6月の「TAKARAZUKA SKY STAGE」お勧
め3作品の見どころ紹介/ホーム・シ
アトリカル・ホーム~自宅カンゲキ1
-2-3 [vol.29] <宝塚編>

おうちをシアトリカルなエンタメ空間に! いま、自宅で鑑賞できる演劇・ミュージカル・ダンス・クラシック音楽の映像作品の中から、演劇関係者が激オシする「My Favorite 舞台映像」の3選をお届けします。(SPICE編集部)

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6月の『TAKARAZUKA SKY STAGE』お勧め3作品の見どころ紹介​ by 藤本真由
【1】『オーシャンズ11』(2019)
【2】『ファントム』(2018)
【3】『ベルサイユのばら45~45年の軌跡、そして未来へ~』(2019)

宝塚歌劇専門チャンネル『TAKARAZUKA SKY STAGE』の6月放送のラインアップより、見逃せない3作品の見どころをご紹介!
【1】『オーシャンズ11』('19年宙組・東京・千秋楽)
『オーシャンズ11』('19年宙組・東京・千秋楽)
“裏街道の男”と“絶世の妖精”、それが、宝塚歌劇団がミュージカル界に誇る座付き作家、小池修一郎の宝塚作品における魅惑の主人公の系譜である。前者の集大成が、今年上演された最新作『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』。長年の念願を叶えて往年のギャング映画を舞台化、宝塚の男役ならではの美学を際立たせた。後者の代表作といえば、これまた長年の舞台化の夢を実現した『ポーの一族』。名作少女漫画の世界を、宝塚の舞台に描き出してみせた。
このたび放映される『オーシャンズ11』は、“裏街道の男”路線の傑作の一つ。同名ハリウッド映画に宝塚ならではの華やかなアレンジを加えたもので、2011年の星組初演から好評を博し、昨年、三度目の上演が実現。主人公のダニー・オーシャンは詐欺師で、作品冒頭は服役中。それが原因で妻のテスに離婚届を突きつけられている。今回ダニーを演じるのは宙組トップスター真風涼帆。軍服からガウンまで、宝塚の男役のコスチュームがこよなく映える真風が、この作品ではスーツ姿に“裏街道の男”ならではの翳りと哀愁を漂わせる。映画版とは異なり、歌手という設定になっているヒロイン・テスに扮するのは宙組トップ娘役星風まどか。ダニーとテスが馴れ初めを歌う「あの頃の私」というナンバーで、テスの歌う姿に惚れこんだダニーが「♪出待ち~」とかつての自分の行動を振り返る歌詞には、…“裏街道の男”が出待ちって…出待ちって…と、何度聞いてもじわじわ来るものが。さて、そんなダニーは恋敵から無事テスの心を取り戻すことができるのか。金庫破り計画と共に、恋の行方も見逃せませぬ。
ラスベガスのカジノホテルが舞台だけに、劇中にはギャンブルの場面も登場。脛に傷ありのディーラー、フランク役の澄輝さやとが、真風ダニーと「ブラックジャック」をプレイするシーンでは、言葉を交わしながらの見事なカードさばきにもぜひご注目を。
画像クレジット:OCEAN’ S ELEVEN and all related characters and elements are trademarks of and(c) Warner Bros. Entertainment Inc.(s19) ©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ
★タカラヅカ・スカイ・ステージにて6月(6月12日(金)、17日(水)、20日(土)、29日(月))放送 ※7月も放送あり/そのほか Quatre Rêves ONLINEにて購入可能
【2】『ファントム』('18年雪組・宝塚・千秋楽)

『ファントム』('18年雪組・宝塚・千秋楽)

フランスの作家ガストン・ルルーが1909年に発表した小説『オペラ座の怪人』は、映画や舞台などさまざまな作品の原作となってきた。モーリー・イェストン作詞作曲、アーサー・コピット脚本の『ファントム』もその一つ。日本では宝塚歌劇団が2004年に初演して以来再演を重ねる人気作品となっており、梅田芸術劇場制作のプロダクションも何度も上演されている。アンドリュー・ロイド=ウェバー版が劇団四季によってロングラン上演されており、ケン・ヒル版もたびたび来日公演を行なっていることを考えると、我々日本人が、オペラ座に潜むファントムの物語に強く魅せられた民族であることは間違いない。ルルーは小説執筆にあたり、実際にパリ・オペラ座ガルニエ宮で語られていた幽霊話や史実、劇場構造等を取材し、作品に取り入れている――ちなみに筆者はガルニエ宮見学の折、「怪人が住んでいる池が見たいです」「ありません」というやりとりを案内の方と繰り広げました。
それにしても。なぜ、劇場なのか――なぜ、他の場所ではないのか。劇場、しかもオペラ座ともなれば、キャスト、オーケストラ、スタッフと多くの人々が制作に関わり、観客も多い。舞台上やロビーにはまばゆい光があふれる一方で、上演中の客席や舞台袖には闇が立ち込める。妖しい存在が一人くらい紛れ込んでいてもおかしくない、しかも、舞台芸術ならではの“魔法”に客席側も舞台上も幻惑される場所だからこそ、劇場に住み着いた怪人の話に多くの人々は魅了されてきたのだろうと思う――そして、“怪人”は、すばらしい舞台が上演されている劇場でなければ住み着かない、そんな気がしませんか? 劇場に行けない今だからこそ、この『ファントム』で、雪組トップコンビ望海風斗&真彩希帆のすばらしい歌唱力にひたりながら、“怪人”なる存在について、そして、私たちを魅了してやまない劇場という場所について、じっくり考えてみたいもの。
画像クレジット:PHANTOM Book by Arthur Kopit Music and Lyrics by Maury Yeston Based on the novel by Gaston Leroux “Originally Produced in the United States at Theatre Under the Stars, Houston, Texas” “PHANTOM is presented through special arrangement with Music Theatre International (MTI). All authorized performance materials are also supplied by MTI. 423 West 55th Street, 2nd Floor, New York, NY 10019 USA Phone: 212-541-4684 Fax: 212-397-4684 www.MTIShows.com” ©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ
★タカラヅカ・スカイ・ステージにて6月(6月14日(日)、21日(日)、30日(火))放送/そのほか Quatre Rêves ONLINEにて購入可能
【3】『ベルサイユのばら45~45年の軌跡、そして未来へ~』('19年・梅田芸術劇場・千秋楽)
『ベルサイユのばら45』('19年・梅田芸術劇場・千秋楽)
1974年に初演されて社会的な大ヒットを飛ばし、当時存亡の危機にあった宝塚歌劇団を救うこととなった『ベルサイユのばら』。架空の男装の麗人オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェを主人公に、フランス革命の時代に生きた人々の激動のドラマを描く池田理代子の名作少女漫画は、女性が男性を演じる宝塚の男役という存在を得て、舞台という三次元の世界に息づくこととなった。『ベルサイユのばら45』は、初演から45周年を祝し、歴代主要キャストが勢揃いして、歌と芝居の抜粋、映像とトークで作品を再現したスペシャルな夢舞台。初演から潤色・演出を手がけてきた植田紳爾が監修を担当、「浮かれたお祭りにはしたくない」との信念のもと創っただけあって、作品世界をじっくり味わえる仕上がりとなっている。とにかく、歴代キャストの皆様が、濃い。それぞれに一時代を築いたトップスターたちが次々と登場、一曲歌っただけでその人の世界に一気に引きずり込んでいく。そのめくるめく濃厚感に、多くのスターたちの個性を多面的に輝かせてきた『ベルサイユのばら』という作品の奥深い魅力を改めて知る思い。
それにしても『ベルサイユのばら』という作品は、関わる者、観る者、人の心を熱くする。例えば、芝居コーナーで歌われる「我が祖国フランス」。衛兵隊隊長となったオスカルが、荒くれ者たちを手なずけた果て、みんなで歌い上げるナンバーですが、あのたたみかけるような高揚感たるや。「♪思い出せフランスの空を/思い出せフランスの海を/(中略)/フランスを愛する限り/我等はフランス人なのだ」と歌われる歌詞に人々が心一つとなるとき、“祖国”なる言葉に投影されているのは<宝塚我が心の故郷>である。かつて『ベルサイユのばら』で不死鳥の如く甦った夢の園が、これからも多くの困難を乗り越えて<TAKARAZUKA FOREVER>であることを祈りつつ、熱い舞台の映像に酔いしれたい。
画像クレジット:池田理代子原作「ベルサイユのばら」より ©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ
★タカラヅカ・スカイ・ステージにて6月(6月14日(日)、28日(日))放送 ※7月も放送あり/そのほか Quatre Rêves ONLINEにて購入可能

文=藤本真由(舞台評論家)

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