写真左から時計回りに、NARGO(Trumpet)、沖 祐市(Key)、茂木欣一(Dr)、川上つよし(Ba)、大森はじめ(Percussion)、谷中 敦(Baritone sax)、GAMO(Tenor sax)、加藤隆志(Gu)、北原雅彦(Trombone)

写真左から時計回りに、NARGO(Trumpet)、沖 祐市(Key)、茂木欣一(Dr)、川上つよし(Ba)、大森はじめ(Percussion)、谷中 敦(Baritone sax)、GAMO(Tenor sax)、加藤隆志(Gu)、北原雅彦(Trombone)

【東京スカパラダイスオーケストラ
インタビュー】
一緒に音が出せる喜びを謳歌した

“変身!”への恩返しを
盛り込みたいなと思った

今回『SKA=ALMIGHTY』に収録されている「ALMIGHTY~仮面の約束 feat.川上洋平」「多重露光 feat.川上洋平」を聴いても改めて優れたヴォーカリストであることを認識しますし、彼はロックバンドのヴォーカリストとして当代随一じゃないですかね? いい声だし、レンジも広いし。

谷中
そうですよね。彼的にはかなり苦労したとは思うんですよ。というのは、喉の手術をしたばかりで。術後初めてのレコーディングくらいだったんじゃないかな? だから、不安を感じながらやってくれてたと思うんですけど、今はもう手術のあとはよりパワーアップして前より調子良いみたい。

素晴らしいテイクだということですね。で、『仮面ライダーセイバー』とのコラボに関しては、昨今、ロックバンドがアニメのテーマソングなどを手がけることは不思議ではなく、わりと普通のことになってきているとは思います。ただ、その楽曲タイトルがそのものずばりというのは相当珍しいことではないかと思うんですよ。

谷中
あははは。
川上
でも、これは言われてやったんじゃなくて、こちらから“これでもいいですか?”って(笑)。

実はそうでしたか!?

谷中
はい。俺がやりたかったんで(笑)。そこはエンディングテーマならではということもありつつで。『仮面ライダー』自体がエンディングテーマをやるのは随分久しぶりらしくて、洋平くんと作る「ALMIGHTY~仮面の約束 feat.川上洋平」のほうは『仮面ライダーセイバー』のことも感じさせながら、もっと普遍的に2020年の時代性も盛り込んだ歌詞にしたいところがあったんで、あんまり『仮面ライダー』って感じにならないように、掘り下げないように作ったんですけど、逆にエンディングテーマは掘り下げて。『仮面ライダー』が今年50周年で、自分たちが子供の頃に始まったので、そこら中の空き地で“変身ごっこ”をずっとやっていたんですね。

ライダーキックの真似が全国的に禁止になった時代ですね(笑)。

谷中
ずっと“変身!”“変身!”ってね(笑)。なので、“変身!”にすごく力をもらっていたことを思い出して。“いつか変身して強くなれるかも”とか、“変身して友達を守れるかも”“正義の味方になれるかも”みたいな気持ちでいたので、“変身!”への恩返しをエンディングテーマの中に盛り込みたいと思ったんですよ。《世界を変える気骨あるなら/まず自分自身を変えろ『変身!』》という部分に集約されてるんですけどね。《『変身!』》の部分は川上に言ってもらったんです(笑)。
川上
あははは。最近の『仮面ライダー』では歌い込みの主題歌がなく、たぶん“変身!”も言ってないんでしょうね。
谷中
“変身!”って言っていいか、わざわざ訊きましたから(笑)。
川上
だから、僕ら世代のオマージュですね(笑)。

はい(笑)。「仮面ライダーセイバー」はスカパラの懐の深さで実現したナンバーだと思っていたんですが、歌い込みにしてもバンド側からの提案だったとは。

谷中
作曲した加藤隆志が曲を書いてきた時には《仮面ライダーセイバー》という歌詞が乗ることは考えていなかったわけですよ。でも、メロディーの一番最後にちょうど乗っかると思って。
川上
あははは。
谷中
そう思ったらそこから離れなくなっちゃって(笑)。
川上
一回、あのメロディーが思い浮かんじゃったら、もう戻れない(笑)。

さて、それ以外にも本作『SKA=ALMIGHTY』にはさまざまなアーティストとのコラボが収められておりますが、中でももっとも衝撃的なのは「会いたいね。゚(゚´ω`゚)゚。 feat.長谷川白紙」ではないでしょうか。これは問題作と言ってもいいくらい、面白いテイクになっていますよね。

川上
はい(笑)。もう僕の中で、今、長谷川くんが大ヒット中で。ずっとリピートで聴いてます。

そもそもどんなところから一緒にやるという話が持ち上がったんですか?

川上
NARGOがラジオでたまたま聴いた時に、あまりの衝撃に車を停めて聴き入ったって言ってましたからね。そのあと、2019年にGinza Sony Parkで開催した『MUSIC IN THE PARK 東京スカパラダイスオーケストラと作る音楽の森』で新人を呼んでライヴをやったりしてたんですけど、そこでNARGOが長谷川くんに声をかけて。で、NARGOが生のライヴを観たらものすごくイケイケで、“これだったらうちらと接点があるかもしれない!”と思ったのがきっかけでした。ずっと何か機会があればと思ってて、今回お声がけしたら向こうもすごく喜んでくれて。
谷中
当初はインストルメンタルの曲を再構築する、リミックスみたいなかたちで参加してもらおうと思ってたんですけど、途中から“歌もやってもらおう”となり、“それなら歌詞も書いてもらおう”ってどんどん長谷川くんにも入ってもらいました。
川上
弾きまくってるんだけど、実は歌がいいんですよ。トラックのすごさに目をとられがちだけど、ピアノだけで歌ってる曲があって、それがめちゃめちゃいい。

昨年リリースされたアルバム『夢の骨が襲いかかる!』ですね。私、その時、長谷川白紙さんにインタビューさせてもらったんですけど、そこで興味深いことをおっしゃってました。過去にはトランペットやトロンボーンなどを再現してできたソフトウェア音源を使って楽曲制作したことがあるけれども、それは決して軽率なカウンターみたいなものではないと。つまり、これは想像でしかないんですけど、彼の中にはどこかで生の管楽器を求めていたようなところがあったのではないかとも思っていて、そう考えると今回のスカパラとの邂逅は相当に興味深いもので、ある意味で必然と言えるものだったのかもしれないと思いました。

川上
ちょうど合致したわけですかね? 確かに作っている途中で“全員の楽器を何でもいいから適当に演奏した音をください”って言われて、わけが分からないけども(笑)、適当にパッと録って送ったんですよ。それがバラバラにされて再構築されて、あのトラックの中に紛れ込んでいるんでしょうね。

なるほど! しかし、「会いたいね。゚(゚´ω`゚)゚。 feat.長谷川白紙」はスカパラに長谷川さんが参加しているとか、長谷川さんをスカパラが支えているとかいうことではなく、がっつりとぶつかり合ってますよね? フィーチャリングとはありますが、“VS.”みたいなイメージです(笑)。

川上
初めにこの話でお会いした時に“どのくらいまでぶっ壊しちゃっていいんですか?”みたいなことを言われたんで、俺らは“とことんやってください!”って(笑)。
谷中
歌詞の話になった時も“100パーセント、そちらで書いてくれてもいいくらいだよ”って先に言っちゃったんで、わりと書いてくれました(笑)。

スカパラとしても、これまでのコラボレーションとはまた違った感触があったでしょうね。

川上
それはもう! これも音データをやりとりして作ったんですけど、最初に音がきた段階で“うわっ!”と興奮しました(笑)。
谷中
俺なんか、長谷川くんの音を聴いた時点で、自分が大好きなブラジルの鬼才でエルメート・パスコアールという人がいるんですけど、その人の音を聴いたら盛り上がるんじゃないかと思って、“エルメート・パスコアール、好き?”って訊いたら、“高校生の時にそのアルバムを繰り返し聴いてました”って(苦笑)。
川上
あははは。
谷中
大好きで掘りまくっていて、“毎日ディスクユニオンに通っていた時期にエルメート・パスコアールのものは全部買いました”って。“あぁ、なるほど”と。フランク・ザッパも好きだと言ってたし、しっかりいろんな音楽を聴いてて、しかも学校でも勉強しているわけじゃないですか? もう無敵です(笑)。

OKMusic編集部

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