【Dizzy Sunfist インタビュー】
いろいろなことに挑戦しても
ちゃんとDizzy節になっている
コロナ禍の中でも活動を止めなかったDizzy Sunfistがリリースする3rdフルアルバム『DIZZYLAND -To Infinity & Beyond-』。そこに詰まった彼らのメロディックパンクは、歌メロをさらに磨き上げることで格段にスケールアップしている。あやぺた(Vo&Gu)とmoAi(Dr&Cho)に、そんな今作の制作を振り返ってもらった。
自分たちの過去曲が
自分たちを成長させてくれた
『DIZZYLAND -To Infinity & Beyond-』、とても聴き応えがありました。Dizzy Sunfistの格段のスケールアップを感じたのですが、おふたりはどんなアルバムになったという手応えがありますか?
あやぺた
暴れることもできるし、しっかり聴くこともできるし。
moAi
あやぺたが言うとおり、もちろん暴れられると思うんですけど、僕個人は今まで以上に聴けるアルバムになったと思っています。音源そのもののクオリティーがグッと上がった印象がありますね。
アルバムを作るにあたり、聴けるものにしようというテーマもあったのですか?
あやぺた
曲を録っていったら、そういうふうになったんですよ。
moAi
そうですね。歌を録る時にはそういう意識はありましたけど、曲を作る時はそんなに考えていませんでした。
あやぺた
いわゆる日本語英語で満足していた時もあったんですけど、ちゃんとした発音で英語の歌詞を歌いたいと思ったんです。まだまだかもしれないですけど、自分なりに練習して、理想に近づけるように頑張りました。
今回、楽曲ももちろんなのですが、あやぺたさんがヴォーカリストとして懐が深くなったというか、器が大きくなったというか。メロディックパンクだからエネルギッシュな勢いも感じさせつつ、余裕と言っていいのか分からないですけど、歌に大きなものを感じました。
あやぺた
今までって“とりあえずカッコ良く歌えばええやん”みたいに考えていたんですけど、今回はそのカッコ良さをさらに突き詰めようと思ったところはあったかもしれないです。メロディーをもっと大事にしたら、よりカッコ良く聴こえるんじゃないかって。ガヤガヤと歌って、たまにメロディーラインを無視するみたいな歌い方がカッコ良いと思っていた時期もありましたけど、ちゃんとメロディーを歌った上で、カッコ良い歌を歌いたいという考えに変わってきたんです。今回はそれができたと思います。
3rdシングルの「ANDY」(2021年5月発表)のインタビューで、あやぺたさんが“今度のアルバムでは新しい感じが出ている”とおっしゃっていたとおり、ひと皮剥けた印象があったのですが、どんなところが新しいと感じたのですか?
あやぺた
“新しい”というよりは“更新している”と言ったほうが正しいと思います。『DREAMS NEVER END』(2018年1月発表)っていう前のアルバムが、うちら的にめっちゃいいと思っているから、それを超えなきゃいけないと考えていたんです。それが結構プレッシャーでもあったんですけど、超えるためには曲調、歌詞、メロディー、どれも前のアルバムに負けたらあかんと思って、今までになかったような曲も含め、いろいろなことを詰め込んだんですよ。例えばGARLICBOYSのPETAさんとLARRYさんと共演した「N.i.n.j.a feat PETA&LARRY(GARLICBOYS)」だったり、いろいろなことに挑戦しながらポジティブに作れたところがひと皮剥けた印象につながったんじゃないかと思います。
moAi
そんなふうにいろいろなことに挑戦してもちゃんとDizzy節になっている…そういう意味では、更新なのかなと僕も思います。
『DREAMS NEVER END』の時は、それ以前まで使っていなかったコードを使ったり、意識的に曲調の幅を広げたりしていたと思うのですが、今回はDizzy節が出ているとおっしゃったように、あえて何か新しいことをやっているわけではないにもかかわらず、ひと皮剥けた印象があるところにバンドの成長が感じられます。
あやぺた
曲が被らないように作っていったことが、結果的に新しいものになったということだと思います。
moAi
曲を作りながら“過去にあったあの曲に似ているから面白くない。この曲だったら過去のあの曲でいいよね”と思うことが度々あって、その意味では自分たちの過去曲が自分たちを成長させてくれたのかもしれないです。コロナ禍の中で人と会ったり対バンの機会が極端に減ったりしたので、外からの刺激というよりは自分たちの過去曲に対して、“これを超えてやろう!”という意識がかなり高まっていたんですよ。
曲を作りながら“こういう曲は過去にあったぞ”と思ったら?
あやぺた
ボツにします。今回、めっちゃボツにしたんですよ。
moAi
ネタだけのものまで含めたら、50曲くらい作ったんじゃないかな?
今回、序盤と言える1曲目の「The Proof」から4曲目の「Never Again (Album Ver.)」までDizzyらしい曲が並んでいるのですが、哀愁が増した歌メロにグイグイと引き込まれました。
あやぺた
最初、哀愁が増しすぎて悩んだんですよ。ポップな曲が全然ないって。楽しい曲は2曲目の「Our House」とシングルで出した「Andy」ぐらい。それ以外は聴かせる曲ばかりで、今回のアルバムは決してポップではないんですよね。
哀愁が増しているところが個人的にはすごく好きですよ。でも、なぜそんなに哀愁が増したのでしょうか?
moAi
もともとそんなに根明じゃないんです(笑)。僕は確実にそうなんですけど、あやぺたが持ってくる曲も実はしっとり系が多いんですよ。1stシングル「THE DREAM IS NOT DEAD」(2017年4月発表)に入っている「No One Knows」という曲からすでに片鱗はあって、それぐらいから底抜けに明るい曲は意識しないと作れないんですけど、“今回は出てきたものをそのまま作ってみよう”ってやったから、ノスタルジックな感じがあふれてしまいましたね。そこで原点回帰じゃないですけど、“じゃあ、メロディックパンクを作ろう”となった時、「Our House」ができて、それで別の色味がついて、ノスタルジックな曲はノスタルジックな曲で、メロディックパンクはメロディックパンクでっていうメリハリがつきましたね。
あやぺた
でも、世の中に根明の人って意外と少ないと思うんですよ(笑)。
moAi
みんな無理しているのかもしれないね(笑)。
日本人って結局、哀愁あるものが好きですからね。そういう意味では、今回のアルバムはこれまでよりも幅広いところに届くような気がします。でも、そんなことは意識していないんですよね?
あやぺた
全然意識してないです。出てきたものがこれだったんです。
moAi
スタジオで歌とかコーラスとか練習する時は曲のテンポを落としてやるんですけど、めっちゃ“哀愁やなぁ”ってなりますね。“こんなに切なくていいんか?”って(笑)。