Dragon Ashがレア曲から鉄板ライブチ
ューンまで存分に鳴らした、7人体制
ラストワンマン“DEPARTURE”

DRAGONASH LIVE “DEPARTURE” 2020.9.4 TACHIKAWA STAGE GARDEN
Dragon Ashが2020年9月4日、TACHIKAWA STAGE GARDENでワンマンライブ『DRAGONASH LIVE “DEPARTURE”』を開催した。正式にメンバーとなってから17年、それ以前も含めれば約20年にわたり、歩みをともにしてきたダンサー2名――ATSUSHIとDRI-Vのラストライブだったこの日は、キャパシティを制限しての有観客ライブとオンライン配信の形式で行われた。以下のレポートでは一部演奏曲など記載するので、ネタバレにはご注意を。
Dragon Ash 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
Dragon Ash 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
ワンマンとしては久々のライブであると同時に、現7人体制では最後のライブということもあり、開演前からチャット欄にはワクワクと緊張と感傷がないまぜになったコメントが並ぶ。場内が暗転すると背後のスクリーンにATSUSHIとDRI-Vのダンスシーンが流れ出し、やがて幕が開くと実際に2人の姿がそこにあった。長身から繰り出されるコンテンポラリーな舞いが優雅かつダイナミックなATSUSHIに、ヒップホップダンスやパントマイム的な要素も交えキレのある動きのDRI-V、全然違う動作をしていたかと思えば、肝心な部分ではビシッと揃えたりする2人には、熟練の“間”と阿吽の呼吸がある。そして楽器メンバーが登場し、明るく照らされた場内へ「A Hundred Emotions」を放つ。「7人では最後のライブです。どうか見てやってください。Dragon Ashです」とKjが挨拶。
Dragon Ash 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
Dragon Ash 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
前半は比較的近作からの曲が続いた。BOTSのスクラッチが炸裂し、HIROKIのギターとT$UYO$HIのベースが重厚なサウンドを展開した「Mix it Up」では、心なしかカメラワークもラフになって臨場感が増す。DRI-Vが後方の壇上でグラフィックポイを回してバンドロゴなど様々なモチーフを浮かび上がらせたのは「Ode to Joy」。ダンサーズは、曲のイメージを視覚化する動きとオーディエンスの盛り上がりを誘引する動きを巧みに使い分けたり、あるいはそれらを両立させながら表現しており、彼らのこのライブの形は本当に唯一無二のものだと再認識する。ソーシャルディスタンスの確保やマスク着用での発声の制限など、本来の姿とはかけ離れている部分は多いが、それによってDragon Ashのライブの熱やダイナミズムが損なわれるということは全くない。
Dragon Ash 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
Dragon Ash 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
特定の作品を携えたツアーでも、時間的に制限のあるフェスやイベントでもないこの日は、セットリストもかなり見応えのあるものとなっていた。その全てを書き記すことはここではしないが、IKÜZÖNEのシャツのアップからの「Walk with Dreams」には胸を熱くさせられたし、「Neverland」のアウトロと「陽はまたのぼりくりかえす」のイントロをビートで繋いだシーンから、未音源化の楽曲「ダイアログ」、さらにラテンのエッセンスが色濃い時期の楽曲を並べ、「繋がりSUNSET」へと至る流れなども堪らない。
Dragon Ash 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
Dragon Ash 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
中盤のハイライトは、仮面をつけての舞いが怪しげで、スカやデジタルサウンドの要素を盛りんだ「これぞDA流ミクスチャー」ともいうべき「Blow Your Mind」から、輪をかけてゴリゴリな「Shade」、オールドスクールなラップメタル✕ポップパンクの中にイカつさと楽しさが同居した「Aim High」という3連発だろう。これを食らった日には、こちらとしても頭のネジを飛ばさざるを得ない。ソーシャルディスタンス&配信というスタイルにもかかわらず……いや、だからこそか。なんて破壊力のセトリを組んでくれちゃったんだ。
Dragon Ash 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
TAKAHIRO TAKINAMI
「静かな日々の階段を」や「百合の咲く場所で」といったお馴染みのナンバーが披露される頃にはライブは終盤。「ごめんね我慢させて」と、暴れたり叫んだりできないオーディエンスを気遣うKj。「シンガロングでずっとやってきたバンドだし、俺、こんなに歌うところあったんだと思いながら今日やってんだけど」と笑いながら、モッシュや歌声にまみれた光景に思いを馳せ、その日が再び訪れるまで2度とやるつもりはないが、7人での最後となるこの日は特別にやる、と前置いてからお待ちかねの「Fantasista」を投下。当然、ライブのボルテージはピークを更新する。
Dragon Ash 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
Dragon Ash 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
これ、ダンサーズに捧げているんだろうなぁという曲や歌詞はこの日の至る所にあったが、本編のラスト「TIME OF YOUR LIFE」はその極みだった。桜井誠(Dr)が<親愛なるダンサーズ>と歌詞を変えて歌い、Kjが「2人に、みんなで歌ってやって!」と投げかければ、場内も画面越しにも祝福感に満ちていく。ここまで2時間ちょうど。みな晴れやかな表情でのフィニッシュだ。
Dragon Ash 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
Dragon Ash 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
アンコールではまず、「Dance With Apps」に乗せてATSUSHIが登場してピンでダンスを披露したあと、DRI-Vへバトンタッチ、最後に楽器メンバーが登場。「Harvest」と「Lily」を演奏した後、桜井がこの情勢下で開催へこぎつけたこと、来場者への感謝の言葉を伝え、ダンサーズにマイクが渡った。「マイクを持つと何言うかわからないので、手紙を書いてきました」と想いを綴り、飾らない朴訥な人柄も見えたDRI-V。メンバー一人一人(IKÜZÖNEやKenKenも)にメッセージを送り、この先に自らが目指す姿もはっきりと語ったATSUSHI。それぞれのやり方と言葉で別れを告げ、最後は高々とピースサインを掲げての「Viva la revolution」でライブは幕を下ろした。
Dragon Ash 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
ロックバンドとダンサーという、発表された当初は正直、疑問符も浮かんだ組み合わせは、およそ20年の歳月を経て、表現スタイルとして他のどのバンドも成し得ない領域に達していた。それは、音楽に生き様を乗せる男たちと踊りに生き様を乗せる男たちが、同じ方角を向いてともに歩んだ日々の結晶だ。ここで道は別れるけれど、これからもそれぞれの精神とやり方で、それぞれの表現で、我々を楽しませてくれるはず。万感の、でも清々しく希望に満ちた旅立ちの日だった。

取材・文=風間大洋 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI
Dragon Ash 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI

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