L→R HISASHI(Gu)、JIRO(Ba)、TERU(Vo)、TAKURO(Gu)

L→R HISASHI(Gu)、JIRO(Ba)、TERU(Vo)、TAKURO(Gu)

【GLAY インタビュー】
揺るがないリアルというものが、
今回のアルバムには必要な要素だった

民主主義は
完成なんてしないでしょうね、
人間が人間である限りは

何となく理解します(笑)。それでは、アルバムのリード曲「祝祭」についてもうかがいます。リード曲だけあってテーマが凝縮されていると思いますし、ここに至るまで随分と逡巡し、推敲を重ねたことが想像できる内容ですね。

青春の輝き)」の《Freedom only helps you say goodbye.》(自由というものは、あなたがさよならを言うことにだけ手助けする)という、何とも芯を突いた一節に出会った時、“あぁ、今、歌うべきことはこれかもしれない”と思って。諦めてもいなければ、認めるわけでもない。ただ伴走するというか、並走するというか、ただつき合って、なんとなくうまくなだめながら生きるということなのかなっていう。それはこの歌詞からも想像できるような、いろんな民族間の問題もそうだし、民主主義の不完全さもそうだし。過去のインタビューで“民主主義はまだまだ不完全だ”って言ったことがあるんだけど、それこそ民主主義は完成なんてしないでしょうね、人間が人間である限りは。

そこに辿り着いたんですね。民主主義の崩壊といったことはいろんなところで言われ始めています。特に昨年のアメリカ大統領選挙は酷いもので、それが露呈したようなところがありました。

民主主義の活字としてのコンセプトは美しく完璧なものなんじゃないかな? だけど、一個だけ欠落していると思うのは、人間そのものの本質みたいなものを理解している人は歴史上、誰もいない。人間というものを完璧に把握して理解した人というのは。“人にやさしく”という絶対的な正義を掲げたところで、人にはやさしくできない瞬間がある。それと一緒ですよね。みんな、それは分かっているんだと思う。人の命を奪っちゃいけないとか、人の自由を侵しちゃいけないということは。だけど、人は人の生命や財産を奪うに至る。それを止められないし、やめられない。やっぱり人間の本質を理解したところで、変わらないだろうね、きっと。…でも、それは悲しいとか嬉しいという問題ではないという。

そこで悲観も楽観もしていない。「祝祭」の歌詞のポイントはそこですよね。

自分なりにこの短い人生の中で観察してきた結果が、この「祝祭」に含まれているよね。“言葉を少し工夫すれば争いは減るんじゃないか? ゼロになるとは言わないが、そうすれば100ある紛争の1が3日間だけ休戦するんじゃないか?”とかね。ひとつですらなくならないと思う。でも、そういうことを歌にしたいと思ったし、それでいつか祝祭の日を迎えられれば…という。ただ、それはあくまでも俺の望みであり、もうひとりの自分は“でも、自分が生きているうちには無理だろね”みたいなところはある(苦笑)。何度も言うようだけど、人間が掲げる想いなどという、まったくもっておぼろげなものと、揺るがないリアルというものが、今回のアルバムには必要な要素だったという。

先ほど“喜怒哀楽のどこにも属さない感情”といった話も出ましたが、今、おっしゃられたことはそこに通底するかもしれませんね。理想を掲げる自分と、それとは逆に“そうは言ってもそれは実現できない”と思う自分がいて、それは日々揺れ動くし、年代によっても変わってくる。思考は簡単に白黒つけられるものではないという。

その全ての出発が“俺はまだ人間というものをまるで理解していない”ということですよね。完全に理解できる人がいたら、その人が政治などと司るべきだと思うけれども、“こんなに勉強してきた各国のトップの人たちでもそんなものなのかぁ。じゃあ、自分はどのくらい人間の本質を理解していなのかと言えば、自分もまるでしてないなぁ”とかね。でも、それがとっても歌になるというね。“これにメロディーをつけて歌いたいな”って思う。本当にそう思う。

なるほど。そうしたグラデーションのある多層的な思考を歌にすることが自分の本来の役割というか、アーティストとしてやるべきことであろうと。そういうことですね?

“自分は夢を叶えるんだ!”と無我夢中になることはとても美しくて、魅力的だけど、そこに“でも、俺には無理かも…”というのが加わるとブルースになる。世界は素晴らしいと思いながら、それこそ辞書で“悪魔”と引くと、それを一番体現しているのは人間かもしれないというところに至った時に、ブルースになるというかね。今はそういうことを歌いたいと思うんだな。

GLAYの核にあるものが確実に固まってきたという感じなんでしょうね。これまで15枚アルバムを作ってきて、その蓄積があって確実にこの『FREEDOM ONLY』に至った。今、お話をうかがっていて、その印象を強くしました。

GLAYは解散しなかったからこそ、この4人の人間関係の中で進めてきたからこそ、そこに至った。アルバム10枚で止めていたら、あとから振り返った時、“夢を高らかに歌う北海道出身の4人組”みたいなところで終わっていたのかもしれないよ。あえて“芸術”というちょっと恥ずかしい言葉を言うならば、人間の持っているものをアートにまで昇華できたらなって思う。それは20代、30代の時はまったく考えていなかったことだよ。

J-ROCK、J-POPを単なる流行歌だけに留まらせたくないとい想いもありますか?

そう。これはSUGIZOさんと音楽評論家の立川直樹さんとの対談の中でも言ったんだけど、自分も日本の音楽が海外で受けないことを嘆くし、残念だし、悔しいとは思う。だけど、海外から見た日本の音楽があまりにも独自の進化を遂げているのも事実で。海外から来たジャズやロックを日本的に加工することは本当に得意ですよね。フレンチも日本人向けに美味しく加工し、あらゆるものを日本人にフィットさせている。それはロックも一緒で。そこでの日本人の仕事ぶりって、俺はもっと胸を張っていいと思うんですよね。ただ、今は海外では売れないってだけでね。日本独自の進化を遂げて、このまま突き進めていった時、世界にひとつしかない珍しい音楽として花開く時がくるんじゃないかと思うんですよ。決して洋楽に媚びたかたちじゃないものとしてね。でも、それはまだ20年はかかると思っていて。だから、俺たちが今できることというのは、洋楽に寄せて洋楽ファンに受けることじゃなくて。せっかく先人たちがここまで丁寧に育て上げたJ-ROCK、J-POPを自分たちも引き継いで丁寧に磨き上げて、世界中のどのミュージシャンの追随も許さないくらい純度の高いJ-ROCK、J-POPになった時が出番だと思ってます。

ぜひそこまでGLAYに引っ張って行ってほしいと思います。

まぁ、ビジュアル系というものがいろんな揶揄をされながらも、ヨーロッパのあるところでは熱狂的なファンを持っているとか、パーツ、パーツは揃っているんだけれども、まず第一に諦めないで継続しなきゃいけない。音楽だけでなく、エンタメ以外での日本製のものが世界基準になるには、ずっと愚直に突き詰めて、質のいいものを高めていくしかないでしょうね。

かつての日本映画がそうだったでしょうね。黒澤 明、小津安二郎は間違いなくそういう姿勢で作品を作っていたんだと思います。

そういう例を紐解いていって、彼らはそこで何をしていたかというと、当時のアメリカ映画を真似していたわけじゃなく、自分の世界を信じて自分が描きたいものに真っ直ぐ取り込んだ。で、メディアが発達してそれを海外の人が観る機会を得て、それこそジョージ・ルーカスだったり、他の監督さんだったりが、“日本の映画はすごいなぁ”と思ったわけでしょ? だから、悲観はしていないんだけど、時間はかかると思う。…とっても面白いものだと思うけどね、J-ROCK、J-POPって。

取材:帆苅智之

アルバム『FREEDOM ONLY』2021年10月6日発売 LSG/PONY CANYON
    • 【CD+DVD盤】
    • PCCN-00047
    • ¥5,500(税込)
    • 【CD Only盤】
    • PCCN-00048
    • ¥3,300(税込)
    • 【G-DIRECT限定盤】
    • LSGC-0008
    • ¥23,100(税込)

ライヴ情報

『GLAY ARENA TOUR 2021 "FREEDOM ONLY” 前夜祭 〜BAD APPLES(ふぞろいの林檎たち)〜』
10/25(月) 東京・Zepp DiverCity
10/26(火) 東京・Zepp DiverCity

『GLAY ARENA TOUR 2021 “FREEDOM ONLY”』
11/05(金) 大阪・大阪城ホール
11/06(土) 大阪・大阪城ホール
11/20(土) 北海道・北海道立総合体育センター 北海きたえーる
11/21(日) 北海道・北海道立総合体育センター 北海きたえーる
11/27(土) 福岡・マリンメッセ福岡A館
11/28(日) 福岡・マリンメッセ福岡A館
12/04(土) 神奈川・横浜アリーナ
12/05(日) 神奈川・横浜アリーナ
12/25(土) 愛知・日本ガイシホール
12/26(日) 愛知・日本ガイシホール

GLAY プロフィール

グレイ:北海道函館市出身のロックバンド。1988年にTAKURO(Gu)とTERU(Vo)を中心に結成。94年のメジャーデビュー以降、CDセールス、ライヴ動員数など常に日本の音楽シーンをリードし続け、数々の金字塔を打ち立ててきた。21年10月に約2年振りにオリジナルアルバム『FREEDOM ONLY』をリリースし、21年11月〜22年2月にはアルバムを提げた全国アリーナツアー(7箇所14公演)を敢行。22年7月にはGLAYオフィシャルFan Club『HAPPY SWING』の発足25周年を記念したスペシャルライヴ『We♡Happy Swing』の第3弾を、大阪・仙台・幕張の3会場で開催。また、2010年6月に“GLAYがもっと音楽に対して真っすぐである為に”という想いを掲げ、自社レーベル『loversoul music & associates』(16年に『LSG』と改名)およびECサイト『GLAY Official Store G-DIRECT』を発足、17年には公式アプリ“GLAY app”を立ち上げるなど、音楽を通してGLAYがあらゆる可能性にチャレンジしていけるよう、常に独自のスタンスで高みを目指し、邁進を続けている。GLAY オフィシャルHP

「祝祭」MV

「BAD APPLE」MV

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着