[Alexandros]川上洋平の映画連載スタ
ート!初回は『mid90s』について語り
ます【新連載:ポップコーン、バター
多めで PART2】
本連載は川上洋平の誕生日6月22日にちなんで、毎月22日に記事を公開していく予定です。どうぞお楽しみに!
序盤でかかる曲がシールの「Kiss from a Rose」で、95年に公開されてヒットした『バットマン フォーエバー』の主題歌のバラード。あと、ニルヴァーナとかサイプレス・ヒルとかファーサイドとか、USの僕の好きなアーティストの曲もたくさんかかる。その後僕はオアシスだったりUKロックに傾倒していったから枝分かれはしていくんですけど、全部わかるものばかりだったんで共感でしかなかったですね(笑)。少年たちが着てる服のブランドもショーティーズだったり、僕も当時めちゃめちゃ着てたからすごく懐かしかったです。
『mid90s ミッドナインティーズ』より
■僕も主人公とお兄ちゃんと全く一緒のことやってました(笑)
スティーヴィーのお兄ちゃん役がルーカス・ヘッジズで。『マンチェスター・バイ・ザ・シー』にも出てて大好きなんですけど、若手ではトップクラスの注目株と言っていい俳優さんだと思います。スティーヴィーよりお兄ちゃんに共感するシーンが多かったですね。弟には強気でいけるんだけど、抱えてるものは弟と変わらなかったりして。その感じにぐっときましたね。弟は逆に勇ましいというか、まっすぐ向かっていく。
あと、スティーヴィーがイケてるグループに入って行くんだけど、スティーヴィーが仲間たちと距離を縮めていくのに嫉妬する坊主頭のルーベンにもすごく共感しました。でも割とどのキャラクターに対しても「わかるなあ」って思いましたね。レイ役のナケル・スミスはOdd Futureの創立メンバーでプロのスケートボーダーってこともあってかっこよかったですね。
僕は13歳の時はアメリカンスクールに通ってたんですけど、同学年にイケてる子がいるわけじゃなくて、結局先輩なんですよね。そこもスティーヴィーと一緒で。このくらいの世代って学年が2つ違うだけで、身長が20センチくらい違ったりしてビックリするくらい。尊敬と恐怖を感じながら接するわけですけど、同学年がおままごとみたいな遊びをしてる時に、先輩がちょっとギターを弾いたり、バスケしたり、なんならちょっとタバコ吸ってたりするのを見て憧れを感じたり。それがスティーヴィーはスケボーだったけど、僕はギターであり音楽でしたね。
僕にも兄がいるので、スティーヴィーがお兄ちゃんの部屋に勝手に入って、飾ってあるスニーカーやCDを眺めるシーンはリアルでしたね。お兄ちゃんが持ってるギターに憧れて勝手に触って怒られたこともあったし。でもその後一緒にゲームやったりもしてたから、スティーヴィーとお兄ちゃんと全く一緒のことやってましたね(笑)。ケンカするけど仲良いみたいな。
■いろんな考えがごっちゃになってる90年代の雰囲気がうまく出てる
■監督がコンプレックスと向き合った感じに共感する
最近ジョナ・ヒルは、「日本食を食べて痩せてシリアスな雰囲気にしてみたんだ」みたいなこと言ってたり、こうやって映画監督デビューしたり。僕は勝手に、彼は色々コンプレックスを抱えてて、そこと向き合った結果、コメディ俳優というところからどんどん変化してきてるんじゃないかって思ってて。前から脚本家ではあったんですけど、色々感じるものがあって自分ができることを広げてきたのかなあって。そういう面では監督にも共感しますね。
『mid90s』はジョナ・ヒルの13歳当時の自伝的要素も入ってるんだけど、スティーヴィーがイケてるグループに入ろうとする勇気だったり、入ってからも努力するところから、おそらくジョナ・ヒルは映画業界に入ってからもそういう努力をしてきたんだろうなって。ハリウッドなんてもうイケてるオブ・ザ・イケてるグループなわけで(笑)。だから、90年代当時の気持ちだけなくて、ハリウッドで感じた気持ちも入ってるのかもしれない。
まあでも、すごい上から目線かもしれないですけど、まだまだこれからだなとも思いました(笑)。去年観たポール・ダノの初監督作品の『ワイルドライフ』が僕は2019年のトップ3に入るくらい好きなんですね。雰囲気はすごく地味なんですけど素晴らしくて。それに比べると『mid90s』はメッセージ性が前に出てるわけではなくて、ひとりの男の子の成長物語っていうのと90年代に対しての愛っていうのはすごく伝わってきたんですけど、僕としては「ここまできたら泣かせてほしかった」って思うところもあった。そこまでベタにいかないのが良いっちゃ良いんですけど、僕の好みとしてはもっとやっちゃって欲しかったなって。でも、LAの雰囲気とかが全くわざとらしくなくて古臭くないし、懐古映画だとも思わないのが素敵だなって。単純に、映画撮ってみたいなって思っちゃいましたね(笑)。
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