テキサス州オースティンの
音楽シーンを進化させた
ジェリー・ジェフ・ウォーカーの
ライヴアルバム
『ビバ! テルリングァ』

本作『ビバ! テルリングァ』について

本作『ビバ! テルリングァ』は、ようやくジェリー・ジェフが目指す音楽にたどり着いた初のアルバムとなった。録音場所は冒頭で述べたメモリアルコンサートの会場にもなったルッケンバック。

ルッケンバックという小さな村はジェリー・ジェフが愛してやまない作家のホンド・クロウチ(1976年逝去)が買い取って暮らしており、このアルバムの内ジャケットにはホンドとルッケンバックの内部が写っている(どう見ても、掘っ立て小屋であるが…)。本作のおかげで、現在もルッケンバックは観光地になっており、ジェリー・ジェフの各種グッズが販売され、毎晩のようにライヴも行なわれている。

アルバムの表ジャケットには「Live Recording Concert Luckenbach, Texas」と書かれている。収録曲9曲のうち7曲は無観客で、残りは観客を入れた変則ライヴとなっていて(おそらく観客を入れた時の録音状態が悪く、後日無観客で録り直したものと思われる)、バックを務めるロスト・ゴンゾ・バンドの名前が初めて記されたアルバムである。

収められているのはジェリー・ジェフのオリジナルのほか、ガイ・クラークの「Desperados Waiting For The Train」、マイケル・マーフィーの「Backsliders Wine」、レイ・ワイリー・ハバードの「Up Against The Wall Red Neck Mother」、ゲイリー・P・ナンの「London Homesick Blues」といったオースティンを代表するシンガーソングライターの名曲ばかりであり、まさに和気藹々とした雰囲気が伝わってくるような臨場感が味わえる。サウンドはジェリー・ジェフならではのカントリーロック・テイストであり、ナッシュビル産の端正なカントリーとは真逆で、オースティンならではの瑞々しさがある。

 本作は紛れもない名盤だが、音楽が新しすぎたのか、一般的なヒットはしていない。ただ、音楽業界からは認められ、このアルバムに名が記されたガイ・クラークをはじめ、レイ・ワイリー・ハバード、ロスト・ゴンゾ・バンドらがのちにアルバムデビューをすることになる。また、ゲイリー・P・ナンの「London Homesick Blues」は、76年に始まったTV番組『オースティン・シティ・リミッツ』で27年もの間テーマ曲として使われていて、本作がオースティンの音楽シーンに与えた衝撃はかなり大きかったと思われる。

この後、本作をも上回る出来の『ライディン・ハイ』(’75)をリリース、以降も良作を制作し続けた。特に70年代の作品はどれも良い。オースティン産のカントリーロック・サウンドを生み出したジェリー・ジェフは、ニューヨーク生まれであるにもかかわらず、テキサス音楽の誇りとして現在まで語り継がれている。

TEXT:河崎直人

アルバム『Viva Terlingua』1973年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. Gettin' By
    • 2. Desperados Waiting For The Train
    • 3. Sangria Wine
    • 4. Little Bird
    • 5. Get It Out
    • 6. Up Against The Wall Red Neck
    • 7. Backsliders Wine
    • 8. Wheel
    • 9. London Homesick Blues
『Viva Terlingua』(’73)/Jerry Jeff Walker

OKMusic編集部

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