【牧野由依 インタビュー】
デモを初めて聴いた時に
“おかえり”と
言ってもらえた気がしました
このシングルのキーワードは
“再会”だなと
カップリングには16年前に歌ったオープニングテーマの最新バージョン「ウンディーネ〜2021 edizione〜」が収録されていますが、オケの編成がかなり変わっているのに原曲の持つ雰囲気はそのままのような印象でした。
テンポが少し速くなっているのと、『ARIA』の劇伴をずっと担当してきたChoro Clubの方々も演奏に参加してくださって、シリーズのEDに相応しいものになっています。
新たにレコーディングされてどんな気持ちでしたか?
私の音楽活動も含めて結構な回数を歌ってきている曲で、その中でいろいろなものを身にまといながら今日まできている感じがするのですが、聴いた方には“そうそう、「ウンディーネ」ってこうだよね!”と感じてほしいと思いました。あとは、年月を経て深みが増したと思ってもらえたらいいなって。でも、完成形を想像して“こう思ってもらえたらいいなぁ”というものがイメージとしてたくさんあって、そうやっていろいろなことを考えていたら、自分ががんじがらめになっちゃったので、途中で考えることをやめて、最終的には好きに歌わせていただきました(笑)。
(笑)。瑞々しさや透明感は変わらず…という印象でしたよ。
ありがとうございます。当時の音源を自分で聴くと、わりと儚い感じとか無垢な感じがちょっとあったと思ったんですけど、その上で今回歌ったものを聴いてみると、澄んでいるところは澄んでいるんですけど、ちょっとだけ芯の強さが見えるものになっていて。そういう意味では、『ARIA』シリーズの主人公のみなさんたちが成長しているところに、自分も合わせることができたのかなと振り返ってみて思いましたね。
そして、YUI盤にはピアノの弾き語り楽曲「きみの鳥は歌える」も収録されていて。この曲はどういったイメージで制作を?
せっかくYUI盤に収録するという場を与えてもらったので、自分が持てるもので作りたいと思って、ピアノの弾き語りというところから話がスタートしました。それで何曲か候補があった中で、この曲を歌ってみたいと思って。歌詞は今までご一緒させていただいたことがなかったんですけど、候補として挙げていただいた作家さんの中に岩里祐穂さんのお名前があったので、こんな贅沢な選択肢ってあるのか!?と思って(笑)、“ぜひ岩里さんにお願いしたいです!”と。
どういうテーマでお願いをしたのですか?
歌詞のテーマの話をした時に、私自身が『ARIA』という作品と再会できたことや、時間を経て再び「ウンディーネ」を歌わせてもらったところから、このシングルのキーワードは“再会”だなと。ざっくりとですけど、そういうことを歌えたらいいなと思ってご提案させていただきました。
同じ再会でも、パリの街角での再会のような感じですね。
そうですね。異国情緒があって、そこがこの曲を選ばせていただいたポイントでもあります。
歌ってみていかがでしたか?
歌詞の雰囲気もかなり大人というか、実年齢に近い雰囲気で書いていただいていますし、歌い方としても一本一本しっかり筋が通った感じでアプローチしていて。曲調と歌詞とアプローチを総合的にとらえて、自分の中で新しい扉を開いた曲になったと思っています。
ずっと牧野さんの歌を聴かれてきたファンの人は“おっ、この曲は違うぞ!”となるような?
鋭い方にはそう思っていただけるのではないかと思います!
ピアノアレンジは川田瑠夏さんですが、牧野さんからもアイディアを出したり?
“ジャズっぽい響きがあると、この曲の雰囲気に合うかも!”と考えたのですが、全体的にジャズになるとまた雰囲気が固まってしまうので、エッセンスとしてそういう響きが欲しいとお願いしました。川田さんには楽曲提供していただいたこともあるので、そこでもまた再会がありましたね。
最後にまた『ARIA』の話に戻りますが、『ARIA The BENEDIZIONE』をご覧になった感想は?
先日、試写会に行ったのですが、すごく観たいのにすごく観たくなかったんです。終わっちゃうから観たくないという気持ちがあって。これを観たらもう次はないと思ったら、とても悲しくなりました。
終わりを実感したくないと。
したくないです! 作品を観ると、“このキャラクターたちはこのまま当たり前の奇跡をこれからも歩み続けるんだろうな”と思って、そこに希望がある感じがして。“またいつか続きが観たい!”と思ってしまいました。
では、“エスペーロ”は“希望”という意味なので、牧野さんとしての今後の希望とか展望はありますか?
これは希望というか夢に近い話なんですけど、『ARIA』を通していろいろな曲を歌わせていただいてきて、この『ARIA』の世界観の中で歌ってみたい、聴いてもらいたいという気持ちが昔からずっとあるんですよ。『ARIA』の舞台であるネオ・ヴェネツィアという街のモチーフとなっているヴェネツィアで、空気を感じながら『ARIA』の音楽を楽しむ…みたいなことができたらいいなと思っています。
ゴンドラに乗って歌うんでしょうね。
そうなったら体幹を鍛えておかないといけないですね。で、自分でも漕いじゃったりして(笑)。
取材:榑林史章