三阪咲が初の無観客配信ライブで届け
てくれたもの 「また明日も頑張ろう
と次へ向かう力になってくれたら」

RAISE YOU UP!Live Streaming 2020 in Summer

2020.7.25 EX THEATER ROPPNGI
三阪咲が初の無観客生配信ライブをEX THEATER ROPPNGIにて行った。会場となったEX THEATER ROPPNGIは、当初初夏に予定していた初の全国ワンマンツアー5箇所のファイナルステージ。残念ながら全公演中止となってしまったが、このコロナ禍の下、時を若干ずらし、今だからこそこの歌を届けたい/贈りたいとの想いから、あえて同会場からファンのもとへと贈られた。結果、同じ曲ながら禍を経た今だからこその、より信憑性や信頼感、安堵や鼓舞性を伴って響く内容へと趣きが変わった。
この日は各曲に込められていた想いや願い、事態が故の会えないジレンマや更に募る愛しさ、目指していた目標や夢、楽しみを奪われた者たちの気持ちに更に寄り添い、力を与えてくれる場面に数多く直面することが出来た。同時に、今だからこその“明日への更なるパワー”を与えてくれる瞬間へと我々を何度も誘ってくれた。また、前回のワンマンまではカバー曲も交えていたが、今回は未作品化楽曲も含め全てオリジナル。そこからは今後の更なる独自性や可能性、スタンドアローンで歌っていく決意や気概も伺えた。
三阪咲
COMING SOONの蓋絵から画面はステージを覆う赤いビロードの幕へ。まずは天の声が注意事項を和やかさを交え伝える。「距離は離れているけど心を一つにして楽しもう!!」と告げ、ライブタイトルを高らかにコール。「We are on your side」のイントロが響き渡り、幕が左右にゆっくりと開いていく。光に包まれたステージ中心には右手を天に突き挙げ、左手にマイクを握る三阪。「盛り上がっていきましょう!」と、一気に視聴者を一つにすべく力強く伸びやかな歌声とダイナミズム溢れるサウンド、そしてスタジアムアンセムのコーラスが “さぁ、一緒に夢の扉を開いていこう!”とグイっとステージへとみなを惹きつける。その雄々しさから打って変わり場面は乙女な気持ちと春の日の光景へ。次曲の「ヒラヒラ」ではオートチューンを交えて、さらに生バンドを従えたスペシャルなアレンジで歌唱。サビでは無人のフロアながら、視聴者はお約束のタオル大旋回の光景を思い浮かべただろう。
この日はバーチャルな演出やエフェクティブとの融合も画面越しに楽しめた。三阪がパステル調のレインコートをまとう。「この梅雨の時期にピッタリな2曲を」と、次のブロックでは雨に関わる曲が続けて贈られた。まずは青いステージライトと一条の雨や光、閃光とも捉えられる白色レーザーの中、「空梅雨」をしっとりと歌う。同曲では視聴者へのレクチャーも交え、ダンスで鍛えたアクティヴさの披露も目を惹いた。また、前回のワンマンライブでも披露された未発表の新曲「When Singin' In The Rain」では、雨中や雨水滴る窓越しの映像を経て彼女の大人な面も垣間見れた。切なさや後悔を経て、“でも超えて行くよ”との力強さを擁した同曲。マイクを大切に両手で包み込み情感を込めて歌っていた三阪の姿も想い出深い。
ここで視聴者からの反響コメントを拾うコーナーが。中にはバンドメンバーへの応援コメントも目立ち、今話題の「●●しか勝たん」の●●の部分に各バンドメンバーが付記されていたものも。
中盤に入ると三阪がステージを降り客席フロア真ん中に。このコロナ禍を経て、部活や大会、試合が各種中止となった人たちや、それ以外にも大切なものを失った人たちに「残念ながら夢を実現できなかった方々に向けて、私に出来ることは歌うこと。今日は心を込めてこの曲をみなさんに届けたい」と「繋げ!」が、たっぷりのスモークの雲海のなか歌われた。元々励ましに響いていた曲ながら、この日はどこか更に「大丈夫だよ」との安心や安堵、誰かに見守ってもらっていたり、その努力を認めてもらえた、そんな報われたかのような温かい気持ちにさせてくれた。機会を逸したり、成果を発揮できなかったみんなの悔しさや、大切な何かを失った苦しみを一身に背負い、今にも泣き出しそうな表情で歌う三阪。合わせて涙が誘われた瞬間でもあった。
三阪咲
ステージに戻ると、「嬉しい時も悲しい時も私のライブの時にかえってきてくれたら嬉しいな……っていう気持ちで作った」と語り、TikTokでのMVが話題、つい先日各種配信がスタートした「StaRting PoiNt」へ。トロピカルハウス調の弾んだポップさを基調に、リズミカルでダンサブル、それでいてキャッチーで一緒に口ずさみたくなる同曲が、三阪の軽やかなステップと共に一緒に楽しそうに歌い踊る。
ここで、シンクマスター・木内友軌、ギター・花井諒、ベース・荻野目諒、そして新ドラム・髭白健を迎えたバックを務める「ブルームバンド」のメンバー紹介が。各人のソロパートの各種唱歌のアレンジを交えたリレーションを楽しませてくれた彼ら。そこでは各人のプレイヤビリティの高さはもとより、バンドとしてのまとまりも感じた。
「今日はこのバンドと一緒に盛り上げていきます」と三阪。続く幻想的でファンタジーなシャボン玉が漂う中歌われた「私を好きになってくれませんか」(ABEMA『今日、好きになりました。』主題歌)では、その伸びやかで時々キュートな歌声が映え、同曲の持つ恋した女の子のドキドキワクワク感や不安感、願いや想いが届けられた。
「ここからはブチあげていきますよ!!」と三阪がラストスパートへの狼煙を上げる。まずはクールさややさぐれ具合もカッコいいロック調の「Generate」が、飛び交うレーザーや旋回するタオルと共に視聴者をグイグイと引き連れていく。また前回のワンマンで初披露され、ファンの間ではリリースを待ち望まれている最新楽曲では、ライブのギアを数段階も上げ、そのダイナミズム溢れるサウンドと力強さ、そして<追い風はもう吹いている>との印象的なフレーズと共に同曲が擁する“何でも出来そう”なワンダーさと、どんな時でも前進していく三阪の真骨頂とも言えるポジティブな力が与えられた。
「本来は満員の中で歌うはずだった。残念ながらこのような形となったけど、また絶対にリベンジしたい」と三阪。本編ラストはこれこそこの日ならではの響き方をした「Say Good Night」。本来“愛しい人に本当はそばにいて欲しい”と響いていた同曲が、この日は満天の星空を演出したバックの中、より優しく包み込むように一日を想い返したり明日へ想いを馳せるように、よりグッドナイト感たっぷりに歌われた。この日うたわれた“本当は隣に来て欲しい”の気持ちは、まさに今の視聴者と三阪そのもの。みなが気持ちを重ねた瞬間でもあった。
三阪咲
アンコール。オーバーサイズのTシャツ姿の三阪とバンドメンバーが再度ステージに登場し、プレイ前に10月7日に2ndEPが発売される旨が三阪より報告される。
アンコールは彼女の原点とも言える「夢の先へ」から。かつて夢や憧れ、将来や未来について机上で作られた歌が、今や信憑性を伴い、ある種の実現や現状への至りを改めて振り返させた。そして、「ぶちあがる準備は出来てますか? 最後は盛り上がって終わりましょう!」(三阪)と、ラストは「今だけは好きなものを好きでいたい」が。ドライヴ感のある同曲がポップな画面演出と共に“これからも一緒に行こう!”とライブをスパークさせた。
バンドメンバーが去った後も一人ステージに残った三阪。そこでは最後、「是非次回は生の空間で一緒に楽しみたい。今日のライブが、また明日も頑張ろうと次へ向かう力になってくれたら嬉しいです」との言葉がのこされた。
「活力」……まさにこの日は彼女から様々なバイタリティを与えてもらった。そして彼女はこれからも歌やライブを通し様々なパワーを我々に与え続けてくれることだろう。きっとみなさんも観終えた際には更なる力を得て、ステージを去る際のこの上ないキラキラとした表情の三阪同様の顔をしていたのではないだろうか? 彼女のくれたこの活力を源にまた明日に向かって歩を進めよう。

文=池田スカオ和宏 撮影=関口佳代

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