【ヨルノアト インタビュー】
抒情的なコード感で魅せる
ヨルノアトのオルタナロック
売れそうにないものを
どうやって売るか一生懸命考える
4年間活動してきて、バンドとしてどんなふうに成長できたと思いますか?
自分自身、オルタナの門外漢というところからスタートしたんですけど、大阪のオルタナでヨルノアトって言ったら、それなりに知ってもらえるようになったので、単純に知名度は上がったのかなとは思います。
音楽的にはいかがでしょうか?
自分たちのスタイルはできてきたと思います。今現在はその上でどういう曲を増やしていくかということを話し合いながらやっていますね。毎回ライヴでやるのはだいたい5曲とか6曲とかなので、“3曲目に代わりにスタメンになる曲が欲しい”とか“こういうライヴ構成を考えたら、こんな曲が欲しい”みたいな感じで曲を増やしていっています。
曲をサブスクで公開してみていかがでしたか?
良かったですね。儲けという意味ではつらいですけど、とはいえCDがプレス費と在庫を抱えることを考えると、一長一短です。ただ、ライヴが終わるとサブスクの数字が跳ねる。ライヴを観てCDを買うほどではないにしても、帰り道にサブスクで聴いてもいいよって感覚を持ってもらっているのかなと思います。地方のブッカーさんにもチェックしていただきやすくなって、声もかかるようになりましたしね。そういう時代なんでしょうね。ライヴハウスに行って、ライヴして、ブッカーさんにCDを渡して…という時代では、もうない気もしますね。
音楽シーンはまだまだ変化していくと思いますが、ヨルノアトは今後、どんなふうに活動してきたいと考えているのでしょうか?
ヨルノアトがやっている音楽を好きな人って、20人にひとりくらいだと思うんですよ。それをピンポイントで狙うっていうのはなかなか難しい。とにかく広い範囲に伝えていく必要があるので、単純に知ってもらう手段を来年に向けて増やしていきたいと思っています。これまで接点を持てなかった人にも接点を作れば、気に入ってもらえる可能性は確実にある。もちろんライヴが一番説得力があると思うので、これからも変わらずライヴはやっていきますが、コロナ禍以降ライヴハウスに足を運ぶお客さんの数が減ってしまったことを考えると、ライヴとはまた違う展開を模索しないと、2021年もよく分からないまま過ぎると思うので、できるだけ多くの人に知っていただける活動をしていきたいですね。
オルタナファンじゃないリスナーにアピールできるヨルノアトの魅力は、どんなところだと考えていますか?
僕らの音楽は20人いたら、19人からは“キャッチーなサビがない”や“一緒に歌えるパートがない”、“手をあげてのシンガロングがない”とか、そういう理由で落とされていくと思うんですけど。1人くらいは“なんでこの人、歌の最中にこんなにしゃべっているんだろう?”とか、“コード感の鳴りが気持ち良い”とか、そういうところに引っかかってくれると思うんですよ。多くの場合、語りの部分が注目されることが多いんですけど、僕らの魅力は抒情的ともエモいとも言えるコード感なので、その鳴りを気持ち良いと思ってくれる人に出会えたら嬉しいですね。 “○◯みたい”と言われることがあまりないのは、コード感が独特だからだと思っていますし、最近特にライヴハウスのブッカーさんやイベンターさんから、“楽しみ方はコード感なんやね”って言ってもらえるようにもなってきたんですよ。
ヨルノアトならではのコード感を言葉にするとしたら?
あぁ、なるほど。言葉本来の意味のエモいですよね。その意味では語りの部分もエモいと思うのですが、一緒に歌えるとか、手をあげてシンガロングできる曲を作ってみようとは思わないですか?
思わないですね(笑)。それをやり始めると、楽しくないし、それをやるんだったら音楽なんて聴くだけにして普通に働いとったらええやんと思います。自分らが好きなことをやりたいんです。僕らはいわゆるマーケットインの思考に逆行しているというか、プロダクトアウト、前時代的というか。“こんなもんを作りたい”というものを作って、その上で、この絶対に売れそうにない音楽をどうやって売るかを一生懸命考えるというスタンスなので、市場のニーズに合わせようという考えはまったくないですね。
最後に今後の予定を教えてください。
ライヴハウスが営業を再開して、いろいろ声がかかり始めているので、しばらくはライヴハウスが通常営業に戻っていくためのお手伝いをしたいと思っています。他のバンドのライヴに呼ばれたらそこでも力になりたいですし、結成5周年を迎えるまでは、そういった感じでやっていって、5周年のイベントをやったら、そのあと年末までは主体的に動いていきたいと思って、いろいろ計画しているところです。
取材:山口智男
ヨルノアト:2016年5月22日に結成。“OSAKA ALTERNATIVE ROCK”を標榜し、抒情感あふれるロックを展開している。18年よりヨルノアトが中心となってコンピレーションアルバム『Invitations』を定期的に制作し、現在第4弾まで発売中。コロナ禍でも精力的に活動を展開し、11月7日行なわれた自主企画イベントでは、ソーシャルディスタンスを守った収容人数でソールドアウトを達成した。ヨルノアト オフィシャルHP
「200829独白@戦国大統領」
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