ゴールデンボンバー 煮沸スイカ、カ
ラーギャング、無法地帯の樽美酒劇場
……サービス精神を超えた繊細な心遣
いと深い優しさに浸かった配信ライブ
をレポート

ゴールデンボンバー有料無観客ライブ

「去年の無人島より100倍マシ ~電気があるって素晴らしい~」
2020.8.1(SAT)
「精一杯安全にふざけさせていただきます」
開演前の影アナ的な、いや、姿が見えてるから、フェスの主催者あいさつかな。ひとりステージに現れた鬼龍院翔(Vo)が発したこの言葉が、ゴールデンボンバー有料無観客ライブ『去年の無人島より100倍マシ~電気があるって素晴らしい~』のテーマだろうか。当日は会場の扉を開放するなど、換気に心掛け(エアーだから他のバンドより小さな音で開催できる、とのこと)、さらにスタッフに抗体検査を、メンバーとマネージャーは自費にてPCR検査を実施し、全員の陰性を確認。説明に含まれてなかったけど、鬼龍院のマイクにはシールドと思われる装置も施されていて。この徹底した感染予防が大きなフリとなり、前代未聞の悪ふざけ=最っ高のエンターテインメントが展開されていくのであった。
ゴールデンボンバー/鬼龍院翔
始まりの合図「ワンマン不安」が聴こえてくると、視聴者の歓声=コメントが画面を覆いつくすように、右から左へ、ビュンビュン流れていく。樽美酒研二(Dr)、歌広場淳(B)、喜矢武豊(G)、再びの鬼龍院の順で登場し、それぞれポーズをキメていると思われるが、大量のコメントの隙間からチラリズム、ほとんど見えない(コメント表示をオフにすると見える)。画面越しの盛り上がりが伝わったのか、鬼龍院はいつものように「声出しちゃったりできるかい? タオル振り回そうか!」と呼びかけ、「#CDが売れないこんな世の中じゃ」を投下。パワフルなロックサウンドに熱いパフォーマンス、一体感がたまらない4人のタオル回し(エアーって無敵)、ギターソロでは“喜矢武さま”コメントの嵐。そのまま「Sick Lady たぶん...」、「元カレ殺ス」というアッパーチューンで攻め立てつつ、自粛生活で身についた樽美酒による華麗なミシンがけ&ライブ感を忘れた喜矢武の直立不動のギターソロを挟みつつ、無観客であるはずの池袋のライブハウスは、アリーナクラスの熱気で満たされていく。
ゴールデンボンバー/鬼龍院翔、喜矢武豊
MCに入るとなぜかメンバーのトークに反応したかのような歓声が聞こえる。早速、鬼龍院以外のメンバーから物言いが入り、鬼龍院は「観てる人の念が伝わって音として現れる怪奇現象=生き霊」とうそぶくものの、足元のサンプラーで操作し、過去のライブ映像と大歓声をカットインさせていたことを告白。メンバー紹介では、喜矢武が「今年は夏を満喫できないから、スイカが食べたい」と熱望。衛生管理を心配する鬼龍院に、「そこも含めて準備万端、安心してくれ」なんて胸を張ってみせる。樽美酒研二は自粛期間にTバックを探し続けてきたこと、今日ようやくお気に入りを見つけたことを報告。「ただ今日は生中継だけにミスは許されないと思っている」との謎の宣言をし、「抱きしめてシュヴァルツ」へ。流麗なメロディに胸躍らせつつ、ギターソロで喜矢武ご所望のスイカが登場すると思いきや、コンロに乗った大鍋!? 蓋を開ければ、グツグツと煮え滾るスイカ、見事な煮沸消毒! 時間差で樽美酒の元にも熱湯の中を泳ぐTバックが!! 果敢に素手で掴み上げ、熱々Tバックを装着。追加投入されたブラジャーも身をよじらせながら律儀に付けちゃいます。一方、喜矢武は超苦戦。最終手段・トングで持ち上げるも、煮詰まったスイカにまったく歯が立たず、悲鳴&悶絶。曲が終わった瞬間、「もうちょっと温度が低くくてもいいんじゃないか~」と2人の心の叫びが虚しく宙を舞うのであった。
ゴールデンボンバー
話題の新曲「バブルはよかった」をライブ初披露しようとした矢先に喜矢武が腹痛を訴え、中座。この状況を心配しないどころか「楽しみだなぁ」と喜ぶ視聴者の反応に、「さすが3500円払う民」「調教されておる」なんて思わずほくそ笑むメンバー。愛すべき民の期待に応えるべく、曲の途中で画面はリモートビデオ会議よろしく4分割に。トイレの個室から参加の喜矢武は、まさかのリモートギターソロを行うが、タイムラグがありぐちゃぐちゃになりながらもなんとか任務を遂行した。さらに一緒に歌って踊って大騒ぎの「毒グモ女(萌え燃え編)」を経由して、珠玉のバラードセクションへ。「ドンマイ」ではノートパソコンにマイクを向けた鬼龍院の気持ちに応えるように、視聴者は歌詞を書き込み、新たなカタチのシンガロングが生まれる。「あの日君を傷つけたのは」、「さよなら、さよなら、さよなら」を続けて熱唱した鬼龍院が我に返ると、バラードに飽きたメンバー3人がステージを下り、トロピカルジュース片手にビーチベットで寛いでいるという(笑)。
ゴールデンボンバー
反撃ってわけじゃなかろうが、急な空腹に襲われた鬼龍院が歌広場にハンバーガーのおつかいを依頼。池袋に蔓延るカラーギャングに怯える歌広場に、鬼龍院は『池袋ウエストゲートパーク』は20年前のドラマだと説得。歌広場の背中を押すように「今夜はトゥナイト」を届けていると、どこからともなく『池袋ウエストゲートパーク』の主題歌「忘却の空」(SADS)が聴こえてきて、案の定というか、いよっ、待ってました!というか、西口公園で身ぐるみ剥がされた歌広場の姿が映し出される。それでもなんとか生還し、4人がステージに揃ったらもう、エンディングに向けてフルスロットル。ファン心とライブの魔力を描いた「かまってちょうだい///」、「首が痛い」でガンガン攻め込み、「暴れ曲」ではファンの金爆愛が淳子(歌広場扮するバンギャ)となってフロアに出現、一心不乱に暴れまくる。そして画面の向こうもこちらも関係なく、全員でジャンプジャンプの「女々しくて」まで、見事なほどに全力で駆け抜けたのだった。
ゴールデンボンバー/歌広場淳
熱烈アンコールに応えて登場したメンバーは、要素を詰め込みすぎた今日のライブを振り返り、「次回あるとしたら、このボリュームはキツい」なんて本音をポロリ。それでも最後には「我々は面白いものをたくさん作っていきます。この先も安心してください」と鬼龍院が締め、「安心させたいねー」と樽美酒が心を重ねて、重ねた上で、「僕は歌いたいんだ」とか言い出し、樽美酒自作曲「タツオ…嫁を俺にくれ」にて樽美酒劇場オープン。しっとりと歌い上げながらもメンバーにバケツを手渡し、牛乳を口に含むように促し、ズボンをスルッと脱いで下半身を露出、「笑ってはいけない樽美酒研二」が開幕し、そのまま回転台に寝転んで大開脚、3人はたまらず何度もバケツに牛乳を吐き出すという、ハラハラでドキドキの無法地帯。
ゴールデンボンバー/樽美酒研二
本当のラスト、4人は名残惜しさを振りきるように、「らふぃおら」、「イヤホン」をこの日最高熱量でパフォーマンス。ブレイクでマイクを画面に向ければ、《あぁ君にそんな歌届けばいいのにな》と視聴者はコメントで見事に大合唱。配信ライブならではの新しい表現法を手に入れたように思ったが、ステージを降りる際に彼らが手渡したのは、「こういう形もいいけど、みんなと直接会える日を心待ちにしてます。それまで絶対に元気でいましょうね」という再会の約束。エンドロール代わりにリハーサル風景やライブの名場面を組み合わせた映像と、今の想いを綴った最新曲「夜明けの待人」をサプライズプレゼント。ゴールデンボンバーのサービス精神を超えた繊細な心遣いと深い優しさにズブズブに浸かった、ただただシアワセな2時間だった。
取材・文=山本祥子 撮影=菅沼剛弘

ゴールデンボンバー

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