渋沢栄一役の吉沢亮

渋沢栄一役の吉沢亮

「泥くさく生き抜く渋沢栄一の強さを
見てほしい」吉沢亮(渋沢栄一)【「
青天を衝け」インタビュー】

 2月14日の放送スタート以来、好調な滑り出しを見せるNHKの大河ドラマ「青天を衝け」。幕末から昭和にかけ、最後の将軍・徳川慶喜に仕えた後、実業家として500を超える企業に携わった“日本資本主義の父”渋沢栄一の激動の生涯を描く物語だ。主演を務めるのは、連続テレビ小説「なつぞら」(19)などで注目を集めた吉沢亮。渋沢栄一の印象や主演を務める意気込みなどを語ってくれた。
-激動の幕末から昭和までを生き抜いた渋沢栄一を演じる意気込みをお聞かせください。
 他の大河ドラマの主人公のように、散り際の潔さやはかなさといった派手な部分はありませんが、泥くさく生き抜く強さや生命力が渋沢さんの大きな魅力です。だから、そういう部分を今の人たちに見てほしいですし、それきちんと伝えられる大河になればいいな…と思っています。
-演じる上で、こだわっている部分は?
 幕末から明治に変わる瞬間は、ものすごい価値観の変化があったはずです。でも、それを素直に受け入れられるかというと、なかなか難しいと思うんです。そんな状況の中でも、渋沢栄一という人は、パリで日本と全く違う文化を目の当たりにして、それをいち早く日本に取り入れようと、誰よりも早くまげを切り、洋風の髪形に変えた。そういう柔軟さや、正しいものを正しいと言える強さは、演じる上でこだわっていきたいです。
-渋沢栄一のどんなところにすごさを感じていますか。
 たくさんありますが、台本や資料などを読んで特に印象的だったのは、尊王攘夷運動など、当時のはやりに対して、のめり込みながらも、やや俯瞰で見ているところです。自ら腹を切った方が勇ましい、みたいな雰囲気がある中で、「自ら命を絶っても、世の役には立たない」と、冷静な見方をしている。ある意味、現代人に近い命の価値観ですよね。そういう考え方は、当時としては珍しかったでしょうし、だからこそ生き延びられたんだと思います。
-実際に演じてみて、渋沢栄一という人物の捉え方が変わった部分はありますか。
 撮影前に、史料を読んだり、そろばんや剣術の練習をしたり、演じる上で必要な準備はいろいろとやりました。その時点では、道徳を大事にし、身分による格差に憤りを感じたからこそ、「身分に関係なく、優秀な人をきちんと評価すべき」という思いを持って生きてきた男、という印象が強かったんです。でも、実際に演じてみると、そこから外れる瞬間も多々あって。それがすごく人間くさくていいなと。ある意味、キャラクターとしての捉え方ではなく、「人としての揺らぎ」みたいなものを大切に演じていかなければと改めて思いました。
-「近代日本の礎を築いた人」という側面だけでなく、人間味も出していきたいと?
 もちろん、渋沢さんの功績を描く部分はたくさんあるんですけど、そこに至るまでの揺らぎみたいなものも、きちんと出していきたいなと。やっぱり人間ですから、「こうでなければいけない」みたいなものはないと思うので、自由に演じていきたいです。
-そういう意味で、渋沢栄一の人間味を特に感じたエピソードはありますか。
 第五回に「お姉さんがキツネにつかれた」と言って、修験者を家に呼び、おはらいをしてもらう、というシーンがあります。でも、そこで適当なことを言う修験者たちを、栄一がいろんな方向から問い詰めて、結局追い返してしまうんです。そのやり取りが面白くて、すごく栄一っぽいなと。実際にあった話だそうなので、そこはぜひ見てもらいたいです。
-第一回の冒頭、栄一と深くかかわっていく徳川慶喜との出会いのシーンは印象的でした。慶喜役の草なぎ剛さんの印象は?
 草なぎさんとの共演は、今のところあのシーンだけですが、それでも、存在感や声を発したときの強さみたいなものが、ビシビシと伝わってきました。僕が一方的に、慶喜に思いをまくし立てるシーンでしたが、「草なぎさんのパワーに負けられない」という気持ちで、熱量も上がりましたし、いいシーンになったと思っています。共演するシーンはまだたくさんあるので、これからが楽しみです。
-役作りをする上で、渋沢栄一ゆかりの地を訪れる機会はありましたか。
 はい。地元の方の話をじっくり聞くことはできませんでしたが、どこへ行っても快く受け入れてくださって、皆さんの渋沢さんに対する愛の強さを感じました。付近を歩いてみると、渋沢栄一記念館の隣に、渋沢さんが作った小学校があったり、社会に大きな影響を与えた方にも関わらず、地元を大切にする気持ちも持っていたんだな、と。そういう部分も、すごくすてきだと思いました。
-初めての大河ドラマの現場の感想は?
 まず、オープンセットを見たときに、あまりの規模の大きさにびっくりしました。セットだけでなく、スタッフやキャストの皆さんも素晴らしく、完璧に整えられた状況でお芝居ができるすごくぜいたくな環境に、とにかく感激しています。しかも、一人の人物の一生を、これだけ時間をかけて丁寧に描くことができる。それは大河ドラマならではの醍醐味(だいごみ)ですし、こんなにぜいたくな環境でお芝居ができる現場はなかなかありません。これからの役者人生に生きることがたくさんあるんだろうなと思いながら取り組んでいるところです。
(取材・文/井上健一)

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