Ho-Say(月亭方正)& MC MIRI(我儘
ラキア)に訊く “落語×音楽”の融
合に見た伝統芸能の新たな形とは

押しも押されぬ人気芸人月亭方正が、Ho-Sayとして“落語✕音楽”を融合したプロジェクトを始動した。7月1日(水)にはゲストアーティストとしてサッコン(韻シスト)とMC MIRI(我儘ラキア)を迎え、Ho-sayの脳内で「こんなんしたら面白いな」というものを具現化したという楽曲「看板のピン」を配信リリースする。そんなHo-SayとMC MIRIに、プロジェクト始動と楽曲に込めた想いを存分に語ってもらった。
――Ho-Say(月亭方正)音楽プロジェクトとして、“落語✕音楽”を融合した「看板のピン」を配信リリース。まずはこのプロジェクトを始めたキッカケを教えて下さい。
Ho-Say:今回、コロナで自粛をしていて時間があって。落語の稽古は変わらずやってたんですけど、音楽もすごく好きなので作曲をやってみたいなと以前から思ってて。僕がやるべきことは落語を広めることなので、趣味の音楽と上手いこと融合したらもっと広がるんじゃないか?と思ったのが一番最初です。
Ho-Say / MC MIRI(我儘ラキア)
――今回のプロジェクトにはサッコン(韻シスト)&MC MIRI(我儘ラキア)という、関西で活躍するラッパー二人も参加しています。
Ho-Say:音楽と落語を融合したいと思った時、ラップを入れたいと思ったんです。そこで最初はオーディションをして、来た人から選ぼうと思ってたんですけど。僕が無知で申し訳ないんですが、ラップっていきなり出来るもんじゃないんですね(笑)。そこでMC MIRIさんと出会ったんです。
――MIRIさんは最初、Ho-Sayさんから声をかけられていかがでした?
MC MIRI:それが最初、このプロジェクトに参加させていただいたキッカケは私で。Ho-SayさんがTwitterで「オーディションを開催します」とツイートしてるのを見て、私から「オーディションを受けたいです!」って言ったんです。
MC MIRI(我儘ラキア)
――え、Ho-Sayさんからでなく、MIRIさんから手を挙げたんですか!?
MIRI:そうなんです。ラップってまだ“ヤンチャな人の音楽”というイメージがあるので、Ho-Sayさんが音楽を通じて落語を広めたいという気持ちと一緒で、私もラップがヤンチャな人だけの音楽じゃないというのを知ってもらいたい気持ちがあったんです。それと“落語✕ラップ”って今まで誰もやらなかったけど、落語とラップにすごく近いものを感じて。言葉で物語を想像させて繋げていく落語にラップと通じるものがあると思ったし、言葉遊びみたいなところも似てるのに、誰もそれを融合させたことが無いので。「これはスゴイことが起きるかもしれない!」と思ったのが、やってみたいと思ったキッカケでした。
――Ho-Sayさんも落語とラップに近いものを感じていた?
Ho-Say:落語には節がないですけど、節をつけて物語を紡ぐとラップは、長唄や浪曲に近いものがあると思っていて。「ラップって、昔でいう浪曲なんや!」と思いました。そこで、「だったら落語と浪曲は相性がいいから、ラップも相性いいんちゃうか?」と思って、無理なく融合出来ると思ったし、実際にやってみたらすごく相性がよくて面白かったですね。あと今回、「看板のピン」のMVを作って、僕が発注して絵を描いてもらったんですが、「めちゃくちゃええやん!」っていうのが出来てるんで。ラップという力も借りて、日本だけでなく世界にも届けられるものになると思います。
Ho-Say
――落語を知らない人は「看板のピン」の言葉の意味から分からないと思いますが。そこに絵があったり、ラップが加わることで、やってることの面白さがより伝わると思います。
Ho-Say:うちに16歳と18歳の娘がいるんですけど、その子らに見せたら「ヤバい! バズるんちゃう!?」って言ってくれて。うちの子もぶっちゃけ落語には興味ないですけど、「すごく分かりやすいし、「なにこれ?」って興味が湧く」って言ってくれて嬉しかったですね。
――落語という日本の誇る伝統芸能をこれからも引き継いでいくためにも、若い子が興味を持ってくれるキッカケってすごく重要ですよね。
Ho-Say:中には「古典落語を冒涜すなよ」って人もいるかも知れないですけど。これを通じて「「看板のピン」って噺を見てみたい」って子が一人でも現れることが僕のやるべきことやと思うし、実際にそうなったらすごい達成感ありますね。だからこれを聴いた後に落語の「看板のピン」が聴きたくなるように、あえて下げの台詞を入れてないんです。
――なるほど、あの終わり方はそういう理由があったんですね! 今回、題材に「看板のピン」を選んだ理由はなんですか?
Ho-Say:若い子に「落語に興味あるんですけど、何から聴いたらいいですか?」ってよく聞かれるんですけど、その時に勧めるのが「看板のピン」なんです。この噺には落語の魅力が全部詰まってるんです。落語ってシュールでもないし、勧善懲悪が好きでハッピーエンドが好きという日本人の血に合ってるし。僕、昔は論語とか読んでて、「僕のバイブルや」って言うてたんですけど、落語は「人間ってこういうもんやで」っていう論語の教えも面白おかしく伝えておて。いまは「僕のバイブルは落語です」って断言出来ます。
Ho-Say / MC MIRI(我儘ラキア)
――MIRIさんは「看板のピン」は知ってました?
MIRI:知らなかったです。でも最初は落語にちょっとお硬いイメージがあったんですけど、Ho-Sayさんの落語が乗った音楽を聴いたら、すぐに画が想像出来て。「落語って思ったよりも聞きやすいし、想像しやすいし、面白いじゃん!」というのが最初の印象でした。
――MIRIさんのラップも入って、楽曲が完成しての感想はいかがですか?
MIRI:「落語とラップの相性は良いけど、ごちゃごちゃしないかな?」って心配してたんですけど。出来上がりを聴いてみたら落語はスッと入ってくるし、落語を聴き慣れない若い子もラップがあることで抵抗無く聴けるし。逆に落語好きな年配の方にラップを聴いてもらえる機会にもなると思うし、広い年齢層に届く曲になったと思います。
――単純に曲としてカッコいいし、Ho-sayさんの落語のフロウもすごく気持ち良いですし。落語とラップの相性の良さも想像以上だったんじゃないですか?
MIRI:そうですね。落語とラップが似てる部分の良さを高め合って、ちゃんとひとつの音楽になってますよね。
Ho-Say:今回ね、僕の脳内で「こんなんしたら面白いな」って思ったことを具現化してくれたのはみんなですよ。作詞作曲・山崎方正って書くし、僕が30歳くらいやったら、すごい天狗になってると思うけど(笑)。みんなに作ってもらったというのをすごく感じてます。
Ho-Say / MC MIRI(我儘ラキア)
――サッコンさんとMIRIさんのラップはいかがでした?
Ho-Say:最初ね、僕がラップを書いてたんですけど。僕の書いてたのは、どうやらダジャレだったみたいで(笑)。お笑いなのでどうしてもフリがあってダジャレのオチがあってみたいな感じになってしまうんです。で、「ラップってなんやねん!?」ってなって、いまも分かってないんですけど。僕のやりたかったことを作家の子に起こしてもらって、それを下地に二人にラップを書いてもらって。僕一人じゃ、絶対に出来なかったです!
MIRI:私もいまだにラップとダジャレの違いって分からないですけど(笑)。ダジャレも上手くビートにハメたら、歌い方ひとつでラップになるんです。これは私の考えなんですけど、韻って曲の聴きごこちをよくするためのものだと思うので、これがラップでこれがダジャレって線引はなくて、それが音楽になってればラップだと思うんです。
――今回はラップの下地が出来てから、どういった工程で作っていったんですか?
MIRI:最初に聞かせてもらったラップが早口言葉みたいな感じだったので、まずは一度リリックを全部書き出して、その言葉を尊重しながら音に言葉をハメていって。色んな人に聴いて欲しかったんで、ラップを聴き慣れない人も聞き取りやすいように音に乗せようとか、すごく考えながら作らせてもらいました。作業の中で「ラップってなんだっけ?」ってところからもう一度考え直したり、改めてラップと向き合う機会にもなったし。「どうしたら伝わるだろう?」というのをすごく考える機会にもなりました。
Ho-Say / MC MIRI(我儘ラキア)
――「看板のピン」をモチーフにした曲で、Ho-Sayさんがやりたいことや伝えたいことはMIRIさんもしっかり理解した上で書けた?
MIRI:そうですね。だから、「私が出来ることはなんだろう?」というのも考えたし、私が下手なラップをしたら、ラップ好きな人にも聴いてもらえないというプレッシャーもありました。だから自分らしいラップを見せつつ、落語の世界観も崩さないようにという、今までにない緊張感もありましたし。音楽を通じて届けるって一番広めやすい方法だと思うんですけど、それは落語もラップもちゃんと出来ていてこそだと思うんで。私はラップで特化しようと思って、スキルうんぬんよりも聴いた人に「いいじゃん」と思ってもらえたり、ラップ界隈の人にも「頑張ったね」と言ってもらえるように頑張りました。
――結果、昔と現在の日本の芸能がビシッと繋がるものになりました。
Ho-Say:だから僕はやっててすごく楽しいなと思ったし、出来た時はすっごい嬉しかったし。古典落語って800~900あるんで、音楽と落語の融合をこれからも定期的にやっていけたらいいなと思いました。これまでの人生で手放しで嬉しい時や魂が震えることが何度かあって。今回、そこまでは達してないですけど、出来た時にただただ嬉しいというそれに近い感覚がありましたし。またそれを感じるためにも続けていこうと思いました。
――いまの状況下ではちょっと難しいですけど、お客さんの前でのライブも見たいです。
Ho-Say:それはちょっと考えてて、僕がセンターにいて、サッコンがいて、MIRIちゃんがいて。一曲歌った後、僕が「看板のピン」を一席演じるとか、面白いことがいろいろ出来そうですよね。ライブをやって、若い人のパワーを感じたいです。

取材・文=フジジュン 撮影=松本いづみ
Ho-Say / MC MIRI(我儘ラキア)
「看板のピン」(short ver.)

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