ナオ(首振りDolls)、ガラ(メリー)

ナオ(首振りDolls)、ガラ(メリー)

首振りDolls ナオ(Dr&Vo)と
ガラ(メリー)の対談を実施

歪でもなんでも
転がり続けてなくちゃいけない

ガラ(メリー)

ガラ(メリー)

――そうだね。ガラは自らの人間としての成長が、メリーのガラの歌詞を変化させていると感じることはある?
ガラ:そうね、、、。今までは、“こうで、こうで、こうだから、腐ってんだよ!”って投げっぱなしだったけど、最近は“こうで、こうで、こうだから、こうだろ? な、みんなもそう思うだろ?”って投げかけるようになったかな。主張だけじゃなく、“こういう人もいるはず”って思うようになった。そこも一つの余裕なのかな? 言いたいことを言い放って、ただただ叫んできたけど、きっと“こんな風に思う人もいるのかもしれないな”って思えるようになったというのか。言い切ることが少なくなってきた。

――問いかけは同意を求めているの? どういう変化なんだろうね?
ガラ:俺が弱くなったのかな? 何だろうね? どういう変化なんだろう?
ナオ:俺がそこから感じるのは、同意を求めているのではない気がします。
ガラ:そうね。共感を求めているわけじゃなくて。“ほら、これ美味いだろ、ナオ!”ではなくて。“これ、俺はすごく美味いと思うんだけどな”ってこと。未来は明るい。だからみんなで頑張ろうぜ! じゃなくて、未来は明るいだろう。なんだよね。分かりにくいかな? 未来は明るいだろう。だから、ここからの自分の生き方次第で自分たちの未来も変わるんだと思うよ。って感じかな。そこに含ませてるというかね。希望なのかなぁ。
ナオ:人生というものをいろいろと経験する上で、言い切れる事ばかりじゃないというところの気づきだったり。“自分次第なんだよ”っていうところの教えなのかもしれないですね。
ガラ:言い切れる人って強いなって思う。聴き手は、引っ張ってもらえる安心感ってのも求めているところはあると思うからね。俺は自分の歌詞を見返して、決して強くはないなって思うから。俺がこうだったから、お前らも頑張れよ! じゃないんだよね。俺はこうだったけど、お前らにはお前らの生き方があるし、それぞれのゴールと、そこに辿り着くまでの生き方があるんだから、それぞれの進み方で頑張ればいいんだよ、なんだよね、俺の歌詞は。もしかしたら、ゴールは同じところにあるのかもしれないけど、それぞれの人生があって、それぞれの生き方があるから、それぞれなんだよって、聴く側を尊重できるようになったのかな? って思う。言い切れる人を批判している訳ではなくね。
ナオ:表現の違いはあるけど、ゴールは同じなのかもしれませんもんね。導き方の違いなのかな。聴いてくれる人をどうやって奮い立たせるか、ってとこなんじゃないかな。私も暗い曲は暗いまま終わっていた方がいいって思う人間だったんですけど、最近はやっぱり何処かに救いを入れたくなってますからね。
ガラ:分かるよ。どれだけ暗い表現でも、何処かに救いは入れたいよね。一言でいいんだよ。
ナオ:分かります。その救いの一言を入れられるのって、音楽だからこそだと思うんです。
ガラ:そうだね。音楽だからこそ素直に言えるというか。本当に一言でいいんだよ。余計なことは要らない。“頑張れ”よりも、頑張れって言葉が必要そうだなって思ったら“呑みに行こうか”って言ってあげたい。それがみんなに出来たら最高なんだけどね。
ナオ:そうですね。でも、本当に歌詞では余計なことは言わない方がいい。それに、自分が聴き手の立場になったとき、“頑張って”って言われたいときもあれば、“頑張って”を言われたくないときもある。だから聴く人がそこは選んでくれたらいいと思う。
ガラ:たしかに。昔は、全ての人を幸せにしたいと思って叫んでたけど、今は、全ての人を幸せにするなんて無理だなって思うようになった。

――2人の言ってることはすごく納得できるな。じゃあ、オーバーグラウンドの世界で、すごく多くの人たちが共感する“売れる”という現象は、どういうことだったりするんだと思う?
ガラ:決して批判する意味で言う訳ではないけど、歌詞の面で言うなら、多くの人に当てはまる言葉が多いのかもね。光とか、希望とか、そう言う感じの広い表現を使っているからなのかも。
ナオ:たしかにそうかも。もしかしてこの先、私が光とか、希望とかを歌うことがあったとしたら、きっと間違いなく“変わった”って言われちゃうんでしょうね。でも、それが変化なんだと思う。きっと歌えないと思うけど(笑)。
ガラ:自分の中に無いものは歌えないもんね。さっき、ナオも言ってたけど、説得力がそこには無い。それって伝わってしまうからね。
ナオ:そうですね。みんな自分の気持ちに寄り添ってくれる歌や曲を探してるんだと思うんです。
ガラ:でも、ぴったり当てはまる歌詞なんてないからね、きっと。そこに共感はあっても、ぴったり同じってのは本当に稀だと思うから。
ナオ:ですね。それもあって私、普段は歌詞とか分からない聖歌とか聴いちゃってるんです!
ガラ:マジ!? 深いな。それは深すぎる!
ナオ:あははは。でも、そんな私達の変化も込みでバンドを愛してもらえたら嬉しいなって思いますね。
ガラ:そうだね。それも全てバンドの残した足跡だし、人生そのものだからね。

――生きた証だからね。
ガラ:そう。バンドも変化してるからね。もちろん、さっきナオが言ったように、バンドとして一つのバケモノになっていなくちゃいけないって思うけど、音としては、だいぶ意識が変化してきてるところはあって。メリーは、昔の方が、バンドで一つの音を作らなくちゃいけないと言う意識が強かった。今はもっと歌を中心に据えることを第一に考えていて。シングルのカップリングもアコースティックにして、歌を全面に出す様にしていたりもするから。そう思うと、昔の音作りの方がバンドしてたなって思うよ。とにかく、バンドにおいてボーカリストは、中心にいなくちゃいけないし、音の中でも中心にいなくちゃいけないと思うからね。ナオはその点ドラムボーカルだから大変なところはあるか。
ナオ:動けないですからね。その分、そこを意識したセッティングにしているし、後ろまで届く様に極力目線を後ろに置いてライブしてますからね。でも、ドラム叩いてて基本座ってるから、後ろのお客さんから見えずらいから、もうちょっとドラム台が高く出来るといいなとは思うけど。でも、首振りDollsはジョニーとショーンっていうキャラクターの濃いギタリストとベーシストが居てくれて、ガンガンに動きまくるから、ステージでの並びとしては横一列のバランスがすごくしっくりくるんです。

――唐突だけど、バンドって何だと思う?
ガラ:何、その『プロフェッショナル 仕事の流儀』みたいな質問は。

――突っ込んでいこうと思って(笑)。ナオはさっき、バンドは一匹のバケモノだって言ってたけど、バケモノって何?
ナオ:こうしてガラさんと普通にご飯食べさせてもらってるときとかって、すごく自然体なんですけど、バンドとしてステージに立つと一匹のバケモノに変わるんです。

――メリーも健一脱退の発表をしたし、首振りDollsも前のベーシストが脱退して、2019年から現メンバーで始動し始めたでしょ。バンドを1匹のバケモノ、つまり1匹の生き物として例えるなら、それは、体の一部を失うことに繋がることでしょ?
ナオ:うん。でもね、失ったことに変わりはないけど、羽をもがれた気はしない。ウチだったら、そこに加わってくれたショーンは、首振りDollsというバンドの1匹になろうと思って入ってきてくれたわけだから、そこが新しい翼になるし、形を変えながらも、俺たちは1匹なんですよ。私がメリーのことを言うのはおこがましいですけど、メリーもそうだと思うんです。形を変えながらもメリーであることは変わりないし、変わらず1匹のバケモノだと思うんです。メリーが続く限り、首振りDollsが続く限り、それが1匹のバケモノに変わりはないんです。ファンの方の中には、昔のメンバーが良かったとか、5人の方が良かったって言う人もいるかもしれないけど、俺たちは、今の形で1匹なんですよ。そうやって形を変え続けながら、世界一のロックンロールバンドになったのが、ローリングストーンズだと思うんですよ。
ガラ:なるほど。ナオ、いいこと言うね。
ナオ:ジョニーがメンバー変わった頃に言ってたんです。本当にそうだと思うんですよ。もちろん、メリーとは長さも格も違うから、本当に一緒にするのはおこがましいんですけど、俺もショーンが入る前にメンバー脱退を経験してるから、本当にメンバー脱退の際の気持ちって分かるつもりなんです。でも、俺たちは本当にショーンという宝を迎え入れれたことで、バンドとして転がり続けることが出来た。だからこそ、そのときに思ったんです。とにかく、歪でもなんでも転がり続けてなくちゃいけないんだって。さっきも話したけど、バンドとしたら1匹のバケモノだけど、そのバケモノを作っているのは1人1人の違った個性と人生を持った人間だから、歪な丸になるのは当たり前なんですよ! 『スイミー』みたいなもんで、いろんな事情を抱えてて、いろんな人生がある1人1人が集まって1匹を作ってるんだから、歪なのは当たり前で。だから、一緒に進んでいけなくなることだってあると思うんです。それは仕方ないと思う。でも、ステージに立ったら1匹なんです。それでいいんです。そのまま転がり続けることが大事なんです。私はそう思うんです。
ガラ:転がり続けなくちゃいけないってことだね。
ナオ:どんな形になろうともです。ロックンロールって岩だから、歪でいいんです! 丸くなっちゃダメなんです! 歪なのが一緒になって転がり続けてるからカッコいいんですよ、ロックンロールバンドって! 
ガラ:なるほどね。
ナオ:俺たちは岩だから歪なんです。
ガラ:ナオ、ありがと。それだね。本当にそうだと思うよ。昔はさ、“1人でもメンバーが欠けたらメリーじゃない”って言ってたんだよ。1人でもオリジナルメンバーが欠けたら、そのときは解散だって思ってた。今回も19年も一緒にやってきたメンバーだよ。そのメンバーが抜けるなんて、悲しくないわけがない。ファンの人たちが悲しいのもすごく分かるよ。でも、ごめん、俺の方が悲しいと思う。それに、“1人でもメンバーが欠けたらメリーじゃない”って言ってたじゃないですか、っていう人たちも実際に居るのね。けど、俺たち走り続けてきちゃったからさ。止められないと思ったんだよね。続けていくしかない。諦めきれないんだよね。この先に何かあるかもしれないって。もしかしたら、その先に離れたメンバーとまた一緒に出来る日がくるかもしれない。“もう一回やりたい”って思ったら、またやればいい。その為にも、俺たちはずっと動いて居なくちゃいけないんだなって。ナオの言葉を借りるなら、転がり続けて居なくちゃいけないのかもね。俺がメリー作るって言って作ったからさ。守らないとね。なくしちゃいけないんだよね。転がり続けないと。
ナオ:本当にそうだと思います。俺たちもそうですからね。前のベースが辞めるって言ったとき、そこで辞めてしまっていたら、ショーンが入って来て一緒に見た景色や、新しく出逢えたファンの人たちや、新たに首振りDollsを知って好きになってくれた人達と作ったライブは経験出来なかったってことですからね。本当にやり続けることに意味があるんだと思います。
ガラ:そうだね。転がり続けないとね。なんだろな、俺、先輩なのに教えてもらってる気がするよ(笑)。
ナオ:そんなことないですよ! 俺はいつもガラさんに助けられてます! 東京来て、1番会ってる先輩ですもん。本当にいつも気にかけてもらって感謝してるんです。
ガラ:いやぁ、俺、正直羨ましかったんだよね。俺がちゃんと首振りのライブ観せてもらったのは、2019年の11月に下北沢251でやった土屋アンナさんとの対バン『WHO KILLS BAMBI〜土屋アンナ×首振りDolls』だったんだけど、すごい熱量でビックリして。近くで観てた知り合いに、“首振りっていつもワンマンのときも、この熱量でライブしてんの!?”って聞いちゃったからね。そしたら、毎回そうだっていうから。200%くらいの熱量でライブやってる首振り観たらなんか圧倒されちゃって。俺らにはこういう熱量が欠けてるのかもしれないって思ったんだよね。バンド始めたての頃の熱量みたいな、音楽が好きで好きでたまらない熱量というか、衝動みたいな熱が溢れかえってて。すごいなって思った。そこからいろいろと呑みに行ったりご飯に行ったりして、今年の2月21日にナオがアコースティックのライブに呼んでくれて。ボーカリストとしてもすごく魅力のある声の歌い手だなって再確認して。ナオとか俺は唄で殺していかなくちゃいけないボーカリストだと思うんだよ。ボーカリストにもいろいろとタイプがあって、バンドの一部で居るべきボーカリストの形もあるからね。
ナオ:そんな風に言ってもらえて光栄です! 本当に嬉しい。
ガラ:ナオとなんか、一緒にいろいろとやれることを嬉しく思ったんだよね。自粛中にいろいろな人が立ち上げていた“繋ぎ”でも、ナオは俺に声かけてくれたでしょ。結局、自分が本職としている唄をそこでアップしてしまうのはどうなんだろう? っていう疑問があったりもしたから、ちょっと考えるわ〜ってやらなかったんだけど、そういう考え方をしちゃう自分に対して、つまんない奴だなって思ったりもしたしね。何をやるべきなのか、何を辞めるべきなのか、本当に正解が分からない。今、毎日やってるYouTubeも、喜んでくれる人が居るなら、少しでも求めてくれる人たちの力になれるなら、と思ってやり始めたんだけど、日々自問自答だよね。でもね、ナオが俺に繋ぎたいって思って、俺のことを思い浮かべてくれたんだなって思ったら、本当にすごく嬉しかったんだよね。
ナオ:そんな嬉しいこと言わないで下さい! 私は今、こうしてガラさんと一緒にお話しさせてもらえてることが嬉しいし、本当にこんな風に知り合えたことを感謝してるんですから!

OKMusic編集部

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