「劇場の灯を消すな!」Bunkamuraシ
アターコクーン編 放送が迫る中、収
録レポートが到着

2020年7月5日(日)WOWOWライブ、WOWOWメンバーズオンデマンドにて放送される「劇場の灯を消すな!」第一弾となる『劇場の灯を消すな! Bunkamura シアターコクーン編 松尾スズキプレゼンツ アクリル演劇祭』。放送が迫る中、公式より収録の模様をつづったレポートが到着した。
WOWOW「劇場の灯を消すな!」オフィシャルライターの徳永京子による収録レポート
もしかしたらここは、今の日本で一番贅沢な演劇の現場なのではないか。6月中旬のある2日間、わずかな関係者しかいないシアターコクーンの客席で何度も思った。
2月末の大型イベント自粛要請、4月初旬の緊急事態宣言で、日本の演劇界は実質的にほとんどすべて興行中止に追い込まれた。そんな状況を受けてWOWOWが企画したのが、劇場を応援する『劇場の灯を消すな!』シリーズ。その第一弾となる「Bunkamuraシアターコクーン編 松尾スズキプレゼンツ アクリル演劇祭」の収録は、緊急事態下であることを忘れてしまう華やかさと遊び心に貫かれた内容になった。
次々と舞台上に上がる俳優たちは、松尾作品にゆかりのある面々。その顔ぶれは、1日目は“音楽編”といった内容で、生田絵梨花、麻生久美子、阿部サダヲ、小池徹平、神木隆之介、秋山菜津子、村杉蝉之介、多部未華子松たか子が1曲ずつ歌う。司会は中井美穂と皆川猿時で、皆川のMCに演出家席の松尾が応じる。2日目は“演劇編”で、大竹しのぶと中村勘九郎がリーディング、阿部と池津祥子は松尾が書き下ろした短編ゾンビ演劇を演じ、荒川良々は時代劇、『キレイ』などに出演し松尾が信頼するダンサー4人はair:manの振り付けで踊り、収録の締めくくりは松尾と月刊「根本宗子」の根本との対談という充実ぶり。
MCを務める中井美穂と皆川猿時(左から) 撮影:宮川舞子
けれども、華やかさをてらいなく前面に出すのではなく、まさかのひねりを効かせるのが松尾のスタイル。「松尾スズキプレゼンツ アクリル演劇祭」と名付けられている通り、司会とパフォーマンスはすべて、大人がひとり入れる透明のアクリルケースの中で行われた。マスクでも、ソーシャルディスタンスでも、フェイスシールドでも、パーテーションでもなく、アクリルケース。アクリルケースの中で歌う、踊る、殺陣をする。
このアイデアを出したのは、もちろん、松尾。
「“三密”がだめだと言われたら、これしかないと思うじゃないですか」と本人は涼しい顔で言うが、思いつきそうで思いつかない、思いついたとしても演者の負担を考えてなかなか「やろう」とは言わないのでは……。
実は当初、歌ったり喋ったりしたらケースが息で曇るのでは、という心配もあったが、その時も松尾は「曇ったところに指でせりふを書くシーンをつくろうか」と意に介さなかったという。結果は、完成したケースが天井と背面のない三面となったため通気性が良く、その心配はなくなった。また、アクリルが照明に映え、予想以上に美しいというメリットがもたられさた。「アクリル演劇祭」という人を食ったようなアイデアは、それ以外に何もないブラックボックス状態の劇場の美しさを伝えることになった。
松尾スズキ 撮影:宮川舞子
最後に、忘れてならないのは番組のオープニング。松尾がひとり、エントランスから場内へと踊りながら移動し、シアターコクーンを案内する。芸術監督によるザッツ・エンターテインメントな劇場紹介は、前代未聞だろう。
「今回の企画は、全体的にシットコム(シチュエーションコメディの中でも、主にテレビで放送される一話完結のシリーズもの)をイメージしました。もともとやりたいと考えていたことで、それが劇場でできたのは、大変でしたけど楽しかったですね」
と2日間を振り返った。松尾スズキが、演劇と劇場不足の人に贈る渾身のコメディ、必見だ。

本番組はWOWOWと劇場がコラボしオリジナル番組を制作する演劇プロジェクト。初回はBunkamura シアターコクーン編となり、第二弾は8月1日(土)に劇団☆新感線とコラボレーションする、サンシャイン劇場編を放送する予定となっている。

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