水瀬いのり

水瀬いのり

【水瀬いのり インタビュー】
今だからこそ“地平線”という言葉が
いろんな意味を持つ

昨年12月にアーティストデビュー5周年を迎え、記念ライヴを横浜アリーナで無観客開催した水瀬いのりが、新たな一歩を踏み出した10thシングル「HELLO HORIZON」をリリースする。表題曲は自身も出演している『現実主義勇者の王国再建記』のOPテーマということで楽曲制作秘話はもちろん、彼女の現実的な部分などにも肉薄した。

陰になる時もあるけど
光を目指していこう

「HELLO HORIZON」は水瀬さんも出演されている『現実主義勇者の王国再建記』のOPテーマですね。

いわゆる異世界転生や召喚モノの作品というと、転生した先で無双して可愛い女の子とハーレム…といった、“転生もありじゃない?”と感じるような世界観を想像される方も多いと思います。ですが、『現実主義勇者の王国再建記』は召喚された先が財政難や食糧難に喘いでいる国で、主人公のソーマは現代知識を駆使して、異なる世界の国の危機や国同士の攻防を乗り越えていくんです。魔法で一瞬にして問題を解決するのではなく、一歩一歩泥臭く頭を使って攻略していくという、異世界モノの中でもひと味違う作品なんです。

水瀬さんご自身もわりと現実的な考え方ですよね。

はい(笑)。まずはリスクを考えて、そのリスクを回避するための道を模索する。保守的というか、大胆になれないところがソーマの悩みであり、それには私も共感します。幼少の頃から運動会の徒競走では、1位になって変に目立ちたくないけど、ビリはお母さんが悲しむと思って無難に3位とか4位をいつも狙って走っていました。だから、“失敗しても全力で突っ走る”みたいな経験があまりなくて。

あまり夢を見ない?

それは両親の影響もある気がします。小さい頃に大好きなアニメキャラクターにどうしたら会えるのかを訊いたら、“アニメだから現実にはいないんだよ”とあっけなく夢を壊されました(笑)。代わりに声優という存在を知ることができましたけど。嘘がつけない両親なので、変に嘘をついて、あとで真実を知った時にがっかりさせたくなかったんだと思います。だから、サンタクロースがいないことを知ったのも小学1~2年生の頃と早くて、その時は泣きながら半家出をしました(笑)。

(笑)。水瀬さんは個人向け国債のWEB-CMキャラクターの個子ちゃんの声もやられているから、将来設計とかもしっかりされていそうですね。

しっかり考えているほうだと思います。社会に出るのが早かったということもありますが、ひとりっ子なので将来は両親を私が支えていかないといけないとか、いろいろ考えますね。個子ちゃんの時は専門的なワードがたくさん出てきてソワソワしました(笑)。

今の自分は想定していた将来設計通りですか?

全然です。夢に見ていた声優アーティストになって、まさか5周年を迎えられるとは想像もしていませんでした。

良いほうの想定外ですね。

そうですね。とてもたくさんの方に応援していただいていることが、未だに不思議に感じる瞬間があって。“みんなは私のどこを好きになってくれたのかな?”って考えます。

「HELLO HORIZON」のサビの歌詞に《世界に求められる僕なんて/どこにもいないと思ってたのに》とありますが、それはまさしく水瀬さんが思っていたことなんですね。

本当にそうです。小さい頃から家の中で両親の前だけでアイドルの真似をして歌っていたけど、外では静かにお利口さんにしているようなタイプで。最初は両親ふたりだけがファンだったから、今、こんなに大勢の人がいる場所にジャンプアップしているなんて思っていませんでした。この曲をいただいた時は、サビの歌詞や後半の《ただ ありのままを許せたんだ》という歌詞など、すごく自分の胸に刺さりました。

作詞の岩里祐穂さんは単にアニメのオープニングテーマというだけでなく、水瀬さんがずっと歌っていくことを考えて書いてくれたわけですね。

岩里さんは私のライヴによく足を運んでくださって、ライヴのあとにはアツい感想を送ってくださるんです。5周年の配信ライヴの時も“格段に表現力が増していて感激しました”と送ってくださって、それがあったから余計に「HELLO HORIZON」の歌詞が胸に刺さりました。私の想いを理解してくれているとも感じるし、最初にこの歌詞を読んだ時は思わずウルッときましたね。

作曲編曲の白戸佑輔さんもお馴染みですね。ストリングスが入って、疾走感があって、水瀬さんがこれまで歌ってきた王道でありながら、ちょっと不穏な感じのイントロなど新しさもあって。抑えめで歌っているAメロBメロは大人っぽさを感じました。

最初はダウナーと言いますか、感情を入れすぎず、ちょっと諦めてしまった人を思い浮かべながら歌いました。どこか希望というものを諦めてしまっていて、だからこそサビにつながっていく明るさが表現できると思ったんです。陰一辺倒ではなく陰があるから光もあって、また陰になる時もあるけど光を目指していこうといった、コントラストみたいな部分を歌う上で意識しました。

Dメロはキーが高いですけど、裏声を使わずに歌われているのも印象的でした。

そうなんです。そこは白戸さんにディレクションをいただいたポイントです。裏声の美しさも素敵なのですが、この曲が伝えたいメッセージは前を向く強さだと思ったので、それを裏づけるためには地声でパーン!と歌ったほうが力強さが出るだろうと思って。でも、本当に限界ギリギリのキーなので、レコーディングでは何テイクも重ねました。ライヴで歌う時にちゃんと出せるか不安です(笑)。
水瀬いのり
シングル「HELLO HORIZON」

OKMusic編集部

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