「劇場版 Fate/stay night [HF]」リ
レーインタビュー(3)門脇舞以 毎
回違う「やっちゃえバーサーカー」

(c) TYPE-MOON・ufotable・FSNPC 劇場3部作の最終章、「劇場版『Fate/stay night [Heaven's Feel]』III.spring song」(8月15日公開)リレーインタビュー第3回は、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン(イリヤ)役の門脇舞以。「聖杯戦争」のキーマンのひとりであるイリヤは、「Heaven's Feel」では“マキリの杯”となった桜を救うべく士郎と共闘することに。アインツベルンのひとりとして、これまで以上に深く物語に関わるイリヤについて語ってもらった。(取材・構成:五所光太郎/アニメハック編集部)
――第2章の完成映像は、どのようなシチュエーションでご覧になったのでしょうか。
門脇:関係者試写で拝見しました。「ついに完成したものが見られる」とウキウキした気持ちで、セラ役の七緒はるひさんとリズ(リーゼリット)役の宮川美保さんを誘って3人で会場に行き、2人が私をはさんで座ってくれたんです。ただただ楽しみな感じで見はじめたのですが、想像以上のバーサーカー戦を目の当たりにして、自分でもよく分からない気持ちがこみあげて泣いてしまいました。
 この星が消滅するのかと思うぐらいの戦いで、音楽まわりも素晴らしく、その雰囲気にのみこまれてしまった気持ちでした。バーサーカーは狂化されているので、しゃべることはできませんが、大きなスクリーンからの地響きのような咆哮(ほうこう)で思いが伝わってきて、倒されて立ち上がるたびに涙してしまいました。
――物語全体としては、いかがでしたか。
門脇:さまざまなことが目まぐるしく変わっていく章で、見ていていろいろな思いに振りまわされる気分でした。第1章を見たときは、素晴らしいクオリティに高揚する以上に、ただただ見ていて疲労した気分でしたが、第2章では衝撃的なシーンや、各キャラクターの活躍を存分に見ることができて、見ていて幸せな気持ちになりました。
(c) TYPE-MOON・ufotable・FSNPC――第2章のイリヤは、公園で士郎と話すところが印象に残りました。
門脇:「Heaven's Feel」では、士郎の存在によってイリヤが救われた気がします。長く家族がいないイリヤは、バーサーカーやセラとリズといった存在に支えられてきましたが、士郎に妹扱いをしてもらうことで、家族がいたときの気持ちを少し取り戻したように感じました。公園で士郎にわーっと飛びかかる場面は、ゲームの頃から好きでいてくださった方が多くいるところで、かわいらしいイリヤを楽しんでもらえたのではないかと思います。
――第3章の台本を読んだときの印象はいかがでしたか。
門脇:まずボリュームのすごさに驚きました。イリヤのセリフも、「こんなに入っている!」という感じで、ゲームの「Fate/stay night [Réalta Nua]」を収録したときのことを思い出しました。「Réalta Nua」の「Heaven's Feel」では、自分の印象としては3分の2ぐらいが説明セリフだったので、そのときのことを思い出して、イリヤはすべてを見届けてきた存在なのだなと、あらためて感じました。
――第3章の収録は、いかがでしたか。
門脇:前半後半に分けて2回収録をしました。その後、スタッフの方が尺や流れを修正されて、その修正に関わる方がもう一度集まって録る流れでしたが、その間に私が1カ月ほど体調を崩してしまいまして……。年を越して元気になってから、もう一度収録し直していただきました。そのため昨年末は年を越した気がしなくて、ずっとソワソワしていて、収録を終えてやっと落ち着きました。
――“聖杯の器”であるイリヤは、「Heaven's Feel」ではこれまでのルートとは違った主体的な行動をとります。
門脇:第3章のイリヤは、士郎にたいして、ある覚悟をもって話すシーンがありますが、そこでは第2章で臓硯に対峙したときのような雰囲気を少し入れてほしいというヒントをいただきました。イリヤ個人としてだけではなく、アインツベルンの言葉とも感じられるようにするということなのかなと自分なりに考えましたが、実際の収録では“無”でした。
――“無”ですか。
門脇:悩まず素直な気持ちでやるようにすると私は“無”になることが多いんです。家で練習したものとも違っていましたが、特にリテイクもなく一回で録り終えました。
――第3章では、第2章の試写を一緒に見にいったセラとリズとの共演シーンもあります。
門脇:2人がいると収録での緊張具合が80パーセントぐらい減るんです(笑)。とてもありがたかったですし、2人の登場シーンがあったのはうれしかったですね。と言いながらも、イリヤはセラにけっこう冷たいんですけれど(笑)。
――他のマスター・サーヴァント陣営は声優さん同士ですが、バーサーカーは「サウンドエフェクト」とクレジットされていて、収録時は門脇さんおひとりですよね。どの段階で、バーサーカーの声を聴くのでしょうか。
(c) TYPE-MOON・ufotable・FSNPC門脇:いつも試写会ではじめてバーサーカーの声を聴いています。収録では、「皆さんは掛け合えるパートナーがいていいな」とつい思ってしまいます。
――ということは、門脇さんの演技をうけて、バーサーカーの声がつくられているわけですね。
門脇:どうなんでしょう。収録ではとにかく精いっぱいバーサーカーに呼びかけているだけで、それにあわせていただいているのかもしれませんが……。バーサーカーの声をつくるメイキングを私も知りたいです(笑)。
――「Heaven's Feel」の桜を、門脇さんはどのようにご覧になっていますか。
門脇:魔術師の家に“生まれてしまった”という、イリヤとの共通点は感じますね。自分の意志とは無関係なところで普通の生き方をすることができなくなって、本当に過酷な運命を背負うことになります。ただ、「聖杯戦争」にのぞむ覚悟ができているイリヤと違って、桜には周囲に翻弄され続けているがゆえの苦悩があるように思います。
――今年は「Fate/stay night」の15周年にあたります。ずっとイリヤを演じてきて、感じていることを聞かせてください。
門脇:思い出は本当にたくさんあります。オーディションを受けた日、役をいただける連絡がきた日……今も色あせずに覚えています。「Fate」という作品が、こんなにも多くの展開をしながら、作り手の皆さんの気づきや、ファンの皆さんの声援をうけながら、おおもとの魂はそのままに進化し続けていて、私たち声優陣も演じながら自分なりに役を深堀りすることで変化し続けることを許されているように感じています。イリヤはこれまで何度も「やっちゃえバーサーカー」と言っていますが、同じ想いからの「やっちゃえバーサーカー」というものはなくて、毎回初めての言葉のように演じています。いつもどこか緊張していますし、常にイリヤにきちんと向き合っていないとついていけなくなりそうな気持ちもあります。と同時に、イリヤに背中を押されていると感じることも多々あって、いつも近くにいるような存在になっています。
 そして何より、「Fate」が私に与えてくれた出会いの数は、本当に相当なものだと感謝しています。直接お会いした方はもちろん、イベントや生放送などでは何万人、何十万人という方々に出会える機会に恵まれ続けてきています。イリヤスフィール役というキャラクターを愛してもらって、一緒に楽しい気持ちを共有させてもらっていることは、私にとって何よりの宝物です。
【関連リンク】・「劇場版 Fate/stay night [HF]」リレーインタビュー(4)下屋則子&浅川悠 桜とライダーの関係性の変化

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