みたいな。ハハハッ(笑)。
一色・百名:(爆笑)。
一色洋平、小野田龍之介、百名ヒロキ
──青年時代チームは?
百名:青年トキが出てくるのはホントにあの場面だけなので、この仲のいい兄弟はなぜその後人生で分岐していってしまうのか。そこへ繋がるよう、僕は思いっきり青年として生きているだけというか……
──「兄ちゃん」という呼びかけの声がすごく心に響きます。
百名:(ユリア役の)平原(綾香)さんにもそう言っていただきました。“「兄ちゃん」って言葉、すごくキャッチーに響くね”って。なので歌うときもその言葉は特に意識して大事にしています。
──ラオウは兄としての強さ、いじらしさ、愛の深さ……子供ながらに見せるその生き様に心が揺さぶられます。
一色:ラオウの若い頃は原作でも何度か出てきて、少ないけどどれも重要なシーンなんです。ミュージカルでピックアップされているのは中でも特に過渡期の非常に絶妙な段階。ラオウは「天を目指す」と修行を積みながら、強くなっていく自分のことがちょっと怖くもなってきている。それをトキはいち早く察して……自分の大好きなお兄ちゃんだけれど、どんどん日に日に人が変わっていくぞっていうのをね。ラオウもそれを自覚しているからこそトキが修行をすることを認めるし、「もしも自分に何かあったらお前が止めてくれ。頼むぞ」という気持ちにもなっている。
一色洋平
──運命がどんどん加速していく中での大きなフェーズ。繊細な感情の変化がそこに。
一色:昨日稽古場で龍ちゃんとも話してたんです、原作がすごく勢いがある分、舞台も勢いでやろうとしちゃうと怖いよねって。もちろん思いっきり勢いで行ったほうがいいところもあるんですけど、改めて物語を精査すると、勢いだけじゃないところを特に青年期では大事にしながら大人たちへと思いを託していかなければなって思って……。今日これからの稽古もその気持ちで頑張りたいなと思っているところです。
──製作発表では演出の石丸さんが本作にかける思いを熱く語ってくださり、湧き出るパッションがストレートに伝わってきました。稽古場もさぞかしホットなのでは……と想像しています。
小野田:製作発表のあの勢いのまま稽古も進んでいるので、ものすごくエネルギッシュ! もう……毎日声、大きいです。石丸さんの。
一色・百名:(笑)。
小野田:僕は今回初めてご一緒したんですけど、まずは演出家として自分が見たいビジョンというものをしっかり提示してくださるので、そこで俳優がどう居られるか、どう応えられるか。それはもう個々の力量次第、引き出し次第だなって、試される思いで向き合っています。
また、「なぜ今の時代に『北斗の拳』なのか、せっかく上演するのなら何か意味のあるドラマにしたい」ともおっしゃっていて……僕はそれって「人間が生きていく上で持っていなければいけない思い、生きる理由」のようなことなのかな、と。そのソウルは原作漫画のセリフのひとつひとつにも込められていますし、もちろん脚本の中にもたくさん詰まってると思うんですよね。だから「言葉をちゃんとはっきり伝えてほしい」という指示もホントにその通りで、キャラクターたちが語っているドラマ、ケンシロウが旅の過程で気づいていくひとつひとつの言葉を大切にして、僕らは彼に何を投げかけることができるのか、逆に彼は僕らから何を感じ取っていくのか──そういう核をメインキャストもアンサンブルも大事にしながら、日々大きな声で(笑)、やっています。

一色洋平、小野田龍之介、百名ヒロキ

一色:さち子さんは僕もヒロキくんも芝居というモノを始めた頃からご一緒している演出家さんなので、僕らの演劇の母的なところもありまして。
百名:そうなんです。
一色:さち子さんはよくカンパニーとか作品を船に例えるんですよ。「みんなでこの船に乗って行くぞ」って。そしてその船のキャプテンであるさち子さんの指針はホントに明確で、「あの島を目指すぞ!」っていうざっくりした声かけではなく、「あの島にこういうルートでこのツールを使って行くぞ!」みたいに言ってくださるし、ちょっとずれると「違う違うそっちじゃない!」ってすぐ軌道修正してくださる。カンパニーに「このキャプテンに従っていけば、大丈夫」って思わせてくれる存在なんです。
百名:うん。安心感がありますよね。
小野田:あ、「違う違う」じゃなくて「違う違うっ!!!!!」ね。声のボリューム(笑)。
一色:そうですね(笑)。「違う〜!!」って、キャプテンの大きな声で船員全員に伝わるように呼びかけてくれるので。
百名:そして、常にみんなを見てくれていて、沈みかけてても絶対助けてくれる。
一色:そうそうそうそうっ。
百名:そこは他の稽古場とは違うな、と思います。とっても「濃い」現場です。

一色洋平、小野田龍之介、百名ヒロキ

──血が滾りますね。今回、一色さんと百名さんは兼ね役で色々登場されるんですよね。
小野田:いっぱい出てますよ〜。ホントにこっちが申し訳なくなるくらいいっぱい動いてるんで……サーキットトレーニング状態。
一色:ハハハッ(笑)。
百名:石丸さんは「この『北斗の拳』は救世主を求めている世界。それは今の日本にも通じるモノがある」とも言っています。民衆のシーンとかも今すごく緻密に作っていて、そうしたシーンから僕らも「今、現代にやる意味のある作品だ」と実感持ってできている。お客様にもこの熱さを伝えたいですね。ぜひ劇場にお越しいただきたいです。そして僕がどこに出て来るのかも、ぜひ探してみてください!
一色:いいね〜。僕らも初めは「果たして『北斗の拳』を人間ができるのか!?」っていう気持ちは正直あったんですけど、でも1ヶ月以上このカンパニーにずーっといると、その辺がいい意味で度外視されてきていて。やっぱり漫画原作を舞台化するってなった時に、“人が演じる良さ”がないとダメだと思うんです。そこに対してはもう「俺たち人間が舞台へと立ち上げる良さを追求してみせる!」って一丸になっているので、お客様にも原作ファンの方にも「ああこれが『北斗の拳』のミュージカルだ」という感動を強く提示できるように、残りの稽古も頑張っていきたいと思います。楽しみに待っていてください。
小野田:ホントに有名な原作をミュージカル化していますけれど、みんなも言うように生身の人間が生で演じるからこそ表現できる原作の素晴らしさ、熱いドラマを今我々は作っているので、原作ファンのみなさまもまた新たな感覚、新たな思いで『北斗の拳』に触れることができることと思います。そして原作を全く知らない方々も純粋にミュージカルとして楽しんでいただき、ここに生きる人間たちの繋がり、互いに託す思いや生きる強さを感じてくれるはず。素晴らしい音楽、素晴らしい脚本、そして石丸キャプテンの先導のもと、僕たち筋肉ハイスクールの生徒は元気に出航したいと思いますっ。
一色・百名:はいっ!
小野田:(笑)。みなさん、冬の寒さを吹き飛ばす生きている力強さ、僕らの熱さを舞台上からドカーン!と感じてくださいね。あ、小野田龍之介は東京公演のみです! そちらもチャンスを逃さないよう(笑)、お待ちしております。
一色洋平、小野田龍之介、百名ヒロキ
取材・文=横澤由香 撮影=ジョニー寺坂

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