藤田麻衣子

藤田麻衣子

【藤田麻衣子 インタビュー】
原点に帰って
“恋愛”のアルバムを作りたかった

最後に希望が見える曲で
終わるアルバムにしたかった

デュエット曲が1曲目と3曲目に入っていますが、アルバム全体の曲順や流れはどういうふうに決めていきましたか?

原点に帰って作りたいと思ったので、インディーズで最初に出した『会いたい』(2007年7月発表)というアルバムがあるんですけど、そういう雰囲気にしたい考えもありました。最初にアルバムを作ったのは20代の頃なんですけど、それ以前の10代の頃はいろんなアルバムを聴いている側で、特にMr.Childrenさんが好きだったんですね。ミスチルさんのアルバムのイメージとして2曲目は疾走感のある曲が多いなって。なので、2曲目でテンションが上がるのが気持ち良いと思ったから「人魚姫」を入れました。私は他のアーティストの方よりはバラードの比率が大きいと思うんですけど、バラード曲が多いしっとりめのアルバムというよりは、流れで心地良く聴けるものにしようと思いました。

「きみのあした」は今年1月に配信リリースした曲ですが、この曲も前半に入れたいという気持ちでしたか?

はい。今回のアルバムリリースのタイミングに合わせて、名古屋市にある高校の合唱部の子たちと合唱バージョンのMVも制作しましたし。昨年から歌い続けている大事な曲なので、これも前半で聴いてもらいたいなって。頭4曲を聴いてもらっただけでも、今回のアルバムはより気合が入っていると感じてもらえるんじゃないかと思いますね(笑)。

そして中盤、折り返しとなる5曲目に「anniversary」、6曲目に「いつか」を入れたのは?

“忘れられない人”というテーマに当てはまる曲を散りばめたかったという想いがあったので、「anniversary」と「いつか」、後半に収録した「雨」も忘れられない人が出てくる歌だから、ちょっと違うストーリーの歌が出てきてもそれらがあることによってグッと引き戻してくれる感じがいいなと思って中盤に持ってきました。

「臆病な恋の歌」は一年前に配信リリースされた曲で、今回はアルバムバージョンでの収録となりましたね。

配信の時はピアノの弾き語りだったから今回はしっかりとサウンドアレンジしてもらって、全然違う雰囲気の曲になったし、聴きやすくなったかなって。最初はピアノで作って、そのままレコーディングしたものだったから、配信リリースはしているもののデモテープを聴いてもらっているような感覚でもあったんです。デモテープを配信したわけじゃないけど、丸裸な感じで聴いてもらったので、今回でやっと完成した感じがありますね。バンドアレンジになったもので歌っているから、“歌いやすいポップスになったな”という印象もありますね。

後半に配置されている「プレアデス」と「雨」については?

「プレアデス」は歌詞に“冬の夜空”とか出てくるように、この時期に出すアルバムだから季節感を出すために冬の曲も入れたいと思って収録した曲です。「臆病な恋の歌」もそうですけど、この曲も恋の始まりのような甘酸っぱい曲で、昔からこういうタイプの曲を書くのが好きなんですよ。現実ではそういう“恋が始まる”っていう瞬間って短いじゃないですか。でも、一番美味しいところだと思うんです。ドラマを観ていても、そういう場面が大好物なので(笑)、そんな私の大好物な瞬間を切り取った歌になっています。昔から私の歌を聴いてくださってる方が聴いたら、“藤田麻衣子って昔からこういう歌を歌ってるよね”と楽しんでくれるんじゃないかと思いますね。

「雨」は最後のフレーズでちょっとホッとする気持ちになれる曲かなって思いました。

ストーリー的には“忘れようと思っていて、もう会うはずのない人だけど偶然会ってしまった。自分は気づいているけど、向こうは気づいてない”っていう、ドラマにありそうな感じですよね(笑)。でも、よく通る場所があって、実際に会うわけじゃないけど昔つき合った人がその近くに住んでいて、“ここを歩いてたら偶然会っちゃうこともあるだろうな”と通るたびに考えたりしていて、そんな時にこの曲のストーリーが思い浮かびました。もし偶然会えたら縁を感じますよね。実際は会えませんでしたけど(笑)。そんなリアルな部分も入っているので、景色を思い浮かべやすい曲だと思います。

最後は「それでも朝は来る」は希望が感じられる曲になっていて、最後に相応しい曲だなと思いました。

そうですね。「きみのあした」か「それでも朝は来る」で締めようと思っていました。私のライヴって「あなたは幸せになる」で終わることが多いんですね。メジャーデビュー前に日本武道館(2013年10月11日に開催)でライヴをした時も、そういう感じだったんですけど、今のディレクターがその公演を観にきてくれていて、“失恋の曲とか恋愛の曲にお客さんも入り込んで、最後は「あなたは幸せになる」という希望が見える曲によって、みんなが泣いてすっきりして終わるっていう。これが藤田麻衣子なのかっていうのが印象に残ってる”といつも言ってくれるんです。なので、今回は恋愛の曲のアルバムを作りたいということで、ライヴと同じように最後に希望が見える曲で終わるにしようと思ったんです。

10曲それぞれが収まるべく場所に収まってる感じがしますね。では、赤い糸で巻かれているアルバムジャケットのテーマは?

私の曲を聴いてくれている人は部屋で体育座りをして聴いているイメージがあって(笑)、タイトルが“忘れられない人”で過去に縛られているイメージがあるので、体育座りをしながら縛られている、巻かれているというのを表現しました。

なるほど(笑)。昨年から15周年イヤーを駆け抜けてきて、今回のアルバムがそれを締め括る作品になりますが、今後やってみたいこともいろいろ見えてきたんじゃないですか?

やりたいことはいろいろあるんですけど、まだ秘密です(笑)。3月に弾き語りベストを出して、9月のオーチャードホールを含めてライヴもやって、今回のアルバムも完成させたので、自分の中では一回フラットな気持ちになっています。だから、“次はこんなこともやってみたい!”っていうワクワクした気持ちが生まれています。今後、徐々に出していきたいと思うので楽しみにしていてください。

取材:田中隆信

アルバム『忘れられない人』2021年10月27日発売 Vicor Records
    • VICL-65579
    • ¥3,300(税込)
藤田麻衣子 プロフィール

フジタマイコ:2006年9月、シングル「恋に落ちて」でCDデビュー。全ての楽曲で自らが作詞作曲を手がけており、恋愛ソング・応援ソングがTVCMをはじめとした多くのタイアップに起用されている。近年はテレビ番組『はじめてのおつかい』のオリジナル挿入歌にも楽曲が起用され話題に。アーティストへの楽曲提供も数々行なっている。透き通った歌声、歌詞への共感、ドラマチックなメロディーで、ライヴ会場では涙する人も多い。ライヴに訪れる約7割が女性ファンと、特に同性から高い支持を得ている。藤田麻衣子 オフィシャルHP

「君に会いたくなる夜は
(duet with クリス・ハート)」MV

「きみのあした 〜合唱ver.〜」MV

「きみのあした」MV

OKMusic編集部

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