長身ヴォーカル・デュオSiriuS、若手
新人アーティスト紹介シリーズ「7ST
ARS」に登場~デビューから約1年、互
いの魅力、今後の目標は?

二人共に東京藝術大学声楽科卒業&180cm超えの長身から響かせるハーモニーが自慢のSiriuSは、テノールの大田翔とバリトンの田中俊太郎から成るヴォーカル・デュオ。昨年、コロナ禍において無事デビュー・コンサートを開催した二人が、このほど、日本コロムビアがクラシック・エンタテインメント界に羽ばたく新人アーティストを紹介するシリーズ「7STARS(セブン・スターズ)」に登場する。『ʼS Wonderful Concert』と題したステージに臨む二人に意気込みを聞いた。
――昨年、一度は延期となりながらも、無事にデビュー・コンサートを開催されました。
大田:4月に予定されていたものを延期し、7月7日に開催することができました。しばらく演奏活動ができない状態で、お客様の前で歌うのが数カ月ぶりだったので、ここから再スタートという新たな気持ちで取り組むことができました。お客様も非常に喜んでくださって、開催してよかったなと思いましたね。
田中:客席側の感染予防対策はもちろんのこと、舞台側の僕たちもいろいろ考え、演者同士の距離感など制約がある中でさまざまに工夫を凝らしての開催でした。生配信も初めて経験しましたが、それも、会場にいらしていただいた方にも後で舞台裏の様子などを見ていただけるように工夫をしながら、僕たちのステージをより楽しんでいただけるように企画しました。
田中俊太郎
――そのような状況下で、アーティストとして改めて感じられたことは?
大田:一番感じたのは、お客様がいる前で歌えるのはすばらしいなということですね。自粛期間中、その中でできることをと考えて配信に取り組んでみたり、そういった選択肢があるとわかったのはいいことだったんですが、やはり、そんな期間を経た上でお客様の前で歌うと、聞いてくださっている方の顔がそこにあることによって、こちら側も何倍もパワーを出せるんだなと。マスク越しではありますが、笑ってくださっている顔を見ると、自分たちの演奏にも影響があることを実感しました。
田中:オンライン上での生配信だと、僕たちの姿は観ていただけるけれども、お客様の姿や様子はこちらからはわかりません。生の舞台だと、リアルタイムでお客様の反応、姿が見える。喜んでくださっている姿を見ると、僕たちも元気が出ていいパフォーマンスにつながることを感じましたね。やはり音楽って生もので、お客様と一緒に舞台を作るんだなということを改めて実感しました。録音の場合、やり直しがきくというか、実際に録ったものを聞いて、ここを修正しようよとかこうしてみようとか、コミュニケーションをとっていって一つの完成物を作るという感じですよね。生の舞台の場合はやはり一回きりということで、失敗してもそれがそのときの演奏になるし、逆に、そういう緊張感をもった、一度きりのものというところのワクワク感、ドキドキ感は、生の舞台ならではのものだなと思います。
大田:録音の場合とは向いている方向が違うなということは感じますね。レコーディングの場合、自分が歌ったものを後で聞き直して、これはいいからここを使いましょうとか、ここは録り直したいですという話になったり、聞いている側として一番いいものを作ろうという発想になるんですけれども、生の舞台で歌っているときは、自分の演奏を客観的に聞きながらということができないので。発信者側として、とにかく今自分がこうしたいという、その思いきりがけっこう必要というか、今こう思っているからこう歌いますという、そのとき思いついた一番いい演奏をするという発想になるので、自分が向いているベクトルが違うかなと思います。
大田 翔
――この間、音楽の力について改めて感じられたことはありますか?
田中:不要不急の外出自粛と言われたからこそ、やはり、お一人で過ごす時間、おうちで人に会わずに過ごさざるを得ない時間というものを長く経験された方もいらっしゃると思います。僕自身、自粛期間中は基本家で過ごしていましたし。そういうときにも、オンライン配信やCDなど、僕たちと関わっていただける可能性、場所、媒体があるので、こういう時期だからこそ、お一人の時間を、僕たちの音楽で楽しんで満たしていただくことができるのかなと感じました。
大田:音楽は娯楽なので、直接生死に関わることはあまりないかなと思うんですけれども、僕の場合、曲と思い出が結びついていたりすることがあって。この曲を聞くとあのときのことを思い出すよねとか、そういう経験は多くの方がしていることだと思うんですね。そういう意味で、音楽って、写真のアルバムみたいに、いろいろな感情や思い出を呼び起こす力があると思っていて。さっき俊ちゃん(田中俊太郎)が言っていたみたいに、今、新しいところに出向いたり、人と会ったりというのが難しい状況で、心の支えになる大きな力をもっているんじゃないかなと思います。
――ちなみに、お互いどう呼び合っていらっしゃるんですか。
大田:俊ちゃん。
田中:翔ちゃんですね。
大田:去年、岡幸二郎さんと共演したときに、デュオなんだからあまり他人行儀だとよくないんじゃないか、ちゃん付けとかで呼んだ方がいいよと言われて、わかりましたと。その日から少しずつ移行して「俊ちゃん」「翔ちゃん」になってきているんですけれども。未だにちょっと使い分けている部分がありますね(笑)。先輩なのでつい、「俊太郎さん」と言ってしまうときもあって。
田中:その辺、距離を縮めていきたいよね(笑)。
左から 田中俊太郎、大田翔
――活動する中で見えてきたお互いの個性は?
大田:もともと優しい人だなと思っていたんですが、すごく真面目なので、冗談言っていいのかなとか、僕はけっこう探っているところがあって。でも、最近そこはあまり気にしなくていいんだなということがわかってきました。けっこう俊ちゃんもおもしろいこと好きだもんね(笑)。俊ちゃん自身も冗談を言ったり、遊び心があって、割と童心に返っていたりするところもあるので。今まで、大人として接しなきゃいけないのかなと思っていて。
田中:翔ちゃんは、すごくユーモラスなところがあって、おもしろい絵を描いていたり、鬼才の存在だと思っていたので、逆に、この人と真面目な話できるのかなというところで、僕としてはそこを控えていた部分があるんですが(笑)。最近ちょっと、そういうことを話してもちゃんと真面目に考えてもらえるな、そういう話もできるんだなと思いましたね。
大田:俊ちゃんって、僕のことをすごく考えてくれている。それはもちろん、ユニットとして一番いい演奏をするというところにつながっているんですけれども。演奏家ってどうしても、自分のこだわりといったものをすごくもっているところがあって、それをすり合わせていく作業って難しかったりするんです。それを、あるときは僕が一番いきる形、あるときは俊ちゃんがメインにというのを、バランスよく考えてくれているなと。わかりやすく言語化して、いろいろアドバイスしてくれて。
田中:翔ちゃんとここまで一緒に活動してコミュニケーションしてくる中で、今までどんな活動をしてきたから、今こういうパフォーマンス、考え方になっているということをかなりわかってこられたなと思っていて。それを踏まえて一緒に音を出し合ったりしたときに、前は、なんでここに行きたいんだろうと考えることが多かったのが、今は、こういうことを根拠にそうしたいんだなということが何となくつかめるようになってきました。翔ちゃんのパフォーマンスの魅力のバックにあるもの、翔ちゃん自身の経験、そういったものが見えてきたので、自分としてもさらに純粋に魅力を感じ取っていって、音楽でそれを共有できるようになったらいいなと思っています。
田中俊太郎
――お互いの声の魅力についてはいかがですか。
田中:翔ちゃんの声はすごくキラキラした響きだなと思っていてます。テノールの中でも、ドラマティックでいかついテノールもいるんですが、翔ちゃんはすごくヒロイックできらびやかな声だなと。日本語の歌でもすごくいきるし、外国語の歌でも、もちろんミュージカルからオペラまで、幅広く魅力的に響かせることができる声ですよね。
大田:俊ちゃんは、やっぱり大人の魅力といいますか、セクシーな低音が魅力かな。テノールに対してバリトンというのは、オペラの中でも年配の役が多かったりするんですが、その中でも、知性を感じさせるような大人の声で、僕にないものなので憧れますね。ファースト・アルバムに収録されている「セイリング~ニュー・ブレイン」は俊ちゃんメインで歌っている曲ですが、けっこう気に入ってるよね?
田中:そうだね。
大田:好きな曲ということもあって、すごく俊ちゃんの声の魅力が生きている曲だなと思います。
田中:翔ちゃんでいうと、これもファースト・アルバム収録の「ビー・マイ・ラヴ 〜ニューオリンズの美女」という曲があって、マリオ・ランツァというイタリアのテノールも歌っているんですが、僕からすれば、マリオ・ランツァを彷彿とさせるような美声、きらびやかな声というのを聞かせてくれる曲だなと思っています。
――今後の目標は?
田中:声楽家のユニットですので、声の魅力を感じていただくということがまずはありますが、さらに、テノールとバリトンのコンサートに行くんだったらやっぱりSiriuSがいいよねとより多くの人に思っていただけるようなパフォーマンスができるユニット、個々人でありたいと思うようになりました。
大田:クラシックの曲は、何百年も歌い継がれているような魅力的な曲ばかりなので、多くの方が、この曲好き、この曲知っているという感じで、曲自体がすごく力をもっていると思うんです。そんな中で、お客様たちが、この曲ならSiriuSの演奏で聞きたいという風に指名してくださるような、そんな歌手になりたいですね。

大田 翔

――『ʼS Wonderful Concert』に向けての意気込みはいかがですか。
田中:昨年12月には、僕たちSiriuSの名前にちなんで名付けたセカンド・アルバム『星めぐりの歌』をリリースしました。ファースト・アルバムは基本的には英語、原語歌唱によるものだったんですが、セカンドでは日本語の楽曲も取り入れて演奏しています。今回のコンサートでは両方のアルバムの中から曲をピックアップしていきますし、僕たちは今後こうやって活動していきますということを皆さんに発信できる場にもなったらいいなと思っていて。新しい楽曲にも取り組んでいくことになるので、僕たちのこれからについても楽しんでいただければと思います。
大田:今回、会場が王子ホールなんですが、音響もすばらしいので、僕たちがもともと専門にしているクラシックの曲やカンツォーネなど、そういったものもたくさん取り入れて、自分たちの声の魅力を最大限に生かせるようなプログラムにしたいなと思っています。
田中:まだまだコロナ禍で、コンサートに足を運ぶとか、今回のような演奏会シリーズもなかなか体験できない中ではあると思うんですが、僕たちはこういう風にエネルギーをもって演奏会に向かっていこうと思っています。会場ではもちろん万全の感染予防対策をさせていただきますし、ぜひとも、足を一歩踏み出していただいて、生の舞台で一緒に時間を共有して楽しんでいただきたいと思っています。
大田:すごくいい会場で、すごくいい音響の中で、僕たちも最高のパフォーマンスができるように準備を進めていきます。皆さんと一緒に元気になって、その日をいい思い出にできるよう、気合を入れて頑張っていきます。
取材・文=藤本真由(舞台評論家)

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