イラスト提供:イラストAC/Konさん

イラスト提供:イラストAC/Konさん

TIFの配信が不評だった件:ロマン優光
連載171

ロマン優光のさよなら、くまさん
連載第171回 TIFの配信が不評だった件 TIFの配信がいまいち不評だったわけですが、友人から「テレビ局がアイドルライブの配信に力を入れたら、今まで歌番組などで蓄積されたノウハウやセットのスケールに、そこら辺の地下アイドルイベンターの配信では絶対かなわない」とたびたび力説されていたんですよね。まあ、世間の評判は全然そんな感じにはならなかったなあと思いました。
 ステージが組まれなかったことに対して、TIFは自分たちのコンテンツの良いところがわかっていないという批判がありますが、単純に予算が厳しくてそうなったような気もします。予算に余裕があれば見栄え考えて普通にステージ組んだんじゃないですかね。あと、出演者多すぎで、いくら時間で割ると一組辺りの料金は格安と言われても、全部見る人なんているかどうかもわからないレベルなんだから、買う方としては高いですよね。個人的にはフェスみたいな大量に出演者が出てライブがずっと続くものって配信には不向きだと思うんですよ。そういう大規模イベントってライブ会場でも全部ライブを見る人はほとんどいなくて、合間に他人と交流したり、場の雰囲気を楽しむものだったと思うんですよ。単純にライブ見に行くというより、お祭りなんですよね。当たり前なんですけど、フェスに限らず現場でライブ見るのと配信でライブ見るのとでは楽しみ方が全然違うし、だから配信ライブがどうしても好きになれない人がいるわけです。現場の雰囲気で興奮してるから何本もライブ見れるけど、家だとどうしても集中力持たない人も多いと思います。出演者多ければ多いほどダレちゃって集中して見れないし。好きなものだけ選んで見ると、なんか割高な感じになるし。
 個人的にはグループアイドルの配信ライブって、録画してちゃんと編集したものを配信するか、カメラ一台で流しっぱなしかどっちかがいいと思うんですよね。
 ライブ現場でアイドルを見るときって、みんな自分なりの見所を中心に切り取りながらライブを見ていると思うんですよ。推してるメンバーの目立つパートみたいなわかりやすいところもあれば、前に出て真ん中で歌ってる子の後ろで行われている他のメンバーのダンスや、何でもないようなパートでのステップの足の動きだったり。色んなこだわりがある人がいると思います。それが配信だと、全ての視点が自分の意思とは関係なく決められてしまってるので、見たいとこが見ることができなかったりする場合もあるわけです。こういった観点から配信ライブを苦手にしている人もいます。
 それでも、最大公約数的な見せ場にしっかり合わせてくれるような配信だったら、それはそれでいいんですよ。でも、大サビなのに歌ってる子を抜けてない、キメのポーズのとこなのに全身じゃなくて顔を抜いてしまうとか、ライブハウスでの対バンだと、そういう配信もあるんです。
 でも、仕方ないのはわかるんですよね。ライブハウスの店員さんがいきなり経験無しにやらされてるわけじゃないですか。そんな急にやらされてセンスがとか言われても、なんというか基本的にはいきなりは無理じゃないですか。楽曲の構成、ダンスの構成、歌割とかをかなりしっかり把握していても、リアルタイムで構図やスイッチがばっちりの配信なんて難しいですよね。ライブアイドルのワンマンライブの配信で見ることができるクオリティの高い配信って、撮影のプロにちゃんとお金を払って、プロ側も色々とグループのこととか把握して、リハも綿密にやってみたいなやり方でやってるもんだから、通常のライブでそこまでお金も時間もかけられないですよね。
 そう考えていくと、変に生にこだわるより、録画してちゃんと編集されたものの方が見ている方は安心して見れるし、撮影・編集の力量によってはライブの代用ではない別のコンテンツにもなる可能性もあるわけで。ちなみにステラシュガレットの寺田町Fireloopからの配信ライブがこんな感じで凄くよかったです。 でも、この方式ってたまたまライブハウスのスタッフや仲間内にセンスがある人がいないと、なかなか成立しないわけですよね……。
 そう考えると、ワンカメで流しっぱなしというのは誰でもできるので安心です。誰が安心なのかはわからないですが。オタクがスマホで撮ってYouTubeにあげてるライブ動画みたいな臨場感があっていいんですよね。できもしないのに半端にカメラワークとか凝られるより全然いい。多少アングルが悪くても、ライブハウスで立ち位置が悪かった時のような気分であきらめがつく。
 友人がテレビ局のアイドル配信ライブに期待していたのは高い技術と豪華なセットだと思うんですが、女性アイドルが一般的に注目を浴びるコンテンツではない現状があって、その状況ではたいしたスポンサーがつかないだろうし、テレビ局もあんま儲かんないだろうからやらないというか、やっても制作費そんなでもないだろうし、友人の期待したようなものは出てこない気がするんですよね。ド地上のアイドルの配信ライブをテレビ局制作でやったら数は見るだろうけど、まんまテレビのコンサート中継って感じになりそうだし、それは友人が夢想していたものとも違うような気がします。地下アイドル見に行ってるような人がそれを見たいかといったら別の話になるだろうし、既にジャンル自体が違うみたいなもんで別に負けたとは思わないでしょう。アイドルの配信ライブが次の段階に進むとしたら、テレビみたいな旧メディアではなくて、金はなくても知恵を使ってるような人たちの手によってではないかと思うのです。
(隔週金曜連載)
イラスト提供:イラストAC/Konさん
★そろそろ電子書籍版が出るんじゃないかという噂も!?……現時点では、紙の本を書店・ネット書店で「ご注文」してご入手ください。★
「90年代サブカルの呪い」(コア新書)
https://books.rakuten.co.jp/rb/15761771/
在庫のあるネット書店はコア新書公式ページから
http://www.coremagazine.co.jp/book/coreshinsho_027.html
★ロマン優光のソロパンクユニット プンクボイのCD「stakefinger」★
https://books.rakuten.co.jp/rb/15176097/
★ロマン優光・既刊新書<以下3作は電子書籍版あります。主要電子書店スタンドで「ロマン優光」で検索を。>★
『SNSは権力に忠実なバカだらけ』
https://books.rakuten.co.jp/rb/15204083/
主要配信先・書籍通販先などは下のリンクからhttp://www.coremagazine.co.jp/book/coreshinsho_025.html
『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』
http://books.rakuten.co.jp/rb/14537396/
主要配信先・書籍通販先などは下のリンクからhttp://www.coremagazine.co.jp/book/coreshinsho_021.html
『日本人の99.9%はバカ』
https://books.rakuten.co.jp/rb/13104590/
主要配信先・書籍通販先などは下のリンクからhttp://www.coremagazine.co.jp/book/coreshinsho_010.html
★「実話BUNKAタブー」(発売中)では、『ロマン優光の好かれない力』引き続き連載中! 11月号は「安倍辞任に涙する松任谷由実ってどうよ?」コンビニや書店・ネット書店で!
【ロマン優光:プロフィール】
ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。twitter:@punkuboizz
おすすめCD:『蠅の王、ソドムの市、その他全て』/PUNKUBOI(Less Than TV)
楽天ブックス
http://books.rakuten.co.jp/rb/13292302/
連載バックナンバーはこちら
https://wp.me/p95UoP-3N (コピペして検索窓に)

ブッチNEWS

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着