ジョー・サトリアーニ主催の
神業ギタリストを集めたG3ツアー。
その記念すべき第一作目となる
『G3ライヴ』
本作『G3ライヴ』について
実際のステージでは、スティーブ・ヴァイ(9曲) → エリック・ジョンソン(9曲) → ジョー・サトリアーニ(9曲)の順で進行し、アンコールとしてG3によるジャムセッション(3曲)「ゴーイング・ダウン」(ドン・ニックスのカバー)、「マイ・ギター・ウォンツ・トゥ・キル・ユア・ママ」(フランク・ザッパのカバー)、「レッド・ハウス」(ジミヘンのカバー)という流れで行なわれたが、本作はサトリアーニ(3曲)、ジョンソン(3曲)、ヴァイ(3曲)、ジャムセッション(3曲)の順になり、計12曲が収録されている。
サトリアーニは10代で一流ジャズプレーヤーの門下生となり、練習の鬼で理論にも長けており、豪快かつ丁寧なプレイが持ち味だ。ここでもさまざまなギターのテクニックを惜しむことなく駆使しており、速いパッセージからエモーショナルなフレーズまで彼の卓越したプレイが堪能できる。
続くジョンソンはどちらかと言えばロックというよりはフュージョン寄りなので、このアルバムがリリースされた時点では一番知名度は低かったと思う。彼の名前が世界に知られるきっかけとなったのは、同郷(テキサス)のクリストファー・クロスのメガヒットしたデビュー作『南から来た男(原題:Christopher Cross)』(‘79)だ。このアルバムで、ジェイ・グレイドン、ラリー・カールトンら売れっ子のセッションギタリストと並んで当時無名であったジョンソンが参加し、このふたりに勝るとも劣らない鬼気迫るギタープレイが認められてからだ。クロス自身、デビュー前は地元ではよく知られたハードロックギタリストで、10代の頃にディープ・パープルのライヴで急病のブラックモアに代わって弾いたこともあったのだが、ジョンソンには負けを認めていて、事あるごとにジョンソンをデビューさせようと頑張っていたのである。
そのジョンソンは並外れた早弾きを中心に、ジャズやカントリーの超絶テクニックを駆使して華麗な演奏を聴かせる。実際に彼のライヴを観た人なら分かると思うが、左手が見えないぐらい速く動いているのに的確に音がコントロールされているのが特徴で、間違いなく世界トップレベルのテクニックを持つ。G3世代の中では珍しく、スティーブ・モーズ(54年生まれ。サトリアーニの代わりにディープ・パープルに加入した)と同様、カントリーに大きな影響を受けている。
ヴァイはサトリアーニの教え子で、ザッパの門下生(採譜係)を経てハイテクニックのギタリストとして知られるようになるが、ギターを始めた頃から1日10〜15時間を練習に当てるというストイックさの努力の人である。また、バークリー音楽院で音楽理論も学んでおり、並外れた感性と技術の持ち主だと言える。映画『クロスロード』でのギター合戦をはじめ、彼の演奏はよくご存知だろう。情感たっぷりのフレーズからフリーキーな演奏まで、多くの抽斗を持つプレーヤーだ。本作でも変幻自在のプレイを披露している。
そして、お待ちかねのジャムがスタートする。ロックの定番ジャム曲「ゴーイング・ダウン」から「レッド・ハウス」までの3曲、G3による圧巻のセッションが繰り広げられており、ギターファン(特に、HR/HMのギタリスト)にとってはどのナンバーも興味深いはずだ。
本作がリリースされたのは今から23年前であるが、ロックギターの技術的な進歩はこの頃から現在までに大きな変化はないように思う。ひょっとすると、G3のギタリストたちはロックギターの最終地点に到達してしまったのかもしれない。
TEXT:河崎直人