Reiがコロナ禍のなか作り上げた2ndア
ルバム『HONEY』、その変化と進化を
語る

ミニ・アルバム『SEVEN』から1年。Reiが2ndアルバム『HONEY』をリリースする。コロナ禍のなか、主に自宅でリモートでの作業を交えつつ制作されたこのアルバムは、非常にパーソナルかつインティメイト。これまで表に出さなかった内なる思いも曝け出した歌詞からは、シンガー・ソングライターとしての覚醒、または大きな成長を感じることができる。オープナーの「B.U.」や2曲目「COLORS」など、従来のイメージを裏切らない威勢のいいロックナンバーにも高揚させられるが、今回それらにも増して印象に残るのが、リード曲「Categorizing Me」や「Stella」「matatakuma」といったミッドテンポ~スローの曲だ。メロウだったり柔らかだったりのこうした曲が今までになく多くなったのも、果たしてコロナ禍の心理的影響あってのことなのかどうか。Reiに話を聞いた。
――ミニ・アルバム『SEVEN』からちょうど1年が経ちました。あの作品のインタビューの最後にアコースティック・ツアー『Mahogany Girl』とバンド・ツアー『7th Note』の意気込みを話してもらいましたが、まずアコースティック・ツアーはしっかり完走しましたよね。もうだいぶ前のような気がしますが、あのツアーはやってみてどうでしたか?
確かに遠い記憶ですね。弾き語りツアーというのは自分の底力が試されるようなところがあるので、これからもライフワークとして高めていきたいなと思いました。弾き語りって、すごく人間力が出るものだと思いますし、テクニックとエモーションのいいバランスがとれていないと成り立たないので。いつでもそれができる体質でありたいと思います。
――アコースティック・ツアーが1月26日に終わり、続いて2月22日の仙台からバンド・ツアーがスタート。ところが、その頃から日本でも新型コロナウイルスが猛威を振るい始めました。
始まって2本やったんですけど、中断しました。
――『SEVEN』はライブ感の強い作品であり、バンド・ツアーをやることで完成するという側面もあったと思うんです。なので、さぞかし悔しい思いをしたんじゃないかと。
残念でしたね。おっしゃっていただいたように、あのアルバムはライブでお客さんと一緒に完成させるという部分があったので。でも、いいふうに考えると、「コップは半分満たされている」じゃないけど、2本でもやれてよかったなというふうに今は思ってます。とはいえ、やっぱりAkasaka BLITZ公演がやれなかったのは悔しかった。私にとって、Akasaka BLITZでやることはひとつの目標だったので。
――特別な思い入れがあったんですか?
BLITZはお客さんとして何回も行っていたライブハウスだったので。あと、ずいぶん前にBLITZの目の前の広場で、チャラン・ポ・ランタンの前座のような形で毎週演奏していたことがあったんですよ(*2014年夏に赤坂サカス「sakasu広場」で行われていたフリーライブ)。
――それ、観に行ってましたよ。懐かしい。
そのときにAkasaka BLITZを見ながら、いつか自分もあそこでワンマンライブをやりたいと思っていたんです。
――多くのミュージシャンがコロナによって思い通りの活動ができなくなったわけですが、ツアーの中断が決まったとき、Reiさんはどんな心境でいたんですか?
巨大で透明な怪獣が全世界を襲っていて、しかもその正体が見えないということの不安が大きかったです。どこまでのパンデミックになっていくのか。自分は音楽を生業にしてこの先も続けていけるのかどうか。とても不透明で、それが怖かったです。
――今回のアルバム『HONEY』のリミテッド・エディションに『Days of Honey』というドキュメンタリーDVDが付いていて、そのなかのインタビューで新型コロナ感染拡大について「最初はわりとドライに捉えて、冷静に俯瞰して見ているつもりでいたけど、実際はまわりの誰よりも打撃を受けていた。まわりのひとに心配されるぐらい、柔らかなハートがズタズタになった」と話してますね。
取り乱さないようにしていたつもりだったんですが、実際はすごく敏感で柔らかいハートを持ってしまった自分に気づかされました。よくも悪くも表現者の体質になってしまっている自分というか。
――なんらかの表現をしているのが当たり前の自分がいるということ?
そうです。常に些細な心の揺れをキャッチして、それを曲に落とし込まないと、っていうマインドで生きているので、このような大事態が起きるとものすごく影響を受けてしまう。表現者になっちゃったんだなという情けなさと誇り、いろんな感情が入り混じりました。本来ならば、もっとタフに生きなきゃいけないんだろうとは思うんですよ。だけど音楽を作るには敏感な私でいなきゃいけない。そういう葛藤が生まれました。
――こういう事態になったとき、鈍感力で乗り切るというのもある意味ではひとつの手だと思うけど、表現者である以上、それはできないという。
はい。普段から些細なことに反応してしまうところはあるんですね。例えばこの前も渋谷の街中で、倒れている自転車のライトがチカチカ点滅しているのを見て、それだけで私、心打たれて。10分くらいずっと見ていたんですよ。あとは、お部屋のなかで締まりきってない蛇口から水がチョロチョロ流れているのに見入っちゃって、それの意味を考えてしまったり。もともとそういうところがあったりするので、これほどまでに大きな出来事が起こってしまって、受け止めきれなくなっていたのかなと思いました。
――パンデミックによって日本ではライブハウスが目の敵にされるような状況も生まれました。旅行はしましょう、でもライブを観に行くのはやめましょう、みたいな。そうしたなかで、音楽の役割、ミュージシャンの役割みたいなことを考えたりもしましたか?
いろいろ考えを巡らせたんですけど、最終的に、幸せでないのに生きる意味はあるのかということを考えました。そう考えたのは、生きているだけですごく贅沢な気持ちになったからなんです。生きているだけで贅沢なのに、私が人生を楽しんだり、音楽をやったりする意味はあるのかと考えた。けど、それって逆に考えると、楽しんでないのに生きる意味ってなんだろう、ってことにもなるんですね。やっぱりみんなにとってエンターテインメントは心の潤いだし、それがあるから頑張れるってところもある。そういうふうに自分が思ったので、暗闇のなかで光を見つける術を失ったひとたちのためにも音楽は続けなきゃいけない、という結論に辿り着きました。
――アルバムを作りながら、そういう結論に達することができたんですか?
アルバムが完成した時点で辿り着いた結論です。自分は今回の作品作りがなかったら、たぶん壊れていたんじゃないかと思う。でも作品を完成させるという目標があって音楽にすがりつくことができたし、改めて音楽の必要性を生活のなかですごく感じたので、そういう結論に至りました。
――アルバム『HONEY』を作り始めたのは、いつですか?
『SEVEN』を作り終えてすぐです。それから東京モード学園さんのCMのお話をいただいて「What Do You Want?」を作ったんですが、それが『HONEY』に収録されることはその時点で自分のなかで決まっていて。春頃には確か半分くらいの曲が書けていたと思います。
――『SEVEN』を作り終えた段階でもう、2ndアルバムはこういうものにしようというイメージがあったんですか?
その時点で「ネイキッド」というキーワードと「ネオ・トラッド」というキーワードがありました。「ネオ・トラッド」はサウンド面。「ネイキッド」は言葉とかメッセージの面。自分を露わにするという意味でそのキーワードを掲げていて、それは完成したものを聴いてみても、貫き通すことができたなと思います。
――『SEVEN』を鑑みて、もっと曝け出したいという気持ちに至ったんですか?
そうです。これまでは英語で表現したり、日本語であっても曖昧な表現を使って聴くひとの想像力を掻き立てるやり方をしてきたんですけど、今回はあえて直接的な表現を使ったり自分の弱みや傷ついている様を臆せず見せたりすることで、より深く繋がれたらいいなという意図がありました。
――コロナがあり、ステイホームの期間があって、そういうなかでよりネイキッドな自分を見せていこうという思いに至ったんだろうと僕は想像していたんですけど、コロナ以前からそうしようと決めていたわけですね。
はい、そうです。
――そもそもどういう思いから「ネイキッド」というキーワードが出てきたんですか?
着飾ることや世界観を作り込むことはすごく楽しいことで、これからもやっていくことだろうとは思うんですけど、今回は今まで見せていなかった部分を曝け出すことによって、どういう反応が返ってくるのかということに純粋に興味がありました。
――曝け出すのは、勇気のいることでもありますよね?
そうですね。ある番組でハイム(L.A.出身の3姉妹によるポップ・ロック・バンド)とお話をする機会がありまして、「寂しさや弱さを出すのは表現としてエゴが入っているように思って躊躇してしまうことがあるけど、でもそういう部分を見せたことによって、どこかで同じ気持ちを抱いているひとが共感してくれたり慰められたりすることもあるよね」というような会話がなされたんです。そのときに、「ああ、そうかもしれないな」って思って。もともと曝け出したい気持ちもあるにはあったんですけど、彼女たちとの会話によって踏ん切りがついたんです。
――今作は今までになくスローな曲やメロウな曲が多く収録されています。それも僕は、コロナで気持ちが弱っていたことの影響であり反映なのだろうと感じていたのですが、そんなに単純なことではない?
たとえそうであっても認めたくないというのはあります。かつての私は、弱いところを認めることが恥ずかしかった。傷ついてることはかっこ悪いと思っていたし、ひとに隠すべきことだと思っていたんです。でもそうじゃないと思い始めたというか。
――それはコロナ禍においての気づきだったんじゃないですか?
そうかもしれません。不安な状況のなかでお友達とか愛するひととコミュニケーションをとって明るい言葉を交わすというのは、普通にみなさんがすることだと思うんですけど、お互いに弱みを打ち明けたことで元気が出たということもあったりして。明るい会話をすることだけが未来に向かうための術じゃないっていうのは気づきでした。今までの自分はそういう解決法を持っていなかったんですけど、近しいひとにネガティブな部分を見せるというのも方法のひとつなんだなって。それは学びでしたね。
――DVD『Days of Honey』のなかで、落ち込んだりする部分も含めて「この感情をドキュメントしないといけないと思った」と話してますよね。そのことによって当初もっていたアルバムのビジョンやテーマから多少変わっていったところはありましたか?
初めに考えていた「ネオ・トラッド」と「ネイキッド」というテーマと、「感情をドキュメントする」ことというのは、むしろすごく寄り添いあっている要素じゃないかなと思いました。これまで曲を書くにあたってのインスピレーションの源は、視覚的なものが多かったんですね。でも『HONEY』を作るにあたっては「今」とか「想い出」とか、そういうものを記録に残したいという気持ちも入ってきて。そういう目的意識のもとに曲を書くことが増えたんです。「ドキュメントする」というのは、その一部ですね。
――こうして話を聞いていても思うし、アルバムを聴いても思ったことだけど、「こうじゃなきゃいけない」というReiさんなりの縛りから解放されたようなところが多分にある気がします。
エンターテインメント然としていないといけない、っていうのはありました。それは固定概念だったのかもしれないし強迫観念だったのかもしれないけど、そこが覆された感じが確かにあります。生き様とか日々の思いとかを写真のように切り取るという音楽の作り方を初めてやってみた作品にはなっていると思います。
――これからもそういう作り方をしていきたいと思いますか?
どうでしょう。今回の作品を聴いてみんながどう感じるのか、その反応次第というところも少なからずあると思いますけど。ただ、このやり方のほうがしんどいという感覚があったので、まだわからないです。心をえぐりながら作品にしているという感覚がすごくあったので。
――どっちがいいとは一概には言えませんからね。
例えばBLACKPINKとかBTSのように曲提供されて歌っているアーティストのエンターテインメントの形も私はすごく好きだし、作り込まれた演出で音楽を発信する形もいいと思うんです。でも一方でシンガー・ソングライターが自分の心の内を吐露している作品も好きなので、たぶん自分の曲のなかにはその両方が存在していくんじゃないかと。ただ今回、新しい手札を手に入れた感覚はありますね。
――このアルバムを聴いて、ああ、シンガー・ソングライターになったんだなと感じました。もちろん今までも自作自演というスタイルの意味ではシンガー・ソングライターだったけど、心の内も曝け出して曲を書くという真の意味でのシンガー・ソングライターになったというか、それをやる覚悟を決めたというか。そのスタートの作品なんじゃないかと。
はい。
――DVD『Days of Honey』のなかで、「裸の気持ちを曝そうと思った。それをしたところで失うものなんてないから」とも言っている。そう思えたことが大きいんでしょうね。
そうですね。もともとライブはいつも「これが最後だ」という気持ちでやっているタイプだし、作品もそうだったんですけど、今年はパンデミックでよりそういう思いが強まって、失うものなんて何もないんだと感じたんだと思います。最後のつもりでやりたいことを全部やるべきだというか。
――でも、「やりきった」感より、「ここからもっと」という印象のほうが強かったですけどね。
掘り始めた穴があったとして、まだまだ先まで掘れるぞという感覚はありました。掘るのはしんどくもあるけど、楽しくなってきた感じもあるんです。
――歌詞における言葉のチョイスの仕方も以前とは少し変わってきてますよね。
今回、心を露わにするために言葉を精査しました。例えば同じ青でも、それは緑よりなのか黄色よりなのか紫よりなのかで意味が変わってくる。そこを精査したら、これまでにないくらい自分らしい言葉に出会えた感覚がありました。
――それは日本語に関して?
特に日本語の表現ですね。それを時間かけて形にすることで、自分がどう感じていたのか発覚するということもありました。
――「どうやら私の柔らかなハートが傷ついてるぞ。じゃあ、どう傷ついているのか言葉を見つけて、その状態を知ろう」というような。
そうです。同じ傷でも、やすりで削ったような傷なのか、内出血なのか。広い範囲で傷んでいるのか、ピンポイントで傷んでいるのか、とか。そういうところを区別することでリアルな言葉を紡ぎだせたかなと思います。
――先に言いたいことをバーっと書きなぐって、それからそれを的確に表すべく言葉を探していくというやり方をするわけですか?
そういう書き方をした曲もあります。それと、毎日感じることを書いて、それをスタッフと共有して歌詞に落とし込んでいったものもあります。以前はメロディとの兼ね合いで言葉を紡いでいたんですが、メロディにとらわれなければもっと自由に言葉を紡げるんじゃないかという感覚が芽生えました。去年の秋ぐらいから、書きなぐったものを制作スタッフとシェアするようにして、「ここをピックアップすると面白いんじゃないか」といった意見をもらったり。曲にする前提で書くとなると、どうしてもオチとか構成を考えてしまう。そうすると自意識が出てしまって、どう受け取られるかを気にした言葉になってしまうんですよ。でも形にすることに拘らず、断片的な感情を記録として書いていくと、そのなかに自分でも思いがけない面白い言葉が見つかったりする。衝動でバーって書いて、それをあとから引きの絵で見て音楽にするというやり方です。
――なるほど。そうしてできあがったアルバム『HONEY』は、確かに心の痛みが表れた曲もあるけど、決してヘヴィな聴き心地ではない。聴いていて純粋にいい気分になれたり、癒されたりする感覚があったりします。だから何度でも聴きたくなる。
繰り返し聴きたくなる作品にしたいということは意識しながら作曲していました。自分が好きな作品もやっぱり繰り返し聴きたくなるものだし、今年は特にそういう音楽によって自分自身が救われたので。ギターの音も歪んだものよりは、クリーン・トーンのものだったり。ネイキッドな音色を選んでました。
――歪ませることは前作『SEVEN』で十分にやったし。
はい。そことのコントラストも意識しました。
――前回のインタビューで、1stアルバム『REI』は“好奇心旺盛な女の子のイメージ”だと言っていて、それに対して『SEVEN』は“社会の荒波にもまれながらも捨てられない石みたいなものを心に持っている、ちょっと頑固で一筋縄じゃいかない女の子というイメージ”だと話してましたよね。じゃあ今作はというと、“頑固さ”みたいなものはなくなってるなと僕は思ったんですよ。
ああ、なるほど。
――それは自分でも意識していましたか?
頑固さをなくそうというようなことは意識してなかったです。ただ、寂しくて好きなひとに会いたいとか、そういうシンプルな気持ちが湧き出てきたことでそうなったのかなと思います。ひとを大切にしたいという気持ちや、愛を求める気持ちが色濃く反映されたアルバムかなって思いますね。例えば「COLORS」のような強い曲にも、心細さとか、誰かと一緒にいたい気持ちとかが含まれているし。以前から自分が大切にしている自己愛というテーマも「B.U.」や「ORIGINALS」といった曲でより一層深めることができたという手応えがあります。
――サウンドに関しては、さっき「ネオ・トラッド」というキーワードがあったことを話されていましたが、それはどういったところから出てきたものなんですか?
ネオ・トラッドは、オーセンティックなサウンドと、打ち込みだったりとかの現代的なサウンドのハイブリッドという意味で、それは「What Do You Want?」がひとつの基準になりました。そして、それがほかの曲のアレンジをする際にも参考になりました。
――Reiさんのイメージする「ネオ・トラッド」は、作品で言うと例えばどんなもの?
トム・ミッシュの『Geography』がそうだし。ホンネの作品もそうですね。あとはマムフォード&サンズとか、ザ・ブラック・キーズとか。
――なるほど、よくわかります。ロックならロックで伝統的な部分も残しながら……。
残しながら、ちゃんと時代にチューニングしている。そういう感じですね。
――リード曲「Categorizing Me」の話をしましょう。いま名前が出たトム・ミッシュの曲にも通じる聴き心地のよさを感じられる曲で、個人的にはReiさんの全ての楽曲のなかで一番好きっていうくらい気に入ってます。
わあ、めっちゃ嬉しい!
――どうしてこういう歌詞を書きたくなったのかってことをまず聞きたいんですけど。“帰国子女のギター・ガール”といったふうに短絡的な分類をするひとたちに対してイラっとするようなところがあったんですかね。
ふふふ。まあ、そういうところも確かにありました。でもそれだけじゃなくて、ブラック・ライヴズ・マターとかフェミニズムとかLGBTQのムーヴメントとかがある世の中のいまの流れにおいても、「Stop categorizing me」って感じているひとはたくさんいるんじゃないかと感じていたので。差別に対しての自分なりの疑問提起です。それを、よりエンターテインメントとして気軽に聴ける形で提示して、みんなに改めてそういうことを考えてもらうきっかけが作れたらいいなと思って書きました。
――2020年は特にアメリカで人種やジェンダーなどさまざまな差別が顕在化した年でした。
そうですね。私はニューヨークという街で育ったり、国際色の強い学校に通ったりしていたので、みんな違って当たり前という価値観を持ててきたわけですけど、個を尊重してもらえる環境にいないで苦しんでいるひとは世界中にたくさんいる。でも色眼鏡をはずして、そのひとの本質を見極めようとすれば、もっと美しい人間関係が築けるはずだってことを改めてステイトメントしたかったんです。
――そういうステイトメントをゴリゴリにするのではなく、柔らかな言葉とメロディとサウンドに乗せているところがいい。
ありがとうございます。ノリのいいギターが前面に出た曲もアルバムに入れているので、そういう曲をフィーチャーしてMVを撮ることも考えました。でも、自分のまわりの身近なスタッフが「Categorizing Me」をすごく支持してくれて、私にしか歌えない歌だと言ってくださったので。ちょっと勇気も要ったんですけど、どこかで傷ついている誰かに伝わればいいなと思って、この曲をフィーチャーすることにしました。
――こういったミッドテンポの曲がリードになったこと自体、フレッシュだし、実に正しい判断だったと思います。間奏のギターリフも気持ちよくて、何度も聴き返したくなる。
2020年は日本のシティポップや歌謡曲が再評価された年でもあったし、私も(山下)達郎さんの曲とか、好きな曲がいっぱいある。決してテクニックをひけらかすことなく、メロディセンスとかそういう部分で惹きつけるんですよね。そういうステージに私も行きたいという想いがあったので、そういうことを心掛けて作ったギターソロになっているんです。
――それから6曲目の「Broken Compass」。インストですが、少し気怠くてメロウな感じのこの曲もすごくいいですね。ステイホーム時期のReiさんの心象が反映されているんだなと感じました。
パンデミックによって、世界の仕組みが一回白紙に戻った感覚があって。もともとの巨大なコンパスが壊れてしまって、それぞれが自分のコンパスを持つようになったというか。そういう変化の感覚を落とし込んで、曲の途中で4拍子から3拍子に変わるようにしたんです。
――そんな「Broken Compass」から地続きのムードで7曲目「Stella」が始まります。これはReiさん史上最もスローな曲ですよね。
そうだと思います。誰かと手を繫いで外を出歩くことさえ憚られる世の中になってしまって、そういう世相も曲で表しています。でもそうじゃなくても普遍的なラブソングになっているんじゃないかと。
――こういったミディアムテンポやスローの曲が今作においてはとりわけ新鮮で自分はとても気に入っているんですが、そういう意味で11曲目の「matatakuma」も素晴らしい。このようなシンプルなラブソングは今までなかったですよね。それは、書けなかったのか、それとも意識的に書かなかったのかわかりませんが。
どっちなんだろ。私もわかりません(笑)。
――こういう世界になって、出てきた曲なんだろうなとは思いました。
そうですね。
――この曲は、リモート・レコーディングではなかったそうですね。
みんなで「せーの」で録りました。「せーの」で録ったのは「matatakuma」と、あとはSOIL&“PIMP”SESSIONSと一緒にやった「Lonely Dance Club」くらいですね。
――最後の曲はインストの「my honey pie」。この曲で終わることもあって、結果的に優しさの感じられるアルバムになったという印象を受けました。たいへんな世の中だけど、それでも人生は続いていくのだし、だからこそ自分にとっての大切なひとと一緒にいたり、そのひとを思ったりすることのあたたかさを大事にしたいという思いが感じられるというか。それに、いつもよりReiさんが近くにいる感じがするアルバムでした。
嬉しいです。
――最後にアルバムのアートワークについて聞かせてください。今回は黄色が貴重になっていますが、このジャケットはどういうことを表現したかったんですか?
まずスタンダード・エディションのほうは1(ONE)のポーズをしてますけど、それは「秘密」にかけたもので。HONEYには「秘密」とか「親密」という意味もあるってことと、あと、HONEYという言葉のなかにONEという言葉が入っているので、それを示すポージングでもありました。それから黄色と紺色のコントラストのジャケットになってますが、紺色は「あなた」を、黄色は「私」を示していて、そのコントラストであなたと私の距離を示しています。
――なるほど。『SEVEN』ではカラフルな毛布のようなものにくるまれていたけど、今回(のスタンダード・エディションのほう)は薄着で、そこも対比的で面白い。
はい。今回はリミテッド・エディションでタートルネックを着ていて、スタンダード・エディションではタンクトップを着ているので、ファッション用語でいう片方はSS(Spring/Summer)、片方はF/W(Fall/Winter)で一年通して聴いてもらいたい想いを込めました。そういった小さな秘密をたくさん潜ませた作品になったので、そのあたりも楽しんでもらえたら嬉しいですね。

取材・文=内本順一 撮影=高田梓

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