梅垣義明×すずまさインタビュー『梅
ちゃんの新春シャンソンショー2021~
客席が恋しくて、冬~ 』ひとりでで
きるもん!の胸中を聞く

ワハハ本舗の歌姫 ‟梅ちゃん” こと梅垣義明が、2021年2月27日、28日にインスタグラムでのトーク生配信を行う。何事もなければこの2日間は、『梅ちゃんの新春シャンソンショー2021~客席が恋しくて、冬~』の東京公演が開催されているはずだった。緊急事態宣言を受け、ライブは6月に延期された(詳細後述あり)。「それでも笑顔を届けたい」との思いから急遽決定したスペシャル企画だ。
梅ちゃんといえば、ゴージャスな衣装で名曲『ろくでなし』を唄い、客席を練り歩きお客さんに絡み、鼻につめた豆を飛ばす唯一無二のパフォーマンスで知られている。しかし梅垣が、生歌ではなくリップシンク(口パク)をしていると思われる方もいるという。誤解されるのも仕方がない。梅垣は、鼻から豆を飛ばすスタイルからは想像できないほどの美声の持ち主だからだ。過去には、伊藤園「お〜いお茶」や資生堂「プラウディア」などのCMナレーションでも採用された。俳優として大河ドラマに過去3作に出演し、舞台の客演も多い。
そんな梅垣に、自身の肩書きを問うと「ただの面白い人でいい」という。6月に延期されたライブについて、面白い人・梅垣と、演出を担当するすずまさに話を聞いた。
※この取材は、緊急事態宣言前に行われました。撮影時のみ、マスクを外していただきました。
■ただの面白い人でいいよ
──梅垣さんのショーは、梅垣さんが客席に下り、お客さんを舞台に上げ、とても密な交流をする演出が見どころでした。
梅垣 今回は、一切客席に入れません。
すずまさ 飛沫感染防止で、鼻から豆も飛ばせません。
梅垣 だからと言って、ただ歌って終わりなんてことはありませんよ。状況は変わりましたが、僕らは小劇場出身で、お金がない中でも工夫する経験をしてきました。お金をかければ何だってできるけれど、ないからどうしようか…と。人間って条件や縛りを与えられると、考えてアイデアが出てくるものだなとこの期間で特に感じています。
──演出について、おふたりでどのような相談をされましたか?
梅垣 すずまさは、コロナだろうがなかろうが、関係なしに新しいことをしようと言ってきます。喰始(ワハハ本舗主宰・演出家)もそう。演出家はだいたい面倒くさいことを言ってるくものです。僕は心の中で「面倒くさいな」と思いながらやっています。やらないと僕も成長しませんから仕方なく!
すずまさ (笑)。前回の梅垣の単独ライブは、2019年7月の還暦記念リサイタルでした。これまでを総括しつつ「60歳をすぎてもこのスタイルを貫くぞ」という意思表明も込めて、体力勝負のネタや裸のネタを多めにしました。そこで一区切りした後ですし、この状況もありますし、前回とは全然違う内容を予定しています。そして今までは客席になだれ込んで、わちゃわちゃになって終わっていましたが、今回は自分で完結するネタが95パーセントです!
梅垣 客席でごまかしていたところをごまかせなくなります!
──「ごまかす」とのことですが(笑)、お客さんを巻き込むにも技術がいりますよね? 梅垣さんをはじめ、ワハハ本舗の皆さんの巻き込み方は、一つの芸の域に達していると思います。
梅垣 昔、関西の大御所の方が、僕らのライブでやっているのは「客いじりや下ネタであって芸じゃない」とおっしゃいました。僕もそう思います。だってワハハ本舗は、面白いと思うことをやるだけで、芸だと思ってやっていないんですから。芸をおもちの師匠方や、芸人という言葉への思い入れがあるからこそ、自分が芸人だとも思っていません。
──では、ご自身をどのように認識されているのでしょうか。俳優ですとかエンタテイナーですとか……。
梅垣 それは、……ただの面白い人でいいよ。
すずまさ (声をまねて)「ただの面白い人で、いいよ」って……カッコいいなあ!(笑) 実際は、ディズニーランドのジャングルクルーズで、お客さんを煽る船頭さんみたいなものじゃないかな。劇場がアトラクションで、梅垣がリーダー。こっちを見たら面白いぞとか、こっちでお客さんがこんなことになっているぞとか煽る、アトラクション・リーダー。
梅垣 芸人でもエンタテイナーではないな、少なくとも(笑)
──今までと異なる条件下でアイデアを練り、新しく気づいたことはありますか?
梅垣 最近のお客さんは、ちょっと異常だったなと思いました。もともと僕のライブは、お客さんが少し嫌がるくらいのことをして(『ラ・ヴィ・アン・ローズ』を歌いながらお客さんの顔にラップ巻き、ラップ越しに梅垣が濃厚なキスをするなど)、逃げようとするお客さんがいて、それをみんなで笑うのが面白かったはず。でもいつの間にか、鼻から豆を飛ばしてもお客さんを捕まえても、客席はマッテマシタ! の雰囲気になるんです。ありえないでしょう? 鼻から飛んでくる豆を待ってましたで拍手で喜ぶんですよ?(笑) コロナは大変なことだけれど、自分のライブを考え直すきっかけになりましたね。
──感染症対策についてもお聞かせください。
すずまさ ホールでは、お客さんに検温、消毒にご協力いただきます。梅垣が客席に入ることはありませんが、公演ごとに毎日PCR検査をします。安心して観ていただけるように。客席は劇場ごとのガイドラインにそって。
梅垣 生理的な不安も与えてはいけませんよね。たとえばラップ越しのキスは、実際には接触にはあたらないはず。でも心理的に、笑えない時期だからやるべきじゃない。僕らはその辺りを、きちんと感じられないといけません。そのために新しいネタ、新しいやり方を考えて安心して楽しんでいただける準備をしています。
■気持ちよいから歌う。面白いからやる。
──公演には「シャンソンショー」と銘打たれています。シャンソンの魅力とは?
梅垣 シャンソンは歌っていて気持ちがいいんです。感情も入れやすい。だから一般の人でも女優さんでもシャンソンを歌いたがりますよね。金持ちの奥様のご趣味とか。
すずまさ 60歳を過ぎたしそろそろシャンソンでも…みたいな風潮もあるね。
梅垣 そう。作家でシャンソン歌手の戸川昌子さんは、「日本ではシャンソンが上品に扱われて、“おシャンソン” になっている。演歌にド演歌があるように、私がやりたいのはドシャンソンだ」とおっしゃっていました。おシャンソンみたいに扱われるのは腹が立ちますし、シャンソンにも色々な歌があります。当然好きなシャンソンも嫌いな歌もあります。
そんな中で僕がネタに選ぶのは、ドラマチックな本当に良い歌。良い歌ほど、バカバカしいこととのギャップで面白くなります。歌をバカにしていると言われたこともありますが、それは逆。僕はドラマチックで素晴らしいと思う歌ほど、ネタに選ばせていただいています。
すずまさ 歌に力があると、いい意味で、ネタをフォローもしてくれるよね。いい曲だから、2時間も聞いていられませんよ。
梅垣 豆を飛ばすだけでは、3分も持ちませんからね。それくらい歌の力は大事です。極端な話、本物のシャンソン歌手の方が豆を飛ばした方が面白いんじゃないですか? そういう方がいらっしゃらないから、たまたま僕がやっているだけで。
すずまさ いやいやいや(笑)そこはキャラもあるよ。梅垣が飛ばすから面白い! やっぱり梅垣は、豆を飛ばす第一人者だからさ、日本の豆飛ばし界の。
梅垣 「豆飛ばし界」って何? 他に誰がいるの? 教えて?(一同、笑)
■エンタテインメントの力、なんて言いたくない
──「エンタテイメントの力」という言葉をよく耳にしますね。
梅垣 その言葉、大嫌いなんです。コロナの状況を利用している感じがしてしまうので。僕自身、東北の震災の時に妙な正義感に駆られて被災地にいったりしました。大人は笑ってみてくれたあとに、子どもに「帰れ!」って言われる経験もした。生活の基盤がしっかりして、初めてエンタテイメントの力でしょう。
すずまさ さすがアトラクション・リーダー。じゃあライブにあるのは? アトラクションの力?
梅垣 アトラクションの力ってなんですか! お客さんの力ですよ!(笑) 僕が劇場の2階席や3階席まで走り回れるのは、お客さんの拍手や歓声から力をもらっているから。言い換えるなら、お客さんに走らされているんです。エンタテイメントに力があるとしたら、その前に、まずお客さんの力が絶対にある。最近はエンタテイメントの配信も増えていますが、生の舞台で得られて配信で得られないのは、リアルタイムのお客さんの反応と、そこから生まれるエネルギーの交換じゃないでしょうか。今回僕はステージで自己完結するネタで、唄と笑いだけを提供します。客席に降りることはしません。それでも客席のお客さんの力は欠かせません。終演後は僕もへとへとですが、来てくださったお客様にも「なんか疲れたけれど楽しかった」と笑ってほしいです。
──最後にお客様へメッセージをお願いします。
梅垣 楽しませる自信はあります。「お客さんと絡めないんじゃ、面白い事できないでしょ? とか思ってんじゃねえぞ?」って、書いておいてください。
すずまさ お客さんと絡めなくてもできるの?
梅垣 1人でできるもん。1人で歌えるもん!
すずまさ 1人でできるって! 梅垣にとっては挑戦ですよ?
──それほど、これまでお客さんに頼ってらしたんですね。
すずまさ 正直、頼ってました。
梅垣 頼ってました。
梅垣・すずまさ 頼ってばかりですみませんでした!(笑)
インスタグラムでの生配信は、2月27日(土)18:00と、2月28日(日)14:00の予定。『梅ちゃんの新春シャンソンショー2021~客席が恋しくて、冬~ 』は、6月19日(土)の東京公演を皮切りに、大阪でも開催される予定だ。インスタグラムでは、ライブと一味違う距離感のトークを、そして6月にはフル充電で挑むであろう劇場での生ライブを楽しみにしたい。

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