オンラインライブ開催の青野紗穂にイ
ンタビュー 音楽活動再スタートに向
けた想いを明かす

「自分のことを女優だと思ったことはあまりないんです」
そう語るのは、2020年9月『Fly By Night~君がいた』、2021年1月『イフ/ゼン』と話題のミュージカル作品への出演を控える青野紗穂。2020年7月18日(土)には、無観客オンラインライブ『青野紗穂 saho aono ONLINE LIVE〜To Be…〜』を開催する予定だ。
幼少期はダンスと洋楽にのめり込む日々を送り、10歳からモデル活動を開始。本格的に歌を学び始めてからは、ニューヨークで開催された歌唱コンテストのキッズ部門に出場し、僅か14歳で優勝。2015年には現役女子高校生シンガーとしてEPアルバムを世に出し、華々しくデビューを飾った。
ダンサー、モデル、シンガーというキャリアを経て、現在ミュージカル界で目覚ましい活躍を見せる青野に、この度ウェブインタビューを行った。彼女の発する言葉には、女優という枠にとらわれない、ひとりの表現者としての想いが感じられた。
みなさんの期待に応えることができないとわかったとき、カンパニー一同泣いていました
――新型コロナウイルス感染症流行の影響を受け、青野さんは『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS』(以下、『FFBE』)と『ヘアスプレー』の公演中止という大きな出来事がありました。
『ヘアスプレー』はお稽古が始まる前に中止が決まりました。とても残念ではありますが、いつかいいタイミングで上演できる機会があったらなと思っています。ただ、『FFBE』に関してはお稽古が進んで劇場入りする直前に中止の話を聞いたんです(初日は3月6日の予定だったが、3月2日に公演中止が発表された)。一生懸命お稽古をしてきて、FFファンの方たちも楽しみにしてくださっていた作品。みなさんの期待に応えることができないとわかったときは、カンパニー一同泣いていましたね……。初めてのことですし、すごく悲しかったです。それでも『FFBE』は一度だけ無観客上演でウェブ配信することができたので、それはとてもありがたいことだと思います。
青野紗穂
――オンライン配信という形は、何かしらの理由で劇場へ行くことができないような方でも作品を観る機会を持てたという、いい面もあったのではないでしょうか。
そうですね。例えば育児や介護をされている方など、普段なかなか劇場に足を運べない方はたくさんいらっしゃるので、そういった方に観ていただけるというのは嬉しいことです。すごく新しい試みだとも感じました。
――無観客でオンライン配信の舞台を経験してみて、生の舞台とどんな違いを感じましたか?
一番違ったのは、劇場でオーディエンスの方々の熱量を直接感じられないということです。熱量を感じられないのは寂しいことですが、それを差し引いても、みんなで作り上げた世界観を自分たちで鼓舞しながらお伝えできる環境というのは、いい面もあると思いました。お客様の反応に左右されずに、ただただ作品の世界観の中で役として生きることを全うするという意味で、いい機会でもあったんです。ただ、やっぱり寂しさはあります。
ーー “オンライン配信”という点では、今回の青野さんのワンマンライブにも繋がっていくところですね。
はい。「画面の向こう」で観ることは寂しいことかもしれないけれど、いいこともあると思っています。会場に足を運ぶ手間が省けますし、自分の時間を使いながら自由に観ることができますよね。オンライン配信でいろんな方に知っていただいて、舞台やライブエンターテインメント業界を知ってもらうスタート地点になったらいいなと思います。あと、今まで私のワンマンライブでは地方を回ることができなかったので、遠方の方に観ていただけることも嬉しいです。最近LINE LIVEでトークや歌の配信をしているのですが、そこでも「○○に来てほしい!」という声をたくさんいただくんですよ。

青野紗穂

ーーいまLINE LIVEのお話が出ましたが、実は青野さんのLINE LIVEを見ていました!
わ! ありがとうございます!
ーーこの配信は外出自粛がきっかけで始めたのですか?
以前からツイキャスやインスタライブで配信自体はしていたのですが、やるからにはみんなにとってより見やすいものにしたいと思い、配信場所をLINE LIVEへ移行しました。私の音楽を共有する場として続けています。
ーーLINE LIVEは配信中にリアルタイムで視聴者からコメントが入りますが、青野さんは名前や内容をすぐに読み上げて反応していましたよね。一人ひとりのファンと丁寧にコミュニケーションをとる姿に驚かされました。
コメント、つい気になっちゃうんです(笑)。私自身楽しくてやっているんですよ。名前やその方の好きな話や傾向など、できるだけ把握するようにしています。LINE LIVEだけでなく、舞台やライブにいらっしゃる方も、いつも最前列にいらっしゃる方、後方から楽しんでくださる方などいろんな方がいらっしゃいますが、できるだけ応援してくださるみなさんの顔と名前を覚えたいんです。
ーーLINE LIVEの青野さんはフランクで、素に近い感じで話していらっしゃる印象を受けました。
配信を見た方から「普段の紗穂ちゃんを見れるの嬉しい」と言ってもらえることはありますね。深夜の配信ですっぴんで出たこともありますし、みんなでお酒を飲みながらリモート飲みのような配信をしたことも一度あります。実は、私と同年代の方から「舞台は緊張して行きづらい」という声を聞くことがよくあるんです。なので、素の私を出すことで「怖くないよ」ということを伝えられたらという想いもあって。私たちはこういうお仕事をさせてもらっているけれど、普段は普通の人で、みんなと同じように生活をしているということをわかっていただけたらな、と。そうして、事態が落ち着いて舞台が再開できるようになったとき、劇場に足を運んでみようと思ってもらえたら嬉しいですね。でも、LINE LIVEでの自分がフランク過ぎて「大丈夫かな?」って思うこともたまにあります(笑)。
青野紗穂
今新しい青野紗穂を観ていただく機会を作るのは、すごくいいことなんじゃないか
ーー7月18日に開催されるオンラインライブの話を聞かせてください。どんなライブになるのでしょうか?
スタジオから臨場感たっぷりなライブを配信する予定です。本当はフルバンドを入れたかったのですが、配信ではコンパクトな方が良いということもあり、ピアノとデュオでパフォーマンスします。みんなが好きな曲や、私が今まで辿ってきた曲を聴いていただく予定です。どんな反応をもらえるのか、今から楽しみです。
――セットリストについて、今お話できる範囲で教えてください。
まだ全部は確定していないのですが、これまでに出演してきたミュージカルの曲や、以前配信したEPアルバム『INTRODUCTION』の中から抜粋したり、私の原点となったブラックミュージック、ジャズ、ファンクといったジャンルから特に感銘を受けた曲を歌ったり……そんなことを今まさに企んでいます(笑)。LINE LIVEでもみんなにリクエストを募る予定です。とにかく楽しいライブにしたいです!
――「これまでに出演してきたミュージカル」のことも伺いたいです。ご自身にとってターニングポイントとなった作品は何ですか?
全てのはじまりは、藤田俊太郎さん演出の『人魚姫』でした(この作品が青野さんにとっての初舞台&初主演)。藤田さんが見つけてくださらなかったら、私は一生ミュージカルに出ていなかっただろうなと思います。『人魚姫』はキーとなる作品ですね。
青野紗穂
ターニングポイントの作品は『Color of Life』。二人芝居で、セットも最小限で、360度見られる。常に極限の状態で毎公演新しい出会いをスタートさせるのは、とても難しかったです。演出の石丸さち子さんともたくさんコミュニケーションをとって、お芝居に限らずいろんな話をしました。作品が出来上がるまでの歴史、さち子さん自身の歴史……いろんな人の歴史を通して自分の役を作り上げていくというのは、ものすごく大変な作業でしたが、その分得るものも一番多かったです。
――個人的には、『RENT』のミミ役が強く印象に残っています。
『RENT』もすごく楽しかったです! いろんな方と出会えたし、自分と同じ年齢の役を演じさせてもらえるというのもすごく珍しいことでした(出演当時は19歳)。自分に境遇が似ている部分もあったので、一番親近感の湧く役でもありました。
――ミミと境遇が似ているというのは、どういう点で感じたのでしょうか?
私は高校生のときに東京に出てきたんですが、当時は知り合いもいなければ仕事もないという状況。駆け出しのときってお金も知識もないですし、いろんな人と助け合いながら、どうやってそれぞれ自分の活動を続けていくかということを模索する毎日を送っていたんです。渋谷のライブハウスの店長と知り合いになって、なんとか出演させてもらったという経験もあります。その頃の自分の境遇と『RENT』に、通ずるものを感じたんです。もちろん時代背景は全然違いますけど、気持ちはすごく近しいものがありましたね。
―ー素敵なエピソードですね。ちなみに、今回のオンラインライブの企画は青野さんご自身のアイディアだったのでしょうか?
私と、私を支えてくれるスタッフのみなさんとでよく話していたんです。今のような時期じゃないと、ライブはなかなかできないよねって。ミュージカルはお稽古がほぼ毎日、朝から晩まで続くことも少なくありません。貴重な時間がある今、ミュージカルとは違う新しい青野紗穂を観ていただく機会を作るのは、すごくいいことなんじゃないかという話になったんです。
青野紗穂
――「ミュージカルとは違う新しい青野紗穂」という言葉が出ましたが、青野さんは配信の中の自己紹介でも「自分はシンガーで、ミュージカルに出演している」という言い方をされていたことがありました。ご自身の仕事をどのように捉えていらっしゃるのか、改めて伺いたいです。
私としては、自分のことを女優だと思ったことはあまりないんです。音楽は私にとってのライフスタイルなので、役者というよりはアーティストだと思っています。もちろん、ミュージカルに出演させていただくのはとてもありがたいことですし、舞台上の私を観て女優だと思ってくださるのであれば、全然そう思っていただいてもいいんです。ただ、自分の中では音楽というものがお芝居よりも馴染んでいる感覚があるので、アーティストという部類に入るのかなと思っています。
―ーここで改めて、『青野紗穂 saho aono ONLINE LIVE〜To Be…〜』というタイトルに込めた想いを教えてください。
「To Be…」には、「Re start」と「To be continue」という2つの意味を込めました。元々私は音楽活動としてワンマンライブなどを行っていたのですが、ミュージカルのお仕事と同時にライブ活動をすることは難しく、音楽活動は休止状態になっていたんです。ミュージカルと音楽活動、二つを両立させていく方法を考えていた矢先に、こうしてオンラインライブという再スタートの機会を作ることができました。そして、ただ再スタートするだけでなく、続けるということに意味があると思っています。続けるってどんなことにおいても難しいことですし、とても大事なこと。そんな想いから、タイトルを「To Be…」としました。
――最後に、ライブを楽しみにしているお客様へメッセージをお願いします。
今回のオンラインライブは、普段なかなか劇場に来れない方にも観ていただきたいなと思っています。私のことを知らない方でも、今まで私が辿ってきた歴史や、どういう曲を聴いて、どういう作品に出演してきたのかということが感じられるライブになっているはずです。ご自宅から、ぜひ気軽に観てください!
青野紗穂
※今回のインタビューはオンラインにて実施され、撮影のみ少人数体制で行われました。
取材・文:松村 蘭(らんねえ) 撮影:中田智章

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