アイアン・メイデン『Somwhere Back
In Time World Tour 08』リポート

08年2月17日(土)幕張メッセに大挙押し寄せたメタル・ファン。“仕事着”であるメイデンTシャツをまとう人々の圧倒的な多さには毎回驚かされるが、今回はさらにその比率が高い印象だ。始まる前から今回は今までと違った期待感が会場を埋め尽くしている。
今回の『Somwhere Back In Time World Tour 08』、アイアン・メイデンの初期7枚のアルバムを中心に選曲された、ファンにとっては長年の夢とバンドへの愛情を一身に感じる集大成といえるショウだ。
既に儀式と言っても過言ではない冒頭の「Doctor Doctor」〜“チャーチルの演説”に俄然オーディエンスの戦闘モードも高まる、特に最前列エリアのモッシュ状態は凄まじい。
幕が開かれると、ステージには古代遺跡を想起させる壮大なセット、言うまでもなくアルバム『Powerslave』のアルバム・アートワークをイメージしたもの。オープニングは当然ながら「Aces High」。メイデンはおろか“メタル・アルバム史上屈指の1-2曲目”と断言していいだろう〜「2 Minutes to Midnight」への展開は、理屈抜きにテンションが振り切れる程上がる。ところ狭しと動きまわるブルース・ディッキンソン、緩急の効いた歌唱、幅広い声域を自由に操るこのヴォーカリスト、ライヴ・パフォーマンスを見る度に進化している感があるが、適切にコントロールされた今の歌声がよりベストに感じられる。
前半2曲の勢いをクールダウンさせるかの「Revelations」といった意表をついた選曲が来たかと思えば、「The Trooper」「The Number Of The Beast」と人気曲をたたみかけるように演奏するなど、めまぐるしく聴く側の想像力を書き立てるセットリストは巷で大盛況のグレイテスト・ヒッツ・ツアーとは雰囲気が違う。20数年前の楽曲であることを忘れさせ、とにかく出る曲出る曲に対するオーディエンスの過剰なまでの反応も凄まじいものがあった。
このツアーで最大のサプライズといえば誰もが挙げるであろう『Powerslave』のエンディングを飾る「Rime of the Ancient Mariner」がセットリストに加えられたこと。長年このアルバムを愛聴してきたオーディエンスにはこのツアーならではの嬉しい選曲、アンコールの「Moonchild」と事前の過去アルバムの予習/復習具合を確かめる意味でも至福のセットリストであった。

贅沢を言えば、6人体制でこれらの過去曲がトリプル・ギター用にリアレンジされる面白みを期待していたのだが、残念ながらそのような楽しみが無かったことが不満が残すところだった。とはいえ鉄壁といえる演奏面のクォリティは言うまでもない。
あと90年代の「Fear of the Dark」が何故かセットに入れられていることも、事前のツアーセットから多くの人が感じていたことだが、間違いなくショウを総じて一番盛り上がっていたし皆の合唱がひときわ大きかったハイライトといえる演奏であった。結局、時期や作品などの薀蓄はどうであれ皆メイデンが大好きだということである。

今回の幕張での公演はツアー終了後にリリースされる予定のDVD用の撮影も行われた。会場内、そして天井にも何台ものカメラが用意され、日本のメイデン・ファンの熱気が試された場となった。その日のライヴが世界に向けてDVD化されるのだから、ショウの体験者はさらなる楽しみが控えていると言えるだろう。
■2月17日(土)幕張メッセ公演 セットリスト

01. Intro - Churchill's Speech
02. Aces High
03. 2 Minutes to Midnight
04. Revelations
05. The Trooper
06. Wasted Years
07. The Number of the Beast
08. Can I Play With Madness?
09. Rime of the Ancient Mariner
10. Powerslave
11. Heaven Can Wait
12. Run to the Hills
13. Fear of the Dark
14. Iron Maiden

15. Moonchild
16. The Clairvoyant
17. Hallowed Be Thy Name

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