ナオ(首振りDolls)、ガラ(メリー)

ナオ(首振りDolls)、ガラ(メリー)

首振りDolls ナオ(Dr&Vo)と
ガラ(メリー)の対談を実施

人間ってダメだなって思うよ。
渦中にあるときは、
俯瞰で見れなくなっちゃうから。

ナオ(首振りDolls)

ナオ(首振りDolls)

――いい話だね。初めてゆっくり話せたのは2018年の9月だったけど、それ以前にメリー首振りDollsは共演してるんだよね。
ガラ:そうそう。
ナオ:ガラさんとは2018年の6月に東京キネマ倶楽部でやった、ストロベリーソングオーケストラ主催の【怪帰大作戦〜第6怪『帝都奇譚』】で初めてご一緒させて頂いていたんですよね。もちろん、メリーの存在は知ってましたし、楽曲もカッコイイなって思っていたんですけど、ライブを観たのはそのとき初めてで。本当にめちゃくちゃカッコイイな! って思って。終演後にちゃんとご挨拶したいなと思ったら、ガラさん忙しくて先に出られちゃったんですよね。
ガラ:あー、あのときそうだったね! 誘ってくれたストロベリーソングオーケストラの座長さんには本当に申し訳ないんだけど、歌のレコーディングが間に合ってなくて。先に出ちゃったから、全然話せなかったんだよね。本当に挨拶したくらいだったかな。
ナオ:はい、そうでした。だから、ゆっくりちゃんとお話しさせてもらったのは、そこから3ヶ月後で。そこでガラさんがバンドマンとしてだけじゃなく、人間的にも本当にカッコイイ人だったことを知ることになったんです!

――ガラは本当にいい人だからね。
ガラ:あ、それ。それねぇ、本当によく言われる。いい人すぎてダメなんだって。もっと貪欲になって、人を蹴落としてでも上に這い上がろうとするくらいじゃなくちゃ、この世界ではやっていけないんだって言われる。
ナオ:俺なんて、まだまだガラさんとの付き合いは浅いと思いますけど、そんな俺でもガラさんが優しすぎるくらい優しい人なのは伝わって来ますからね。本当に絶対にこの人は、人を蹴落とすようなことはしない人だなって。こんなこと言うのは失礼に当たるかもしれないけど、人の為に自分が損をする人だなって思うくらいいい人。本当に優しいなって思うんです。
ガラ:よく言われる(笑)。
ナオ:けど、こうやって深くお話ししてもらうようになる前は、めちゃくちゃ怖い人っていう印象でしたけどね。九州にいた頃にメリーといえば、もうそりゃ誰もが知ってる有名なバンドだったけど、墨汁吐いてて喋らないイメージが強かったから、本当に怖かったですもん。
ガラ:喋るとボロが出るからね、俺(笑)。

――良い人が出ちゃうからね(笑)。
ガラ:そうそう(笑)。
ナオ:でも、なんやろ。俺、ガラさんが何かの為に俺を蹴落とすようなことがあったとしても、俺はガラさんのこと嫌いになれないです。今、本当に親身になって向き合ってくれて、自分のことのように話を聞いてくれたり、アドバイスをくれたりするガラさんに、感謝しかないし、本当にこんな先輩になりたい、こんな男になりたいって思ってるから、例えばガラさんがガラさんの為に俺を蹴落とすようなことをしたとしても、俺はガラさんが好きです。ずっと。きっとその先もずっとガラさんのこと慕っていると思うし。
ガラ:ナオねぇ〜、そこよ。そういうとこ。俺がナオのことを自分に置き換えて考えてしまったり、重なるなぁって思ったりするところは、そういうとこなんだよ。ナオはまだ知らない未来がたくさんある。でも、俺はその未来を既に歩いて来たから知ってたりする。もちろん、人によって未来は違うものなんだけど、自分が経験したことで失敗してきたことはナオに教えてあげたいと思うし、通り過ぎてきたことで後々後悔したことも、アドバイスしてあげたいなって思うんだよね。余計な失敗はしない方がいい。もちろん、失敗することで学ぶこともあるし、反省することで失敗しなくなるんだと思うから、実際に自分が痛みを知ることも大事なことなんだけど、取り返しのつかない選択をしないようにだけは助言してあげたいなって思うというかね。無駄に傷付かせたくないから。
ナオ:ガラさん! 好き!
ガラ:あははは。そうやってすぐに人を信用し過ぎるところも、俺と似てる。そこも気を付けた方がいいね、ナオは(笑)。本当に後から気付くんだよね、人間って。愚かだなって思うよ。そのときは、自分たちのことで必死だったり、過信があったりするから、“なんでもっとやってくんないの!?”とか、“もっとこうしてくれよ!”とか、いろいろと勝手なことを思うんだけど、過ぎてみたら、その人がすごく自分たちが思ってた以上に自分たちの為に動いてくれていたことを知って後悔してみたりね。自分たちには見えないところで動いてくれていたりする場合もあるから。人間ってダメだなって思うよ。渦中にあるときは、俯瞰で見れなくなっちゃうから。でも、いい人ばっかりじゃないからさ。すごく信じていたのに裏切られる場合だってあるし。本当に経験しないと分からないよね。忠告されていても、実際に傷付いて痛い思いをしないと分からない生き物だったりもするからね。
ナオ:深みを感じます。やっぱりいろんな経験してきたから言える言葉ですよね。深いな。たしかに、俺なんて飛びこんじゃってましたからね。自分1人のことならいいけど、メンバーのことを考えたら、自分がしっかりしなくちゃいけないし。
ガラ:そう。バンドだからね、俺たちは。

――ちょっと立ち入った話をしてもいい? 昔、ガラと話したことあったよね、“いくつまでバンドを続けるか”って。ガラはそのとき、具体的な年齢を言ってた。もうその年齢を過ぎたけど、今はどう考えているの?
ガラ:実際にその年齢になってみて思うのは、やっぱり辞められないなってこと。自分にはバンドしかないんだって、その歳になってみて思った。期限決めて辞めるものじゃないなって。それにね、止めたらそこで終わるんだよね、全てが。もうその先はない。でも、続けてさえいたら、その先はあるんだよね。今回のコロナだってそうだけど、人生なんて何があるか分からない。だから、続けてさえいたら、何かがあるかもしれない。止めてしまったらそこで終わっちゃうから。それまで続けてきたことが0になってしまうからね。それに、やっぱりステージに立つ度に、自分の居場所はここだなって思うんだよ。

――例えそれが、メリーのガラというバンドマンではない個人の幸せを圧迫することになっても?
ガラ:己が幸せになったらアーティストとして良いものが作れなくなるっていう?

――そう。
ガラ:それ、よく言われてるやつだよね。

――個としての幸せを犠牲にしても、アーティストとして、バンドマンとして、自分たちの音楽を聴いてくれる人たちを幸せにしたいか。というところだよね。
ガラ:難しいよね。満たされてるとなかなかギリギリな感じは描けなかったりするから。
ナオ:安定なんて一生ないですからね、バンドマンなんて。満たされていないところを作品で補う感じというか、だからちょっと背負ってる感じの方がいいっていうことでしょ? それもすごく分かるんですけどね。
ガラ:でも、ぶっちゃけ、幸せになりたいけどね、俺も(笑)。
ナオ:あははは。ですよね(笑)。でも、バンドマンだって普通に幸せ掴んでもいいと思うんですよ。バンドマンだって1人の人間なんだもん。けどね、バンドとしてステージに上がるときは、バケモノになっていないといけないと思うんです。自分だけの幸せを求めることで、バンドとしてステージに立ったときにバケモノになれないなら、ダメだと思う。バンドは1人じゃないからね。自分の幸せよりも、聴き手の幸せを願っているのか? という質問に答えるとするなら、もちろん、音楽を作ったり、なんで歌っているのかって言ったら、目の前の笑顔の為なんです。ライブに自分たちの曲を聴きに来てくれる人たちを笑顔にするために頑張っているんです。
ガラ:そうだね。世界中を幸せにすることなんて無理なんだから、本当にその都度、目の前に居る人の幸せだけを願ってライブするよね。この人たちを、この場所から幸せにして帰してあげようって思ってライブしてるもんなぁ、いつも。
ナオ:私もです。だから、両方なんですよね。わざわざ作品作りのために自分が幸せになるのを拒むことはないと思うし。それに、自分が幸せじゃないと、人のことを幸せには出来ないと思うんです。荒んでるときにハッピーな歌は歌えないでしょ。荒んでる人に寄り添うことは出来ても、その人を幸せに導いてあげることは出来ないと思うから。荒んでる人に寄り添うためのライブは出来ても、幸せには出来ない。もちろん、その形も必要だとは思う。だからと言って、“自分は幸せになっちゃいけないんだ!”っていう十字架を背負い続けるのは、またちょっと違うんじゃないかな? って思う。みんなも自分も幸せになれるのが1番理想。でもね、バンドをやることによって、必然的に自らの“普通の生活をおくる”という人生は確実に犠牲になってると思いますよ。そこは身を削ってやってたりしますからね。でも、それは自分が選んだ人生なんです。だから、そういう意味で自分の人生を犠牲にしてる感じはあると思うし、それは必要なことだと思うんですよね。自分の事が不幸で、かわいそうな奴なんて、カッコ良くないですもん。貧乏だって、傷付いてたって、我武者羅になれるものがあるってことは一つの幸せのかたちですよね。贅沢は言えない。どこか割り切って生きる必要はあると思いますけどね。
ガラ:なんか妙に説得力あるな、今日。
ナオ:ちょっと、ガラさん〜、やめてくださいよ!
ガラ:いやいや、本当にそうだよね。ついつい自分に対してだけストイックになってしまいがちだったりもしちゃうからね。追い込んで追い込んで、とことん追い込んじゃう。

――そういうところもガラらしいね。これは持論でもあるんだけど、ルサンチマン的感情が自らを奮い立たせる根源となる場合もあると思うんだよね。でも、そこが強過ぎるのも、もちろん問題なんだけど。
ナオ:うんうん。すごく分かる。でもね、それって、さっき言った“荒んでる人に寄り添うこと”だと思うんですよ。でも、俺たちが目指したいのは、“荒んでる人に寄り添って、そこから先にその人も笑顔にしてあげること”だと思うから。そこまでしてあげられないとプロじゃないと思うんです。寄り添うことが出来て、更に笑顔にしてあげられるってことは、自分にも余裕がないとダメだと思うんです。だから、そういう意味でも、自分に余裕がないといけないなって思ってますね。多くの人を幸せにしてるオーバーグラウンドのアーティストさんたちは、きっとそれぞれに思い悩むこともあるかもしれないけど、ちゃんと人を幸せに出来る余裕を持っているんだと思う。
ガラ:そうだね。人を幸せにしてあげられるだけの器を持っている人っていう意味だよね。すごく分かるよ。ただただ自分の幸せを追求しちゃったりしだすと、またそこはバランスが崩れて行くんだろうしね。難しいバランスではあるけど。
ナオ:本当に難しいバランスですよね。バンドマンもアーティストも人間だから、“変わらずに居ること”って不可能だと思うんですよ。
ガラ:分かるよ。人間だから成長するからね。その成長によって歌詞も曲も変化したりするからね。
ナオ:そうなんです。そこで“昔と変わった”って言われても、ずっと成長しないで昔のままでいられるわけもなくて。
ガラ:たしかに。もっと言えば、成長のない奴の言うことに説得力はないからね。
ナオ:そうなんです。求められてない変化は退化と捉えられることもあるけど。そういう意味で言うと、昔からのファンの人たちを11人残らず離さず未来に連れていくことなんて、不可能だと思うんです。突き放した言い方に聞こえちゃうかもしれないけど、そうじゃなくて、“昔と変わらずにいなくちゃ”ってしようとするが為に、バンドが解散しちゃうんです。永遠に昔と全く変わらずに居られることなんて出来ないから。
ガラ:そうだよなぁ、、、、。
ナオ:ロックンロールとして転がり続けるなら、自分の変化も含めて受け入れていかなくちゃいけないんです。生き様を語るならばですよ。転がり続けていかなくちゃいけないって俺は思っているんです。自分の立たされてる境遇も全部受け入れて、ロックに昇華しなくちゃいけない。それが、俺の思うロックバンドの生き方なんです。求められていることをやる、というのは、ビジネスにおいては必要なことなのかもしれないですけどね。
ガラ:そうだね、そこをビジネスと割り切らなくちゃいけない場合はね。ロックバンドを始めたきっかけはそこじゃないからね。自分のためにやってたというか。自分が叫ぶ場所を探してたというか。
ナオ:歌いたくないことは、心を込めて歌えないですからね。そこに気持ちが乗っているから、聴く人は心が動くんでしょ。

OKMusic編集部

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