関西のテレビ局・カンテレと演劇集団
・劇団Patchのコラボプロジェクト始
動、その舞台裏をメンバー・三好大貴
(劇団Patch)と演出家・木村淳(カ
ンテレ)が語る

関西を拠点とする演劇集団・劇団Patchが結成8年を記念して、関西では8チャンネルでおなじみのテレビ局・関西テレビ(以下、カンテレ)とコラボレーション。プロジェクト第1弾として、音楽朗読劇『マインド・リマインド〜I am…〜』が2020年12月26日(土)、27日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼ、2021年1月28日(木)〜31日(日)に東京・紀伊國屋サザンシアターで上演される。劇団Patchとしては、劇団名の語呂も合わせて「ハチ」を並べたメモリアルプロジェクトではあるが、しかしお祝いムードはほとんど一切ない。役者としてまだまだ満たされておらず、殻を破りたいという気持ちの方が強く、「カンテレ✕劇団Patchプロジェクト」は12人にとって勝負手のひとつ。企画の発起人となったのは、メンバーの三好大貴だ。三好は2019年、舞台『はい!丸尾不動産です。〜本日、家をシェアします〜』に出演した際、同舞台の演出家でカンテレ社員の木村淳に「劇団Patchと何かできないか」と提案。そして『LIAR GAME』(2007年)などを手掛ける脚本家・古家和尚も巻き込んで企画が動き出した。そこで今回は、「カンテレ✕劇団Patchプロジェクト」について劇団Patchの三好大貴、演出家・木村淳(カンテレ)に話を訊いた。
カンテレ×劇団Patchプロジェクト音楽朗読劇『マインド・リマインド~I am⋯~』
●関西をちゃんと盛り上げたい。その為に、カンテレとして関西発を掲げる劇団Patchと手を組もうと考えました●
――『マインド・リマインド』は、三好さんが企画の立ち上げに関わったそうですね。
三好:劇団Patchは3年ほど前から東京公演もやり始めているのですが、関西よりも東京の方が客席が埋まりやすい。しかも個々の仕事も東京の方が増えてきている。関西発の劇団という触れ込みですが、役者を続けていくためには、関西発にこだわれない状況になってきています。
――それは複雑な気分ですね。
三好:それでもやっぱり、関西出身の劇団として地元で熱くやっていきたい。そんなとき、僕が『丸尾不動産』で淳さんとご一緒させていただいた。淳さんは、エンタメ業界に対する熱量がハンパないんです。「Patchとして、この人ともっと何かやらなくてはいけない」という使命を感じました。そして、合間を見ては「Patchはもうすぐ8周年なんですよ」とアピールしていました。
木村:やたら「8周年、8周年」とアピールしてくるから、はじめは「こいつは何を言ってるんや」と思いましたよ(笑)。ただ、『丸尾不動産』の打ち上げのとき、三好くんから「自分たちにとって記念イヤー。もうひとつ殻を破りたい」という話があった。そこには、若手ならではのキラキラとした野心ではなく、どこか「渇き」を感じたんです。
三好:自分たちは何をすれば良いのか、という迷いがありましたから。
木村:おそらく、結成当初に持っていた夢と現実のギャップ、鬱屈としたもの、それらがあるんだろうと思いました。何より、三好くんからはお芝居を通してそういったことを訴えかけてくるものがあった。僕自身も何度か劇団Patchの舞台を観て、いろいろ感じるものがあったんです。
左:三好大貴(劇団Patch)右:木村淳(カンテレ)
――それは具体的にどういうものでしょうか。
木村:12人全員、芝居のスキルもあるし、発声もアクションも素晴らしい。でも一方で、「それはファンの前だからこそ通用する芝居である」という部分が何箇所かあった。Patchが目指しているところはもっと上にあるはずで、力があるからこそ、彼らの現状も踏まえて応援したいという気持ちになりました。
――駆り立てられたわけですね。
木村:あと、これは自分たちの責任でもあるんですが、テレビ局として関西発のドラマなどを作ると言いながら、結局はキャストを東京から連れて来ている場合が多い。Patchもそういうドラマの現場に入ってはいるけど、出番がそんなに多くなかったりする。関西ローカルでもそういう扱いになるなら、そりゃあ若い子は東京に出て行ってしまいますよね。場を提供できていないことへの反省点もあります。僕は関西をちゃんと盛り上げたい。その為に、カンテレとして関西発を掲げる劇団Patchと手を組もうと考えました。
三好:僕も、淳さんとは絶対に次に繋げていきたいと思っていましたから。
木村:Patchには正直「もったいないな」という感覚があったからね。僕の大学の先輩でもある劇団赤鬼の川浪ナミヲさんからも、Patchの話はよく聞いていたし。そこで実際に舞台を観に行ったら、何だか20年、30年くらいやっている老舗劇団のような印象というか。今の時代ってドラマ、映画、舞台はボーダレスになっていて、役者もどんどん入れ替わっているのに、良くも悪くも安定感があり過ぎて、台詞回しなども含めて内向きになっていた。でも個々の能力は本当にすごい。運動能力は高いし、存在感も目を引くし。これをもっと生かせるやり方はあるんじゃないかなと。
三好:自分たちだけでは、「何をすれば良いのか」は気付きづらい。淳さんに話を聞いて、何が足りていないのか、こういうふうにやれば良いのかなど、初めて分かったことがたくさんあったんです。それまで、自分の中で「どうしたらええねん」という空気は確かにありましたから。
●淳さんに演出していただくことで、全員違う面が見えてくるんじゃないかと思います●
左:三好大貴(劇団Patch)右:木村淳(カンテレ)
――そして、カンテレで人気ドラマの脚本を多数手がけてきた古家和尚さんが携わることになります。
木村:古家は『丸尾不動産』でも脚本を担当してくれたし、彼が関わってくれるなら、この企画を商業エンタメとして推進することができる。ストーリーとして全幅の信頼が置けますし。古家が「いいですよ」と言ってくれたので、動き出すことができました。
三好:でも、打ち上げで餃子を食べているときに、淳さんが「Patchが8周年で、カンテレは8チャンネルだから。古家、脚本書いて?」とめちゃくちゃ軽い感じで言ったら、古家さんも「いいっすよ」と。「え、こんな感じで決まるんだ」とびっくりしましたよ!
――ハハハ(笑)。
木村:その打ち上げの場で、三好くんに「大人が楽しめるリアル演劇をやっていこう」という話をしました。リアル演劇とはつまり、「虚構の世界の中で、ただ存在する」ということ。役者がキャラクターを誇張して造形するのではなく、ひとりの生身の人間としてただそこにいて、たとえセリフを言わずとも存在できるというアプローチ。「リアルなお芝居をやってみよう」と言いました。
三好:『丸尾不動産』の稽古でもそれは一番言われたアドバイスですね。まずそこに、ただいること。台詞回しの妙とかではなく。
木村:行動原理を理解しないとできないですよね。なぜそこに立っているのか、なぜそこで動くのか、どうして相手を見るのか。そうやって、その人物の行動原理を把握しないといけない。
三好:それは今までPatchではやってこなかったこと。今までは、とにかく全力で演じて、セリフもアクションも大きく動いて見せることばかり意識していたんです。だから今回、淳さんに演出していただくことで、全員違う面が見えてくるんじゃないかと思います。みんなが良い意味で苦労して、もがいて、安定しないまま演劇に取り組める気がします。
木村:うん、安定しないというのはすごく大事。あと、自分でたくさん考えてほしい。さらにPatchを覚醒させられる存在として、谷村美月さん、入山法子さんをキャスティングできたのは大きくて。ふたりはPatchのメンバーと年齢面でも近いし、そういう人たちがとてつもないことをやると、きっと悔しくてたまらないと思う。
――谷村さんは子役時代から天才的ですもんね。
木村:2012年に『ポプラの秋』というドラマを演出した際、美月さんとご一緒したのですが、彼女のファーストカットがすごかった。「今が苦しくて眠れなくて、睡眠薬で毎日紛らわしている」という場面なのですが、薄暗い部屋でぼーっとしているシーンから撮り始めて、セリフも何もなく、ただそれだけでもその瞬間が成立していた。「この人はすごいな」とびっくりしました。
――入山さんについてはいかがですか。
木村:人間って予測していないときに良いパンチをもらうとずっとその衝撃が残る。入山さんはまさにそんな感じ。河原雅彦さん演出の『歌喜劇 市場三郎 温泉宿の恋』(2016年)で観たのですが、歌声がすごく美しくて。それまであまり歌のイメージがなかったから、一気に気になる存在になりました。
●ストーリーはゾクゾクっとする面白さがあります●
左:三好大貴(劇団Patch)右:木村淳(カンテレ)
――脚本の進行状況はいかがですか。
木村:ちょうどこの前、初稿があがってきました。もはや朗読劇というより、ひたすらおもしろい密室劇。「朗読劇」という一言を外そうかなと一瞬思ったくらい(笑)。でもそれくらいストーリーはゾクゾクっとする面白さがあります。
――三好さんは朗読劇という点について、どのように捉えていますか。
三好:僕はちょうど『黑世界〜リリーの永遠記憶探訪記、或いは、終わりなき繭期にまつわる寥々たる考察について〜』という音楽朗読劇に出演しているんですが、これも手に本を持つこと、本を読むことに意味を持たせている。朗読劇とは言っても、「こういうものだ」とカテゴライズする必要はない。きっとお客さんも予想を裏切られるはず。『黑世界』で僕自身も固定概念がなくなりました。『マインド・リマインド』も、「これも朗読劇なのか」と思ってもらえたら良いなと。
――稽古がいつ頃からスタートする予定ですか。
木村:11月下旬か12月アタマですね。どういうふうにやっていこうかは考えているところなのですが、脚本に対して疑問に思うことを直接、僕や脚本の古家に聞いてもらう時間を設けようと思います。「なんで?」ということを、まるで修行のように問答していく。これは実際に『それいゆ』(2017年)でもやったことなんです。
三好:メンバーはきっと「自分はこう思う、自分はこう見える」ということをちゃんと話すと思います。あ、田中亨はどうなるか予測がつかないですね! というのも彼はあまり自分発信をしないから。真っ白で何色にも染まる。他のみんなは自分なりのこだわりがあるけど、田中亨だけはそこが薄い気がします。
木村:それはおもしろい!
三好:それに今回は3人1組で入れ替わっていくやり方だし、その組み合わせも、普段はあまりないようなマッチングなんです。きっと新しいものがあぶり出されるはず。淳さんがどのようにPatchを導いてくださるか、本当に楽しみです。
左:三好大貴(劇団Patch)右:木村淳(カンテレ)
取材・文=田辺ユウキ 撮影=田浦ボン

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