黒谷友香「もう年齢は気にしていない
」~書き下ろし新作舞台『あの子より
、私。』で理想の母役を主演

あらゆる世界の成功者が別荘を構えるという人気エリアの“別荘見学会”を舞台に、こじらせ女子たちが繰り広げるバトルを描いた書き下ろしの新作舞台『あの子より、私。』が2022年1月15日(土)からよみうり大手町ホールほかで開幕する。
本作の主人公で、絵に描いたような理想的な家族の母親・兎谷夕美(とがい・ゆうみ)を演じるのは、黒谷友香。2021年8月公開の映画『祈りー幻に長崎を想う刻(とき)ー』で主演を務めるほか、数々のドラマ、CM、舞台などマルチな活躍を見せている黒谷に、舞台の魅力や“あの子より、私”と思う瞬間があるのか、聞いた。
ーー本作への出演の決め手は?
もともと、(本作で作・演出を担当する)岸本(鮎佳)さんの作品を見ていて、すごく面白いなと感じていました。テレビドラマの『だから私はメイクする』を監督されていた回も見ましたし、GINGERの連載も読んでいました。
それで、今回お声をかけていただきまして、私自身、才能ある岸本さんとご一緒することに興味があり、出演を決めました。
黒谷友香
ーーもともと岸本さんの作品をご覧になっていたのですね。
はい。岸本さんの作品は「見ていたら、いつの間にかこんな気持ちにさせられていた!」という印象です(笑)。どう繋がって、最後はどこに行くのかが見えないシチュエーションが多くて。見入って、自分の感情に集中していたら、「こんな展開に!」と思わされる。今回の舞台もきっとそういう風になるんじゃないかな。きっと皆様に面白いものがお見せできるのではないかなと私自身も期待しています。
ーーすでに本作のプロットはお読みになられたとのこと。別荘見学会を舞台に繰り広げられるお話ということで、妙にリアリティを感じたのですが、黒谷さんとしてはどうですか?
リアルに感じました?(笑)。きっと人によってリアルに感じられるところと、あまり共感できないところといろいろ出てくると思うんですけどね。「完璧すぎて嫌」と思っていたけれど、最後は可愛げがあるように見えたり、「なんか嫌味を感じる」と思っていても、共感できる部分もあったりするのかな。私の演じる役が(脚本上)どうなるのか、楽しみです。
ーー黒谷さんご自身の理想の家族像は?
仲が良くて、休みの日はみんなでどこかに出かけて、誕生日会や記念日はみんなで祝う家族、かな。
ーーそういう家族に憧れますか?
うーん、まぁね。でも、今回の舞台のように、そこにちょっと裏がありそうな気もする(笑)。確かに理想的ではあるけど、誰かが相当頑張っていたり、我慢していたりするかもしれないなと思います。
黒谷友香
ーー黒谷さんにとって、家族とはどんな存在ですか?
大切ですね。私の家族は、高度成長期に頑張ってきた、典型的な普通の家族。親も年をとっていくし、元気なうちに、舞台は観に来てもらいたいかな。(出身地である)大阪公演もあるので。
ーー黒谷さんご自身、タイトルのように「あの子より、私」と感じられることがあるんですか?
車の運転とか(笑)。あの子の方がうまいなと思うときはありますよ。ほら、みんなが見ているところで、あんまりうまく縦列駐車ができなかったりするじゃないですか(笑)。でも、私はあまり嫉妬を根に持つタイプではなくて、さらっとしていたいタイプです。
ーー過去のインタビュー記事では「人生を誰かと比べた時点で負け」とも語られています。D.I.Yにはまっていたり、他人の物差しで生きていない感じがします。
D.I.Yをやったら、ゼロから物を作ることをすごく学べたんです。例えば、地面の土しかない空間があったら、どうガーデンをデザインしようか考えたり、どうレンガを敷いて道を作ろうか考えたり。素材も道具も全部、自分で、ゼロから考えて、調達する。そういう風に自分でクリエイトしていくことがすごく楽しくて。
人と比べることって、自分が自分の力ではできないことだから、比べちゃうわけでしょう? 私の場合、できなかったら、何か別の方法でもいいから、なんとか自分で作り上げてみる。「いいな、あの子は」とネガティブになったり、卑屈に思ったりするのではなくて、逆にその気持ちをバネにして、違う形で自分ができることをやろうと考えるように意識しています。
黒谷友香
ーーそういう黒谷さんご自身とは、ある意味、正反対のキャラクターを演じるわけですよね?
まだ脚本が仕上がっていないので、正反対のキャラクターかどうか分からないです。プロットの段階で、私と違うなと思うのは、(演じる夕美役が)虫を触れないこと。私、虫は触れるので(笑)。
ーー現時点で夕美役については、どのように受け止めてらっしゃいますか?
プロット上では、美容家で、ファーム事業をやっていて、みんなから見たらすごく幸せな女性。だけれど、完璧な人なんていないから、その裏をどういう風に演じたら面白くなるのかなと今思っています。自分なりの解釈があっても、稽古でまたいろいろ変わっていくでしょうしね。それもまた楽しみです。
ーー今回は共演者のほとんどが40代。役の設定も40代です。
20代、30代って、自分のことで精一杯な年代じゃないですか。でも40代は、人生の折り返しでもあるし、ちょっと周りを見る余裕が出てくると思うんです。だからこそ「あの子より、私」と思うんじゃないかな。きっとこの舞台の中でも、登場人物たちはいろいろな人と話をして、「初心に戻って頑張ろう」と思うこともあるだろうし、「ああはなりたくない」と思うかもしれない。観ているお客さんも、きっと誰かの顔が浮かんで「あの子、どうしているかな?」と思ったりもするかもしれませんよね。
ほとんどの共演者のみなさんが40代で、女性というのは、チーム感が出そう。やっぱり同世代だからこそ話せることがあると思うし、何かを共有できるのはいいですよね。同じような年代を生きてきたから、時代感みたいなのは共有できている。暗黙の了解の中に「分かる」ことがある。年齢にギャップあると、「え、知らないです」とか「え、誰ですか?」とか、常識だと思っていることが通用しなかったりするので、同世代は同世代でいいチーム感を出せたらいいなと思います。
ーーちなみにこの黒谷さんご自身、年齢というものを意識されるんですか?
39歳から40歳になったときはそこまで感じなかったけど、29歳から30歳になったときはすごく年齢を感じました。みんなに「三十路」と言われる。まだ自分は追いついていないのに、勝手に三十路呼ばわりされましたね。
黒谷友香
ーーでも、そこから余裕が出てきた。
やっぱり人生で、いろいろ経験していますから(笑)。今はもう年齢はあんまり気にしないです。例えば、自分が綺麗でいたいと思ったら、それだけでも老け込むことはスピードが緩まるような気がする。意識が大事なのかなと思うんです。若くいるための習慣とか高級化粧品とかいろいろお役立ちメソッドはありますが、一番大切なのは、心の持ちよう。それが顔とか姿勢とかに出てくると思います。
ーー黒谷さんは今年3月の『画狂人 北斎』で久しぶりの舞台出演をされました。それまでいろいろな演出家との出会いがあったと思いますが、どんな薫陶を受けてこられたのですか?
私の初舞台は、地球ゴージャスの第1回公演(『瓶詰の地獄 ~いつまでもたえることなくともだちでいよう~』1995年)。少人数のキャストの中の一人で、いきなり50回公演だったんです。(主宰の)岸谷(五朗)さんと寺脇(康文)さんには、本当にありがとうございます、と感謝するばかりです。デビュー当時を見てくれたので、いろいろなことを教えていただいたし、キャストとして選んでくださったことがすごくありがたかった。
そのあとは、つか(こうへい)先生。一緒にお仕事をした期間は、すごく濃密でしたね。人生で何回あるか分からないぐらいの刺激的な時間でした。そして、(宮本)亞門さんとの出会いも心に残っています。ヒントをたくさんくださって、いろいろなことを教えてくださったなと感じます。
ーー改めて本作を楽しみにされている皆様に一言お願いします!
コロナ禍が今はだいぶ落ち着いてきていますが、このまま収束に向かって、無事に開幕できたらと思います。やはり舞台の醍醐味は、生ということ。映像作品もそれはそれで面白さがあるんですけど、お客様には生身の体から発せられるものを感じ取っていただきたい。こんな時期だからこそ、生の舞台をやらせていただく意味はあるのかなと思います。劇場でお待ちしております。
黒谷友香
取材・文=五月女菜穂  撮影=中田智章

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