新宿にSOMPO美術館が開館 ゴッ
ホの《ひまわり》など『珠玉のコレク
ション』レポート

新宿の損保ジャパン本社ビル42階にあった東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館が、この度「SOMPO美術館」にリニューアル。東郷青児作品よりインスピレーションを得たユニークな建物に生まれ変わった。リニューアル後の記念すべき第一回目の展覧会は『SOMPO美術館 開館記念展 珠玉のコレクション-いのちの輝き・つくる喜び』。2020年7月10日(金)から9月4日(金)まで開催される本展には、ゴッホの《ひまわり》ほか、多くの作品が展示される。
日本画や油絵、屏風絵などで見られるさまざまな表現と色彩
会場に入ると、大判の油絵や日本画、屏風絵など、日本の近現代の大家たちの大作がずらりと並ぶ。冒頭から目に入る岸田夏子の《桜華》の華やかさは鑑賞者を圧倒し、《桜花》は観る者を幽玄世界に誘う。なお、岸田夏子の祖父である岸田劉生の《虎ノ門風景》も鑑賞することができる。
岸田夏子作品展示風景
東山魁夷の《潮音》と平山郁夫の《ブルーモスクの夜》は同じ壁面に並び、鮮やかなコントラストを成している。《潮音》のブルーグリーンの水と白い泡が入り混じる海面の色、《ブルーモスクの夜》のラピスラズリのような空の色はどこまでも深く美しく、宝石のような名品だ。
展示風景
山口華楊の《葉桜》は、第三回帝展に入選し、1922年にパリのグラン・パレで催された『日本美術展覧会』に出展された屏風絵だ。今回は全面的な修復作業後初のお披露目となり、下部の蛇などの緻密で繊細な描きこみなどを確認することができる。
左:山口華楊《葉桜》1921 紙本彩色(四曲一隻屏風)SOMPO美術館、ほか
創設時からのコレクション・東郷青児の代表作を堪能
SOMPO美術館は1972年、東郷青児の作品や、彼が所持していたコレクションの寄贈を受けた「東郷青児美術館」から歴史がはじまる。いわば本美術館創設の要ともいえる東郷作品は、「第3章 東郷青児(1897-1978)」にて鑑賞が可能。《望郷》《パラソルさせる女》《バラ一輪》など、詩的でロマンチックな世界に存分に浸ることができる。
東郷青児作品展示風景
その他、キャリアの後期に手掛けたブロンズ像や、東郷がデザインした《東京火災保険株式会社 保険案内》、《安田火災カレンダー》の原画となった絵など、さまざまな作品を紹介している。
東郷青児デザインの印刷物
またここでは、本美術館のロゴマークとして使用されている《超現実派の散歩》も見ることができる。本作は東郷が1920年代にフランスに留学していた成果が表れており、「狂乱の時代」と呼ばれる当時のパリの文化的な雰囲気を窺い知ることができる貴重な一枚だ。洒脱で軽妙で、今みても新鮮な魅力に満ちたこの絵は、モダンボーイとして知られる東郷の、時代を経ても古くならない感覚を示すようにも思う。
東郷青児作品展示風景
SOMPO美術館を特徴づける諸作品が集結
多くの美術品を所持するSOMPO美術館だが、本美術館の顔の一つにフィンセント・ファン・ゴッホの《ひまわり》が挙げられる。こちらはゴッホが7点制作し、6点現存する一連のひまわりの絵のうちの一つ。本展より、透明度が高く低反射の無色ガラス越しに鑑賞する形になり、以前よりも細部が見やすくなった。
また、今なら国立西洋美術館にて開催中の『ロンドン・ナショナル・ギャラリー展』でもゴッホの《ひまわり》が展示されているので、現存する6点の《ひまわり》のうちの2点が東京に集結していることになる。この機会に2つの《ひまわり》を見比べても面白いだろう。
フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》1888 油彩・キャンヴァス SOMPO美術館
損保ジャパン本社ビル時代から常設展示として《ひまわり》の横に並んでいたポール・セザンヌの《りんごとナプキン》や、ポール・ゴーギャンの《アリスカンの並木路、アルル》も変わらぬ姿を見せている。また今展では、古いニスの除去によってモデル女性の本来の肌の輝きと色味を取り戻したピエール=オーギュスト・ルノワールの 《浴女》も紹介。ヨーロッパ近代絵画の至宝を新宿で堪能できるとは、この上なく贅沢な体験だ。
ポール・セザンヌ《りんごとナプキン》1879-80 油彩・キャンヴァス SOMPO美術館
ポール・ゴーギャン《アリスカンの並木路、アルル》1888 油彩・キャンヴァス SOMPO美術館
左:ピエール=オーギュスト・ルノワール《帽子の娘》1910 油彩・キャンヴァス SOMPO美術館、右:ピエール=オーギュスト・ルノワール《浴女》1892-93年頃 油彩・キャンヴァス SOMPO美術館
SOMPO美術館を運営する公益財団法人SOMPO美術財団は、若手美術家の育成も行ない、幅広い年齢層の新進作家たちの創作活動を応援している。本展第2章では、公募コンクール「FACE」グランプリの作品が並び、リニューアルオープンした美術館にふさわしい新鮮な空気を送り込んでいる。
会場風景(第2章 「FACE」グランプリの作家たち)
また本美術館では、75歳から絵画を始めたアメリカの素朴派の作家グランマ・モーゼス(アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス)の絵画も収集しており、本展でも7点が鑑賞可能だ。
グランマ・モーゼス展示風景
リニューアルしたSOMPO美術館は、3~5階が展示スペースで、1~2階のカフェやミュージアムショップ、エントランスホールという構成だ。鑑賞の際は5階から下り、最後にエントランスホールに戻る形になる。カフェやショップは明るくて広々としており、訪問時の楽しみの一つになるだろう。また本展では、ユニークな外観の美術館の建築模型や採用案なども展示されており、もしも建物が他のデザインだったら、と想像するのも楽しい。5月開館からの延期を経て、満を持しての開幕となったリニューアル第一回目の『SOMPO美術館 開館記念展 珠玉のコレクション-いのちの輝き・つくる喜び』、是非足を運んでいただきたい。
ミュージアムショップ

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