『原作30周年記念展 クレヨンしんち
ゃん オラのミリョク新発見だゾ』開
幕レポート リアルとバーチャルの融
合を目指す新スポット誕生

「いろんなしんちゃん おてんこもりもり」
この展覧会キャッチコピーに、しんちゃんへの愛を感じずにはいられない。誰しもの心の中で暴れまわる永遠の5歳児、野原しんのすけ。彼と家族の日常を描く『クレヨンしんちゃん』は、ちょっとお下品ですごく笑える、そしてすごくおバカでちょっと胸打たれる、国民的コメディ漫画だ。
原作の漫画連載スタートから30周年となる今年、『原作30周年記念展 クレヨンしんちゃん オラのミリョク新発見だゾ』が、2021年4月16日(金)から5月23日(日)まで開催されている。会場となるのは、渋谷に新しくオープンした「東京アニメセンター in DNP PLAZA SHIBUYA(以下、東京アニメセンター)」だ。早速、その展示の様子をレポートしよう。
会場エントランス
ニヤニヤが止まらない名シーンの数々
展示風景
会場ではまず、ホログラムのしんちゃんがお出迎え。漫画の中から浮き上がってくるかのような演出が心ニクい。
展示風景
最初の展示室では、壁いっぱいにこれまでの漫画『クレヨンしんちゃん』のハイライトシーンが並ぶ。中央で存在感を放つのは、原作者・臼井儀人氏のデスクのレプリカだ。
展示風景
全50巻+『新クレヨンしんちゃん』10巻、それぞれに収録されたストーリーの中から1コマを取り出し、横にコンパクトな解説が添えられている。一つひとつをじっくり見ていくと、おなじみキャラの初登場シーンや「あったあった〜!」というボケに出会うことができる。もちろん初見でも、クスッと笑ってしまうこと必至だ。
リアルとバーチャルを横断する楽しみ
本展では、携帯で専用アプリをインストール・会員登録することで、キャラクターによる展示案内「XRキャラガイド」が楽しめる。XRとは、東京アニメセンターが提唱するリアルとバーチャル双方の表現手法を併せた鑑賞体験のこと。自分のカメラ越しの風景に野原ファミリーがひょっこり現れると、現実と作品世界が程よく溶け合うのを感じるだろう。ちなみに、キャラクターボイスはこの企画展のために録り下ろされたオリジナルだ。
(筆者iPhoneにて撮影)改めて画面上で見ると、みさえの髪型の独創性がたまらない……
東京アニメセンターを運営しているのは大日本印刷株式会社(DNP)と日本動画協会(AJA)。DNPの印刷会社ならではの視点で、漫画の原稿から印刷用フィルムが生み出され、製本されていく流れを学べるコーナーも用意されている。ネーム版下、凸撮り……聞き慣れない専門的なワードには丁寧な解説も付いている。
展示風景
そして会場を進むと、どどーんとワイドな映像が! 横幅約7mのミラープロジェクションだ。
中央のしんちゃんから始まり……
キャラクターが勢揃いした30周年記念イラストが、少しずつカラフルに着色されていく。BGMはアニメのオープニングテーマ(第3代目)である『オラはにんきもの』。心がグッと1990年代に引き戻され、30年という作品の歴史をしみじみと感じた。
こんなに賑やかに!
……天井から吊られているウサギのぬいぐるみは、もしかして?
展示風景
ネネちゃんのママが作中でしばしば殴っている、ストレス解消用のぬいぐるみだ! 「殴らないでください……」とのキャプションが添えられているのも可愛い。これを再現するとは、リアル展示ならではの茶目っ気だ。殴ってみたくなる気持ちをグッとこらえて、先へと進もう。
漫画からアニメへ、広がるしんちゃんワールド
展示風景
続く展示は、漫画からアニメが生まれる際の表現の変化に注目するコーナーだ。中央にはアニメーター用のデスクが設えられ、壁際のモニターでは漫画とアニメの比較画像が放映されている。
展示風景
例えば “お気に入りのワンピースを愛犬シロにボロボロにされ、ショックを受けるみさえ” というワンシーンを見てみると、漫画では「ガーン(泣き顔)!」のひとコマで表現しているところを、アニメでは「はっ!」→「顔が紫色になる」→「ギャー(泣)!」という一連の流れを描いている。原作漫画のキレの良さにも驚くが、アニメならではの表現の豊かさにもびっくり。時間が許せば、ぜひ各シーンをじっくりと見較べてみてほしい。
展示風景
ほか、展示室内にはアニメや劇場版のシナリオも展示されている。スピンオフ作品やキャラクターグッズの展開など、『クレヨンしんちゃん』の世界が様々な形に姿を変えてファンを楽しませてきたことが感じられるだろう。
今すぐコミックを手にとって読み直したい衝動に駆られる
仮想空間で体験はもっと面白くなる
オフィシャルショップ風景
展示を楽しんだ後は、品揃え豊富なオフィシャルショップが待っている。本展限定デザインのオリジナルグッズも販売されているのでお見逃しなく。
と、ここで「おねえさ〜ん」と可愛い声で呼びかけられて振り向くと……
バーチャル美少女のファンズちゃん、手にしているのは限定デザインのクリアファイル(税込330円)だ
軽く衝撃! 画面の中の美少女が手を振って微笑みかけてきた。AIなのかと思いきや、「茶色いコートのおねえさーん!」と、メチャメチャこちらに照準を絞ってくる。ここ東京アニメセンターではバーチャル接客を取り入れていると聞いていたが、その意味がやっとわかった。リアルタイムで会話が行われるので、眼に映るのはバーチャルキャラなのに、しっかり生きた “ヒト感” がすごい。どこか遠隔で接客してくれているのは、どんな人なんだろう……。いや、もうそんなことはどうでもいい。「また来てね!」の愛らしさに、ほっこりしながら帰路についた。
なお、本展はリアル展示だけでなくオンライン上の『バーチャル企画展』も併せて開催されている。高精細フルCGモデルで、会場をVR空間に再現しているのだ。それにより、時間や場所にとらわれず、好きなタイミングで企画展・ストアを体験することができる。新しい楽しみ方として、こちらも注目すべきだろう。
しんちゃんといえば、やっぱりこれ。会場内で見つけた「ケツだけ星人」の姿には、反射的に笑ってしまった
「原作30周年記念展 クレヨンしんちゃん オラのミリョク新発見だゾ」は、2021年5月23日(日)まで開催中。渋谷の新たなエンタメ発信基地である東京アニメセンターのオープニング企画としても、見逃せないイベントだ。

(c)臼井儀人/双葉社 (c)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK
取材・文・撮影=小杉美香

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