佐藤千亜妃が至上の音と歌を届けた配
信ライブ“NIGHT PLANET”

Streaming live “NIGHT PLANET” 2020.8.14
フル・アルバムとしては、佐藤千亜妃の初のソロ作品である『PLANET』(2019年11月リリース)のツアー『佐藤千亜妃 LIVE TOUR 2020 PLANET+』全5公演の、コロナウィルス禍による中止と共に発表された、無観客有料生配信ライブ『Streaming live “NIGHT PLANET”』。開催日の8月14日(金)は、その中止になったツアーが、東京・恵比寿The Garden Hallでファイナルを迎えるはずだった日である。
佐藤千亜妃 撮影=石崎祥子(THINGS.)
待機画面から画が切り替わるとすぐ、スタンドマイクに右手をかけた佐藤千亜妃が「PLANET」を歌い始め、ライブがスタート。場所はおそらくスタジオ、バンドメンバーは、キーボード・宗本康兵、ギター・木下哲、ベース・種子田健、ドラム・神宮司治の4人。彼女がその4人と向かい合うフォーメーションで、その背後や天井に並んだ、LEDのバーライトが、薄く灯っている。
「Lovin’ You」「You Make Me Happy」「面」「Spangle」等の『PLANET』収録曲を軸に、間奏で各メンバーのソロ回しをはさんだ「Summer Gate」や、今のところの最新音源である「転がるビー玉」、2018年7月に『ap bank fes.18』で初披露して以降ライブの定番になっているが音源化はされていない「リナリア」など、それ以外の曲も、随所にはさんでいくセットリスト。
佐藤千亜妃 撮影=石崎祥子(THINGS.)
「1曲1曲を大事にお届けしたいなと思っておりますので、最後まで楽しみながらお付き合いください」という丁寧なMCに続いての「You Make Me Happy」では、間奏でハンドクラップをしながら笑顔を見せるなど、ちょっとアクションが大きくなる。メンバーひとりにつきひとつずつエピソードを引き出すMCを経ての「橙ラプソディー」は、アコースティック・ギターを抱えて、ひとりで弾き語り。メンバー4人とも退出せず、そのままじっと彼女の歌を聴いている。
その歌&アコギにメンバー4人の音も加わった「転がるビー玉」で、一気に音が華やかになり、次の「面」では、逆にズシンと重くなる。このメンバーの4人のアンサンブルが格別なものであることが、改めてわかる。
なお、「面」では、カメラアングルもスイッチングも、観る側の不安をあおるようなラフで速い感じだったのが、続く「Spangle」では落ち着いた画に一変し、照明がじんわり暖かく、明るくなっていく。というふうに曲に合わせて、撮り方や照明でストーリーが描かれていく、そのさまがよく伝わってくるのも、配信ライブならではなのかもしれない。
佐藤千亜妃 撮影=石崎祥子(THINGS.)
後半。アコースティック・ギターとウッドベース、キーボード、ブラシとリム、それぞれが歌とせつなく溶け合う「lak」、メロディ・メーカー佐藤千亜妃のひとつの到達点である「空から落ちる星のように」、すさまじい緩急のバンド・サウンドが歌に襲いかかるように響く「大キライ」、という強力な三連打を経て、佐藤千亜妃、MC。
今は大変な世の中と思うけれども、いろんな人が集まって、チーム一丸となって今日みたいな場を作れたことがすごくうれしいし、感謝している。画面の向こうで観てくれているみんなも、このチームの一員だと思っています──と、感謝を伝える。
佐藤千亜妃 撮影=石崎祥子(THINGS.)
そして、「また世界が落ち着いたら、ライブハウスとかホールとか、生の場所でライブで会える日を夢見て、最後まで曲を届けて終わりたいと思います」という言葉から歌われたのは、「キスをする」。東日本大震災で己に突きつけられた問いに答えるために、数年がかりで書かれたというこの曲は、今でも、いや、今だからよりいっそう、強い意味を持って、聴き手に届くように感じられた。
アンコールは、ひとりでアコースティック・ギターを抱えて登場し、「シークレット・アンコールということで、やってほしいっていうリクエストがあった曲の中から、お届けしたいと思います」。
で、歌ったのは「春と修羅」と「夏の夜の街」の2曲だった。という強烈なラインで始まる、きのこ帝国のインディー時代の曲と、「この季節にぴったりの曲をやって終わりたいと思います」と歌われた、夏ならではの郷愁を描いたメジャー移籍時の曲だ。
佐藤千亜妃 撮影=石崎祥子(THINGS.)
僕個人は、「ソロの佐藤千亜妃のライブでも、きのこ帝国の曲をやってほしい」とは、あんまり思っていない。単に大好きな曲だからライブでも聴きたい、と思うものはいっぱいあるが、それを今の佐藤千亜妃に求めるのは筋が違うだろう、というふうに思っている。
が、この2曲を聴けて、すごくうれしかったのが、自分でも意外だった。観ていたファンの方々の多くも、同じような感慨に襲われたのではないか、と思う。
余談。ライブ終了後、佐藤千亜妃のツイッターのオフィシャルアカウントで、マネージャーも本人も、このライブは、収録したものを配信したのではなく、ガチの生配信だったことを強調していた。
笑ってしまった。なんで。見透かされた気がして、です。すみません、正直、僕も、頭3曲くらい観たあたりで、「あれ? これ、生じゃなくて収録なのかな?」と思いました。演奏や歌を録り直す、まではやっていなくても、各楽器の音のミキシングとかは、あとで直したのかも、と。
つまり、そう思ってしまうくらい音がよかったということです。失礼しました。

取材・文=兵庫慎司 撮影=石崎祥子(THINGS.)
佐藤千亜妃 撮影=石崎祥子(THINGS.)

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