前代未聞! 落語×ミュージカル『劇
的茶屋』がオンラインロングラン公演
に挑戦 『謳う芝浜』観劇レポート

落語をベースにしたオリジナルミュージカルを、オンライン生配信でロングラン公演するという斬新な企画『劇的茶屋』。記念すべきシリーズ一席目となる作品『謳う芝浜』が、2020年7月4日(土)に初日を迎えた。
本公演は永野拓也、高原紳輔、三森千愛、福田響志らによる「ほとり企画」が主催している。現時点で発表されているキャストは飯野めぐみ、加藤潤一、川口竜也、高橋卓士、俵和也、遠山さやか、宮島朋宏、横山敬、和田清香ら9名。これらのキャストの中から3名ずつ、代わる代わる出演していく形式になっている。キャストがそれぞれ別の場所からリモートで出演するという点も注目だ。
以下で、初日前日に行われたゲネプロの模様と、自宅でのオンライン観劇体験をレポートする。
『謳う芝浜』ゲネプロ公演のスクリーンショット
『劇的茶屋』の公演は、まず自宅にお茶菓子が届くというところから始まる。
チケットは松竹梅の3種類で、それぞれこだわりのお茶菓子がセットになっている。観る・聴く・味わうという体験を一緒に楽しめるようにという粋な計らいだ。早速届いたお茶菓子セットを開封し、お茶を入れ、お菓子を用意して席につく。
上演時間は休憩なしの60分。劇場で上演している公演の配信とはひと味もふた味も違う、オンライン生配信ならではの工夫が随所に施された全く新しい公演だった。
配信スタートと共に、案内役を務める宮島朋宏が姿を見せる。宮島の小気味良い前説により、次第に『劇的茶屋』の世界へと入り込んでいく。本編に登場する魚屋の熊役・高橋卓士、その女房のおフミ役・和田清香が登場して自己紹介する場面も。前説の最後には、キャストと視聴者で共にお菓子を「いただきます」する。そのときまでお茶菓子には手を付けず、我慢しておくのがよさそうだ。
『謳う芝浜』ゲネプロ公演のスクリーンショット
おいしいお茶とお菓子を堪能したところで、いよいよ本編へ。『謳う芝浜』は、古典落語『芝浜』を作曲・川嶋志乃舞による日本の伝統音楽とポップスを融合させた音楽で彩った、いわば現代版落語。落語✕ミュージカルという異色の組み合わせだが、たとえ落語に馴染みがなくても心配無用だ。要所要所で語り手が登場して案内してくれるので、物語から置いていかれるということがない。予習なしでも問題なく楽しむことができるはずだ。
<あらすじ>
魚屋の熊は、腕はいいが、大の酒好き。毎朝女房のおフミに叩き起こされては、嫌々市場へ向かう日々だが、ある日仕入れに向かう途中で、大金の入った財布を拾う。「神のお恵みだ!」と調子にのって大酒を呑む熊公にたいし、見兼ねたおフミは一世一代の”嘘”をつき...。
高橋演じる熊は、酒を飲んでは寝てを繰り返すどうしようもない亭主だが、不思議と憎めない愛らしさを持っている。和田演じる女房のおフミは、そんな亭主に容赦ない物言いをするが、言葉の裏にはしっかりと愛が感じられた。物語は熊とおフミの夫婦の掛け合いを中心に進んでいく。セリフはもちろん、歌唱シーンですらリモートであるということを一切感じさせないほどスムーズに展開された。
『謳う芝浜』ゲネプロ公演のスクリーンショット
本公演で何よりも驚かされたのは、画面構成の作り込みだ。キャスト全員がまるで同じ空間にいるような一体感がある。芝居でも役者同士の目が合っているかのように画面が配置されているのは見事。ときには双方の画面で物の受け渡しをする様子も見られた。少人数編成だからこそできる構成だ。そしてなにより、実際に目の前にいないはずの相手と芝居を続ける役者の集中力の賜物だろう。
『謳う芝浜』ゲネプロ公演のスクリーンショット

『謳う芝浜』ゲネプロ公演のスクリーンショット

これはPCからの閲覧に限るのだが、公演中には画面右側でチャット機能を使用することができる。ゲネプロ上演中には公演の感想、お茶菓子の感想、拍手(88888)など、多くのコメントが続々と投稿されていた。このチャットはキャストたちにも見えているらしく、コメントに対して上演中に反応が返ってくることもあるそうだ。チャットの内容によって、今後の公演やお茶菓子のラインナップも変化していくという。
『謳う芝浜』ゲネプロ公演のスクリーンショット
お茶菓子、落語✕ミュージカル、オンライン生配信、リモート、チャット、ロングラン……様々な挑戦的要素を取り入れた、全く新しい演劇の形を垣間見た。こんなご時世だからこそ、試行錯誤を重ねて新しいものを生み出し、少しずつ前に進んでいくことが必要なのだろう。
本公演『謳う芝浜』は現在、7月30日(木)までの配信上演が決まっている。8月上旬には​『謳う死神』、9月上旬には『謳うお見立て』が上演予定だ。観劇とお茶菓子おふたついっぺんに楽しみたい方は、観劇の3日前までにチケットを購入しておくことをおすすめする。
筆者も自宅にて、お茶とお菓子をおいしくいただきました
取材・文・写真 = 松村蘭(らんねえ)

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