SUGIZO vs INORAN ロックの日に対バ
ンライブ、「いつかL5/5としてやって
みたいですね」

SUGIZO vs INORAN PRESENTS『#BESTBOUT2021 ~L2/5~』

2021.6.9
ロックバンド・LUNA SEAのギタリスト、SUGIZOとINORANが2021年6月9日、東京都内で無観客の配信ライブ『SUGIZO vs INORAN PRESENTS 『#BESTBOUT2021』~L2/5~』を開いた。約4年ぶりに火花を散らしたライブでは、INORANが原曲を作り、2人でふくらませた新曲「2050」を世界初披露。約1時間40分に及ぶ真剣勝負についてSUGIZOは「愛のバトルロワイヤルから、最後は光へ昇天した感覚だった」。INORANは「音楽の中に愛があった」とかみしめていた。両雄の演奏にインスパイアされた画家の荻野綱久が行ったライブペイントでは、にらみ合う不死鳥と龍を描いた巨大な作品が誕生。視聴者を熱狂させた。
本番を30分後に控えたフロアをのぞくと、バンドの双璧をなすふたりの機材がにらみ合うように、向かい合わせに設置されている。LUNA SEAのライブでは見られない光景に期待が高まった。
光りに包まれたSUGIZO 撮影:KEIKO TANABE
ひと筋の光が差し込んだフロアに、SUGIZOのシルエットが浮かび上がる。温もりあるギターが印象的な「Nova Terra」で幕を開けると、背後のスクリーンには屋久島の美しい緑が映し出されていく。屋久島を潤す水の音に、生命の循環を感じる。神楽鈴の音が、閉じていた扉を開き、止まった時間を再生させていく。放つ音楽の中に、血が通っていった。
SUGIZOとINORANの間にセットされた縦190センチ、横130センチほどの2枚の黒いボードを見詰めていた荻野は、SUGIZOが放つ音を深く吸い込み、身体にその音を染み込ませていく。癒やしの音に導かれるように。右手に持った筆は天に向かい柔らかいラインを描いていった。パレットから直接、指に付けた水色の絵の具で作った円形は、音楽によって生まれた魂。線が形になり、絵が呼吸をし始める。音に合わせて変化し続ける壮大なアートに、鳥肌が立った。
撮影:KEIKO TANABE
白黒に点滅したフロアに響いた破裂音。攻撃的な音に、筆の動きが激しくなる。「IRA」では、リボンコントローラーでモジュラーシンセサイザーを使い、音をうごめかせていくSUGIZO。「TELL ME WHY NOT PSYCHEDELIA?」では、ジャンベを打ち鳴らすパーカッションのよしうらけんじと対峙し、鋭いギターリフで圧倒した。全てのエネルギーを吸収し、突き上げていくようなSUGIZOのギターに息を飲んだ。
ギターを置き、全身で表現したINORAN 撮影:KEIKO TANABE
通常の対バンライブはステージを終えた後に、セットチェンジが必要だが、「配信でしかできないことをやりたい」と転換はせず、両者が交互にパフォーマンスするユニークな形を取った。ギターなどを持ち替え、怒りや慈しみを体現したSUGIZOとは対照的に、ろうそくの火が揺れる中、姿を見せたINORANは、ギターを持たず身体一つでスタンドマイクに臨む。静かな狂気を感じる「Hard Right」で始まったライブは、毒がゆっくりと回っていくような怪しさを持つ。リズムに乗りステップを踏む荻野は、INORANが大切にするモチーフ・龍に命を吹き込んでいく。瞳に色が入ると、渦を巻いた龍の周辺に風が吹いた。
INORANのパフォーマンスに合わせてドラゴンを描き進めていく荻野 撮影:KEIKO TANABE
自由は誰にも奪えない-。「Libertine Dreams」のリズムに合わせ、指を滑らせていく荻野。祈りのミサンガを右手首に巻いたINORANが光りを求めるように。両手を翼のように広げていく。祈るように歌った「Between The World And Me」は慈愛に満ちていた。
撮影:KEIKO TANABE
INORANからのバトンを受け取ったSUGIZOは、アルバム『ONENESS M』で共演したDIR EN GREYのボーカリスト・京と制作した「絶彩」をバイオリンで披露。“愛されたい”と願う孤独を弦に乗せて。生の苦しみから逃れるように。“うわぁーー”と叫び演奏した最後、背後のスクリーンに写った虹は、死者の世界に繋がる架け橋のようだった。“NO NUKES”と記された大旗を振った「ENOLA GAY RELOADED」では、繰り返される愚行をギターの音で両断。サイケデリックなギターや、エキセントリックなシンセサイザー、和太鼓に尺など、さまざまな要素を盛り込んだ「禊」でソロのステージを締めくくった。
撮影:KEIKO TANABE
燃え上がるようなSUGIZOのステージの後、フロアに戻ったINORANは、ゆったりとした「Purpose」で空気を一変させていく。身体を気持ちよさそうに揺らしながら曲に合わせてクラップ。見ていたスタッフもINORANの動きに合わせ、手をたたいていく。音楽の輪が幾重にも広がっていた。女性シンガーのPiaと共演した「Leap of Faith」では、Piaの憂う心に寄り添うように【信じて飛ぶんだ】と鼓舞していく。マイクスタンドを抱きしめるような仕草や、一心に願うように歌う姿からは、ギターとはまた違う豊かな表現力を感じた。INORANが選んだ11曲は、全てコロナ禍に生まれたもの。どこかに影がある作品は、2枚のアルバム『Libertine Dreams』、『Between The World And Me』に収録されている。
撮影:KEIKO TANABE
INORANのソロパートが終わると、SUGIZOが「みんなどうもありがとう。こうやってこのご時世に、『BEST BOUT』を届けることが出来て本当にうれしく思います。INORANとSUGIZOと荻野氏の愛のバトルロワイヤル。楽しんでもらえましたか? いつか……近い将来、このパンデミックから、痛みから解放されて、世界から飢餓や紛争がなくなって、地球が環境破壊と温暖化から脱却して、この星が真の平穏を手に入れられますように。最後に3人でこの曲を贈ります。未来へ希望と祈りを込めて」とINORANが原曲を制作し、SUGIZOがアレンジを加えた競演曲「2050」を初披露。SUGIZOはバイオリンを、INORANはアコースティックギターを手に音を編み上げていく。左手に鮮やかなピンク色のチューブを持った荻野は絵の具を指先に付け、その絵の具をはらうようにボードにしぶきを付け大作を仕上げていく。音楽とアートを融合させた“ロックの日”。生み出した時間には、平和への祈りが込められていた。
撮影:KEIKO TANABE
SUGIZOとINORANが初めてソロプロジェクトで対決したのは2016年。翌年には国内外で精力的にステージを展開した。両者とも神奈川県秦野市出身で、30年以上同じバンドのメンバーとして活動。リスペクトし合う2人の“BEST BOUT”は今回が3度目。コロナ禍で世界が一変する中で、「あのとき、感じた熱を…」とINORANがSUGIZOに声をかけ、4年ぶりの開催となった。
SUGIZO vs INORAN PRESENTS『#BESTBOUT2021 ~L2/5~』

▼三つどもえのバトルを終えて
【SUGIZO】
以前からライヴペインティングを取り入れた予測不可能なライブをしてみたいと思っていました。荻野氏には、今回のバトルで大切にしているモチーフについて、僕については僕が右手に願掛けとして入れているフェニックス、INORANはギターにも取り入れているドラゴンをイメージして描いて欲しいと依頼をして、即興で絵画を描いてもらいました。荻野氏は元々、バンドをされていたので音からインスパイアされたものを、アートに下ろしてくれていることを感じました。想像していた以上の仕上がりで、すごく感動しています。

今回INORANと演奏した『2050』は悲しい曲のイメージがありましたが、今それぞれがもっている悲観的な感情を昇華して…という願いを込めています。2050年頃は、世界がカーボンニュートラルが実現しているはず。現在の負の要素から脱却して、ポジティブな光りに包まれていて欲しいです。
INORANとのライブは、〝L2/5〟(LはLUNA SEAのL)として続けてきましたが、いつかL5/5としてやってみたいですね。5人それぞれのソロプロジェクトでステージに立つのも面白いと思うんです。ただ、やれるかどうかは…未知数ですが。

【INORAN】
コロナ禍でも、音楽家として出来ることは何かを考え、出来ることをやらなくちゃいけないと思い、SUGIZOにBEST BOUTをやらないかと声を掛けました。くさい話しに聞こえてしまうかもしれないけれど、今日の現場を終えて「愛があったな」と感じています。人間が笑うために何が必要かと考え、〝毎日明るく過ごすこと〟が大切だと思いながら、今回のために新曲『2050』を書き下ろしました。音楽を止めないためには、曲を作らないと。みんなが望む明るい未来を想像して作った曲です。僕の隣には、社会的な活動にも力を入れている、素晴らしいアーティストであるSUGIZOくんがいて、尊敬する仲間とステージが出来たことをうれしく思っています。荻野さんが仕上げてくれたライブペイントは、今日だから生まれた尊いもの。彼が描く絵は、強い目にすごく惹かれます。

【荻野】
10~20代は、ギター・ボーカルとしてバンド活動をしていたという荻野。音楽に夢中だった頃は、自身が絵を描くことは考えてもみなかったという。「自分のハートが震えるものが10・20代はロックだった」と振り返り、ギターを絵筆に変えたいまも、「音楽の延長線上に、僕のアートがある」と説明した。SUGIZO、INORANとの共演は、ライブとアートを融合させたいと考えていたSUGIZOからのオファーだったそう。「自分をフェニックス、INORANをドラゴンに見立て描いて」と依頼を受けたときは、「どちらも元々描いていた好きなモチーフ。これは運命だ」と感じ快諾したという。
SUGIZOの演奏からは「華麗で優雅だけど怒りや悲しみを抱える不死鳥」をイメージ。INORANからは「パンチがきいた男くささ」を表現しようとボードに向かったという。2枚を合わせると縦190センチ、横260センチという巨大な作品を、ライブペイントで描いたのは初めての試みだったそう。「1日でこの大きさを仕上げたのは初めてですが、僕もバンドをやっていて、音楽を地に持っているから、2人の息づかいを感じることができましたし、ジャムセッションのような作品が仕上がった」とうれしそうだった。

▼コロナ禍で2020年2月から延期していた全国ツアー『LUNA SEA 30th Anniversary Tour 2020 -CROSS THE UNIVERSE-』が2021年6月12日(土)の福岡サンパレスから再開する。
【SUGIZO】
福岡からいよいよツアーを再開します。コロナ禍でみんなが音楽を求めていることを細胞レベルで感じます。観客が声を出すことができないなど、感染防止のための制約はありますが、音楽を奏で続けたい。今は苦しいかもしれないけれど、この暗闇を越えたときに、『レアな思い出だったね』と思い出話しができるような世の中になって欲しいと思います。
【INORAN】
延期になっていた東京・有明でのライブを5月末に無事に迎えることができました。いつどんな状況になるか分からないので、(刹那的な話しではなく)、1つ1つのライブを、「今日最後になってもいい」と悔いがないようにギターを奏でたいと3日間のライブで教えてもらいました。勇気を持って来てくれた人もたくさんいると思うんです。福岡から始まるツアーは、1年以上待たせてしまっているので、待っていてくれた人へ「待たせたな」と今の自分に出来ることを、何倍にもして返したいと思っています。これからもさびないように、音を奏でていきたいです。

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