[Alexandros] デビュー10周年&サト
ヤス勇退の節目となるワンマンライブ
 オフィシャルレポ到着

[Alexandros]のデビュー10年を記念したワンマンライブ「[Alexandros] 10th ANNIVERSARY LIVE at 国立代々木競技場 第一体育館 "Where's My Yoyogi?”」。当初は今年1月に開催される予定だったが、新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言のため開催見合わせとなり、その後日程・会場を変更し、ここ幕張メッセでの2デイズとして実現した。つまり、バンドにとっても、そしてそれ以上にファンにとっても待ちに待ったライブなのである。それだけではない。3月17日にリリースされたバンドにとって初のベストアルバム『Where’ s My History?』とタイミングを合わせて開催されるこのライブは、局所性ジストニアのためにバンドからの「勇退」を発表しているドラマー・庄村聡泰にとっては最後の花道なのだ。だからだろう、開演前の幕張メッセには、ライブに向かう高揚感と同時に、どこか一抹の寂しさも漂っているような気がした。
[Alexandros] 撮影=河本悠貴
おなじみ「Burger Queen」のSEに合わせて、メンバーそれぞれの人生とバンドのキャリアを振り返るようなオープニング映像が流れる。ステージに立った川上洋平(Vo/Gt)が「幕張!」と叫ぶ。1曲目として鳴らされたのはファーストアルバム『Where’ s My Potato?』のリード曲「For Freedom」だった。磯部寛之のヘヴィなベースライン、白井眞輝の鋭いギターリフ、そしてサポートドラマー・リアド偉武がぶちかます疾走感のあるビートが川上の歌うメロディを前へ前へと急き立てる。眩いライトで照らし出されたフロアで振り上げられる腕、腕、腕。そして地鳴りのような手拍子が鳴り響く。ルール上歓声を上げたり一緒に歌ったりはできないが、そのぶん、体で気持ちを伝えようとするオーディエンスの気合いが伝わってくる。
[Alexandros] 撮影=Tetsuya Yamakawa
楽曲の合間合間に子役がメンバーを演じるバンドヒストリー再現VTRが流れ、サトヤス加入、バンド改名などバンドのターニングポイントを振り返りながら 、それに沿ってキャリアを総ざらいするようなセットリストが繰り広げられていったこの日のライブ。ファーストシングルとなった「city」ではサビのハイトーンと生き急ぐような4つ打ちビートが当時の彼らの心情をトレースするように勢いよく幕張メッセの広い空間に解き放たれ、「You're So Sweet & I Love You」ではもうひとりのサポートメンバー・ROSÉ(Key)の弾くフレーズが柔らかく楽曲を盛り上げる。そして川上が「もっといけんだろ幕張!」と客席を煽りに煽って突入した「Waitress, Waitress!」。手数の詰まったアンサンブルとピーキーなメロディラインが、ますますヴォルテージを高めていく。
[Alexandros] 撮影=Tetsuya Yamakawa
「Kick&Spin」では白井がレーザー光線飛び交うなかステージ中央から伸びた花道の先端まで走ってコードをかき鳴らし、ブラスセクションが華々しく鳴り響く「Droshky!」では改名時のバンドロゴを背に熱演、ステージ上では次々と炎が上がり観客の度肝を抜いた。そして「Dracula La」を終えたところで川上が改めて挨拶。「こんばんは、[Alexandros]と申します! こうやってやってると、みんなが歌うパートがある曲、多いですね。だからちょっと寂しくなるかなって思ったけど、全然そんなことなかったです!」。そんな言葉とともに、いつもなら一面の大合唱が巻き起こる「Adventure」を、オーディエンスに寄り添うような優しい響きで届ける。何度も何度も、川上は客席を指差しながら「幕張!」と呼びかけ、歌い終えると優しい笑みを投げかけた。
[Alexandros] 撮影=Tetsuya Yamakawa
ここでひと段落。「お待たせしました」と磯部が口を開く。「やっとこうやって開催できて嬉しい。いろんな区切りの日ということで、サトヤス、今日で勇退となります」。しかも今日は奇しくも彼の誕生日だということを明かす。「今日は門出だと思ってます。11年、楽しかったし、感謝してます。みんなで気持ちよく送り出せればいいかなって思ってます」。続けて川上に振られる形で話し始めたのは白井だ。高校からの付き合いのサトヤスについて「こんなふうになるとは思ってなかった。彼とのいったんの別れが今日なんですけど、僕はまだそんなに実感が湧いてない。今夜、感情が動いてしまうかもしれないけど」と、彼ならではの言い回しで複雑な心境を覗かせる。
そんなセンチメンタルな空気を振り切るかのように「いけるか、幕張!」と白井が叫び、弾き始めたのは「ワタリドリ」だ。いうまでもなく、[Alexandros]をさらなる高みへと押し上げた1曲。全身で高音を絞り出すかのような川上のヴォーカルが会場の空気を震わせていく。 リアドの鮮やかなタムさばきがブライトなムードを醸し出す「NEW WALL」ではマイクを客席に向けつつ「愛してるぜ、幕張!」と叫ぶ川上。曲を終えると磯部は楽しそうに顔を綻ばせた。「歌えないなら踊りましょう」という言葉とともに披露された「Feel like」では洒脱なグルーヴがフロアを席巻、スクリーンにニューヨークの摩天楼の夜景が映し出されるなか「LAST MINUTE」をメロウに響かせると、一転してヘヴィなリフが鳴り渡る「Mosquito Bite」へ。さまざまな音楽的変節を楽曲を通して見せつけながらも、その振れ幅の大きさがかえって彼らの変わらない芯の部分を明らかにしていくようだ。曲のラストをメンバー向かい合わせになって呼吸を合わせてキメると、カメラロール風にバンドの過去のライブ写真を見せつつ勝ち吹雪舞うなか演奏された「PARTY IS OVER」で本編はフィナーレを迎えた。
[Alexandros] 撮影=河本悠貴
しかしもちろんそれだけでは終わらない。スクリーンに映し出されていた「PARTY IS OVER」の文字が「PARTY IS NOT OVER」に変わり、アンコールへ。花道の真ん中に立った川上のアコギ弾き語りと ROSÉのピアノで始まったのは2020年の[Alexandros]から届いた珠玉の1曲「rooftop」だ。徐々にバンドが入ってきて、静かに始まったこの曲を穏やかだが力強いアンサンブルへと昇華していく。まるでコロナ禍のリモートセッションのようにバラバラの位置に立ったメンパーの姿が、ここに来るまでの道のりを思い起こさせるようにも思える。
[Alexandros] 撮影=河本悠貴
「こんな状況のなかでこれだけのライブができているのはみなさんのおかげです」とファンに感謝を告げる川上の視線の先には見覚えのあるドラムセットが置かれている。そして彼に紹介されて客席の通路を通って登場したのは、もちろんサトヤスだ。かぶっていた帽子を取ってオーディエンスに挨拶すると、ステージから歩いてきたメンバーひとりひとりとハグ(白井がやけに照れ臭そうなのがよかった)。そして始まった、「[Alexandros]の庄村聡泰」最後のパフォーマンス。4人だけで披露されたのは、ファーストアルバムからの「Untitled」だった。力強いキックに刻まれるハイハットにハイポジションのシンバル。すべてがサトヤスで、どこか懐かしかった。磯部も白井も何度もドラムの方を振り返り演奏していたが、きっと彼らも同じような気持ちだったのだと思う。誰がこの曲をやろうと言い出したのかは知らないが、「To celebrate your birth/I wrote the songs and words on whiteboard in you/To demonstrate your life/Throw away the songs/and fill them up with your words」という歌詞は、間違いなくバンドから新たな人生を歩んでいくサトヤスへのメッセージだ。曲が終わると、感極まるサトヤスの肩を抱きかかえながら4人揃ってステージに。何度も頭を下げつつステージを降りていくサトヤスに、客席からは改めて盛大な拍手が送られたのだった。
去っていったサトヤスの背中を見送った後、ふうっと大きく息をして、川上は「[Alexandros]はまだまだ続いていきます」と力強く宣言。そしてその言葉を証明するように続けて披露されたのが、5/5にリリースが予定されている、映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』主題歌の新曲「閃光」だった。ソリッドなリフに機関銃のようなビート、そしてシンガロングパートに伸びやかなサビ。まるで原点回帰のような前のめりのロックナンバーが未来を切り開くように鳴り響き、10周年の節目を刻む幕張メッセ2デイズは終わりを告げたのだった。ライブの最後には横浜アリーナ、日本武道館を含むツアースケジュールも発表。まさに川上の言葉通り、[Alexandros]はまたまだ続いていく。さらにスケールアップした彼らの姿に、我々はまたすぐに出会えるはずだ。

文=小川智宏 撮影=Tetsuya Yamakawa、河本悠貴

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