L→R KOHKI(Gu)、TOSHI-LOW(Vo)、MAKOTO(Ba)、RONZI(Dr)

L→R KOHKI(Gu)、TOSHI-LOW(Vo)、MAKOTO(Ba)、RONZI(Dr)

【BRAHMAN インタビュー】
時代と何も関係のない
アーティストなんていないと思う

強さや答えを求めるんではなく、
矛盾みたいなものを受け止めていく

そこで言うと「旅路の果て」はさらに進んで、もっと根源的なものを綴っているのではないかと思ったのですが。

考えて自分を鼓舞して“こういう風にしよう”というものが思想や行動になることもあれば、考え抜いた中で“まったく意味なんて分かんねぇよ”“やりてぇからやってるだけじゃん”ってこともある。“生きている意味って何ですか?”と子供に訊かれたら、俺は答えられない。“生きてるから生きてるじゃん”ってことになっちゃう。でも、その問いを止めれないものが自分の中にあって。もうその問いを問いかけれない友人だったり…昨日まで現世にいた者が、今は俺の中の思い出にしかいなくなってしまうこともあるわけで。そういう人たちの残されたもの…例えば、映像でもいいし、スマホに入ってる一枚の写真でもいいし、そういうものに“あなたの人生はどうだったの?”と問うというか…そういうところが矛盾なくある、自分の中には。答えを言いきろうとする自分と、“答えなんてまったくない”ということ自体が答えになっているんじゃないかというものと。それをずっと繰り返してるんだなって。

了解です。今回の「Slow Dance」は“BRAHMAN の新たな世界”とも“BRAHMAN の新たな扉”とも言われていますね。それは今、おっしゃられた、その相反する要素をはっきりと抱えたことと関連がありますか?

相反することに関しては、自分は30代に突入した頃から反していて、“ここまででいい”と思っていた人生が続いている…それは例えば、自分が家族を持つことだったり、思い出にしかいなくなった友達よりも長生きしていることだったり、いわゆる青年期が終わるまででしか想定してなかったこととの辻褄を合わせることに30代は苦しんだというか、“俺は何のためにやってるんだ?”となった。

“DON'T TRUST OVER THIRTY”という考えが、TOSHI-LOWさんにはあったんですか?

もちろんそれもあるよ。それもあるし、音楽でお金を稼いでいるということに関してすごく後ろめたい気持ちが大きかった部分もあるし。それがどういうふうに変化していたかというと、今はもうそこから何周もしてるから、答えがないことに対しても自信がある。

さっき言われた“答えがない”という答えがあるということですか?

そう。でも、“答えがない”と言いきってるんじゃなくて、“こう考えて、こう考えて、さらにこう考えたら答えはなくない?”という答え方だから、納得してもらえる答えのなさというか。その都度その都度ずっと考えるし、ありがたいことに社会としても、自分の進む速度としても、いろんなことが起きてるので、表現やバンドを振り返ってみると、それが年代とハマっている。“これがあと10年遅かったら”と思うと自分の中では結構ゾッとしていて。30代で自分の矛盾しているところを受け止められなくて、そこに震災がなかったら、たぶん耐えられなかったと思う。バンドを止めてしまっていたんじゃないかな? 今、40代になって、震災後の表現を10年間やってきたけど、それ以外で“自分がもっと音楽的に根源に思っていることは何なのか?”という問いを、コロナ禍の中でまた考えているという。誰もが自分の中でタームってあって、10年周期くらいで必ず起こると思うし、考えることから自分は逃げられない。だから、50歳前に“音楽は自分にとって何なのか?”ということを考えられて良かったなと。肉弾戦で進んでいって、折れたらおしまいみたいな…もちろんそこでの切なさ、儚さをBRAHMANは持ち得ていると思ってるし、半分はそれをやってみたいというところもあるんだけど、もう半分では音楽的に鳴らしてみたいものであったり、詩的に言いたいものだったりもあるわけで。それが「Slow Dance」のラインができるというのは、いつかコロナ禍が終わったら、これまでの肉弾戦のライヴをやる自分たちと、大きなところやホールを使ってやれる自分たちが出てくる…自分たちの人生が折り返し期を過ぎたあとにもう一本の柱ができるというか。それはすごい楽しみな部分ではあるよ。

実際、このあとはホールツアーを予定しているんですよね?

うん。で、そこで終わりじゃなくて。“コロナ禍が終わったら、ホールでのライヴも終わり”ではなく、そこで新たな自分たちの動き方ができるかもしれないという。

そういうスタイルをBRAHMAN以外のユニットではなく、BRAHMANでやれるかもしれないというのは相当に大きいことでしょうね。

そう。これまではOAUとかバンドと切り離してやっていたのが、BRAHMANとしてできる。しかも、同じメンバーで。ソロやセッションで、自分の頭の裏側にあることをやる人たちはいると思うんだけど、そうではなくて、同じ人たちとできるというのは、俺は仲間が好きで大事にしているから、それはすごい嬉しいことなんだよね。

過去、それができなくて消えていったバンドはいっぱいいたと思います。それができるBRAHMANはすごく幸せなバンドなんでしょうね。

うん。バンドを続けていることだけで、こんなに幸せなことはなくて。結局、『Tour 2021 -Slow Dance-』でやった曲たちというのは、「Slow Dance」と「旅路の果て」は新しいけど、それ以外の曲は10年、20年やっているもので。でも、それが今回のツアー中に、今までゆっくりな曲だと思っていた側面以上のものを感じてもらえるということは、自分たちの活動や曲の耐久性…それは時代に流されないとか、ファッション性ばっかりを求めていなかったとか、そういうものの答えにもなってるし、やっぱり自信にもなるよね。今まではどちらかと言ったら“いや、ゆっくりの曲なんか聴きたくねぇよ! ライヴの箸休めにするわ”という感じに思われていたもの、今まで副菜で作っていたと思われていたものをドン!とメインで出せるというのは、これは自分たちにとってでかい。

今のお話から“BRAHMAN、新章の幕開け”というのはよく分かりました。

もう何章もしてるんだけどね(笑)。第30章くらいだから、“もうそろそろ終わろうよ”という感じ。

(笑)。まぁ、作品を作る毎に新章突入ではあると思うんですけど、今回は向こう10年、20年を見据えることができたというのは相当に大きいことなんでしょうね。

俺、明日明後日くらいのことと、10年後くらいをどっちも並行で考えるの。2、3日間を生きていくためにすごい必要なことと10年後にやることとが、できるだけ矛盾しないようにしようと。例えば、自分の目の前に食べ物がないのに、友達の前にはある。2、3日後のことを考えたら、友達の食べ物を盗っちゃってもいいわけじゃない。でも、その後10年間生きていくなら、それをやったら恥ずかしいし、そのコミュニティーにはもういられなくなる。そう思うと“何を選ぶか?”ってなってくると思うんだよね。昔はそれを矛盾と考えてしまっていて。“俺は未来を生きていくことを考えながら、死ぬことも考えている”ってことが、自分の中で“汚ったねぇ大人になっちまったな”と思っていた。“あと2、3日だけ生きていけばいいじゃん”って。でも、そんな刹那に生きていく快楽主義じゃダメだということに気づいてしまって。バンドに対してもそう思ってたんだよね。なので、楽曲にそれが詰まっているという。

それは分かります。震災前に作ったという「霹靂」が震災のことを感じさせ、今もまたコロナ禍を連想させるというのは、そこに嘘がなかったからであって、だからこそいつの時代にも響くという。

自分にとって大事な人がいなくなるというのは、ずっと悲しいことだし、ずっと“何で?”と思うことであって、誰ひとりとして解決していないし、それを解決できないから世界中に神様がいるわけで…教えが必要なんだと思うんだよ。そういったお知恵も拝借しながら、そこに依存しないで、俺は自分の力で答えを出してみたいと思っているので。だから、結局“生きていく”という戦いはまだ続くんだろうし、その都度その都度“悲しいなぁ”と思うこともあるんだろうなって。ということは、そこにある矛盾みたいなものを受け止めていかないと。

お話をうかがって今回の「Slow Dance」はライヴ映像がセットになっている意味がよく分かりましたし、ライヴが必要不可欠であったことも理解しました。

ツアーは“Slow Dance”というタイトルから決まったからね(笑)。で、“このタイトルで新曲があったほうがいいんじゃね?”と言われて、“Slow Dance”だからゆっくりしたバラードチックなものかなと思ったんだけど、そう思ったら腹立っちゃってさ。“なんでそんなことに俺が縛られなくちゃいけねぇんだよ! 作りてぇもん作ればいいじゃん!”って考えていったら、もっと沸々とした怒りみたいなもの…それって踊りの根源みたいな部分だから、歌だけじゃなくて…

ビートはかなり原初的というか、本能的に身体を揺らすものになりましたよね。

そう。だから、“揺らしちゃダメ”というライヴの中で、揺れざるを得ない曲を最後に持ってくるというのが、俺の性格の悪いところだと思う(笑)。

いやいや(笑)。でも、その矛盾を抱えるのがアーティストでしょうから。

こんなクソみたい社会だけど、俺らみたいなのがバンド然としてやっているというのが、反抗であるし、反逆であるし、個々での革命であると思ってる。

取材:帆苅智之

シングル「Slow Dance」2021年9月22日発売 NOFRAMES/TOY’S FACTORY
    • 【初回限定盤A】(CD+2Blu-ray)
    • TFCC-89714〜6
    • ¥6,600(税込)
    • 【初回限定盤B】(CD+2DVD)
    • TFCC-89717〜9
    • ¥5,500(税込)
    • 【通常盤】(CD)
    • TFCC-89720
    • ¥1,320(税込)

ライヴ情報

『Tour -slow DANCE HALL-』
[2021年]
11/13(土) 福岡・福岡国際会議場メインホール
OPEN 17:00 / START 18:00
12/06(月) ⼤阪・オリックス劇場
OPEN 18:00 / START 19:00
12/10(金) 石川・石川県・本多の森ホール
OPEN 18:00 / START 19:00
12/14(火) 愛知・名古屋 日本特殊陶業市民会館フォレストホール
OPEN 18:00 / START 19:00
12/17(金) 岡山・岡山市民会館
OPEN 18:00 / START 19:00
12/19(日) 宮城・仙台サンプラザホール
OPEN 17:00 / START 18:00
12/22(水) 北海道・札幌市教育文化会館大ホール
OPEN 18:00 / START 19:00
[2022年]
1/12(水) 東京・東京 中野サンプラザ
OPEN 18:00 / START 19:00

BRAHMAN プロフィール

ブラフマン:1995年、都内を中心にライヴ活動をスタート。96年に『grope our way』を発表(現在廃盤)。1stアルバム『A MAN OF THE WORLD』がインディーズ史上、異例の60万枚以上のロングセールスを記録。シングル「deep/arrival time」でメジャーデビューを果たす。徹底した激しいライヴスタイルとその存在感は他の追随を許さないバンドとして、熱狂的にオーディエンスやバンドから支持されている。21年Zepp ツアー『Tour 2021 -Slow Dance-』と連動したコンセプチュアルな作品「Slow Dance」を9月22日にリリースする。BRAHMAN オフィシャルHP

「Slow Dance」MV

「 Slow Dance 」LIVE

「Slow Dance」TRAILER MOVIE

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着