三澤紗千香インタビュー 作詞作曲し
た「I'm here」で「世の中の陰キャみ
んなを仲間にしていきたい」

2020年4月29日にシングル「この手は」でユニバーサル ミュージックからCDデビューし、アーティスト活動を始めた声優・三澤紗千香。声優として10年以上活躍し、以前も個人名義での音楽活動を行っていた三澤さんが常日頃抱えている思いとは。9月30日に発売される2ndシングル「I'm here」では作詞・作曲も行い、より深く「自分を表現すること」に向き合う三澤に話を聞いた。

「褒めてくれる言葉を認めざるを得ない」と思えた
――まず、作詞・作曲をしようと思ったきっかけから教えてもらえますか?
作詞・作曲をしようと思い始めたのは中学生くらいのときでした。初めて曲を出すなら、A-B-C-A-B-C-D-Cっていうよくある構成の曲を作りたいなと思っていたんですけど、メロディだけとか歌詞だけ、1番だけみたいな感じでしか作れなくて。ボイスメモとかに思いついたものは残していたりしたんですけど、ずっと曲にはならなかったんですよ。それが、突然、5月末くらいに家で布団の上でゴロゴロしていたら「ハッ!」と思い立ち、そこで「I'm here」の1番がまるまる出てきまして。
――曲と歌詞どっちもですか。
メロディと歌が同時にです。「おお、すごい。やった………曲っぽい」みたいな。それから、パソコンに向かって2番もDメロも作れてしまい「なんか歌っぽいものができた」と思って。
――そうして出来上がったものをスタッフの方に聴いてもらって発売が決まったと。
ボイスメモに録っただけのものをそのまま提出するのもちょっと恥ずかしいなと思って、前の音楽活動のときにお世話になっていた、千葉”naotyu-“直樹さんに「これを良い感じのデモ音源に編曲してくれないか」と頼みました。そうしたら、ほぼほぼ今の「I'm here」と同じ感じの編曲をしてくれて、2ndシングルの会議の日に持って行ったんです。いくつかの曲のなかから「『With You​』でいこう」と決まった後で「すいません、今日デモができたんですけど、何かのタイミングで表に出させてもらったりとかできませんか?」と聴いてもらったら「両A面にしようよ」と言ってもらって、今回の形になりました。
――新曲会議の話はラジオでも紹介していましたよね。「いつか何かのボーナストラックでも……」くらいの気持ちでおそるおそる出してみたと。
そうなんですよ。ぜんぜん、今回のシングルは「With You」でいこうという気持ちだったんですけど、両A面になって、しかも「I'm here」のMVまで撮っていただいたので。「なんで?」って思いながら(笑)。でも嬉しい、じっくりだんだん実感してきている感じですね。そういう経緯なので、今回の作詞作曲について、特別に何かきっかけがあったとか、何を思ってということはなく、つねづね感じていた三澤の人生観が込められたものになっています。
――それは、中学生のころからずっとやりたいと思っていたことが実を結んだのか。それとも、5月だとコロナで自宅にいる時間が長くなっていたころのもやもやした気持ちが形になったものだったりするのでしょうか。
どっちも違うような気がしますね。ずっと前から考えていた「曲を作りたい」というのは、曲を作って商売がしたいという思いなんですよ。それは今も変わらないんですけど、自分から出た商品化できるようなクオリティの何かを作りたいという気持ちがあって。でも、自分には何もないんじゃないかな、と思ったりもしていたんです。今回出てきたのは、ここ数年の気付きがまとまったもののような気がしますね。
――どういった気付きがあったのでしょう。
この11年間くらい声優だったりラジオだったり、歌の活動やキャラクターソングも歌わせてもらって、「歌声が好きです」とか「ラジオの声が好きです」というようなファンレターやメールをいただいて。私の声は普通で、そんな特殊ではないから、声優としてはコンプレックスを感じていたんですね。「この役はこの人しかいないよね」って言われたいけど、ほかの人でも成り立っちゃうかもみたいに思っていて。でも、役のファンの方から「あの役は三澤さんにしかできません」と言ってもらえたり「三澤さんの声だから良い」とほめてもらうことが多くなってきたように感じていて。最近は、自分にとって声が唯一無二の大事なものなんだ、宝物なんだという気持ちを持っています。
――1番の歌詞はそういう実感から生まれたものなんですね。2番の内容はどのように作られたんですか?
2番は商業的なことも考えまくりまして(笑)。
――予想してなかった答えがきました(笑)。
2番を聴くのってファンの方だったり、私に興味をもってくれている方だと思うんですよね。だから、ちょっと立ち入った内容でもいいかなと、言葉遣いとかも1番とは変えています。あとは、2番以降に入っている「声」は、皆さんの声っていう意味もちょっと入っていて。みなさんが私に声を届けてくれなかったら私は自分の才能だったり、長所にも気づけなかったので。
――ファンだけじゃなくて仕事の関係者から褒められたりすることもあったと思いますが、それとは違うものがあったんですか?
アニメの監督さんとかいろんな人から「こういうところ良いよね」と言ってもらって「ありがとうございます」とは答えるんですけど、「もっとすごい人いるのに本当かな?」って。常に周りと比べて、自分はそんなすごいものは持っていないと思っていたんです。それが、褒めてくれる言葉を認めざるを得ないくらいたくさんの人からいろんな声を11年間いただいていて。そろそろ認めなきゃなって。
撮影:池上夢貢
「I'm here」にこめた3つの思い
――「そろそろ」と思った時期は具体的にいつ、というのはありますか?
とくに10周年のときですね。「10年前ファンでした」「最近ファンになりました」という声をいただいて。10年このお仕事を続けられているのって自分だけじゃなくてみんなが私の声に可能性を感じてくれて「投資しよう」とか「もう1回やろう」とか思ってくれているからだなと思って。この声……声だけじゃなくて、言葉選びや喋り方も含めてすべてを「私の声」としてとらえると、その声=自分の人間性もみんなに認めてもらっていたんじゃないかなと。ちょっと自分を認められるようになって。思春期のねじまがりまくった三澤紗千香をちょっと超えて、仕事を通じてたくさんの人と出会って、自分をちょっと認められるようになった今だからこそ出てきた言葉とメロディなんじゃないかなと思いますね。
――なるほど。「2番は立ち入った内容に」とおっしゃっていましたけど、1番からかなりさらけ出していますよね。
そうですね(笑)。1番は自分のことばっかりなんですけど、「自分の感情を聴いて!」というだけの歌にはしたくなかったんです。電波を借りて曲を流したり、人に伝えられる立場なんだから、聴いている誰かが自分と重ねられるような歌詞にしたいという狙いがありました。たぶん三澤さんのファンは三澤みたいにひねくれてて、できないこともできることもあるけど、自分を客観視できなくもないけど、うまくできてない人が多いと思うんですよ。
――それは、ファンの方の様子を見ていて伝わってくるものがあったんですかね。
ラジオ番組へのメールやファンレターで、「僕は何もできないんです」って届くんですよ。「何も長所がなくて就活困ってます」とか。みんな素敵だし、絶対に良いところはあるから1回話そう? っていう気持ちになるんですけど、それはなかなかできないので(笑)。
――自信はなくてもファンのいいところは見えるという。
大学行ってるとか高校行ってるとかで、平均点は取れているんだけど、でも「俺には何もいいところがない」っていう人がいたら「いやいや平均点取れてるじゃん」みたいな。わかるのはメールに書かれていることだけですけど、見えていない良い部分はみんなにもあるよと伝えたかったんだと思います、この曲は。
――共感と励ましをお返しする曲でもあるんですね。
私が未来に行って違う悩みを抱えるようになって迷っても、「唯一無二の個性、みんなが好きって言ってくれる部分があるんだよ、大丈夫だよ三澤、迷わないで」っていう立ち返る場所でもあり、「こういう人間がここにいますよ!」という宣言の意味も込めて「I'm here」というタイトルをつけました。まだ私と出会っていない人にも「ここに三澤紗千香がいますよ!」という意味も込めて、「I'm here」!!って言ってるんですけど(笑)。
――いろいろな思いが込められた「I'm here」だと。
いろんな人に気付いてもらえたらと。笑い話はできるけど、明るい人と一緒に過ごすのが苦手な私みたいな人、そういう世の中の陰キャみんなを仲間にしていきたい気持ちですね。この曲で、集まれ陰キャ! って感じです(笑)。
――僕もそういう自分を卑下してしまう感覚とか気持ちがすごくわかるんですけど。
本当ですか? 陰キャって言ってすいません。
――陰キャ歴は長いのでぜんぜん大丈夫です(笑)。ほかの人の良いところは気が付けても、自分がどうなのかは見えない、自信が持てないっていうのはすごくわかりますね。
私の場合だと11年この激しい弱肉強食の世界で生きてきたことってよっぽどすごいことじゃんって思うんですけど。毎日積み重ねてきているとあんまりわからないんですよね。
――ものすごいことですよ。
もちろん次につなげるために頑張ってはいるけど、実際に何がつながるか分からずにやっているところがあって。たとえば大学に行くために塾に通うとかというものではなくて、やみくもに毎日を一生懸命生きていたら今日につながっていたんですよね。だから、これまでも、今も、未来も大事だよという気持ちを込めて「振り返ってごらん」っていうような。私が考えていることは、生きづらい世の中をどう生きていくかということなんですよ。それをみんなと共有していこうという思いが大きいので、そういう気持ちが込められています。
――なるほど。曲も一緒にできたということで、歌いやすく作れたというようなことはありますか。
1番のほうはたぶん言葉が先行してメロはちょっと後からついてきたんだと思うんですけど、2番のほうが歌のハマりは良くて。だから、ファンの方がカラオケで歌ったら、2番のほうがなじみがいいことがバレる可能性があります(笑)。ただ、それも不思議だったんですよ。メロディと一緒に考えた歌詞なら、自然と歌いづらくなることはないだろうと思っていたんですけど、なりますねえ。「ここでこの音で伸ばすのきついな」とか。前は「作詞家さんめ……!」と思っていたんですけど、今回は「自分のせいだよ!」と(笑)。
――ちなみに、1stシングルの「この手は」と今回の歌詞で共通する部分がけっこうあるようにも感じたのですが、そこは意識されたんですか?
1stシングルは歌詞というよりメロディを聴いて、すごく「あ、この曲にしよう」とピンときたものがあって選んだ曲で、作詞・作曲・編曲まで同じ方に全部お任せした形なんですね。でも、「三澤っぽい」と思ってこれで行きましょうと。そして今回なんですけど、とくに意識をしたわけではなくても「With You」も「I'm here」も“手をつなぐ”とか“背中を押す”みたいなワードが入っていて、私にとって大事でありみんなとつながっているのは手なんだなと思いました。
撮影:池上夢貢
ファン一人ひとりに向き合いたいと歌った「With You」
――両A面になっている「With You」は、「I'm here」と対になっているというか。「I'm here」で歌っている主人公に対して「With You」で語り掛けているような印象がありました。
ああー、そうですね。いろんな風に聴いていただけるとは思うんですけど、「With You」は私からとくにこういう詞にしてくださいとか、メロディはこうですとか言っていないんです。それでも“人を包み込みたい”という欲が三澤にあったからなのか、こういう表裏一体というか、二つで一組みたいな感じになりました。できあがって歌ってみたら、共通点があってビックリしたし、なるべくしてなった2曲なんだなと思いました。
――同じ「君」という言葉でも、「I'm here」はファン全体への感謝、「With You」は一人に語り掛けているという印象がありました。
私けっこうエゴサしまくっているので、ファンの人みんなのアイコンだったりIDだったりは何百人も浮かんでいて。もちろんコロナ前によく現場に来てくださっていた皆さんの顔とかも。だから、なんかこう……「ファンのみんな」というと簡単ですけど、一人ひとりいろいろな思い入れがあって私を見てくれているので、そんな一人ひとりに向き合いたいなと思って歌いました。
――こういうテーマの曲で、自分自身に向けてというわけでもなく、相手のイメージが具体的にあるというのは珍しいような気がします。ラブソングとかだと、一人に向かってみたいな曲は多いですけど。
逆にラブソングはまだ、ほぼ歌っていないんです。恋の歌にも聴こえるけど……という曲は好きなんですけど、あんまり「恋です!」みたいな曲は好きではなくて。私が女性アーティストとか女性アイドルが好きだから、そういう曲を聴くとその女の子と仮定の男性の話になるじゃないですか。だから自分は第三者だなーと。「私にも当てはまる曲にしてよ」と思ってしまうので。だから、自分の活動では女性にも男性にも刺さる曲を作りたいなと思っています。
――恋愛の歌は広い層を狙って作っているものだと思っていましたが、三澤さん的にはそうではないんですね。
自分としては「いろんなファンがいていいよね」という考えなので。相手が男性である必要もないし、恋をする必要もないしと。恋を応援とかはできるかもしれないけど、それも相手がすごく年上でも年下でも同世代でも……男でも女でも、聴いている人も同性でも異性でも応援できる歌だったら歌えるかもしれません。だけど「髪の長いあの子が…」みたいに相手を特定していくと「え、俺の曲じゃない」ってなる瞬間がくるかなと思って。
――そのあたりは今後の作詞・作曲活動にも共通していきそうですね。
今後、ほかの作家の方が作ってくれた曲でも、「そこは相手を限定したくないです」みたいにお伝えするかもしれないですね。アーティスト活動では三澤紗千香らしさをセルフプロデュースでやらせてもらっているので、歌詞の部分やメロディもこだわらせていただこうと思っています。
「三澤の声だけのために集まってくれる人」がどれくらいいるのかな
――最近は配信ライブも多くありますけど、相手のイメージがしっかりあったうえで「君」と歌うと、すごく聴いている人に響きそうな曲だなとも思いました。
私、前回の音楽活動でもワンマンライブをしたことがなかったので、いつかライブをしてみたいなと思っていて。ただ、まだ4曲しかないので、1時間半くらいのライブをやるとなると、ほぼほぼ喋りでときどき曲を歌うことしかできないんですけど(笑)。もしコロナがなかったら……コロナが収まったら、自分でいろいろ演出もして、曲順も考えて、照明とか衣装もすべて考えたなかで、さらに自分が歌って伝えるということをしてみたいなと思います。
――100%三澤さんが作ったものを届けたいと。
声優活動は役があっての仕事ですし、アニメだったら製作委員会があっての作品だし、イベントだと「アニメ上映の前後にしゃべります」だし。私が主役で、私のために集まる機会はなかなかないと思うんですよ。作品に集まってくれてるとか、ほかの声優さんのファンとかが多いんだろうと。だから、自分のために集まってくれる人がいるのかというのは不安ですね。今年のバースデーイベントは、三澤のためだけに集まってくれる人がいっぱいいたとは思うんですけど、ライブで三澤の声だけのために集まってくれる人がいるのか……。心配ですけど、楽しみでもありますね。
――バースデーイベントは三澤さんが主役で、三澤さんを観に来た人しかいないんじゃないかと思いますが……。
1月13日だったので「ほかに何もイベントがなかったから来た」っていう女性声優DDもいたと思うんですよ。「チケット取れたし」とか「友達に誘われたから」という人もいただろうなと。事前にほぼ喋りのイベントだと発表していたので。喋りに期待して、笑いに来てくれた人が多かったと思うんですよ。だけどライブって行くのに勇気がいると思うんですよね。
――トークより歌のライブのほうがハードルが高いという認識なんですね。
勇気が要らないようで、知らない人のライブを2時間観るのってつらいと思うんですよね。嫌な声とか嫌な演出だったときに「こいつなんだよ」と思っても、「4000円払ってるし、最後まで居なきゃな」って2時間つらい思いをすると思うんです。喋りだったらそういうことってあんまりないけど、ライブってその人の世界観を押し付けられるから、怖いと思うんです。だから、ライブをやったとして来てくれる人がいかにいるかが心配ですね。
――そのあたりはまだ自信が持てていない。
まだぜんぜんないです。やったことがなさすぎて。この曲もまだ人前で披露をしていないので、どんな披露になるのかドキドキしますね。
――そんななか、10月18日にピューロランドでイベントがありますが。
これは歌唱はなくて、喋るだけのイベントなんですよ。
――なるほど。ちなみに、どういった経緯でピューロでイベントをやることになったんですか?
私がただ、ずっとキキララが好きでやりたいなと思っていたら、事務所の人が「やる?」と言ってくれて。あこがれのキキララちゃんと一緒に何をするかちょっとまだ決まっていないんですが、わくわくしています(取材は9月下旬)。この間、グッズ用の写真撮影をしにピューロランドに行ったんですけど、生のキキララちゃんに会ってずっとハァハァ言ってました。だいぶ不審者でした(笑)。「本物だ、かわいい…かわいい!」って「写真撮りますよー」って。ずっと汗をかきながら、左右に目が動きながら。もうどっちを見てもめっちゃかわいい! っていう。すごく楽しかったです。
撮影:池上夢貢
「頑張ったら自分の表現ができる」
――声優としては10年以上活動していて、改めてのアーティスト活動ということですが、心の向き方みたいなところで違いはありますか?
歌もアニメも、プロが集まって一緒に何かを作るということは同じだと思います。アニメだったら、絵は描けないけど声とお客さんにアピールするという自分の得意分野に関しては「任せてください」「なんでも言ってください」と言えるんですけど、歌はまだわからない部分が多すぎて、そこまで言えないところがあって。ただ、毎回全部に対して一生懸命やるということは変わらないと思いますね。声優として役に対して一生懸命に考えていくし、アーティストとして私が矢面に立ちながらお客さんに伝えられるように頑張るというのも。
――声優だと役と一緒に歩む部分があるじゃないですか。ライブやイベントをやるにしても共演者や劇中のグループとして出演することもありますし。ソロアーティスト三澤紗千香としては、一人しかいないという状況ですよね。
そうですね、役があると、自分の本心と違うことでも「このキャラクターはこう思っているから」と演じられますけど、「三澤紗千香とは考え方が違うな~」と思ったりすることもあったりしますし。
――そういうズレを意識しながら演じることもあるんですね。
そうですね、いろんなキャラクターがいるので。世界を滅ぼそうっていう役があったとして、キャラクターは本気でそう考えていても、三澤は滅ぼそうとは思っていないので(笑)。でも、何か理由があって、本気でそれを実現しようと頑張っている。本気で何かを実現しようとしているっていう点は一緒なんですけど、ちょっと考え方が違うなっていうことはあります。
――たしかに。すごくわかりやすい例をありがとうございます。
私は地球を滅ぼしたくはないけど、生きづらい世の中をがんばって生きていこうよっていう考えを持っている。だから、同じように考えているキャラクターと出会わないことには、それを作品のなかで伝えることってできないじゃないですか。ラジオとか考えを伝える場所はあるんですけど、音楽も好きだから音楽でもやりたいなと思って。でも、 キャラクターソングだと世界を滅ぼすことがメインになったりするじゃないですか。そういう自分が思ったことをそのまま伝えられる歌はなかなかできないので、アーティストデビューはありがたいです。自分が好きな楽器編成とか、音のバランスとか、歌っているだけだと普通は意見できないので。そこも追求できるのがいいなと思っています。
――全部が自分事ですもんね。
全部自分の責任だし、その分、頑張ったら自分の表現ができるっていうのがやっぱり役とは違うなと思います。ただ、慣れない部分やわからない部分はその道のプロに聴きながら。「私はこう思う」というものとすり合わせをしていきながら、自分ができる最大をしていくっていうのはあんまり変わらないようにも思います。監督さんが考えていることとすり合わせて自分ができる最大の役のいい場所を出していくっていうのは、違うけれど一緒みたいな。
――共通することはけっこうある。
そうですね。自分の仕事との向き合い方はあまり変わらないかなって。
――ちなみに、影響を受けたというと言い過ぎかもしれないですけど、好きなアーティストとかはいますか?
YUIさんですね。生きるのがいやなときも、YUIさんの曲を聴いて、こんなに私と同じような感情の人っているんだ。しかも、売れててこんなかわいくて、恵まれてる人にもいるんだって思ったのが勇気にもなったので(笑)。
――自分のことを歌っているかのような曲を書きたいと思ったとおっしゃっていたのは。
はい。自分が音楽で救われたので救いたい、っていう気持ちがあって。あとは、ハロー!プロジェクトが大好きなので、人を元気にする曲。今のところ私のソロではぜんぜん明るい曲はないんですけど、明るい曲も歌ったりできたらいいなっていう。
――そう思っていれば、自分のなかから生まれてくるかもしれませんよね。
自分から生まれてくるかもしれないし、作家さんに作ってもらうかもしれません。でも、明るすぎるとキャラクターソングみたいになっちゃうんですよ。なんか、明るい曲だから声もかわいい声にしなきゃみたいに、声のチューニングが変わってしまって。アレンジとか作詞にもよると思うんですけど、三澤紗千香にとっての明るい曲で、かわいこぶってなくて、年相応で……となるとすごい難しくて。それを見つけるのが課題ですね。そういう曲に出合って歌えるようになったら、みんなと一緒になれる瞬間もくるんじゃないかな。
――ありがとうございます。最後にSPICE初登場ということで、記事を見ている人に一言いただければと。
三澤紗千香と申します。声優をやっておりまして、4月からアーティストデビューもさせていただきました。11年くらい声優の活動をしてきて、そのなかで音楽活動をやらせてもらったこともあるし、いろんな経験もあるんですけど、改めて再アーティストデビューをさせていただきました。今回、初めて作詞作曲をした曲を発表して、より自分の表現というものをしているなと感じています。アニメソングのタイアップとかではないんですけど、そのぶん自分の世界観とかが自由に出せているので、三澤紗千香の人間性というか、人生観に触れていただいて「こんなのもいるんだな」と思っていただいたり。「With You」のほうは、90年代~00年代のアイドルや女性声優さんが好きな方は懐かしく思ってもらえるような曲調でもあるので、1回聴いてもらえると「いいじゃん」と思ってもらえる可能性があります。人間性に触れる「I'm here」か90~00年代の女性声優ソングみたいな「With You」か、どっちかでもよいので、ちょっとでも聴いていただいて、私と出会っていただけたら嬉しいなと思います。今後も頑張ってまいりますので、Twitterなどご覧いただければと思いますね。
――自分の売り方を真剣に考えているのが伝わってきますね。
そうですね、常に自分の商品化は考えてしまうので(笑)。そんな感じの三澤紗千香でございますので、ぜひ私と出会ってください!
撮影:池上夢貢
インタビュー・文:藤村秀二 撮影:池上夢貢

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