嵐、大学講義の題材に ジャニーズの
文化的側面を研究する意義とは

(参考:の楽曲で増えるハーモニー 「Bittersweet」に見るシンガーとしての“進化”とは)

 「時代は確実に嵐である」とする大学講師の存在にもまず驚かされるが、その授業内容がまた興味深い。シラバスによると全15回に渡る講義で「ジャニーズという文化」や「嵐のメンバーの比較」「嵐のPVの変遷、ブレイク以前/以後」「コンサートに見る嵐」「嵐とJ-POP」「嵐の時代は続くのか」といったテーマを分析していくという。嵐ファンでなくても、音楽ファンからしたら非常に惹かれる内容だ。

 最近ではAKB48ももいろクローバーZでんぱ組.incなどのいわゆる「アイドル批評」が盛んだが、意外にもジャニーズを対象としたものは少ない。「ジャニーズ研究本」と名打った書籍は数あれど、その多くはメンバーのパーソナリティに焦点を置いたもので、彼らの音楽を真摯に分析したものや、文化的側面について扱ったものは数少ないのが現状だ。それではなぜ、ジャニーズはこれまであまり分析の対象とされてこなかったのだろうか。

 ジャズミュージシャンの菊地成孔大谷能生との共著『憂鬱と官能を教えた学校』のなかでジャニーズの音楽を「バークリーメソッドの極致」と表現している。SMAPの「胸さわぎを頼むよ」を例に出し、シンプルなペンタトニックで構成されるメロディラインの裏に鳴り響く高度に複雑化したコード進行を「20世紀商業音楽の到達点」と紹介、その完成度の高さを指摘している。実は海外のポップスやロックと比較しても非常に高い次元にある日本のJ-POP。しかしその代表格でありスタンダードを築いてきたのが「アイドル」のジャニーズであるため、正当な評価がされてこなかったのかもしれない。裏を返せば、あまりにもメジャーで世間一般まで浸透した「当たり前」の存在であったがゆえ、長らくジャニーズは研究の対象とならなかったのではないだろうか。

 先述の関氏は嵐を通じて現代思想やカルチャーについても俯瞰していくという。当たり前すぎて普段目がいかなかったものを対象に行われる研究はカルチュラル・スタディーズの手法にも通ずる。この講義がいったいどのような方向へと進んでいくのか、また講義をきっかけにジャニーズを対象とした研究が盛んになっていくのか、個人的には非常に注目している。(北濱信哉)

リアルサウンド

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