アーティスト自身が旗を揚げ、日本の
クラシック界に新たな時代を~反田恭
平/株式会社NEXUS×イープラスの新事
業「エージェントビジネス」

イープラスが新しく始動した「エージェントビジネス」。契約アーティストたちそれぞれのヴィジョンを聞くインタビュー第三弾(最終回)は、ピアニストであり、自身が経営する「株式会社NEXUS」代表の反田恭平。レコードレーベル「NOVA Record」立ち上げた2019年より、イープラスとのタッグによって日本のクラシック界に新風を吹き込んできた反田。NEXUSが目指すもの、イープラスとの新たな展開について聞いた。
——反田さんが株式会社NEXUSをスタートさせて1年半が経とうとしています。イープラスとのエージェント契約を結ぶことで、どのような展開が期待できますか?
NEXUSには現在、ピアニストの務川慧悟や、ヴァイオリニストの岡本誠司が所属し、僕がプロデュースしているMLMナショナル管弦楽団のコンサートなどを行なっています。今回のイープラスのエージェントビジネスが、法人もパートナーになれるというのは正直すごいことだと思っています。会社✕会社によって、非常に大きな広がりが期待できます。
イープラスには、長年のチケット販売による蓄積された情報があります。クラシックが好きで興味を持っている人のデータが膨大にある。僕らの活動の一つとして、そういった方々に向けて、どのようなコンサートを作っていったらよいかを考えることも今の時代、そしてこれからの時代には必要不可欠です。ステージに立つ人間だから肌で分かる、感じる事があると思うのです。信頼できるスタッフがいるイープラスとともに、どんどん素敵で楽しい、もっともっと夢のあるコンサートを実現していきたいですね。​
NOVA Record設立会見の様子(左から、橋本行秀(イープラス)・反田恭平・務川慧悟 撮影/池上夢貢)
——コンサートの本数や内容も、充実したものとなりそうですね。
ゆくゆくは音楽祭なども開きたいですね。ヨーロッパに比べると、日本はまだまだ音楽祭の数が少ない。誰もが知るメジャーなものは4、5本でしょうか。人々がより良い音楽に触れる時間を増やすためには、その数を将来10本、20本にしていけたら……楽しそうですよね!
とはいえ、僕自身が大規模イベントの運営も直接行うことは現実的には難しい。でも、多くのジャンルで音楽祭を手掛けているイープラスとなら、協力しあって実現できると思うのです。大きな会場の手配や実際の運営など、アーティスト自身が考えなくていいことはまかせちゃおう、と。非常に素敵な関係性を築くことができると思うのです。
イープラスはこれからの音楽業界のあり方を積極的に模索しています。橋本会長は、可能性あるアーティストや会社との関係性をイーヴンに捉えて、お互いにやりたいことを実現できる場所を作り出したいと考えておられます。時代は進んでいますから、配信コンサートのように、21世紀型のコンサートのあり方も考えていかねばなりません。イープラスとともに、未来に向けた展開をしていきたいですね。まだ起こっていないことは、うまく言葉で説明ができなくてもどかしいけれど、「何かが起こる」という強い予感があります。これからのコンサートに、ぜひ期待していただきたいです。
イープラスが主催する『STAND UP! CLASSIC FESTIVAL』(2019年の様子)
——NEXUS=反田さんが考える理想的なコンサートのあり方とは、どのようなものでしょうか。
僕自身がアーティストであり経営者でもあるという、少し特殊な立ち位置だからこそ、コンサートに対して思うことが多々あります。
アーティストはひとりひとり価値観や考え方が違います。それゆえに、とても孤独な人生を歩んでいるとも言えます。ただ、新たなステップを目標とし、ともに音楽を作りあげているときには、お互いに「楽しい」という気持ちを共有していきたい。僕は、どう生きていくかを考えるうえで、つねに「楽しさ」を中心に置いています。楽しい仕事を仲間たちとしていきたいですね。自分たちが楽しんでいなければ決して、聴く人には伝わらないと考えています。​
そのためにも、アーティストは自分の考えをもっと出していくべきです。日本の場合、演奏家は自分の出演するコンサートでも意見を言わない風潮があります。もっとこうしたら良くなる、という発言をしない。海外のアーティストたちは、自分がコンサートの中心になるという意識があるから、自分の見せ方(魅せ方)を非常に深く考え、発言する人が多いんです。

2020年10月にはウィーン楽友協会デビュー。世界にその活躍の場を広げている(リハーサルより 写真:YaromyrBabsky) 

——アーティスト自身の発信力こそが、これからの音楽文化にとってますます重要なものとなりそうですね。反田さんはその意味で、ご自身の会社やレーベルを設立するなど、実際の行動でそれを示してこられたように思います。その原動力とは、いったいどこにあるのでしょうか?
きっかけはいくつかあるんですが、その中の1つは……忘れもしない他校の選抜定期演奏会でした。演奏会には学外のお客様もいらっしゃって、僕も聴きに行った日です。とあるコンサート企画団体の方も来ていました。たまたま僕が彼らの近くを横切った時、こんな声が聞こえてきたんです。オブラートに包ませていただきますが、中でも「俺たちで使ってやればいいんだ」と言う一言がとても耳に残り「これはヤバイな……」と直感しました。その人は、学生たちには褒め言葉をかけているし、一見悪い人にも見えない。でも僕は、その言葉を偶然耳にしたことで、その瞬間から気づくことができたんです。
何のために、我々は音楽を学んできたのか。作曲家の生きた時代背景や作品を大切に考え、自らの人生観とも照らし合わせ、お客様に喜ばれるような演奏をする場、それがコンサートなのではないか。経済力や会場を持った大人たちの「使ってやる」というような考え方は、僕にとっては興醒め。だとしたら、僕らは僕らでお客さんが喜ぶようなコンサートを作りたい……。その時初めてそう思ったのです。
コロナ禍では配信コンサートシリーズ『Hand in hand』を立ち上げ、多くのアーティストとともに演奏会を作り上げた。
若い音楽家たちへのメッセージ
まずアーティストとしての立場から言いますと、自分が何のために演奏しているのか、絶対に忘れないでほしい。何のため、誰のためという意識や、自分がどうなっていきたいかという目標があれば、ブレずに進んでいけると思います。
ビジネス的な面で言いますと、みんな会社を設立したほうがいいよ、って思います。ライバル会社? いいじゃないですか。下の世代から追っかけてきてくれる人たちもいないと、競争しようがないので、増えてくれればそれはそれで面白いし、きっと業界全体が底上げに繋がるキッカケにもなるんじゃないでしょうか。
僕は「自由度」というのを大切に生きていたい。猫みたいなところもありますが(笑)。特に、クラシック音楽を学ぶ日本の学生さんは、受け身の人が多いので、もっとガツガツいった方がいいんじゃないかなぁ。「自分はこのままでいいのかな?」という疑問が湧いてくるようなら、おそらくその状況は違うんですよ。自分がどういうアーティストでありたいか、それがファースト・プライオリティであってしかるべきです。
取材・文=飯田有抄

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