現代社会に歴史が鋭く問いかける、ミ
ュージカル『マリー・アントワネット
』開幕~笹本玲奈のマリーを観た
ミュージカル『マリー・アントワネット』舞台写真
マルグリット・アルノー役の昆が、パンチの効いた歌声に詩情と痛切な哀しみとを感じさせる好演を見せる。革命を経験したことで、マリー・アントワネットが人間として成長を見せていくのと同様、マルグリットもまた人間として成長を見せていく、その過程がパラレルで描かれていくのがこの作品の見どころのひとつである。貧困にあえぐ昆のマルグリットは、マリー・アントワネットを“敵”として憎むところから始まり、その敵を排除さえすれば自分を取り巻くこの絶望的な状況に何かしらの解決が与えられると夢見ている。しかしながら、その“敵”さえもが社会の巨大なシステムの前に時として無残なまでに無力な姿をさらさずにはいられない一人の人間であることを知り、同じ女性として共感を寄せる、そこが、この作品のクライマックスである。小柄な昆マルグリットが、理想の実現よりも権力闘争を優先する、自分より体躯の大きな男性たちに、ときに痛めつけられながらも敢然と立ち向かっていく姿には心の内に快哉を叫ばずにはいられない。そして、ラストで、――今なお続く暴力の連鎖を人はどうやって止めることができるのか――と客席に向かって問いかける姿は、夜空にあって小さいながらもはっきりとした輝きを放つ星の如く、一条の希望の光を一身に担うかのようである――彼女の姿が、その問いのひとつの答えを示している。
ミュージカル『マリー・アントワネット』舞台写真
出演者 コメント
徹底された厳しい感染対策の中で進めてきたお稽古を経て、今日無事にこの日を迎えられる事を心から嬉しく思っております。
今後どの様な状況になるかは誰にも分かりませんが、一回一回の公演を『今日と言う日は今日しかない』という心持ちで務め、劇場にお越しくださったお客様に最高の舞台を全身全霊でお届けします。
このような厳しい状況の中ではありますが、再びこの作品をお客様にお届けできますこと大変嬉しく思っております。カンパニー一同、気持ちをひとつに稽古を重ねました。幕が開くということは決して当たり前ではなく、奇跡なんだと感じます。この奇跡に感謝をし、責任を持って舞台を務めたいと思っております。そしてご観劇くださったお客様の心の潤いとなれば幸いです。
健康で安全に。そして限られた時間の中で濃密に作り上げてきたこの作品をお客様に届けられるという「喜び」に満ち溢れています。
ここまで来るためにバックアップをして下さった全ての方々に感謝し、初日に挑みたいと思っています。
フランス革命という激動の時代、マリーという“人間”を心底愛し、命がけで救い出そうともがいたフェルセンを楽しみにしていただければと思います。
SPICE
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