コロナと共に歩む新時代のライブエン
ターテインメント『聴志動感』、キー
パーソンふたりが今大切にしたい「原
点回帰」とは

関西のコンサートプロモーターを中心に奏-KANADE-・プラムチャウダー・サウンドクリエーター・イープラスが共同で実行員会を運営し、新型コロナウイルスの流行以降、今できるライブエンターテインメントを届けることを基軸に無観客配信ライブを行った3月末のイベント『聴志動感(ちょうしどうかん)』。「エンターテインメントは何ができるのか」を誰もが探りはじめていた緊急事態宣言前の世の中で、いち早く音楽を届けることを選んだ彼らが、この秋2回目の開催を発表した。

今回はこの『聴志動感』の発起人でもある奏-KANADE-代表取締役・北岡良太氏と、第1回目の同イベントに出演したSCANDALの所属事務所ROOFTOPの代表取締役社長・多賀英助氏のインタビューをお届けしたい。やることも、考えることも、取り巻く状況もすぐに揺らいでしまいそうな新時代で、真摯にエンターテインメントを届けていく意義とは……。『聴志動感』のキーパーソンふたりの言葉に、これからのライブエンターテインメントのあり方のヒントが隠れているかもしれない。
ROOFTOP INC./ROOFTOP MUSIC INC. 代表取締役社長 多賀英助氏
●楽屋で出す食事もアーティストのモチベーションになると思うんです●
――おふたりとも30代で音楽にまつわる会社を経営されているという共通点がありますが、それぞれどういった会社を運営されているんでしょうか。
多賀:僕はROOFTOPという会社をやっていますが、元々はキティエンターテインメントという会社でSCANDALのスタッフを始めたのがキャリアの始まりです。そのままSCANDALのマネージャーを10年経験しROOFTOPを設立して、今は弊社所属のSCANDALのマネージャーを務めつつ他の事業も手がけていますが、基本的には音楽事務所の運営を軸に音楽の制作やコンサートの企画などをしています。
北岡:僕は大学在学中にサウンドクリエーターでアルバイトをしていて、コンサートプロモーター・イベンター業に足を踏み入れました。その入社1年目の時に出会ったのがSCANDALで、彼女たちを介して(多賀)英助さんと知り合いました。サウンドクリエーター 時代は本当にたくさんのアーティストと出会わせてもらったり、数々の現場を経験しながら10数年やってきて、2018年にスタジアム規模の大型公演やストリートライブ時代からお付き合いしてきたアーティストのブレイクなど、自分的にやりきった! みたいな節目を感じられたのをキッカケに、2019年に独立して奏-KANADE-をスタートさせました。
――おふたりとも職種や基本的な業務内容はそのままに独立されたんですね。
北岡:僕はイベンターとしてコンサートやライブに携わるなかで、手配作業中心ではなく、もっとアーティストプロモーション業務にも軸足を置きたいと考えるようになっていたんです。会社員時代はどうしても目の前にあるやるべきことが優先になります。いい意味で無駄なことをいっぱいする方が面白いことに繋がると感じていたプロモーション業務は、どうしても後回しになりがちだったんです。それが歯がゆくて、自分で会社を興せばプロモーションにも力を入れるイベンターになれるかなというのが独立の理由でした。
――そういうイベンターさんの存在は音楽事務所としてはありがたい存在ですね。
多賀:北岡さんは会社員時代から余計なことをいっぱいしてくれるというか(笑)、ライブ当日のアーティスト側からのオーダーシートに書いてある以上のことをやりすぎてくれるので、どこまで先回りしてやってくれるのかみたいなことがアーティストや僕らのライブをやる上でのモチベーションになったりもしていましたね。
北岡:例えば、楽屋で出す食事もアーティストのモチベーションになると思うんです。それはSCANDALとご一緒して気づいたことで、美味しい食事を食べてリラックスしてステージに立ってもらえればいいライブができて、そこにいいライブを見るお客さんがいれば食事も一種の効果的なプロモーションの一環になると思うんです。極論大阪のライブ動員が増えたのがあのメニューだったかもしれないとかもありえるなと(笑)。
――プロモーションというと正直何がどのように動員に繋がるかわからないから、「これか?それともこれか?」とアタリを探すような作業ですね。確かにいろいろ試してみたくなります。
北岡:そうですよね。プロモーションを自由にやってみたいというのもあって、自分の会社を作りました。
●アーティストが責任を問われたりすることは避けたかった●
奏-KANADE-代表取締役・北岡良太氏
――北岡さんの奏-KANADE-は現在2年目、多賀さんのROOFTOPは4年目と、まだ走り出したところだと思うんですが、2020年年明けの時点では、今年は仕事的にどんな予定をされていたんですか?
北岡:僕は2020年のライブ日程は全て決まっていて、年間のスケジュールが見えていたので、とにかくやるべきことを楽しくやっていくというイメージでした。より自分らしいものを、イベントや音楽以外のことも含めてやっていこうと思っていましたね。
多賀:僕はね……ここ2年ぐらいなんとなく調子悪かったんですよ。経営的にではなく、気持ち的にモヤモヤとしていて。とはいえSCANDALのスケジュールは埋まっていたので、当然今年も全力でやって、2021年のSCANDAL15周年に備えるぞという感じでした。
――その「なんとなく調子悪いな」は、今振り返って言葉にできますか?
多賀:うーん……。世間のムードと自分が合っていなかったのかな。
――世間のムード?
多賀:東京にいると、オリンピックに向かってとか、それに伴うインバウンドだとかいろいろ状況が加速していたし、自分にとってはその雰囲気がトゥマッチな気がして、どうにもそこに対してテンションが上がらない感じだったのかなと思います。
――北岡さんのいる大阪では、東京ほどオリンピックに対する盛り上がりは……。
北岡:そこまでなかったと思います。僕がトゥマッチな気配に気がついてなかったのかも。気づいていなかったからこそ、決まっている公演をきっちりやりながら、プロモーターとしての役割を果たしながら、僕は新しいアーティストとどれだけ出会えるかを楽しみにしていました。
『聴志動感』
――そんななかで新型コロナウイルスが流行し始めて、エンターテインメント業界に影響が出そうだなと感じ始めたのはいつぐらいからですか?
多賀:いよいよ……と感じたのは2月の末ぐらいかな。SCANDALのツアーも3月の頭から始まる予定でリハスタで毎日ニュースを追いかけていたし、総理の会見毎にコンサート業界に対して、どんな発表をされるのかをいつも気にしていました。
北岡:僕も同じ頃ですね。大阪でEXILEと東京でPerfumeのドーム公演が中止になった時にこれは普通じゃないなと感じたし、しばらく公演ができなくなるぞと覚悟しました。
多賀:そのあとはどんどん状況が深刻になっていったけど、自分は希望的な観測も込めて、どこかでまたすぐライブができるんじゃないかなとも思っていたので、今週はダメでも来週はできるかな、その次の週はできるかなというのをひとつずつ判断していくつもりでいました。その頃毎日メールでやりとりしてましたよね。
北岡:ですね。とにかくみんなが持っている情報を交換しあっていました。
多賀:そうそう。ただ、その頃からライブをやりたいけど、その気持ち以上にモラルが上回り始めて、これ一回みんなで自粛を徹底してみないとどういうものかもわからないよね……と、冷静になり始めましたね。
――もちろん公演を中止するという判断はすごく大切なことですけど、おふたりは経営者という側面もあるわけで。やめて全て問題回避完了というわけではないですよね。
多賀:本当にそうです。会社の経営的な面でもやるべきという思いも、もちろんあったし、漠然といつも通りやればお客さんを元気にできることもあるんじゃないかと思っていたんです。震災の時は自粛ムードになって、そのあとエンターテインメントを届けることでチアアップできたところはあったんで、今回もそんな感じになるかなと思っていたというか……。あと僕は社外のスタッフ含め、経済的にもたくさんの人が絡んでいるので、止めるわけにいかないでしょという気持ちにもなってたと思います。それでも、うちの場合はSCANDALのメンバーがファンのためにライブを中止したいという意思が強かった。僕はその視点を見失っていたので、彼女たちの判断は本当に正しかったと思います。
北岡:僕も担当公演を控えていたんですけど、公演そのものをやることよりも人を集めることが悪いことになるなと感じ始めました。僕は良くても、アーティストが責任を問われたりすることは避けたかったんで、その意思が固まった段階で中止をアナウンスできました。
●お客さんが見たことがない場所で演奏している姿を配信できればワクワクしてもらえるかなと思いました●
奏-KANADE-代表取締役・北岡良太氏
――おふたりが関わられた『聴志動感』は、3月末というかなり早いタイミングで開催されましたが、いつ頃から企画が始まったんでしょうか。
北岡:僕がイベントを配信でと考えたキッカケが、川崎のヒップホップグループのBAD HOPなんです。3月1日に横浜アリーナで単独公演をするはずだった彼らが、コロナの影響を受けてYouTubeで横浜アリーナからの無観客配信ライブを行った。この規模のことを配信でやったのを目の当たりにして、腹が決まったんです。僕たちもエンターテインメントを届けようと。
多賀:それ、すごくわかる。
北岡:それから1週間ぐらいでたたきの企画は自分の中でできていて、「今やれることをやれる方法でやるライブ」をテーマに、すぐ会場探しをして東京のレコーディングスタジオを紹介してもらいました。とにかくライブの枠組みだけが決まった時点で、アーティストも決まっていないのに開催を発表したんですよ。とにかくいち早くやってやろうと。そんなふうにフットワーク軽く進んでいけたのは、自分が会社の代表で、自分の判断に自分で責任を取れるからでした。
――そもそもこの時期にライブをやる意図としては……。
北岡:ライブをやりたくてやれなくてヤキモキしているアーティストをたくさん知っていて、みんながその気持ちをどこかで発散したいだろうなとは感じていていたんです。僕自身にも公演ができないストレスもあったし、おそらく手伝ってくれているスタッフにも。でもその一方で不安な気持ちがあるのも確かで。それでも葛藤しながら全部ひっくるめて単純に「ライブやろう!」という気持ちが湧き上がったんですよね。とにかく今やれる方法でオムニバスライブやろうという感じでした。
――多賀さんは北岡さんからいろいろ相談を受けたていたんですか?
多賀:そうですね、イベント名も決まる前からすごい熱量でLINEをもらったりしていました。ライブができないことに対しては、うちの所属アーティストたちはストレスに感じているというより、気持ちのやり場がなくて、単純に落ち込んでいました。みんなそうだったと思うんですけど、今回のことに関しては怒りのぶつけどころもないし、災害時の復興活動のような頑張りようもないというか、じっと状況に対応するしかなかった。そこが本当にキツかったです。だからこそいち早く動いた『聴志動感』に対しては絶対に参加したいと思ってたし、SCANDALのメンバーも「北岡さんの企画なら!」と即答でしたね。
北岡:でも開催までの間ずっと怖かったのは、日々状況が悪化していく中で、無観客の配信ライブでもやめてくれという事態になったらどうしようという……。
多賀:怖かったね……。
北岡:ラスト1週間は開催するかどうかもすごく悩みました。でもその時は出演アーティストたち自身が「やる」と、とにかく潔かったんです。ホント助けられました。
――実際無事開催となったわけですが、開催していかがでしたか。
北岡:単純に現場が楽しかったし、手応えもすごくありました。
多賀:最高でしたよね。現場に行って、スタッフがいて、アンプから音が鳴って、「おぉ!」と。
北岡:お客さんは目の前にはいないけど、コメントや見てる人数もそうですし、投げ銭も含めてこんなにたくさんの人に観てもらってるんだとか、目に見えたのはすごく嬉しかったです。ライブを配信すること自体、僕も初めての経験で、こういうやり方なんだとかこういうところでお客さんが喜んでくれるんだとすごく勉強になったのと、世界でも活躍しているSCANDALに出てもらったことで彼女たちの海外のファンもたくさん見てくれたので、配信では世界と繋がれるという一番の良さに気がつけたのは収穫でした。あと、今回はスタジオから配信しましたけど、演奏する場所のレアリティというのは映像においては重要だなとも感じましたね。
――演奏する場所として、ライブハウスは選択しなかった?
北岡:今回はご縁もあってスタジオから配信したんですが、この時はライブハウスより「普段お客さんは見たことがない場所」でやることに価値を感じていました。今できる楽しいことを、今できる方法で作っていますということが楽観的に伝わればいいなと思ったら、単純にお客さんが見たことがない場所でアーティストが演奏している姿を配信できればワクワクしてもらえるかなと思いました。エンターテインメント業界も大変なことはあるけど、マインドとしてはビジネスとしてもカルチャーとしても今まで通りですよと伝えたかったのかな。
多賀:当時、北岡さんともいろいろ話をしていて、なんとなく今のムードに対しての解答はライブハウスじゃないのかなというのは、僕も感じていました。スタジオという選択はこの時のベストでしたよね。
●カウンター的なことをやり続けないといけない●
ROOFTOP INC./ROOFTOP MUSIC INC. 代表取締役社長 多賀英助氏
――3月に初めての『聴志動感』を開催して、2回目を10月に開催予定ですが、思い立ったらすぐ行動派の北岡さんにしては間が空いたなという印象もありますが……。
北岡:ハハハ(笑)。3月に『聴志動感』をやってから、いろんな無観客、有観客と配信のハイブリッド、無料、有料、投げ銭などなど、たくさんの配信の形が出てきたのでとにかくたくさんチェックしました。でもやっぱり配信はライブに取って代わるところにまでは感じられなくて……。
多賀:わかります。配信は配信であって、ライブの代わりには絶対なれない。
北岡:そう。そういう考えをどこかに持ちながら2回目の配信を7月を目標に企画していたんですけど、コロナの状況が長期化し始めて、アーティストも配信を演出にこだわって自身でやりはじめたり、感染拡大の状況も日に日に変わるので、みんなのタイミングが合わなくなって開催を見送りました。ただ、見送ってみたことでやっぱりライブをやることが大事だと再確認したんです。そもそも『聴志動感』のコンセプトは「今だからできることを」。この段階で今できることを考えたときに、ライブをやるべきなんだという結論に行き着きました。少しずつリアルライブが再開し始めていた頃で、ガイドラインを守ればできるのなら、やっぱりやりたいと。
――2回目は配信ではなく観客を入れたライブにすると聞いた時は、多賀さんはどう思われましたか?
多賀:的を得ているなと思いました。僕は、その時に珍しいことや誰もが望んでいるけど今足りていないもの、カウンター的なことをやり続けないといけないなと思っているんですね。ちょっと違うフックで来るものは、単純に興奮しますよね。SCANDALでなく、MAMIのソロで出ませんかというお誘いも、それ自体が持ち込みの企画だったので。しかも、配信もするのかと思ったら「配信はやりません」と。
北岡:送ったライブ概要を英助さんがちゃんと読んでいなかった!(笑)
多賀:すみません。配信ないんすよ、現場に来たお客さんだけしか見られませんというのも、最高じゃんと思いました。北岡さんに言われてハッとしたけど「現場に行かないと見られない」って本質だよなと。
北岡:ライブは、もともとそういうものですからね。
多賀:現場に行かないと見れないもの、食べられないもの、買えないものってあるべきだなということは、僕も常に思っているんです。SCANDALのツアーで海外に行くとグローバル化された世界ではどこに行っても買えるものが同じなんですよ。ショッピングセンターがあってハイブランド店が並んでて、同じ建物の中にファストファッションブランド店が並んでて、どの国に行っても同じでそこにしかないものがなくなってきてる。今回の『聴志動感』のために京都に行かないと、SCANDALのMAMIのソロという初めての試みは見られないというのは面白いし、こういうのがカウンターだと思いました。
●効率化されすぎていたことを、もう一度ちゃんと理由も考える原点回帰のタイミングが来た●
『聴志動感』
――今だからということではなく実は常に気を使われていると思いますが、ライブを開催する以上、開催地周辺エリアの街やそこに暮らす人々への配慮もいつも以上に必要になりますよね。配信の場合はあまり配慮しなくていい部分だと思うのですが。
北岡:もちろん会場周辺にはご挨拶に伺います。今のところ厳しいご意見はいただいていないので、本当にありがたいです。今回僕はライブを再開するうえで、ライブのあり方とか見直している部分がたくさんあるんです。
――例えば?
北岡:興行は人を集めて動かすということも重要なエッセンスだと思うんです。ということはそこに食事、交通、時には宿泊が発生することが「興行が街にやってくる」意味だと思うんです。
――街にたくさん人が訪れる、お客さんも会場がある街を楽しむ。
北岡:そう。通常のフェスならお客さんを1日拘束するけど、今回は15時半から18時半だけお客さんの時間をお借りするわけです。ただ、今回はライブだけだとお客さんの1日をコーディネートできないので、イベントの公式Twitterで周辺のランチ情報を紹介しているんです。会場の近所でここ寄ってみてくださいとかミニ観光情報を発信することで、公演にも社会性を持たせたいなと。でも、本来は興行はそういう側面も持つもので、やっぱり僕たちは人を動かす仕事をするんだから、そこに付随した相乗効果も作りたい。特にコロナの流行で京都は観光という面で痛手を負っていますし。
多賀:僕はちょっと軸が違うことを考えていたんですけど、ライブには地元である京都の人たちがたくさん来てくれたらいいなと思っていたんです。大前提として京都の人が京都の公演に来るというのがライブ本来の形だから、地元の人が来てくれればいいなという感じで臨むつもりでいますね。
北岡:うん、そういう側面もありますよね。
多賀:僕、会場のロケーションもすごくいいなと思ったんです。ちなみに、なんで開催が京都だったんですか?
北岡:僕が京都出身なので地元愛もあるんですけど、円山公園音楽堂でやれるのが一番大きいかな。できて90年以上という長い時間の中で、戦時中の集会や学生運動の集会をやっていたとか、伝説のバンド「キャロル」もステージに立ったとかすごく歴史があるんです。今、令和の時代にもう一度あの場所で、あそこで起きて来たことや文化の礎を肌で感じられたらなと。あと、席がベンチシートなのも面白くて、一般的な椅子の会場でソーシャルディスタンスのための間引かれた席をステージから見たらすごく目立つと思うんです。ベンチシートならふたりのお客さんはそれなりにソーシャルディスタンスで座っていただきつつ、ひとりでも座ってもらえるし。ガラッと空いてしまってる感じが出にくいのも円山公園音楽堂の良さなんじゃないかなと。ベンチシートは今の時代に合ってますよね。
――確かにそうですね。ベンチシートがあるのは、関西では円山公園音楽堂ぐらいですか?
北岡:あそこ以外ないと思いますね。大阪城野音も服部緑地野音も椅子なんです。ベンチシートが主催側として面倒なのは、指定席番号を僕らが貼らないとダメなところですね(笑)。
多賀:古い会場にあるそういう手間を認識すると、ライブは近年、最適化されすぎてたことに気付きますよね。本来はそうじゃないことの方が面白かったはず。だから1回そういうルールが壊れて、書き変わって、また始まるぐらいの感じでいいんだと思うんですよ。しかも今回の企画のように組織ではなく、個人だからできる発想やスピード感がすごく大事になってくると思います。
北岡:確かに! 最適化とか効率化されすぎていたことを、もう一度ちゃんと理由も考える原点回帰のタイミングが来たんでしょうね。
『聴志動感』
――第2回の『聴志動感』においての原点回帰のポイントとしては、会場にお客さんを入れてライブをやること、そして興行と街をリンクさせることですか?
北岡:そうですね。それと当たり前中の当たり前を、しっかりした方法で丁寧にやる。配信がないことも当たり前! そこに来なければ見られないものをちゃんと作りたいし、やっぱりプロモーションも今だからこそできるデジタルメディアやSNSを駆使しておもしろくストーリーにしていかないといけないと思うし。だからこそ公式HPの挨拶文も自分で自分の言葉で書かせていただいています。そこも含めてお客さんにストーリーとして観てもらいたいし来てもらった2日だけじゃなくて、その前後もストーリーとして知ってもらいたいなと思います。
多賀:配信がないというのは、どんなお客さんが来るのか……地元の人が来る気もするし、遠征して来てくれるような気もするけど、それも含めて何が起きるのかどうなるのか全てに興奮しています。それが的を得ていれば嬉しいし、そうじゃなければまた違うものに向かっていければね。
――蓋を開ける楽しみですね。
北岡:そうですね。そうそう、今おひとりさまチケットの方がすごく売れているんです。
多賀:好きなライブにそっとひとりで行くのがスタンダードになるかもしれないね。本来そういうもんかなと思う。だって好きなバンドを見にいくってそんな感じだったでしょう?
北岡:学校の帰りに駅のロッカーに荷物預けて、こそっと行ってた感じ! そういうのもライブの原点回帰と言えるのかもしれません。正直、10月に世の中の状況がどうなっているか予想できませんが、ガイドラインに沿って一番厳しい状況を想定して用意しておけば状況に応じて緩めることは可能なので、とにかくしっかり厳重にスタンバイしておこうという気持ちです。そして会場に来ていただけたらいろんなことをふっと忘れられるような体験ができると思うので、ぜひ楽しみにしていただきたいですね。
取材・文=桃井麻依子 撮影=渡邉一生

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