連続テレビ小説『エール』解説付き再
放送直前コラム:激動の昭和を彩った
国民的作曲家・古関裕而の音楽の原点
を探る!

連続テレビ小説『エール』は、「栄冠は君に輝く(全国高等学校野球選手権大会の歌)」「六甲おろし(阪神タイガースの歌)」「闘魂こめて(巨人軍の歌)」などスポーツシーンを彩る応援歌、戦後人々を夢中にさせたラジオドラマ「君の名は」『鐘の鳴る丘』の主題歌「とんがり帽子」「長崎の鐘」「イヨマンテの夜」など、数々のヒット歌謡曲で昭和の音楽史を代表する作曲家・古関裕而(こせきゆうじ)と、妻で歌手としても活躍した金子(きんこ)をモデルに、音楽とともに生きた夫婦の物語を描いている。

豪華キャストが次々に登場し、徳永ゆうき、彩青ら若手歌手も出演し回を追うごとに話題が高まっているなか、6月29日(月)からスタートする再放送では解説放送(副音声)を出演者がドラマの役で担当するスペシャルバージョンで届ける。こらから追いかけ視聴する場合でも、“2周目”として「エール」を新鮮な視点でを楽しむことができる再放送直前コラムを掲載する。

取材・文:仲村 瞳

激動の昭和を彩った国民的作曲家・古関
裕而の音楽の原点を探る!

古関裕而の音楽家としての歴史は、「快挙」という言葉に彩られている。 

1929年、古関は弱冠20歳でロンドンのチェスター音楽出版社の作曲コンクールで入選したのである。しかも、舞踊組曲「竹取物語」をはじめ、応募した5曲すべてが入選となった。昭和初期に、無名の日本人が由緒ある音楽の国際コンクールで高い評価を得たことは快挙としか言いようがない。まさしく「彗星の如く現れた」という表現が相応しい一大事であった。

古関が、ほとんど独学でこの快挙を成し遂げた力の源は何なのか? まず、古関の父親が大の音楽好きで、大正初期ではまだ希少な蓄音機でいつもレコードをかけていたということが才能を開花させるための第一歩となった。そして、通っていた小学校の担任の先生が、たまたま音楽教育に熱心だったことも大きく影響したようだ。まだ小学生にも関わらず、童謡を作曲する授業もあったのだとか。

その頃、音楽にどんどん夢中になっていく古関を見た母親が、当時としては貴重な卓上ピアノを買い与えたのである。小学校を卒業する頃には、楽譜が読めるようになり、作曲して五線紙に記すことができるようになっていた。

1922年、旧制福島商業学校(現福島商業高等学校)に入学。この頃(13歳)から、のちに古関をプロの音楽家へ導くことになる山田耕筰の音楽に傾倒し、独学で作曲活動にのめり込んでいく。学校を卒業する頃、当時の日本では有数のハーモニカバンドとして名の知れた、福島ハーモニカーソサエティーに入団し、作曲、編曲、指揮を担当。この頃、リムスキー=コルサコフの「シェエラザード」に強く傾倒し、のちにその弟子である金須嘉之進(きすよしのしん)に師事するに至った。金須は正教徒であり、正教の聖歌を学ぶため革命前のペテルブルクの聖歌学校に留学し、リムスキー=コルサコフから直に管弦楽法を学んだ。ヴァイオリン、ピアノの奏法、聖歌指揮法、作曲理論なども習得している。

古関が敬愛するリムスキー=コルサコフにも繋がる金須との出会いは、音楽の神の采配と呼んでも言い過ぎではないだろう。古関は、正教会の高度な音楽構造を学び取っている。古関メロディーに内在する荘厳さ、あるいは格式の高さが培われたのである。例えば、古関の作品で、ザ・ピーナッツが歌った「モスラの歌」や、伊藤久男が歌った「イヨマンテの夜」などからも、その片鱗を垣間見ることができる。古関は金須を尊敬し、自分が敬愛するリムスキー=コルサコフの孫弟子になれたことを誇りとしていた。

やがて、幼少の頃より敬愛していた山田耕筰の推薦によりコロムビア専属の作曲家となり、クラシック音楽からポピュラー音楽に転身し、数多くの流行歌や歌謡曲、映画音楽、応援歌、軍歌などの作曲を手掛けることとなった。音丸の「船頭可愛や」、「露営の歌」、伊藤久男の「暁に祈る」、霧島昇・波平暁男の「若鷲の歌」、戦後は、二葉あき子の「フランチェスカの鐘」、藤山一郎の「長崎の鐘」、織井茂子の「君の名は」、岡本敦郎の「高原列車は行く」など、数多くの大ヒット曲を生み出しいくのであった。

連続テレビ小説『エール』オリジナル・
サウンドトラック

2020年5月27日発売
COCP-41137 / 3,000円+税
音楽:瀬川英史
[ 収録楽曲 ]
1. 自分へのエール
2. あを
3. あじさい
4. 雨のち晴れ
5. 倫敦
6. 足踏みオルガン
7. 藤堂先生
8. 竹取物語
9. 三姉妹
10. 音の夢
11. 竹取物語 -Piano Solo-
12. 霧
13. 斜陽
14. 楽治雄スキー少年
15. 大正デモクラシー
16. 喪失
17. 記憶の中で
18. まゐりませう
19. 我が青春のバスハーモニカ
20. 商売!商売!
21. くれなゐ
22. 川俣
23. 騒々(さうざう)
24. 茂兵衛と八重
25. あしくもよくも、あひそひて
26. 竹取物語 -Strings Quartet-
27. 赤い糸
28. ゆきだるま
29. コロンブスレコード
30. 居待月
31. 鰯雲
32. 有象無象
33. 手紙(ふみ)
34. 桔梗
35. いびき
36. 君はるか -Instrumental –
37. 大地の反逆
Music Composed & Produced by 瀬川英史(Except Tr.35/36/37)
Tr.35/36 Composed & Arranged by 古山裕一
Tr.37 Composed by 古関裕而
Tr.37 Arranged by 瀬川英史
Tr.11/26 Arranged by 酒井麻由佳

『あなたが選んだ古関メロディーベスト
30』

2020年4月29日発売
CD2枚組:COCP-41121~2 / 3,000円+税
[ 収録楽曲 ]
ディスク1
1. 高原列車は行く (MONO)
2. 長崎の鐘 (MONO)
3. イヨマンテの夜 (MONO)
4. モスラの歌 (MONO)
5. 君の名は (MONO)
6. とんがり帽子 (MONO)
7. あこがれの郵便馬車 (MONO)
8. 福島夜曲 (MONO)
9. 青春の鐘
10. 愛国の花 (MONO)
11. 黒百合の歌 (MONO)
12. 長崎の雨 (MONO)
13. さくらんぼ大将 (MONO)
14. 我が家の灯 (MONO)
15. 夢淡き東京 (MONO)
16. フランチェスカの鐘 (MONO) (ボーナス・トラック)
17. 船頭可愛や (MONO) (ボーナス・トラック)

ディスク2
1. 栄冠は君に輝く 〜全国高等学校野球大会の歌
2. オリンピック・マーチ
3. 紺碧の空 〜早稲田大学応援歌
4. 六甲おろし 〜阪神タイガースの歌 (MONO)
5. 福商青春歌
6. ドラゴンズの歌 (MONO)
7. スポーツ・ショー行進曲
8. 闘魂こめて 〜巨人軍の歌
9. 我ぞ覇者 〜慶応義塾応援歌
10. わらじ音頭
11. 暁に祈る (MONO)
12. ラバウル海軍航空隊
13. 若鷲の歌 (MONO)
14. 露営の歌 (MONO) (ボーナス・トラック)
15. NHKラジオ「ひるのいこい」テーマ音楽
16. NHKラジオ「日曜名作座」テーマ音楽 (ボーナス・トラック)
17. 別れのワルツ (MONO)

『古関裕而初期作品集』

2020年4月29日発売
配信限定:COKM-42732
[ 収録楽曲 ]
1. 福島行進曲 / 天野喜久代(昭和6年発売)
2. 福島夜曲 / 阿部秀子(昭和6年発売)
3. 平右衛門(平ねも) / 藤山一郎(昭和6年発売)
4. 利根の舟唄 / 松平晃(昭和9年発売)
5. 船頭可愛や / 音丸(昭和10年発売)
6. 船頭可愛や / 三浦環(昭和14年発売)
7. 紺碧の空 〜早稲田大学応援歌 / 早稲田大学応援部(昭和6年発売)
8. 日米野球行進曲 / コロムビア合唱団(昭和6年発売)
9. 都市対抗野球行進歌 / 中野忠晴(昭和9年発売)
10. 大阪タイガースの歌 / 中野忠晴(昭和11年録音)
11. コロムビア応援歌(晴天直下) / コロムビア合唱団(昭和10年発売)ボーナス・トラック

連続ドラマ小説『エール』

毎週月曜~土曜
NHK総合 午前8時~ ほか
出演者:窪田正孝(古山裕一役)、二階堂ふみ(関内 音役) ほか

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