木野花と渡辺えりが、コロナ禍を経て
「今できることは何か考えて企画変更
」(渡辺)~二人芝居『さるすべり〜
コロナノコロ』にチャレンジ!

 小劇場演劇を代表する、いやいや個性も存在感も芸達者ぶりも抜群で、コミカルもシリアスも自由自在の日本を代表するベテラン女優の双璧が二人芝居で共演する。木野花、渡辺えりが演じる『さるすべり〜コロナノコロ』だ。公演は2020年8月5日(水)~8月9日(日)座・高円寺1にて。イープラスのStreaming+を利用してのオンライン生配信もおこなわれる。
 「本当は本多劇場、座・高円寺、ザ・スズナリで、イキのいい女性劇作家たちの作品を連続上演する予定だったんですよ。けれど新型コロナウイルスでしょ。予定していた作品のままでは公演が難しくなって。私たち(オフィス3○○)だって『鯨よ!私の手に乗れ』(2017年初演)のスタッフ・キャストが決まって、稽古を始められるように準備をしていたのに、出演者が40人近く、しかもベテランの女優さんが多数出演する芝居なので仕方がないですよね。けれど劇場さんもやってほしいとおっしゃってくれたし、できることはなんだろうと慌てて企画を考えて、あちこちに相談して。今年は最終的に、木野花さん、永井愛さん、そして私がそろった。もう三婆ですよ(笑)」(渡辺)
 そう、「女々しき力」プロジェクトは、桑原裕子(KAKUTA)、長田育恵(てがみ座)、瀬戸山美咲(ミナモザ)、江本純子(毛皮族)、渡辺えり(オフィス3○○)といった面々が、自身の脚本・演出作品をそれぞれのカンパニーで上演するという企画だったのだ。しかし、「そのおかげで」と言うのはなんとも申し訳ないし、失礼なのだが木野花、渡辺えりががっぷり四つに組む企画が実現した。
木野花
『さるすべり〜コロナノコロ』稽古の様子
木野 私は高齢者ですからね、ずっと自宅にこもって、つつましく暮らしていました。それこそ外出するのはスーパーに買い物に出るときくらい。こんなこと本当に起こるんだなって驚きましたよ。それでこの機会にと思って、普段はなかなかできない片付けをしましたね。本棚を整理したら、もう一度読み返してみたいなと思う本も出てきたり。オンライン配信? 私はそういうのを見る術がないんです。でも演劇も密にならないように客席を減らさなきゃできないわけでしょ。収益を考えるとそれじゃあとてもやれないし、どうしたものだろうと不安にはなりましたね。でも、えりが頑張ってくれていたよね。
渡辺 文化芸術復興基金のことですね。もうずっと、ああでもないこうでもないって考えてましたから。それがようやく落ち着いたんだけど、そうしたら準備を進めていた「女々しき力」プロジェクトが難しいとなったでしょ。もうめちゃくちゃ。木野さんはもともとオフィス3○○の『鯨よ!私の手に乗れ』に出演してくださる予定だったこともあって、二人芝居も快く引き受けてくれて。だったら二人でエチュードでもしながら楽しく話しながら芝居をつくっていけばいいやと思ったら、やっぱりちゃんと台本を書かなきゃダメだよって言われて大急ぎで書きました。7月の最終週にできたんですよ。
木野 えりはさ、(木野が所属していた)劇団青い鳥がやってた集団創作を楽チンだと思っているでしょ。ものすごく緻密にやっていたんだから。即興シーンだって土台ちゃんとしてなきゃただのオシャベリだから。
渡辺えり
『さるすべり〜コロナノコロ』稽古の様子
 『さるすべり〜コロナノコロ』は、『⼋⽉の鯨』を演じようと劇場に向かった⼆⼈の⽼⼥優の物語。木野も渡辺も自身の役になったり、過去に謎のある老姉妹になったり、さらには物語の展開は時空を超えてあちこちに乱反射していく。
渡辺 設定が今の私たちの実年齢より10歳上なんですよ。木野さんは私より7歳上だけど、私より20歳近く年上の人たちが生きた時代のことをものすごく調べることになっちゃったんですよ。全学連の樺美智子さんのこととか。
木野 樺さんのこと、きっと今のお客さんにはわからないわよ。
渡辺 そこはわかる人に伝わればいいの。さるすべりは私の実家にあった思い出の木。ほかにも男女雇用均等法に、LGDBなどなどの要素が……あ、“こんまり”はコロナ禍で片付けをしていた木野さんのアイデア。
木野 片付けは楽しいですよ。“ときめく”ものだけを残すというのがワクワクさせるの。
渡辺 私なんか昨年に引っ越したんだけど、300個の段ボールが開けられないままよ。
木野 今度も、えりらしい混沌とした魅力の脚本になっていますよ。普段は2時間のお芝居の中でいろんな要素が盛り込まれていたり設定がぽんぽん飛ぶんだけど、今回は60分なのに同じくらい濃厚。お客さんが大変ね(笑)。
渡辺 もうシンプルな芝居にしようと思っていたはずなのに、お芝居ができる喜びもあって、美術とか衣裳とか、いろいろ力を入れてしまって、結局コスパの悪い芝居になっちゃった(苦笑)。とにかく時間がなくて。私、早くセリフを入れなくちゃ。
木野花
渡辺えり
 ニコニコとクールにしゃべる木野に対して、公演時期を9月に移動させたKAKUTA『ひとよ』の稽古を終えてやってきたかと思ったら怒涛のごとくまくし立てる渡辺。こうして二人をのやり取りを聞いていると、もうそのまま芝居に出てくる姉妹のよう。いや逆だ。二人の普段の会話がそのまま舞台になったような雰囲気だ。

 ちなみに「女々しき力」プロジェクトは、「女性劇作家が結集し、その力を炸裂させる場を作り、観客にも偏見を捨てて大いに楽しんでいただく機会を」と渡辺えりが、亡くなった如月小春、岸田理生の二人の女性劇作家と約束した女性演劇人による、女性の人生を描いた作品の連続上演企画だった。
 「演劇界はまだまだ男性上位の世界。そりゃ今はスタッフも女性の方が多いくらいになってきましたよ。だけどクリエイションのポジションにはまだまだ女性は少ない。本当の意味で同等になるためには、あと10年くらいかかると思うんです。それまで「女々しき力」プロジェクトを頑張って継続してやっていこうと思っています」と渡辺は力強く語る。木野花、渡辺えりの二人芝居『さるすべり〜コロナノコロ』は、むしろプロジェクト序章にふさわしい。
 なお、『さるすべり〜コロナノコロ』の後には、2020年8月10日(月・祝)に、渡辺えり演出によるリーディング公演『片づけたい女たち』(作:永井愛、出演:篠井英介・深沢敦・大谷亮介 /(ト書き語り)草野とおる)が座・高円寺1で、また、2020年8月21日(金)~23日(日)には尾上松也・渡辺えりの二人芝居『消えなさいローラ』(作:別役実、演出:渡辺えり)が本多劇場で開催される。こちらもイープラスのStreaming+を利用したオンライン配信が実施される。
取材・文:いまいこういち

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