CooRie

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【CooRie インタビュー】
コロナ禍で辿り着いた
ナチュラルな気持ちへの回帰

決して自己完結ではない
人とのつながりに心が揺れる

コロナ禍という部分では、声だけで構成された「Music Kitchen」のMVをご自宅で撮影されたんですよね。

所属メーカーの『MixUp!』という企画の一貫だったんですけど、ステイホームがテーマで。とにかく映像素材を集めなくちゃいけないと思って、女優ライトみたいなものを買って…その時はまだ新しい子を迎えていなかったので、“何を撮ったらいいんだろう?”ってなりました。あんなに自宅をカメラで撮ったのは初めてでしたね(笑)。

音楽と料理は、やっぱり似ているものですか?

似ていると思います。素材が大事なので。料理もいいトウモロコシが手に入ったら、シンプルに料理するほうが絶対に美味しいじゃないですか。音楽も好きな楽器、好きな空間、好きな人があればいいし。「まどろみ」はそれがうまく出せたんじゃないかと思います。シンプルな曲、シンプルな言葉、大好きな演奏、リラックスして歌える空間…それらが揃っていることが、自分にとっての理想の音楽で、最後の最後にそこへ辿り着いた感じです。今後の夢として、長年一緒にやっているサポートバンドのメンバーと一緒に、今までの曲をアコースティックアレンジにしてアルバムを作ることってのがあるんですね。人が見える音楽が好きなので、“この人の演奏だからこうなるんだな”っていう、心の揺れみたいなものが音楽にもあっていいんじゃないかって。

最近はスーパーで野菜を買うと“この人が育てました”っていう生産者さんの写真が貼ってあったりしますしね。

顔が見えるのは大事ですよね。たぶん人が好きなんでしょうね。料理を食べてくれる人、音楽を聴いてくれる人、そういう人たちがくれる気持ちを活かす存在でありたいと思ってて。そんな人とのつながりみたいなものに心が揺れます。決して自己完結ではないというか。

その日に入った素材で気ままに作る、お任せの料理屋さんみたいな感じですね。

あぁ、そうかもしれない。構築された音楽が好きだった時期もあったけど、どんどん手放したくなっている気がします。もう一回、戻るかもしれないけど、今はそういう音楽を作りたいと思っています。

「ROCKじゃない」で歌われていることからも、そういう人間味みたいなものを感じました。

そうですね。ロックに生きるということは無様に生きることじゃないかと。むしろ、カッコ悪くあるべきというか。“こうだ!”と決めたら貫き通すとか、情けないところもある人のほうがロックで愛おしいと感じるんです。それに照らし合わせると、私はまだまだロックじゃないなって。自分はもともと細かくキチキチとやってきたタイプでしたけど、コロナ禍でいろんなことを思ったので、今後はロックに生きたいです。

明日何があるか分からないですしね。また、「やまないで…」はピアノとストリングスと歌だけで非常にしっとりとして。

ゴールが分かっていることに対して、想いを終わらせてしまうことへの儚さを歌っています。こういう気持ちを感じたことは誰しもがあるんじゃないかな? それをもう一度手に入れたいわけじゃないけど、もう一度あの時のあの感じを味わいたいみたいな気持ちを描いてみたくて。私自身もキャリアを重ねてきて、ずっと変化して、求めて、“これかな?”って思う…の繰り返しみたいな人生ですから。

《やまないで…》が意味深ですけど、聴き進めて行くと分かるという。

そのフレーズだけでも残ってくれればいいと思っています。何に対して“やまないで”なのか、聴く人が一瞬立ち止まってくれたらいいなと。歌モノをやっていますけど、劇伴でもインストでも変わらないと思っていて…それこそ海外の曲は英語の歌詞が分からなくても、グッとくるものはグッとくるじゃないですか。だから、音楽として感じてほしいという気持ちが常にあります。“きれいな声で録りたい”とか、“声が楽器であるように”ということを毎回意識しているので。その上で歌詞は余白のあるものを書きたいと、いつも思っていて。ちょっとでも感じる、考える、想いにふける時間を持つきっかけになってくれれば嬉しいですね。

rinoさんは作家としてキャラクターソングなどの提供もされているので、ゲームやアニメのテーマソングも収録されているのですが、ご自身の曲とのバランスはどんなふうに考えていますか?

CooRieのほうがしんどいですね(笑)。作家として誰かを描くのは楽しいけど、自分を掘り下げるのは一生ゴールがないことですからね。それなのに締め切りがあって、今の自分を表現しないといけないのは本当にシビれます。でも、ライヴをやると自分の曲が届いた人と会えるので、そこで全てが浄化される感覚です。あの苦しみは、ここに来るためのものだったんだなって。楽器のレコーディングで自分の曲を楽しそうに弾いてくれるミュージシャンに出会うこともそうで、すごく救われた気持ちになります。もともと私は作家をやりたかったんですけど、それも誰かの人生に寄り添ったり触れたりしたかったからなので。結局、その部分はシンガーソングライターとしても変わらないんだと思います。

取材:榑林史章

アルバム『NATURAL7』2020年9月23日発売 Lantis
    • LACA-15827
    • ¥3,000(税抜)
CooRie プロフィール

クーリエ:シンガーソングライターrinoのセルフニユット。独特のクリアボイスと、繊細で心地よいメロディを紡ぐそのスタイルは、まさに「癒し系」。2003年2月26日 TVアニメ「ななか6/17」エンディング主題歌「大切な願い」でデビュー。これまでにシングル20枚、アルバム10枚、ベストアルバムを1枚リリースしている。2004年頃より、本格的に作家活動もスタートさせる。心情を描いた歌詞と、繊細で心地よいメロディ作りを得意とし現在までに、様々なアーティストへの楽曲提供や、アニメソング等を多数手がけている。CooRie オフィシャルHP

「Music Kitchen」MV

OKMusic編集部

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