「帰るところは、生の舞台」 が〜ま
るちょばが語る最新公演とパントマイ
ムアーティストとしてのいま

昨年約20年間のデュオ生活に終止符を打ち、ソロのパントマイムアーティストとして活動をしている、が〜まるちょばが2021年1月に『が〜まるちょば LIVE 2021STORIES“ PLEASE PLEASE MIME”』を上演する。テレビでよく見るトランクを使うショーではなく、舞台芸術としてストーリー仕立ての作品のみを上演するという。どんな舞台になるのか、が〜まるちょばが合同会見で思いを語った。
パントマイムの力を信じているし、愛している
が〜まるちょば
ーー今回の舞台では、おなじみのトランクを使わないそうですが、その理由は?
今まで20年近く、2人でパフォーマンスと舞台作品をやっていました。パントマイムと呼べるかどうか分からないストーリー仕立てのパフォーマンスと、が~まるちょばがモヒカンではない姿で、言葉を喋らない役者として存在して舞台で表現する作品と、二足の草鞋でやってきました。
そのうちに、どんどん時代が変わって、情報が早くなって、SNSが広がっていくと、どうしてもストリートパフォーマンスが先走りして、が~まるちょばが「モヒカン姿でストーリーをやる、2人組の面白い存在」として認識されていって。もともと僕は、自分自身はパントマイムの人だと思っていたのだけれど、パフォーマーとしての存在が先走ってしまったことに、ちょっと困惑しましてね。
世界中まわっても、パントマイムというのがメジャーなものではなくマイナーなもの、ひどい時にはつまらないものとして認識されていて、それがものすごく悲しくて。僕自身はパントマイムの力を信用しているというか、愛しているので、それを世の中の人に知ってもらいたいと思っているんです。
みんな、知らないだけ。確かに僕らみたいにパントマイムの表現者のせいでもあるんですけど、どうしてもみんなマルセロ・マルソーさんのイメージが強いみたいで。彼も本意ではないと思うんですけど、彼の表現を「イリュージョン」として捉えてしまう。ないものをあるように見せる、マジックパフォーマンスとして認識されてしまう。そんなパントマイムにものすごく不満がある。トランクを使うパフォーマンスを排除して、いちパントマイムのアーティストとして舞台に立って、認識してほしいという思いがあって、そういう経緯になりました。
『指環』を再び。ショートスケッチの新作も
が〜まるちょば
ーー具体的にはどんなストーリーになるのでしょうか?
 
内容がすべて決まっているわけではないので、言えないことはありますけど、基本的に今のようなモヒカンのスーツ姿ではほとんど出てきません。通例ですと上演時間は2時間。ナマモノですから2時間超えることもありますけどね。カツラを被って、衣装を変えて、言葉をつかわず、セットも使わずストーリーを展開していきます。
正直、見てもらわないと分からないと思うんですけど、笑うとか泣くとか、心が動くということですね。言葉を通じてお客さんに伝えるのではなく、僕が体一つで動いて、役を演じることで、お客さんの心が動く。僕の心が動くからお客さんの心も動くんですけど、そういった表現をして、楽しむものです。
今回は『指環』という作品をもう一度やらせてもらおうかなと思っています。これは40分~45分ぐらいの1つのストーリーです。タイトル通り、指環がキーポイントになるストーリーで、今まで見てくれた人の中には、涙してくれる人もいたりはします。それだけではなく、5~10分程度のショートスケッチもやります。僕一人が演じますけど、出てくるキャラクターは違います。おじさんだったり、子供だったり、女性もあり得る感じですね。
が〜まるちょば
ーーなぜ『指環』をやろうと思われたのでしょう。何かアップデートする部分があれば教えてください。
なぜ『指環』をやるかというと、単純に見てもらいたいからですね。前回は少し小さめの小屋(劇場)だったので、見え方も変わってきただろうし、今回は大きな劇場でやらせてもらえるので、そこで改めて『指環』という作品を見てもらいたいなという思いが第一。パントマイムを知らない人たちに『指環』を見てもらうと、パントマイムへの意識は絶対変わってくれると思う。笑いの要素、心を動かして感動する要素が詰め込まれている『指環』がいいかなと思って選んでいます。
アップデートという意味では、常にアップデートですね。みんなそうだと思うんですけど、作品って育つんですよ。実は『指環』を最初に作ってから、10年以上経っているんです。最初の頃の作品に比べると全然変わってきている。変わるのは当たり前。より良いものを舞台の上でやりたいし、そういう思いが作品を育てるので、絶対にアップデートします。
近々でやったのは去年。そこから僕は2つ年をとるわけです。2つ年をとったやつがやる『指環』と、2つ若いやつがやる『指環』ってやっぱり違う。そういう意味でのアップデートも必ずありますし、もちろん見直してブラッシュアップをさせてもらいます。
――ショートスケッチは新作もあるのでしょうか。
やります。新作をやらなきゃいけないなぁと思っている。なぜかというと、僕が育たないから。新作を作るということがパントマイムを学ぶことの一番の近道なんですね、僕の中で。僕の仕事の第一は作品を作ることなので、新作をやらないという選択肢はないなと思っています。
自分が帰るところは、生の舞台だから
が〜まるちょば
ーーコロナ禍でエンターテイメント業界が苦境を強いられる中、舞台に立つ意味はどこにあると思われますか。
パントマイムというと同業者は少ないけど、エンターテイメントという意味でくくりでいうと、大変な状況になっていると思います。今までとは変わってきている。人と人との空気を伝える、感覚を伝えるライブではなく、画像を通してやっていく形に変わってきているとは思うんですけど、やっぱり人を目の前にしてやる舞台に敵うものはないと思っています。それがあるから、舞台側の人間も育っていくと思っていますので。もちろん新しいものは生んでいかなければならないとは思っているんですけれど。
(生の舞台を)なくしてはいけないというか。映像の中での表現も、もちろん考えなくてはいけないと思うんですけど、なんていうのかな、パントマイムって言葉を使わない。だけど、言葉以上のものが伝わる。それが、画面を通してできるのか。画面って、やっぱり誰かが切りとったものが、お客さんや見ている人の前に届けられる。でも、舞台は切りとる部分はお客さんの選択で。全く違うんですよね。だから(舞台での表現を)続けていかなければならないんだろうなという思いがあります。舞台あっての僕という思いがあると思いますね。帰るところが映像なのか、舞台なのか、いろいろありますが、僕の場合は舞台。人を目の前にしてやることが、僕の帰るところになると思っています。 
が〜まるちょば
ーー前回の公演では、R15指定で年齢制限をされていましたよね。今回は未就学児童不可です。年齢制限を引き下げられた理由は?
冒頭に申し上げた通り、パントマイムへの思いが僕にはありまして。どうしてもSNSで先行されている、が〜まるちょばの存在=パフォーマンスというイメージを払拭したいと思って。前回、R15指定にしたのは、もちろん子どもの番組にお世話になっているし、パントマイムは子どもでも楽しめるんですけど、海外に行ったとき、海外の人って舞台に足を運ぶ習慣があるなと思ったんですね。テレビでもSNSでもなく、舞台芸術を楽しむ習慣。これ日本にあるかな?ないかなと思っていた。10年以上前の話ですけど。
それで、日本に帰ってきて、舞台よりもテレビだよなと思っていたけど、いやいや、歌舞伎あり、落語あり、人気のある舞台に足を運ぶお客さんの姿を見て、あぁ日本も捨てたものじゃないなと思ったんです。即日ソールドアウトの舞台もあるし、舞台に足を運ぶお客さんもこれだけいる。だから、舞台を足を運んでいる人に、パントマイムを知ってもらいたいなと思ったんです。
僕が舞台で表現したいものと違う感じで、が~まるちょばは捉えられてしまっている。だから、僕は前回、パントマイムを大人の人に知ってもらいたい、歌舞伎や落語、ストレートプレイやミュージカルを楽しむ人たちにパントマイムというジャンルにも足を運んでもらいたい。同世代の人たちに知ってもらいたいと思った。子どもに見せたいという気持ちもうれしいことなんだけど、それだけじゃないということで、年齢制限を設けました。
今回は、未就学児童不可まで引き下げました。パントマイムって経験値でいろいろなイメージをするから楽しいんですね。僕らが言葉を発しない、僕らが舞台セットを使わない理由があって。見る人がそこに何をみるか、何が聞こえてくるかっていうのはその人の経験で変わってくる。それがパントマイムの素晴らしいところ。経験値が高ければ高いほどということではないけれど、未就学児童だとちょっとわからない部分も増えてしまうかなというところで、今回は未就学児童はごめんなさいなんです。 
2人から1人になって思うこと
が〜まるちょば
ーー昨年相方のケッチ!さんが脱退され、ソロとして活動された1年間。どんな手応えを感じられますか。
(コロナ禍という)状況が状況ですからね。だから、正確な答えになるか分からないですけど、20年近く2人でやらせてもらいましたけど、その前はソロでやっていた。だからそこに戻った感覚で、違和感はないんです。僕はパントマイムを続けていくだけなんだ、と。
2人でやっていた時もそうですけど、1人になっても、結局、僕のやるべきことは変わっていないので、自分の中ではそんなに状況としては変わっていない。ただ、周りはね。2人が1人になったということで、見え方も変わってくるでしょうね。……あ、一番変わったのは、作品の作り方。2人の時に作品を作るのと、1人で作品を作るというのは、ちょっと違ってくるので、表現的に。そこの頭の切り替えが最初は戸惑ったところはあったかなぁ。
心細いとかはないし、1人になったのも何かのターニングポイント、ステップアップの1つとして捉えたので。寂しさはなかったけれど、1人になって、2人の時のありがたさは感じました。2人いるとこういう表現は楽なんだなぁと。僕、1人で作品を作るときは、1人でやって、映像を撮って、1人で見て、ダメ出しして、またやり直すを繰り返しているんです。2人の時は、僕の役を相方にやらせてやってみるという時間の短縮ができたりして。一人だと時間がかかるけど、まぁそんなに変わっていないですね。
1人になって、気持ち的に、パフォーマンスよりもパントマイムを知ってもらいたいなぁという思いは強くなったかな。もともと僕がパントマイムを始めたときの気持ちに戻ったというのは強くあります。
取材・文・撮影=五月女菜穂

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