フィルモア・イーストで
ライヴ録音された
タジ・マハールの異色作
『ザ・リアル・シング』

ブルースロックからアメリカーナへ

68年、ソロデビューとなる『タジ・マハール』をリリース、盟友ライ・クーダーと名ギタリストのジェシ・デイヴィスが参加し、オリジナルとカントリーブルースのカバーを交えた西海岸では珍しいブルースロックスタイルを披露している。このアルバムはイギリスのブルースロック系アーティストやデュアン・オールマンにも影響を与え、このアルバムに収録された「ステイツボロ・ブルース」はサザンロックの誕生に大きく貢献することになる。

同じ年、2ndアルバム『ナッチェル・ブルース』をリリース。すでにライは抜けているがジェシ・デイヴィスのオクラホマの仲間たち(ベースのゲイリー・ギルモア、ドラムのチャック・ブラックウェル)がリズム・セクションを担当、アル・クーパーのエレピでの参加もあって、タジによる新しいブルースの解釈が聴けるアルバムとなった。この作品にはブルースだけでなく、のちにブルース・ブラザーズで有名になるタジ作のルーツロックナンバー「シー・コート・ザ・ケイティ(アンド・レフト・ミー・ア・ミュール・トゥ・ライド)」や、サザンソウルの2曲「ユー・ドント・ミス・ユア・ウォーター」(ウィリアム・ベル作)、「ア・ロット・オブ・ラブ」(ホーマー・バンクス作で、スペンサー・デイヴィス・グループの大ヒット曲「ギミ・サム・ラヴィン」の元歌)が収録されるなど、アメリカーナ的な要素を持った傑作となった。

また、同じ年にはローリング・ストーンズに呼ばれて渡英し、映像作品『ロックンロール・サーカス』に出演した他、ストーンズの傑作アルバム『ベガーズ・バンケット』にも参加するなど、大忙しであった。

次作は2枚組の大作『ジャイアント・ステップ/ディ・オール・フォークス・アット・ホーム』(’69)である。バンド編成(ジャイアント・ステップ)とソロ演奏(ディ・オール・フォークス・アット・ホーム)を一枚ずつに収め、バンド編成のセットではキャロル・キング、ジェシ・デイヴィス、ザ・バンドのカバーだけでなく、カントリーの「シックス・デイズ・オン・ザ・ロード」(ニュー・ライダースやフライング・ブリトー・ブラザーズもカバーしているロードソングの名曲!)を取り上げるなど、ますますアメリカーナ的な広がりを見せている。

OKMusic編集部

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